令和7年 司法試験 論文式 刑法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第1問〕(配点:100)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1(1)
- 私文書偽造罪における「偽造」の意義と、文書の名義人・作成者の意義(自説の論拠と反対説への意識)10点
- 本件作成行為と秘書事例(取締役Yが秘書Zに命じてY名義文書を作成させた場合)との比較による「偽造」該当性の論証7点
- その他の成立要件(「事実証明に関する文書」性、「署名」=有印性、行使罪・故意)への言及4点・簡潔に
設問1(2)
- 詐欺罪における「人を欺く行為」の意義(交付の判断の基礎となる重要な事項の偽り)6点
- 「人を欺く行為」に当たらないとの立場への反論と具体的事実の当てはめ10点
- 詐欺罪のその他の成立要件(錯誤、交付行為、財物の移転、因果関係、故意・不法領得の意思)への言及4点・簡潔に
設問1(3)
- 甲に有印私文書偽造・同行使罪及び詐欺罪の共同正犯が成立する理由(問題の所在と理論構成)10点
設問2
- 甲の4月1日の犯行(Dに対する傷害罪、丙に対する傷害罪)4点・簡潔に
- 甲の本件暴行とDの死亡との因果関係(介在事情)・成立罪名11点
- 丙の態度についての問題の所在(共謀共同正犯・作為による幇助が成り立たず不作為犯が問題となること)4点
- 丙の作為義務(保障人的地位)の発生根拠と具体的事情の当てはめ8点
- 丙に義務付け得る作為の特定(①行為・②行為の作為容易性と結果回避可能性)10点
- 丙の不作為の関与類型(不作為の正犯か幇助か)と成立する犯罪の結論6点
全体
- 論理的構成・論述のバランス・表現の正確性6点
出題の趣旨(法務省公表)
〔設問1〕は、渉外的な個別労働関係民事紛争に関する事案における国際裁判管轄権及び準
拠法についての理解を問うものである。
〔設問1〕の〔小問1〕では、外国裁判所の専属的な国際裁判管轄を合意する①条項に基づ
き被告が妨訴抗弁を主張しているため、この管轄合意の効力が認められるかが問題となる。本
件管轄合意は、民事訴訟法(以下「民訴法」という。)第3条の7第6項が規定する将来にお
いて生ずる個別労働関係民事紛争を対象とするものであるところ、労働契約の終了時にされた
合意でない点で同項第1号の要件を満たさず、また、労働者が合意された国の裁判所に訴えを
提起しているものでもない点で同項第2号の要件も満たしていないため、その効力は認められ
ず、したがって、①条項に基づくYの主張は認められない。
次に、本件訴えについて日本の裁判所の国際裁判管轄権は認められるかが問題となる。本件
訴えは、個別労働関係民事紛争に関する労働者から使用者に対する訴えであるから、民訴法第
3条の4第2項の適用がある。労務の提供の地が日本国内にあることから同項に基づき管轄権
が肯定され、特別の事情(民訴法第3条の9)は特に認められないことから、本件訴えについ
て日本の裁判所の国際裁判管轄権が肯定される。
〔設問1〕の〔小問2〕では、労働契約上の安全配慮義務違反を理由として労働者が使用者
に対して損害賠償請求をしていることから、本件は労働契約の効力の問題と性質決定され、そ
の準拠法は、法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。)第12条及び第7条以下に
よって決定される。
②条項があるため通則法第7条により甲国法が準拠法となるものの、通則法第12条第1項
によれば、当事者が選択した法である甲国法と本件労働契約の最密接関係地法とが異なる場合、
最密接関係地法の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を労働者が使用者に対して表示したと
きは、その強行法規も適用される。そして、労働契約の最密接関係地法は、同条第2項により、
「労働契約において労務を提供すべき地の法」と推定される。これを、本件の事情に当てはめ
て、労務提供地がどこであるかを判断することになる。この点、労働者が採用された当初は甲
国で勤務していたが、入社1年後に日本に転勤し、それ以降本件事故当時まで7年間にわたり
日本で勤務していることから、労務提供地は日本国内であると判断される(甲国が労務提供地
であるとする判断もあり得なくはないが、短期出張先に甲国が含まれていることと給与支払先
口座が甲国内にあるということという事情だけでは足りないであろう。)。したがって、本件
労働契約の最密接関係地法は日本法と推定され、それを覆す事情もないことから、最密接関係
地法は日本法となる。そして、本件で労働者は、使用者に対し、日本法の「特定の強行規定」
である労働契約法第5条の適用を表示していることから、同条も適用されることになり、Y社
の主張は認められないことになる。
〔設問2〕は、不法行為の準拠法、特に使用者責任の準拠法や例外条項についての理解を問
うものである。
本件は、被用者の不法行為に関する使用者の責任を理由とする使用者に対する損害賠償請求
であることから、不法行為の問題であると性質決定され、通則法第17条によって準拠法が決
定されることを示す必要がある。同条本文は加害行為の結果が発生した地の法を準拠法として
いるが、加害行為の「結果」が何を指すかが問題となる。この点につき、「結果」とは法益侵
害の直接の結果であって派生的な損害は含まないとするのが通説であり、これによると、交通
事故により被害者が人身傷害を負った乙国の法が準拠法となる(同条ただし書きは本件では問
題にならない。)。
その上で、例外条項(通則法第20条)により、乙国よりも、被害者の常居所等の関係があ
る日本が明らかにより密接な関係がある地に当たらないかが更に問題となる。同条が例示する
事情である「当事者が法を同じくする地に常居所を有していたこと」に関して直接の加害者(被
用者)でない使用者も「当事者」に含まれるか、含まれるとすれば法人であるA社の「常居所」
はどこにあると考えるべきかを検討し、さらに、「その他の事情」の有無も検討して、同条に
より通則法第17条によって定まる上記の準拠法決定が覆るかについて検討することになる。
以上の検討の結果、日本法が準拠法となればそれだけが適用されるが、外国法が準拠法とな
るとの結論に達した場合には日本法も累積適用される(通則法第22条)ことになる。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「令和7年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
