令和6年 司法試験 論文式 刑法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第1問〕(配点:100)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- 甲がAに肋骨骨折等の傷害を負わせた行為――傷害罪(刑法204条)の成立3点・簡潔に
- 甲が本件財布を領得した行為――問題の所在の設定(先行暴行時に奪取意思がないこと/申し向け文言単体では反抗抑圧に足りないこと)7点
- 自ら作出した反抗抑圧状態を利用した財物奪取における強盗罪の規範定立8点
- 同上のあてはめと結論(強盗罪の成否、否定する場合の窃盗罪・恐喝罪)8点
- 乙がAから暗証番号を聞き出そうとした行為――脅迫該当性と「財産上不法の利益」の問題の所在5点
- 暗証番号の聞き出しと「財産上不法の利益」に関する規範定立7点
- 同上のあてはめと強盗未遂にとどまる点の指摘6点
- 乙がATMに本件カードを挿入して預金を引き出そうとした行為――不能犯の問題の所在4点
- 未遂犯と不能犯の区別に関する規範定立6点
- 同上のあてはめと結論(窃盗未遂罪・被侵害占有の特定)4点
設問2(1)
- 丙の1回目殴打・2回目殴打について暴行罪の構成要件該当性及び正当防衛の成立6点・簡潔に
設問2(2)①
- 丁の声掛けの幇助行為該当性3点・簡潔に
- 正犯(丙)に正当防衛が成立する場合の幇助犯の成否――問題の所在・基準者・規範9点
設問2(2)②
- 甲と丙の暴行の共謀及び共謀共同正犯の成立要件該当性3点・簡潔に
- 実行行為者(丙)に正当防衛が成立する場合の背後者(甲)についての判断枠組みと①との整合性8点
- 甲についてのあてはめと結論7点
全体
- 論理的構成・論述の明確性・表記6点
出題の趣旨(法務省公表)
本問は、国際取引に関わる事例を題材として、財産関係事件における国際裁判管轄の判断、
契約の準拠法及びその周辺分野にかかる理解を問うものである。
〔設問1〕は、国際取引に関して、国際裁判管轄の決定及び契約の準拠法の決定についての
基礎的な理解を問うものである。
〔設問1〕の〔小問1〕⑴は、営業所所在地管轄の理解を問うものである。本問の設定では、
被告住所地(民事訴訟法(以下「民訴法」という。)第3条の2)、債務履行地(民訴法第3
条の3第1号)及び財産所在地(民訴法第3条の3第3号)に基づく国際裁判管轄は日本に認
められない。次に、Yの営業所が日本にあることから民訴法第3条の3第4号に定める営業所
所在地管轄が認められるかにつき、同号の要件に沿って検討することが求められる。同号によ
ると、(i)営業所等が日本に所在していること及び(ii)日本所在営業所等の業務と当該訴えと
が関連していること、の2点が日本に営業所所在地に基づく国際裁判管轄が認められるための
要件とされているところ、本問では特に後者(ii)の要件充足性が問題となる。この点、業務関
連性が抽象的で足りるか、具体的である必要があるかについて基準と理由を示した上で、本問
におけるYの日本所在営業所と訴え1との間の業務関連性につき論じることが求められる。以
上の検討の結果、営業所所在地管轄が認められないとの結論になった場合には、他に管轄を認
める原因もないため、日本の裁判所には訴え1について国際裁判管轄が認められないとの結論
になるであろう。これに対して、営業所所在地管轄が日本の裁判所に認められるとの結論にな
ったとしても、本問の事実関係においては、日本の裁判所で審理をすることが、当事者間の衡
平を害するかあるいは適正かつ迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情があるか否
か、民訴法第3条の9に基づいた丁寧な検討が求められよう。
〔設問1〕の〔小問1〕⑵は、契約の準拠法の決定、特に当事者による選択がない場合に関
する理解を問うものである。契約の準拠法が当事者により選択されていない場合には、法の適
用に関する通則法(以下「通則法」という。)第8条第1項により最密接関係地法が準拠法と
され、また、同条第2項により、当該契約に特徴的給付が存在する場合にはその給付を行う者
の常居所地が契約の最密接関係地と推定される。この点、本件契約は販売契約であり、この場
合一般的には売主が特徴的給付者とされるが、発注者すなわち買主からの指示に基づき受注者
すなわち売主が製品を製作し、発注者が自らのブランドで販売することが予定されている契約
についても一般的な売買契約における場合と同じ処理で足りるかどうかが問題となり得ること
にも注意が必要である。また、日本を最密接関係地と推定した場合、契約締結過程での交渉が
甲国で行われていたこと、契約の履行は全て甲国で行われることになっていたこと、契約締結
地も甲国であったことなどを考慮して、最密接関係地が日本かどうかの丁寧な検討が求められ
る。
〔設問1〕の〔小問2〕は、債権の消滅時効の準拠法決定が問われている。債権の消滅時効
については、債権の運命の問題であるから債権の準拠法によるべきとの見解と、本問における
甲国法の立場のように、出訴期限の問題と捉え訴訟法上の制度として法廷地法によるとの見解
があり得るが、前者が通説であり、後者の見解に立つ場合には特に説得的な理由を示すことが
必要とされよう。なお、甲国法によるとした場合、日本法の定める債権の消滅時効と期間が異
なることから、通則法第42条の公序を検討することも考えられようが、日本法との相違は大
きくなく公序違反とはならないであろう。
〔設問2〕は、国際取引における主要な紛争解決手段という意味で国際取引法の重要問題で
ある仲裁を題材とするものであり、仲裁合意の主観的効力の範囲について、どのようなルール
で決定される準拠法によって判断すべきかについての理解を問うものである。仲裁合意の主観
的効力の範囲については最判平成9年9月4日民集51巻8号3657頁が示したとおり、仲
裁合意の準拠法によって判断されるべきであるが、仲裁合意の準拠法の決定をいかにすべきか
については見解が分かれている。すなわち、仲裁合意も紛争解決にかかる私法上の合意の一種
であり、契約の準拠法の決定と同じように考えるべきであるとの見解と、仲裁判断の取消し・
執行において仲裁合意の効力が問題とされる場合と同様に扱うとの見解である。ここではいず
れの立場に立つかを明確に示す必要があるが、いずれの立場に立ったとしても、当事者による
準拠法の合意が認められるところ、本問のように仲裁合意の準拠法が明示で合意されていない
場合でも、主契約の準拠法が明示で合意されているときは、仲裁合意についても主契約の準拠
法と同じ法によるとの黙示の準拠法合意がされていたと判断されることとなろう(なお、根拠
条文は前者の見解であれば通則法第7条となり、後者の見解であれば仲裁法第44条第1項第
2号及び同法第45条第2項第2号となる)。このような論拠から、裁判所が仲裁合意の主観
的効力の範囲につき甲国法によるとの結論を導いたこと及び甲国法によればAの主張が認めら
れることを示す必要がある。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「令和6年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
