令和7年 司法試験 論文式 行政法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕⑴、〔設問1〕⑵、〔設問2〕の配点割合は、35:15:
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1(1)
- 処分性の一般的定義(最判昭和39年10月29日)と判断枠組み4点
- 最判平成17年7月15日(病院開設中止勧告)の判示内容の正確な摘示6点
- 本件勧告の処分性を否定する論拠(反対=肯定説の論拠を踏まえて)12点
- 本件指示の処分性を肯定する論拠(反対=否定説の論拠を踏まえて)9点
設問1(2)
- 差止訴訟の形式要件・「重大な損害を生ずるおそれ」の判断枠組み(最判平成24年2月9日)5点
- 本件へのあてはめ(執行停止が間に合うか・損害の性質)8点
設問2
- 勧告事項1:本件条例29条2項の「居住者」「住宅」の解釈(A・B市双方の規範定立)9点
- 勧告事項1:本件勧告時点を基準とするあてはめ7点
- 勧告事項2:立入検査拒否と「悪臭防止法の規定に適合していないとき」該当性7点
- 勧告事項2:悪臭防止法20条1項に基づく立入検査の可否(8条1項の要件充足)9点
- 勧告事項2:悪臭防止法違反には同法所定の措置によるべきとの主張4点・簡潔に
- 勧告事項3:「生活環境を損なうおそれがあると認められるとき」の該当性(裁量否定を前提とする第一次的主張)7点
- 勧告事項3:要件裁量を前提とした裁量権の逸脱濫用の検討8点
全体
- 論理的構成・文章表現(法的三段論法、対立する立場の提示、結論の明示、問いへの的確な対応)5点
出題の趣旨(法務省公表)
生活環境を保全するため家畜を飼養する施設を規制する地方公共団体の条例(本件条例)に
基づく勧告・指示等をめぐる紛争を題材に、勧告・指示の処分性(〔設問1〕⑴)、指示の差止
訴訟(行政事件訴訟法第3条第7項)の訴訟要件充足性(〔設問1〕⑵)、勧告の実体的違法性
(〔設問2〕)につき、関連する最高裁判決を理解していることを前提として、【資料 関係法令】
に掲載された諸規定を解釈・適用しつつ、説得力のある論述をすることができるかどうかを試
す趣旨の出題である。
〔設問1〕⑴は、本件勧告は処分性を有しないけれども、本件指示は処分であるとする考え
方の論拠について、反対の見解にも言及しながら検討することを求めるものである。処分性の
一般論に関しては、「公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によつて、
直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められるもの」(最判昭
和39年10月29日民集18巻8号1809頁)は処分に該当するといえるが、処分性が認
められる行政活動の範囲は拡大傾向にあること(いわゆる処分性拡大)にも留意が必要である。
本件勧告の処分性については、【資料 法律事務所の会議録】において言及されている最判平
成17年7月15日民集59巻6号1661頁の判示を示した上で検討することになる。本件
勧告が処分性を有するという立場からは、本件勧告は本件条例第32条に基づくものであり、
勧告がされた場合には本件条例第33条に基づく指示や本件条例第34条に基づく公表が可能
になること、公表によって相手方にもたらされる不利益は重大であることなどを指摘すること
になると考えられる。他方、本件勧告が処分性を有しないという立場からは、本件条例第32
条に基づく勧告によってその相手方が具体的な行為義務を課されるとは解しがたいこと、本件
条例第32条に基づく勧告がされた後に相当程度の確実さをもって指示・公表がされる法的仕
組みが採られているとはいえないこと、勧告の次に採られる措置は指示であって公表ではない
から、公表がもたらす不利益に着目して指示に先行する勧告の処分性を認めるべきことにはな
らないことなどを指摘することが考えられる。
次に、本件指示が処分性を有するという立場からは、本件条例の仕組みは、勧告に続く指示
によって相手方に具体的な行為義務が課される構造になっていると解することができること、
指示によって相手方は本件条例第34条に定める事項を公表される地位に立たされることなど
を指摘することが考えられる。本件指示が処分性を有しないという立場からは、本件条例に罰
則がないため指示によって相手方に義務が課されるとはいえないこと、指示に続く公表によっ
て相手方に損害が発生し得るとしてもこれは事実上の効果であることなどを指摘することが考
えられる。
〔設問1〕⑵は、本件指示が抗告訴訟の対象となる処分であることを前提に、Aが本件指示
の差止訴訟を提起した場合、「重大な損害を生ずるおそれ」の要件(行政事件訴訟法第37条の
4第1項本文)が充足されるかを問うものである。同要件に関する最判平成24年2月9日民
集66巻2号183頁の判示を明らかにした上で、それに従って検討することが求められる。
本件指示がされた後でその取消訴訟を提起して執行停止の決定を受けることにより容易に救済
を受けられると解する立場では、「重大な損害を生ずるおそれ」の要件の充足は認められないこ
とになる。それに対して、本件指示の取消訴訟を提起して執行停止の申立てをしたとしても公
表がされる前に執行停止の決定を受けられるとはいえないと解する立場では、「重大な損害を生
ずるおそれ」の要件が充足されるという結論も導かれ得る。
〔設問2〕は、本件勧告の実体的違法性について、勧告事項1~3ごとに、反対説にも言及
しながら論じることを求めるものである。勧告事項1については、Aとしては、本件条例第2
9条第2項にいう居住者とは住宅に現に居住している者をいい、Cは居住者に該当しない、仮
にCが令和6年9月の時点では同項にいう居住者に該当していたとしても、本件勧告がされた
時点においては、Cは本件住宅を一時的に離れているにすぎないとはいえない、規制距離内の
住宅に居住者がいない場合には保護されるべき者や利益が存在せず、同項本文の違反はないと
主張することが考えられる。他方で、B市としては、規制距離内にある住宅に居住していた者
が一時的に当該住宅を離れているにすぎない場合は、その者は現に当該住宅に居住していなく
ても本件条例第29条第2項にいう居住者に該当する、本件養鶏場が設置された令和6年9月
の時点では、本件住宅から一時的に離れていただけであり、同項にいう居住者に該当する、令
和7年1月以降、Cは介護老人保健施設に入所しているが、同施設は長期間の入所を想定した
施設ではないから、Cが一時的に本件住宅を離れている者として同項にいう居住者に該当する
ことに変わりはないといった主張が考えられる。
勧告事項2については、Aとしては、事業者が悪臭防止法第20条第1項に基づく立入検査
を拒否したとしても施設が本件条例第32条にいう「悪臭防止法(中略)の規定に適合してい
ないとき」に当たるとはいえないこと、同法第8条第1項の要件が充足されていないのである
から同法第20条第1項に基づく立入検査を行うことはできないこと、同法の規定の違反に対
しては同法に定める措置を採るべきであり、本件条例に基づく措置を採ることは許されないこ
となどを主張することが考えられる。他方、B市としては、本件養鶏場について同法第20条
第1項に基づく立入検査を行うことができるにもかかわらず、立入検査が拒否された場合には、
本件条例第32条にいう「悪臭防止法(中略)の規定に適合していないとき」に該当する、立
入検査を行う前提として同法第8条第1項の要件が充足されていることが常に必要であるとは
いえず、本件養鶏場については同要件の充足が確認されていないとしてもこれに近い状態にあ
るといえるから立入検査の許容性・必要性が認められる、施設が同法の規定に適合していない
場合にその規定への適合を求めることが同法の趣旨に反するとはいえないといった主張が考え
られる。
勧告事項3については、Aとしては、本件勧告がされた時点において悪臭防止法の規制基準
を超過するアンモニアが排出される見込みがあったとはいえず、本件条例第32条にいう「生
活環境を損なうおそれ」も認められないこと、仮に要件裁量があるとしても、本件養鶏場の臭
いについて意見を提出した周辺住民は1名のみであり、しかも日常的に不快な臭いが感じられ
るというわけでもないのであるから、その意見は重視すべきでないことなどを主張することが
考えられる。他方、B市としては、「生活環境を損なうおそれがあると認められる」という要
件の認定には市長の裁量が認められる、令和7年2月以降0.8ないし0.9ppmのアンモ
ニアが計測されているのであるから生活環境を損なうおそれがうかがわれる、本件養鶏場から
65メートル離れた場所に居住している住民から本件養鶏場の不快な臭いが感じられるとの意
見が提出されており、そのような住民の意見をも考慮して同要件の充足を肯定したことに裁量
権の逸脱濫用はないといった主張が考えられる。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「令和7年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
