令和6年 司法試験 論文式 行政法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕⑴、〔設問1〕⑵、〔設問2〕の配点割合は、35:35:
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1(1)
- 処分性の判断枠組みの提示(行訴法3条2項、昭和39年判決)4点・簡潔に
- 問題状況の整理(強制加入団体設立論では足りないこと/議論の順序)5点
- 事業計画の法的効果①(平成4年・平成20年判決を手掛かりとした予測可能性)7点
- 事業計画の法的効果②(権利変換処分を受けるべき地位・転出か権利取得かの選択の強制)8点
- 事業計画変更認可に固有の法的効果(地位の直接的変動・法71条5項・権利床面積の変化)7点
- 法66条の建築行為等の制限の位置付け2点・簡潔に
設問1(2)
- 法38条2項による法16条の準用と手続の不履践5点
- 「政令で定める軽微な変更」(法38条2項括弧書・施行令4条1項各号)該当性8点
- 手続的瑕疵が処分の違法を導くか(法16条の手続の趣旨)6点
- 本件都市計画変更の違法を変更認可の違法事由として主張し得る理由5点
- 都市計画基準違反(都市計画法13条1項13号)のあてはめ5点
- 施行区域要件違反(法3条4号)のあてはめ4点
設問2
- 違法性の承継の判断枠組み(平成21年判決)4点・簡潔に
- 実体法的観点からの検討(否定論と肯定論)9点
- 手続法的観点・承継を否定する論拠(制度上の手続保障の摘示)7点
- 手続法的観点・承継を肯定する論拠と結論8点
全体
- 論理的構成・条文引用・表現6点
出題の趣旨(法務省公表)
本問は、都市再開発法(以下「法」という。)に基づく組合施行の第一種市街地再開発事業
を巡る紛争に関して、第三者である隣接市の立場に立って、本件事業計画変更認可の処分性(行
政事件訴訟法第3条第2項)及びその違法性、並びに本件事業計画変更認可と権利変換処分と
の間の違法性の承継の各検討を求めるものである。
〔設問1〕⑴は、市街地再開発組合の事業計画の変更の認可の処分性について、これを肯定
する立論を求める問題である。定款と事業計画を対象とする市街地再開発組合の設立の認可(以
下「組合設立認可」という。)については、事業施行権限を付与された強制加入団体を成立せ
しめる行為であることを理由に土地区画整理組合の設立の認可の処分性を肯定した最判昭和6
0年12月17日民集39巻8号1821頁と同様の考え方から処分性を肯定することができ
るものと考えられる。それに対して、本問では強制加入団体が既に設立されており、新たに加
入させられる者もいない。そこで、組合設立認可が強制加入以外の点で国民の権利義務、法的
地位にいかなる法的効果を及ぼすのか、次いで事業計画の変更の認可が国民の権利義務、法的
地位にいかなる法的効果を及ぼすのかが問題となる。
最判平成4年11月26日民集46巻8号2658頁及び最判平成20年9月10日民集6
2巻8号2029頁は、いずれも地方公共団体が施行する第二種市街地再開発事業又は土地区
画整理事業における事業計画決定の処分性を認めたものであり、本問で提示した事案とは異な
る。しかし、両判例の事案における事業計画も、本問における事業計画も、一定の区域内の土
地に対する権利を、換地であれ、権利変換であれ、強制的に異質なものに変化させるための事
業の内容を示すものであり、このことが一連の事業プロセスの出発点となっている点では共通
している。したがって、上記両判例を手掛かりにした論述が求められる。すなわち、①本件に
おける事業計画は施行地区を定め、再開発ビルの設計を示すものであり、当該事業の施行によ
って施行地区内の宅地所有者等の権利にいかなる影響が及ぶかについて一定の限度で具体的に
予測することが可能となること、②第一種市街地再開発事業に係る組合設立認可が公告される
と権利変換手続が開始され、権利変換を希望しない旨の申出をした者を除き、特段の事情のな
い限り、施行地区内の宅地所有者等に対して、権利変換処分が当然に行われることになること、
さらに③施行地区内の宅地所有者等は、認可の公告の日から起算して30日以内に、金銭の給
付を受けて施行地区外へ転出するか、又は新たに建築される施設建築物等に関する権利を取得
するかの選択を余儀なくされること、④したがって、施行地区内の宅地所有者等は、組合設立
認可により、市街地再開発事業の手続に従って権利変換処分を受けるべき地位に立たされるこ
ととなり、その意味でその法的地位に直接的な影響が生じていることについて、論述が求めら
れる。以上を根拠として、まずは、本件における事業計画が施行地区内の宅地所有者等の権利
ないし法的地位に対して有する法的効果を手掛かりに組合設立認可に処分性を認めることがで
きる。事業計画の変更の認可は、以上のようにして成立する施行地区内の宅地所有者等の権利
ないし法的地位を、何らかの形で直接的に変動させるという意味で、直接的な(個別具体的な)
法的効果を持つといえる。また、新たな施行地区の編入を伴う事業計画の変更にあっては、同
変更の認可が公告されると、法第71条第5項により、同条第1項の定める権利変換を希望し
ない旨の申出期間につき、同公告があった日が改めて当該期間の起算日となる点でも直接的な
(個別具体的な)法的効果を認めることができる。本件事業にあっては再開発ビルの設計の概
要の変更が伴わない形で施行地区が拡大されるため、個々の組合員に割り当て得る権利床の面
積が変化することも、直接的な(個別具体的な)法的効果といえよう。以上の諸点から、本件
事業計画変更認可にも処分性を認めることができる。
なお、上記平成20年最判は建築行為の制限にも言及しているが、判決の多数意見によれば、
それは「具体的な事業の施行の障害となるおそれのある事態が生ずることを防ぐ」ための手段
であるから、それ自体が処分性を肯定する論拠とされているわけではないとの指摘もある。し
たがって、建築制限の存在は、それが継続的に課され続けることにより市街地再開発事業の手
続の進行がより確実なものとなるという意味で、本件事業計画変更認可が本件事業の施行地区
内の宅地所有者等の法的地位に直接的な影響を及ぼすことを示す事情として言及することが望
まれる。
〔設問1〕⑵は、本件事業計画変更認可の違法性の検討を求めるものである。【S市都市計
画課の会議録】において示唆したように、本件事業計画変更認可には手続的瑕疵がある。法第
38条第2項によれば、事業計画の変更の認可の申請があった場合には法第16条が適用され
るので、同条に従い事業計画の縦覧及び意見書提出手続が履践されなければならない。ただし、
法第38条第2項括弧書きによれば、当該変更が「政令で定める軽微な変更」である場合には、
上記の手続を行う必要はない。【本件の事案の内容】で示した事業計画の変更の内容は、公園
の設置に係る設計の概要の変更、及び新たな土地の編入という形での施行地区の変更である。
このように、本件における事業計画の変更は施行地区の変更を含んでいるところ、【資料 関
係法令】で挙げた都市再開発法施行令第4条第1項各号に列挙された「軽微な変更」の内容を
見ても、施行地区の変更は「軽微な変更」として挙げられていないため、本件における事業計
画の変更は、「軽微な変更」には当たらない。したがって、法第16条の定める手続を履践し
なければ、本件事業計画変更認可には手続的瑕疵があることになる。法第16条が定めている
手続のうち、少なくとも意見書提出は「当該第一種市街地再開発事業に関係のある土地(中略)
について権利を有する者」に認められていることから、それら手続は単なる情報収集にとどま
らず、事業によって影響を受ける土地所有者等の権利保護をも目的としたものであるといえる。
そのような趣旨の手続を全く履践しなかったという瑕疵は、本件事業計画変更認可を違法なら
しめるものである。
次に、【S市都市計画課の会議録】では、C地区を施行区域に編入する本件都市計画変更が
違法であることが示唆されている。第一種市街地再開発事業の都市計画決定に処分性が認めら
れないこと、したがって、その違法性は後続の処分の違法事由として主張し得ることも会議録
中で示されているが、答案ではそのことを本件事業計画変更認可の違法性を検討するための問
題の所在を明らかにするために明記した上で、本件都市計画変更の実体的な違法性を検討する
必要がある。都市計画決定権者は都市計画を決定するについて一定の裁量権を有しているとい
い得るが、その裁量権は法令の定めに従って行使されなければならず、第一種市街地再開発事
業の都市計画については、都市計画法第13条第1項第13号所定の都市計画基準、及び法第
3条各号所定の施行区域の要件を満たす必要がある。本問においては、本件都市計画変更がこ
れら規定に違反していることを端的に指摘することが求められる。
都市計画法第13条第1項第13号は、市街地開発事業に係る都市計画基準として、「一体
的に開発し、又は整備する必要がある土地の区域」であることを求めているが、C地区は、都
市計画変更前の施行区域であるB地区とは河川で隔てられており、C地区周辺からB地区側へ
は橋が架かっておらず、変更に係る都市計画においても両地区の地理的な接続は予定されてい
ないため、B地区と一体的に開発又は整備する必要があるということはできない。また、法第
3条は施行区域とすることができる土地の区域の要件を定めているが、同条第4号は、当該区
域内の土地の高度利用を図ることが当該都市の機能の更新に貢献することを求めている。現況
が空き地であるC地区を公園として整備しても活発な利用を見込むことはできず、本件事業が
施行される地区及びその周辺の都市機能の更新に貢献するということはできない。したがって、
本件都市計画変更は、施行区域要件も満たしていないことになる。
〔設問2〕は、本件事業計画変更認可と本件権利変換処分の間の違法性の承継の検討を求め
る問題である。違法性の承継の検討は、最判平成21年12月17日民集63巻10号263
1頁を手掛かりにして行うことになるが、そこでは違法性の承継を認める要素として、先行処
分と後行処分が同一の目的を達成するために行われ、両者が相結合して初めてその効果を発揮
するものであること(実体法的観点)と、先行処分の適否を争うための手続的保障がこれを争
おうとする者に十分には与えられていないこと(手続法的観点)とが挙げられている。そこで、
本問では、実体法的観点と手続法的観点の双方から、違法性の承継を否定する論拠と肯定する
論拠とを列挙した上で、違法性の承継を肯定する立論を行うことが求められている。
実体法的観点に関しては、空間利用の態様の決定である事業計画と、その実現手法である権
利変換は趣旨目的を異にしていることが否定論の論拠となろう。それに対して、【市街地再開
発事業の制度の概要】で説明したように、事業計画のうち設計の概要は再開発ビルの各階の平
面図を含むなど、事業計画段階で事業の基本的内容が定められ、権利変換処分はそれを個々の
組合員に適用するものであるから、両者は一体として、権利変換という法効果の実現に向けら
れている、との論拠により、実体法的観点から違法性の承継を肯定することが考えられる。
手続法的観点からは、違法性の承継を否定する論拠として、新たな事業地区の編入を伴う事
業計画変更にあっては申請前に宅地所有者等の3分の2以上の同意を要するとされていること
(法第38条第2項、法第14条第1項)や、事業計画変更の申請があった場合の事業計画の
縦覧及び意見書提出手続といった手続保障がされていること(法第38条第2項、法第16条)、
事業計画変更認可があると施行地区の変更内容が公告されること(法第38条第2項、法第1
9条第1項、都市再開発法施行規則第11条第3項第2号)といった事情を指摘することが考
えられる。それに対して、肯定論の論拠としては、問題文の【市街地再開発事業の制度の概要】
での「設計の概要」に関する説明に示されているように、事業計画は事業内容を客観的に説明
するものであって、それによって宅地所有者等に生じる権利変動の具体的内容は包括的には明
らかになっているものの、なお、個々の宅地所有者等に与えられるべき権利床等の詳細は確定
には至っていないことや、上記の事業計画の縦覧及び意見書提出手続並びに変更認可の公告の
いずれも、施行区域内の宅地所有者等に個別に通知する制度ではないこと、そもそも権利侵害
の重大性と比較すると、利害関係人に対する手続的保障は、後行処分の段階での先行処分の違
法性の主張を排除するに十分であるとはいえないことといった事情を指摘することが考えられ
る。
いずれの設問に関しても、資料として挙げられた関係法令の条文を正確に読み取ることが求
められる。特に、読み替え規定や政省令への委任規定を正確に読み解き、どの条文が適用され
るのかを正確に特定することが求められる。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「令和6年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
