令和5年 司法試験 論文式 行政法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕⑴、〔設問1〕⑵、〔設問2〕⑴、〔設問2〕⑵の配点割合
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1(1)
- 処分性の一般的判断基準の定立と勧告の法的性質の指摘7点
- 平成17年判決の内容・論拠の正確な把握7点
- 法56条の仕組みに即した本件へのあてはめ(連動関係・後続処分の不利益性)9点
- 弁明の機会(法56条9項)と行手法上の手続との異同7点
設問1(2)
- 行訴法9条1項「法律上の利益を有する者」の意義7点
- 平成18年判決・平成25年判決を手掛かりとする判断枠組み6点
- 解散命令の法効果とDの権利侵害(法44条1項・40条1項5号)11点
設問2(1)
- 「重大な損害」の判断枠組み(行訴法25条2項・3項、平成19年決定)7点
- Aに生ずる損害の具体的検討と25条3項各要素への振り分け8点
- B県の反論の具体的内容とその評価7点
設問2(2)
- 法56条8項に基づく解散命令における裁量の存否と審査の枠組み7点
- 裁量権の逸脱・濫用のあてはめ(改善可能性・解職勧告拒否の評価)6点
- 「他の方法により監督の目的を達することができないとき」要件・比例原則と実績資料との比較6点
全体
- 論理的構成・表現力(問いへの的確な対応、条文・判例の正確な摘示)5点・簡潔に
出題の趣旨(法務省公表)
社会福祉法人が法令違反等の不適正な運営を行った場合、都道府県知事等の所轄庁は、当該
不適正な運営を是正するために社会福祉法(以下「法」という。)第56条に基づく各種の監
督措置を執ることになる。本問は、所轄庁であるB県知事が社会福祉法人A(以下「A」とい
う。)に対して行った監査でAの理事Dに対する法第27条に違反する貸付け(以下「本件貸
付け」という。)が発覚したことを受けて、B県知事が、法第56条に基づき、Aに対して行
った改善勧告から解散命令に至るまでの一連の監督措置の中で、B県とA等との間で生じる法
的問題について問うものである。
本問では、Aの理事長であるCが一連の監督措置を争うために相談した弁護士Eと弁護士F
による【法律事務所の会議録】及び【資料1 社会福祉法(昭和26年法律第45号)(抜粋)】
と【資料2 B県社会福祉法人指導監査実施要綱(抜粋)】を読んで、法の規定する要件や効
果とその運用を踏まえて、Aに対する理事長Cの役員解職勧告(以下「本件解職勧告」という。)
の取消訴訟、A及びDが原告となって提起することが想定されるAに対する解散命令(以下「本
件解散命令」という。)の取消訴訟並びにAによる本件解散命令の執行停止の申立てに関する
各法的問題について、弁護士Fの立場からの検討過程を論理的に示すことが求められる。
まず、〔設問1〕⑴では、法第56条第7項に基づき行われた本件解職勧告が行政事件訴訟
法(以下「行訴法」という。)第3条第2項の取消訴訟の対象となる処分に該当するか否かを、
想定される反対の見解の論拠も踏まえて検討することが求められる。その際には、医療法上の
勧告について処分性を認めた最判平成17年7月15日民集59巻6号1661頁(以下「平
成17年判決」という。)が、通常は行政指導として位置付けられる「勧告」について処分性
を肯定するに至った論拠等を押さえながら、本件解職勧告と当該勧告の拒否に際して執られる
措置との連動関係及び当該措置が相手方に及ぼす影響等の観点から、本件と平成17年判決と
を比較検討することが求められる。また、法が本件解職勧告について予定している弁明手続と、
行政手続法上の意見聴取に関する手続の相違等にも着目し、本件解職勧告が処分に当たるかど
うかを検討することが求められる。
〔設問1〕⑵は、Aの理事Dが本件解散命令の取消訴訟を提起することを想定し、Dの原告
適格の有無を問うものである。本問では、本件解散命令の相手方以外の第三者であるDの原告
適格の有無を、形式的には処分の相手方以外の第三者を処分の相手方に準ずる者として不服申
立適格又は原告適格を認めた最判平成18年1月19日民集60巻1号65頁や最判平成25
年7月12日集民244号43頁を手掛かりにして、所轄庁の解散命令により解散を命ぜられ
た社会福祉法人の解散当時の役員は、以後、社会福祉法人の評議員及び役員に就任することが
できない旨を定める法第40条第1項第5号及び法第44条第1項の規定を摘示するなどし
て、行訴法第9条第2項による検討を経ることなく、本件解散命令の法効果からDについて当
該処分の取消しにより回復すべき「法律上の利益」(行訴法第9条第1項)が肯定されるか否
かを検討することが求められる。
次に、〔設問2〕⑴では、Aが本件解散命令の取消訴訟を適法に提起したことを前提に、A
が行った執行停止の申立てに関する要件のうち、行訴法第25条第2項の「重大な損害」につ
いて、Aはどのような主張を行うべきかを、想定されるB県の反論も踏まえて、検討すること
が求められる。「重大な損害」の有無の判断に関しては、行訴法第25条第3項で考慮事項が
定められているところ、同項の考慮事項を踏まえて執行停止を認容した最決平成19年12月
18日集民226号603頁(以下「平成19年決定」という。)を参考にして、その「重大
な損害」の有無を、本件と平成19年決定との違いを意識しながら、本件解散命令によりAが
被る損害や、Aが提供する福祉サービスの利用者等に不利益が生じるという本件解散命令の性
質、あるいは本件解散命令により保護される利益等を同項の定める考慮要素に当てはめて、本
問における事実関係に即して検討することが求められる。
〔設問2〕⑵は、同じくAが本件解散命令の取消訴訟を適法に提起したことを前提に、Aが
提起した本件解散命令の取消訴訟において、Aはどのような本案に関する主張をすべきか、想
定されるB県の反論を踏まえた検討を求めるものである。本問は、B県知事が本件解散命令を
監督措置として選択したことに関する違法性の有無を問うものであり、特に、法第56条第8
項の規定を踏まえてB県知事に裁量が認められるかどうかや、B県知事に裁量が認められる場
合にはその裁量権の範囲を逸脱し又は裁量権を濫用したものとならないかの検討を求めるもの
である。そして、その検討に当たっては、法第24条、第61条第1項第2号等が社会福祉法
人の自主性・自律性の尊重を定めていることや、法が監督措置のうち最も過酷な措置である解
散命令については、「他の方法により監督の目的を達することができないとき」と比例原則の
要請をあえて明文化した要件を定めていることなど、法の趣旨を踏まえつつ、本問における事
実関係や【法律事務所の会議録】で示された監督措置の実績等に照らした検討が求められる。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「令和5年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
