令和5年 司法試験 論文式 刑法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第1問〕(配点:100)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1(1)
- 詐欺罪の実行行為=欺罔行為の意義の明示8点
- 手段を限定した詐欺罪における実行の着手の構成要件的制約の要否9点
- 詐欺未遂罪成立を認める具体的規範の定立(特殊詐欺の特徴・判例の理解)9点
設問1(2)
- 着手時期の特定と、それより前の時点との実質的相違の具体的論証10点
設問2
- 乙・丙の強盗罪の構成要件該当性7点
- B の傷害結果の帰責(強盗の手段たる暴行と因果関係)と強盗致傷罪11点
- 甲の罪責①:当初の詐欺の共謀の射程(規範定立と当てはめ)8点
- 甲の罪責②:抽象的事実の錯誤と成立罪名8点
- 乙・丙につき甲との詐欺未遂罪の共同正犯の成否(既遂・未遂の区別)4点・簡潔に
設問3
- 業務妨害罪にいう「業務」に公務が含まれる範囲についての解釈・規範定立9点
- 事実6における妨害対象公務の特定と「業務」該当性の否定5点
- 事実7における妨害対象公務の特定と「業務」該当性の肯定6点
全体
- 論理的構成・論述の明確さ・答案バランス6点
出題の趣旨(法務省公表)
本問の〔設問1〕は、渉外性を有する相殺の事例を素材として、〔小問1〕では、自働債権
の発生原因である契約から生じる紛争について外国裁判所の専属的管轄合意が存在する場合
に、日本の裁判所において相殺の抗弁を主張することの可否についての理解を、〔小問2〕で
は、相殺の準拠法についての基本的理解を問うものである。また、本問の〔設問2〕は、渉
外性を有する債権譲渡の事例を素材として、〔小問1〕では、債務者との関係における債権譲
渡の効力の準拠法についての理解を、〔小問2〕では、同一の債権をめぐり債権譲渡の譲受人
及び債権譲渡担保権者が存在する場合に、その対抗関係の準拠法についての理解と応用力を
問うものである。
〔設問1〕の〔小問1〕は、A社とB社の間に債権①及び債権②の二つの対立する金銭債
権があり、債権①についてA社が日本の裁判所に訴えを提起し、被告B社が債権②を自働債
権として相殺しようとしたところ、債権②の発生原因である売買契約②について、外国裁判
所を専属的管轄裁判所とする旨の条項(以下「本件条項」という。)が存在する場合に、B社
は日本の裁判所において相殺の抗弁を主張することができるかを問うものである。
まず、相殺の抗弁を主張する前提として、自働債権である債権②について、本案裁判所に
国際裁判管轄権が認められる必要があるのかを検討することが求められている。管轄不要説、
管轄必要説のいずれに立つにせよ、その根拠を示す必要がある。管轄不要説に立つ場合には、
抗弁として債権②を自働債権とする相殺の主張をすることは可能であり、A社の主張は認め
られないことになる。管轄必要説に立つ場合には、さらに、本件条項に係る合意が民事訴訟
法第3条の7の規定の要件を満たしているかが問題となるが、この点は満たしており、合意
は効力を生じている。そして、本件条項に照らすと、債権②は専属的管轄合意の適用範囲に
含まれることから、債権②を自働債権とする相殺の抗弁は不適法却下され、A社の主張は認
められることになろう。
〔設問1〕の〔小問2〕では、相殺の準拠法についての理解が問われている。法の適用に
関する通則法(以下「通則法」という。)には、相殺の準拠法について直接定めた規定は存在
しないため、相殺の準拠法について検討し、その根拠について説明することが求められてい
る。例えば、自働債権準拠法と受働債権準拠法の累積的適用説、受働債権準拠法説等の立場
が考えられよう。その上で、本問への当てはめを行い、いずれの法が準拠法となるかを示す
必要がある。
〔設問2〕の〔小問1〕では、債務者との関係における債権譲渡の効力の準拠法について
の理解を問うている。債権譲受人であるC社からの債務者であるB社に対する訴訟において、
債権譲渡人であるA社に対する債権①の弁済を理由とするB社の抗弁が認められるかについ
ては、債権の譲渡の債務者に対する効力の問題と性質決定することが考えられ、その場合、
通則法第23条の規定によることとなり、同条の「譲渡に係る債権について適用すべき法」
は、債権①の発生原因となっているA社とB社との間の売買契約①の準拠法であり、本件で
は、日本法になると考えられる。
〔設問2〕の〔小問2〕では、同一の債権①をめぐり債権譲渡の譲受人及び債権譲渡担保
権者が存在する場合に、その対抗関係の準拠法についての理解が問われている。債権の譲渡
の第三者に対する効力の準拠法については通則法に明文の規定があるが、債権譲渡担保の第
三者に対する効力の準拠法についての直接の明文規定は存在しない。本問では、債権譲渡の
譲受人であるC社と債権譲渡担保権者であるD社のいずれが債権①を取得したかについて、
いずれの国の法によって判断されるのかを検討し、その根拠について説明することが求めら
れている。
例えば、本問における債権譲渡の第三者に対する効力については、債権の譲渡の第三者に
対する効力の問題と性質決定し、通則法第23条の規定により準拠法を指定し、債権譲渡担
保の第三者に対する効力については、債権質の第三者に対する効力の準拠法に関する従来の
多数説・判例の立場を参考とすることが考えられる。その場合、まず、A社からC社への債
権譲渡の第三者に対する効力については、通則法第23条の規定に従い、同条の「譲渡に係
る債権について適用すべき法」によること、譲渡対象債権の準拠法は、債権①の発生原因と
なっているA社とB社との間の売買契約①の準拠法であり、本問では、それが日本法である
ことを示す必要がある。そして、実質法の本件事案への当てはめを行えば、日本民法第46
7条第2項の確定日付のある証書による、債務者B社への通知がされているため、C社は日
本法の債権譲渡の第三者対抗要件を具備していることを説明しなければならない。次に、D
社がA社から設定を受けた債権譲渡担保の第三者に対する効力については、債権質の第三者
に対する効力の準拠法に関する従来の多数説・判例を参考にするならば、これは物権の問題
と性質決定されるが、有体物を目的としない債権譲渡担保には目的物の所在地を観念できな
いため、通則法第13条の規定によることはできず、また、債権譲渡担保は客体たる権利の
運命に直接影響を与えるものであるので、債権譲渡担保の客体たる債権の準拠法によるべき
であることを示す必要がある。本問では、債権譲渡担保の客体たる債権の準拠法は、債権①
の発生原因である売買契約①の準拠法であり、日本法である。そして、実質法の本件事案へ
の当てはめを行えば、A社はB社に対し、債権譲渡担保の設定について何ら通知をしていな
いため、日本法上、D社は債権譲渡担保の設定の第三者対抗要件を具備していない。以上の
とおり、本問では、債権譲渡の第三者に対する効力の準拠法と債権譲渡担保の第三者に対す
る効力の準拠法は、いずれも日本法となるが、C社は日本法上の債権譲渡の第三者対抗要件
を具備しているのに対し、D社は日本法上の債権譲渡担保の設定の第三者対抗要件を具備し
ていないため、C社が債権①を取得したことが示されねばならない。
また、異なる見解として、債権譲渡担保を一種の債権譲渡であるとし、その第三者に対す
る効力については、通則法第23条の規定を適用又は準用する立場、同一の債権をめぐり優
先権を争う可能性のある債権譲渡の譲受人、債権譲渡担保権者などの権利の第三者に対する
効力については、同一の準拠法によるべきであるとして、明文規定のある通則法第23条と
同様、譲渡対象債権の準拠法によるべきであるとする立場なども考えられる。いずれの立場
でも、通則法第23条の規定に従い、譲渡対象債権の準拠法によることになるが、本問では、
譲渡対象債権の準拠法は日本法であることを示す必要がある。その上で、実質法の本件事案
への当てはめを行い、C社は日本法上の債権譲渡の第三者対抗要件を具備しているのに対し、
D社は日本法上の債権譲渡担保の設定の第三者対抗要件を具備していないため、C社が債権
①を取得したことが示されねばならない。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「令和5年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
