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令和5年 司法試験 論文式 民事訴訟法 出題の趣旨・論点・解説

令5司法 民事系科目第3問(民事訴訟法)民事訴訟法

問題

〔第3問〕(配点:100[〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は、25:35:40])

次の文章を読んで、後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。 なお、解答に当たっては、文中において特定されている日時にかかわらず、試験時に施行されて いる法令に基づいて答えなさい。 【事 例】 Xは、Yに対して令和3年5月20日に、弁済期を同年11月末日として200万円を貸し渡 し、既に弁済期は到来している旨を主張して、令和4年5月9日、Yを被告として200万円の 支払を求める訴えを提起した(以下、この訴えの訴訟物の内容をなす貸金債権を「甲債権」とい い、この訴えに係る訴訟手続を「本件訴訟」という。)。 Yは、第1回口頭弁論期日において、Xの主張を認めた上で、主位的に、甲債権に対しては既 に弁済をした旨を主張し、予備的に、Xに対する200万円の売買代金債権(以下「乙債権」と いう。)により相殺する旨の訴訟上の相殺の抗弁を提出した。Yは、乙債権の発生原因事実とし て、令和3年8月4日にXに対して代金200万円で美術品(以下「本件動産」という。)を売 却し、同日引き渡した旨を主張し、この売買契約の締結を証明するため、Xがその配偶者Aに対 して送った電子メール(以下「本件メール」という。)の内容をプリントアウトしたもの(以下 「本件文書」という。)を証拠として提出した。本件メールは、同月5日付けでXから送信され たものであり、Xの健康状態やXA間の子の学業成績に関する相談とともに、念願の本件動産を Yから200万円で購入し、引渡しを受けた旨が記載されていた。 Yが、本件文書を入手した経緯は、以下のようなものであった。甲債権及び乙債権に関する紛 争(以下「本件紛争」という。)が顕在化した後、その解決のため、Xは、令和4年3月、X宅 にYを呼び寄せ、Xの自室において話合いをした。話合いが難航する中、Xは「一旦休憩しよう、 コーヒーでも買ってくる。」と述べ、最寄りのコンビニエンスストアまで一人で赴いた。残され たYは、本件紛争は訴訟に発展する可能性も高いと考え、自己に有利な証拠を探す趣旨で、Xの 机の上に閉じた状態で置いてあったノートパソコンを開いたところ、Xがプライベートで利用し ているアカウントのメールが閲覧可能な状態になっていることに気付いた。そこで、Yは、自身 のUSBメモリにXが送受信した電子メールの全てを保存することとした。保存作業は、Xの帰 宅前に終了したため、XがYの行為を認識することはなかった。話合いが終了した後、Yは、自 宅において、保存したメールの内容を全て確認し、その結果、自己に有利な本件メールを発見し た。本件動産についてのやりとりは全て口頭でなされ、引渡しもYがXに直接交付することによ りなされた結果、本件動産の売買の証明に役立つ証拠がなかったことから、Yは、本件紛争が訴 訟にまで発展した場合に備えて、本件メールをプリントアウトした。 X及びYは、いずれも弁護士に対して訴訟委任をしていなかったが、第1回口頭弁論期日にお いて、Yが本件文書を提出したことに動揺したXは、本件動産の売買契約締結の事実を否認する にとどめ、同期日終了後に、弁護士L1に訴訟委任をした。 以下は、弁護士L1と司法修習生Pとの間の会話である。 L1:Xは、Yが自分と配偶者との間の電子メールを無断で閲覧した上で、本件文書を証拠として 提出するのはひどいと憤っています。本件文書の証拠としての利用を阻止することはできるで しょうか。 P:不当な方法で収集された証拠(いわゆる違法収集証拠)については、民事訴訟でも証拠能力 が否定されることがあるということは承知していますが、不勉強で、その根拠も判断基準もあ やふやです。 L1:そうですか。しかし、情報技術の発達により、本件文書のような証拠が提出される訴訟事件 は増えている一方で、技術上の利便性を不当に利用した証拠収集も容易となっています。その ような方法で入手された証拠を事実認定の資料にすることが許されるかどうかは重要な論点と なりますから、少し頑張ってもらおうと思います。本件文書の証明力はそれなりにあると考え られるので、ここでは専ら証拠能力の問題を検討してください。具体的には、⒜民事訴訟にお いて、不当な方法で収集された証拠方法の証拠能力が制限される場合があり得ることを前提と して、そのような証拠方法の証拠能力が否定される法的根拠を挙げた上、証拠能力の有無を判 断する基準を示し、⒝上記⒜の基準に照らして本件文書の証拠能力を判断するとどのような結 論に至るかを明らかにすることを「課題」とします。なお、Yの行為は犯罪行為に該当しない ことを前提としてください。 〔設問1〕 あなたが司法修習生Pであるとして、L1から与えられた課題について答えなさい。なお、以下 に掲げる【事例(続き)】に記載されている事実関係は考慮しなくてよい。 【事 例(続き)】 Xは、Yによる電子メールの無断閲覧は許し難いものの、本件動産の売買契約締結の事実自体 は争い難いと考えた。そこで、第2回口頭弁論期日において、本件動産の売買契約締結の事実を 認めた上、乙債権は既に弁済したとの主張をするとともに、仮に弁済が認められないとしても、 Yは、Xの亡父Bからかつて200万円を借りており、Xは令和3年9月に死亡したBの唯一の 相続人として、BのYに対する貸金債権(以下「丙債権」という。)を相続により取得し、同年 10月末日に弁済期が到来した旨、丙債権を自働債権、乙債権を受働債権として相殺するとの意 思表示を訴訟外でした旨、及び、丙債権と乙債権の相殺適状は、甲債権と乙債権の相殺適状より も先に生じており、民法第512条の趣旨からも前者の相殺が優先されるべきである旨の主張を 追加した。なお、甲債権についてはYの兄Zが保証しており、Zは、第3回口頭弁論期日から、 Yを補助するために補助参加をしている。 受訴裁判所は、Xによる丙債権を自働債権とする相殺の意思表示は、訴訟外で既に確定的にな されているため、訴訟上許容されると判断した。その上で、受訴裁判所は、証拠調べを実施し、 その結果、①甲債権及び乙債権の発生はいずれも争いがなく、丙債権の存在も認められるところ、 甲債権及び乙債権の弁済の事実はいずれも認められない、②Yによる相殺の意思表示は、本件訴 訟において裁判所により相殺の判断がされることを条件として実体法上の相殺の効果が生ずるも のである一方、Xによる相殺の意思表示は、訴訟外で確定的になされていることから、Xによる 相殺の意思表示が優先する、③丙債権と乙債権の相殺適状は、甲債権と乙債権の相殺適状よりも 先に生じており、XY間に相殺の充当について別段の合意も認められないことから、Xによる相 殺の意思表示により、乙債権と丙債権が消滅したとの心証に至り、Xの請求を認容する旨の判決 をした。 以下は、弁護士L1と司法修習生Pとの間の会話である。 L1:原判決は、相殺の再抗弁を認めてXの請求を認容していますが、Xは、そもそも乙債権につ いての弁済の事実が認められなかったことに不満があるようです。Xが強く希望しているとこ ろですので、控訴を提起します。 P:この場合、控訴審では、審理の範囲は、乙債権の存否に限定されるのでしょうか。仮に、甲 債権や丙債権も審理の範囲に含まれるとすれば、かえってXに不利益な結果になる可能性もあ るように思います。 L1:良い質問ですね。Xの控訴が適法であり、かつ、Y及びZが控訴も附帯控訴もしていないと いう仮定の下でも、控訴審の審理の範囲は限定されるものではなく、甲債権や丙債権が審理の 範囲に含まれると考えていいでしょう。 そこで、上記仮定の下、甲債権と丙債権が審理の範囲に含まれること、並びに原判決が示し た相殺の再抗弁の許容性、相殺の優先順位及び相殺の充当に関する判断には変更がないことを 前提として、控訴裁判所が、(ア)甲債権は弁済により消滅した、(イ)甲債権と乙債権はいずれも 弁済による消滅はしていないが、丙債権の存在は認められない、(ウ)甲債権は弁済による消滅は していないが、乙債権は弁済により消滅した、という判断に至った場合のそれぞれについて、 どのような判決をすべきことになるか、検討してください。これを「課題」とします。なお、 利息又は損害金及び費用についてはないものとし、控訴の利益について検討する必要もありま せん。 〔設問2〕 あなたが司法修習生Pであるとして、L1から与えられた課題について答えなさい。なお、以下 に掲げる【事例(続き)】に記載されている事実関係は考慮しなくてよい。 【事 例(続き)】 Xのみが控訴を提起し、Y及びZが控訴も附帯控訴もしなかったところ、控訴裁判所は、原判 決は正当であるとの判断に基づき、Xの控訴を棄却する旨の判決をした。誰も上告又は上告受理 の申立てをしなかったことから、Xの控訴を棄却する旨の判決が確定したため、Xの請求を認容 する第一審判決も確定した(以下、本件訴訟に係る確定判決を「前訴確定判決」という。)。 ところで、Zは、XのYに対する請求が認容されることを阻止するため、第一審において、甲 債権を保証している旨を主張して、Yを補助するために参加の申出をした。Zの補助参加にはX もYも異議を述べなかったことから、Zは適法に補助参加人として訴訟追行し得ることとなった。 Zは、第一審の第3回口頭弁論期日において、甲債権については、Yからの要請により、Xが 債務を免除した事実(以下「免除の事実」という。)を、丙債権については、ZがYに代わって Bに対して弁済した事実(以下「弁済の事実」という。)を主張した上で、免除の事実を証明す るためにZ自身の証人尋問の申出をした。しかし、Yは、Yが主張する甲債権の弁済時期よりも 免除の事実の時期の方が遅かったことから、同期日において、免除の事実はない旨を主張すると ともに、Zの証人尋問の申出を撤回した。なお、弁済の事実は、Xにより争われ、証拠調べが実 施されたが、第一審、控訴審のいずれにおいても認められなかった。 本件訴訟終了後、Zは、Xから保証債務の履行を迫られたことから、かねて付き合いのある弁 護士L2に電話で連絡をとった。L2は、「大変な状況ですね。少し込み入った事件ですので、 関連する書類を持って一度事務所においでください。お待ちしています。」と述べ、通話を終了 した。 以下は、弁護士L2と司法修習生Qとの間の会話である。 L2:Zの説明によると、XがZに対して保証債務の履行を求めて訴えを提起する可能性がありま す。その場合、Zとしては甲債権の存在を争うことになると思いますので、XのZに対する上 記訴えに係る訴訟手続において、甲債権の存在を認めた前訴確定判決に基づく何らかの拘束力 が作用するか否かが問題になります。そこで、この点を検討してください。これを「課題1」 とします。 Q:承知しました。もっとも、Zとしては、Xに対して任意に保証債務を履行した上で、Yに対 して求償することも考えられますね。 L2:そのとおりです。しかし、Yが求償に応じない場合には、ZはYに対して求償の訴えを提起 する必要があります。そして、この場合、Yは、求償債務を否定するために甲債権の存在を争 うことを考えるでしょう。 Q:そうすると、ここでも、甲債権の存在を認めた前訴確定判決の効力が問題になりますね。 L2:そうです。ただ、この場合は、前訴である本件訴訟の補助参加人が被参加人に対して前訴確 定判決を援用するという珍しい構図になっており、このような援用が許されるか、という問題 も含んでいそうです。そこで、このような問題があることに留意しつつ、ZのYに対する上記 訴えに係る訴訟手続において、前訴確定判決の効力が作用するか否かについて検討してくださ い。これを「課題2」とします。なお、「課題2」については、民事訴訟法第46条の効力以 外の効力を検討する必要はありません。 〔設問3〕 あなたが司法修習生Qであるとして、L2から与えられた課題1及び課題2について答えなさい。

論点の一覧

出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。

設問1

  • 違法収集証拠に関する明文規定の不存在と、それでも証拠能力が無制限には認められない理由(背景的事情)6点
  • 証拠能力を否定する法的根拠の提示6点
  • 証拠能力の有無を判断する基準の定立7点
  • 本件文書の証拠能力についてのあてはめ6点

設問2

  • 前提の整理(訴訟外の相殺の再抗弁の適法性、審理の順序、法114条2項の既判力の範囲)6点
  • 不利益変更禁止の原則(法304条)の意義と判断手法7点
  • (ア) 甲債権が弁済により消滅したとの判断に至った場合の判決7点
  • (イ) 甲・乙債権は消滅せず丙債権の存在が認められない場合の判決7点
  • (ウ) 甲債権は消滅せず乙債権が弁済により消滅した場合の判決8点

設問3課題1

  • 既判力のZへの拡張の否定(法115条)5点・簡潔に
  • 法46条の効力(参加的効力)が参加人Zと相手方Xとの間には生じないこと7点
  • 争点効又は法2条に基づく信義則上の拘束力の検討7点
  • 反射効の検討4点・簡潔に

設問3課題2

  • 法46条の条文構造と本問の構図とのミスマッチの指摘7点
  • 参加的効力の根拠論からの結論と条文の文言との整合性7点
  • 本件事案への当てはめ(46条各号の除外事由等)3点・簡潔に

出題の趣旨(法務省公表)

本問は、XがYに対し、貸金の返還を求める訴えを提起し(以下、この訴えの訴訟物の内容
をなす貸金債権を「甲債権」といい、この訴えに係る訴訟手続を「本件訴訟」という。)、これ
に対し、Yが請求原因事実を認めた上で、主位的に弁済の抗弁を、予備的にXに対する売買代
金債権(以下「乙債権」という。)により相殺する旨の訴訟上の相殺の抗弁を主張したという
事案を素材としている。この事案について、①Yが不当な方法で収集した電子メールをプリン
トアウトしたもの(以下「本件文書」という。)の取調べを申し出た場合において、民事訴訟
におけるいわゆる違法収集証拠の証拠能力についての検討(設問1)、②本件訴訟において、
更にXが相続により取得したYに対する貸金債権(以下「丙債権」という。)によって乙債権
を相殺したという訴訟外の相殺の再抗弁を主張し、Xの請求を認容する判決に対してXのみが
控訴した場合において、不利益変更禁止の原則を踏まえた控訴審の審理・判断についての検討
(設問2)、③甲債権の保証人であるZが補助参加した本件訴訟についてXの請求を認容する
判決が確定した場合において、その後に提起されたXのZに対する保証債務履行請求訴訟及び
ZのYに対する求償請求訴訟における、上記確定判決に基づく効力ないし参加的効力について
の検討(設問3)をそれぞれ求めるものである。
設問1(a)は、民事訴訟において違法収集証拠の証拠能力が制限される場合があり得ること
を前提としつつ、証拠能力を否定する際の法的根拠を挙げて、証拠能力の有無をいかなる基準
により判断すべきかを問うものである。民事訴訟法(以下「法」という。)には、違法収集証
拠の証拠能力を制限した規定はないが、にもかかわらず違法収集証拠の証拠能力がなぜ無制限
には認められないかについては、裁判所が当事者等による証拠の違法な作成・収集を助長する
おそれ、公正かつ適正な裁判に対する国民の信頼を損なうおそれ等への配慮があることの指摘
が期待される。具体的な事例において違法収集証拠の証拠能力を制限する際の法的根拠及び判
断基準については、最高裁判所の判例がいまだ存在せず、様々な学説が提唱されている状況で
あるから、いかなる見解を採用したかによって評価に差を設けることはない。例えば、下級審
裁判例(東京高判昭和52年7月15日判時867号60頁参照)による場合には、人格権の
保護を根拠としつつ、当該証拠が著しく反社会的な手段を用いて取得されたものかどうかを基
準とすることが考えられる。また、訴訟上の信義則(法第2条)を根拠とし、証拠収集の手段
や態様の違法性、被侵害利益の重大性、証拠の重要性、真実発見の要請等を総合的に考慮して
証拠能力の有無を判断する有力説による場合には、判断基準となり得る重要な要素を摘示しつ
つ、それらの総合考慮により判断すべきことを指摘する必要があろう。
設問1(b)は、設問の事実関係の下で、(a)において採用した判断基準に照らして本件文書の
証拠能力の有無を判断することを求めるものである。証拠収集の手段や態様の違法性等の各要
素に該当する具体的な事実の検討は、(a)において採用した判断基準と整合的でない限り、評
価されない。例えば、前掲下級審裁判例によるときは、人格権侵害ないし違法性との関係で、
証拠収集の手段・態様の違法性、被侵害利益の重大性を検討し、その結果、人格権侵害ないし
違法性が肯定される場合でも、他の要素(証拠の重要性、真実発見の要請)に鑑み、違法性が
阻却される余地があるかどうかを検討することが考えられる。他方、訴訟上の信義則を根拠と
した総合考慮による場合には、上記の各要素に該当する事実を設問の事実関係から抽出した上
で、個別にあてはめを行い、総合考慮の結果として、結論を導くことが期待される。
設問2は、相殺の抗弁に対するいわゆる再相殺について、訴訟上の相殺の再抗弁は不適法で
あるが、訴訟外の相殺の意思表示の主張は適法と解されること(最判平成10年4月30日民
集52巻3号930頁参照)を前提として、第1審で訴訟外の再相殺の主張が認められて請求
認容判決がされた事案において、Xのみが控訴した場合の控訴審の審理判断の在り方について、
具体的な事実関係を基に論じさせるものであり、民事訴訟の基本的な理解を踏まえた論理的思
考力及び論述力を問うものである。
(ア)では、控訴裁判所の心証に従えば、原判決を取り消し、請求を棄却する旨の判決をする
ことが想定されるところ、この判決が不利益変更禁止の原則(法第304条)に違反するかに
ついて、同原則の趣旨を踏まえ、控訴裁判所の判決が確定した場合と原判決が確定した場合の
既判力の比較により検討することが求められる。甲債権の弁済による消滅を理由とする請求棄
却判決は、Xにとり不利益変更に当たると解されるから、控訴裁判所は、控訴を棄却する旨を
主文とする判決をするにとどめるべきことになろう。
(イ)においても、控訴裁判所は、原判決を取り消し、請求を棄却する旨の判決をすることが
想定される。ここでも不利益変更禁止原則の適用を検討する必要があるが、具体的な事実関係
の下で、相殺の判断に係る既判力(法第114条第2項)の検討を含めるべきことを論じた上
で、請求棄却判決がXにとって不利益変更に当たることを指摘することが期待される。
(ウ)では、控訴裁判所も請求認容判決をすることが想定されるものの、乙債権の弁済による
消滅により、訴訟外の相殺の主張につき判断が不要となる点を指摘し、原判決の理由中でされ
ていた丙債権による相殺に係る判断が控訴裁判所の判決ではなされないことの帰結について検
討することが求められる。訴訟外の相殺の主張の判断に法第114条第2項の適用を認める通
説では、丙債権に係る判断につき既判力の範囲に変更が生ずることから、控訴裁判所は、原判
決を取り消し、Xの請求を認容する旨を主文とする判決をすべきことになろう。
設問3の課題1では、甲債権を認めて、XのYに対する請求を認容する旨の判決が確定した
後、XがYの補助参加人であったZに対して甲債権に係る保証債務の履行を請求したという場
合において、XY間の確定判決が、XのZに対する保証債務履行請求訴訟において何らかの拘
束力を及ぼすかを問うものである。確定判決の拘束力としては様々なものを想定し得ることか
ら、それらを広く取り上げた上で、それぞれの拘束力について十分に検討をすることが期待さ
れる。一例を挙げるならば、通説の立場から、Zは、法第115条により既判力の拡張を受け
る者ではないこと、法第46条の効力は、参加人と被参加人との間の敗訴責任の共同分担とい
う根拠から認められる特別な効力であって、参加人と相手方との間に生ずることは想定されな
いことを論じた上で、さらに、争点効又は法第2条に基づく信義則上の拘束力の作用を認め得
るか、を論ずることが考えられる。
設問3の課題2は、XのYに対する請求認容判決の確定後、保証債務を履行したZがYに対
して求償請求訴訟を提起した場合に、XのYに対する請求認容判決に係る法第46条の効力を
Zが援用し得るか、という点を問うものである。補助参加人による被参加人に対する同条の効
力の援用が、同条の根拠から正当化し得るか、という点を、同条自体は、被参加人から補助参
加人に対して同条の効力を援用する場合を想定していることを踏まえて論ずることが期待され
る。例えば、法第46条の根拠を敗訴責任の共同分担と捉える立場からは、補助参加人から被
参加人に対して同条の効力を援用することは認められてしかるべきであると論ずることが考え
られるが、このように論ずる場合には、同条が被参加人から補助参加人への援用を想定してい
ることとの整合性をどうつけるかについても一定の説明が求められよう。

参考答案と AI 採点

第1 設問1 一 課題(a)について 1 証拠能力制限の法的根拠 民事訴訟法(以下、法令名略)には、刑事訴訟と異なり違法収集証拠の証拠能力を制限する規定はなく、自由心証主義(247…

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出典:法務省「令和5年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。