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令和3年 司法試験 論文式 民事訴訟法 出題の趣旨・論点・解説

令3司法 民事系科目第3問(民事訴訟法)民事訴訟法

問題

〔第3問〕(配点:100[〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,40:20:40])

次の文章を読んで,後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。 なお,解答に当たっては,文中において特定されている日時にかかわらず,試験時に施行されて いる法令に基づいて答えなさい。 【事 例】 AとBは,Aを貸主,Bを借主として,Aの所有する土地(以下「本件土地」という。)につ いて,期間を30年,賃料を1か月30万円,目的を建物所有とする賃貸借契約(以下「本件契 約」という。なお,本件契約は,事業用定期借地権を設定するものではない。)を締結した。 Bは,本件土地上に,レストラン経営のための店舗建物(以下「本件建物」という。)を建築 し,本件建物でレストラン(以下「本件レストラン」という。)を経営してきた。Bが本件契約 の締結から20年後に死亡すると,その子であるYが相続により本件土地の賃借人としての地位 を承継し,本件レストランの経営を引き継いだ。また,Bの死亡と同じ時期に,AがXに本件土 地を譲渡したことから,Xが本件土地の賃貸人としての地位を承継した。 Yは,本件契約の期間満了の3か月前に,Xと面談し,本件契約が期間満了後も更新されるこ との確認を求めたが,Xは,その場で,以下のように主張しつつ,本件契約の更新を拒絶した。 1.Xの息子Cは,歯科医であり,開業を予定している。本件土地は,Cが歯科医院を営むのに最 適の立地条件であることから,本件土地上に歯科医院用の建物を建築することを計画している。 2.XはYに対して立退料として1000万円程度を支払う用意がある。 XY間での交渉はまとまらず,Xは,本件契約の期間満了の直後,本件契約の終了に基づき, 「Yは,Xから1000万円の支払を受けるのと引換えに,Xに対し,本件建物を収去して本件 土地を明け渡せ。」との判決を求めて,訴え(この訴えに係る訴訟を,以下「本件訴訟」とい う。)を提起した。 本件訴訟の第1回口頭弁論期日においては,XとYの双方が出頭し,Xが前記1と2記載の主 張をしたのに対して,Yは,本件レストランの経営継続を予定しているところ,離れた地に移転 してしまうと経営が成り立たず,近隣において適当な土地を取得することは困難である旨及びX から申出があった程度の立退料では本件レストランの収入喪失まで補償するには全く不十分であ る旨を主張した。 また,この期日において,裁判官Jは,訴状の請求の趣旨には,「1000万円の支払を受け るのと引換えに」と記載してあるが,他方で,Xが1000万円程度を支払う用意がある旨を申 し出た旨を主張していることから,1000万円という額にどの程度のこだわりがあるかという 点についてXに釈明を求めた。これに対して,Xは,「1000万円という額に強いこだわりは ありません。この額は,早期解決の趣旨で若干多めに提示したものですので,早期解決の目がな くなった以上,より少ない額が適切であると思っておりますが,本件土地を明け渡してもらうの が一番大事ですから,裁判所がより多額の立退料の支払が必要であると考えるならば,検討する 用意があります。」と陳述し,その要旨は口頭弁論調書にも記載された。 以下は,裁判官Jと司法修習生Pとの間の会話である。 J:Xは,立退料の支払を申し出ていますね。立退料は,借地借家法第6条の正当事由の有無を判 断する上で,どのような役割を担うのでしょうか。 P:借家に関してですが,判例は,立退料は他の諸般の事情と総合考慮され,相互に補充しあって 正当事由の判断の基礎となるものであるとしています(最高裁判所昭和46年11月25日第一 小法廷判決・民集25巻8号1343頁。以下「最判昭和46年」という。)。 J:そうすると,裁判所が正当事由を認める上で必要と考える立退料額がXの申出額よりも多額で ある場合は,どういう判決をすることになりますか。 P:最判昭和46年は,原告は「立退料として300万円もしくはこれと格段の相違のない一定の 範囲内で裁判所の決定する金員を支払う旨の意思を表明し,かつその支払と引き換えに(中略) 店舗の明渡を求めている」と述べた上で,申出額よりも多額である500万円の支払との引換給 付判決をした原判決を是認しています。本件でも,Xの第1回口頭弁論期日における陳述の内容 から見て,Xの申出額と格段の相違のない範囲内で増額した立退料の支払との引換給付判決は許 容されそうです。 J:それはそうでしょうね。それでは,申出額と格段の相違のない範囲を超えて増額した立退料の 支払との引換給付判決はどうでしょうか。 P:最判昭和46年に照らすと難しいと思います。 J:そう結論を急がないでください。最判昭和46年は,格段の相違のない範囲を超えて増額した 立退料の支払との引換給付判決の許否について直接判断したものではありません。また,格段の 相違のない範囲を超えて増額した立退料の支払との引換給付判決を拒否するというのがXの意思 であるとは直ちにはいえないように思います。 P:確かにそうですね。 J:それでは,引換給付判決をすることができないとすると,その場合にすべきことになる判決は どのようなものとなるのかを示し,その判決を,Xの申出額と格段の相違のない範囲を超えて増 額した立退料の支払との引換給付判決と対比した上で,後者のような引換給付判決をすることの 許否を検討してください。これを「課題1」とします。 ところで,裁判所が正当事由を認める上で必要と考える立退料額がXの申出額よりも少ないと いうことも考えられます。この場合には,Xの申出額よりも少額の立退料の支払との引換給付判 決をすることはできるのでしょうか。 P:それは,Xが求めている判決よりも有利な判決をXに与えることになりそうでやや違和感があ ります。しかし,口頭弁論調書を見ると,Xはより少ない額が適切であるとも陳述していますね。 J:こちらも額によるかもしれないですね。それでは,第1回口頭弁論期日におけるXの陳述の内 容にも留意しつつ,Xの申出額よりも少額の立退料の支払との引換給付判決をすることは許容さ れるかという点も検討してください。これを「課題2」とします。 なお,「課題1」及び「課題2」を検討するに当たっては,どのような事実を判決の基礎にす ることができるかという問題と借地借家法第6条に関する実体法上の解釈問題に言及する必要は ありません。 〔設問1〕 あなたが司法修習生Pであるとして,Jから与えられた課題1及び課題2について答えなさい。 【事 例(続き)】 本件訴訟が第一審に係属中,弁護士に頼らず自ら訴訟を追行してきたYは,心労もあって健康 を害し,以前から本件レストランの経営を手伝っていたZにレストラン経営を任せることとした。 そこで,Yは,Zに本件建物を賃貸し,これに基づき本件建物を引き渡した。 Xは,前記の事実を直ちに察知し,Zを本件建物から立ち退かせなければ,目的は達成するこ とができないと考え,Zに対する建物退去土地明渡請求を定立しつつ,Zが本件訴訟の係属中に Yから本件建物を賃借し,これに基づき本件建物の引渡しを受けたことを理由としてZを引受人 とする訴訟引受けの申立てをした。 以下は,裁判官Jと司法修習生Pとの間の会話である。 J:本件で,民事訴訟法第50条の承継は認められるのでしょうか。 P:同条の「訴訟の目的である義務」という文言を素直に捉えて,同条にいう承継とは訴訟物であ る義務の承継を指すと理解するのであれば,Zがこのような義務をYから承継したというのは難 しいと思います。 J:しかし,そのような承継の理解は狭すぎるように思います。そこで,そのような理解を離れた 上で,訴訟承継制度の趣旨を踏まえて,同条の承継の意味内容を具体的に明らかにし,Zが同条 にいう承継をしたといえるか否か検討してください。これを「課題」とします。 なお,検討に際しては,XのYに対する訴えの訴訟物は,賃貸借契約の終了に基づく目的物返 還請求権としての建物収去土地明渡請求権であることを前提にしてください。 〔設問2〕 あなたが司法修習生Pであるとして,Jから与えられた課題について答えなさい。 【事 例(続き)】 本件訴訟では,弁論準備手続における争点及び証拠の整理が完了したことから弁論準備手続が 終結となり,Cの証人尋問並びにX及びYの当事者尋問が実施され,口頭弁論の終結が予定され た口頭弁論期日(以下「最終期日」という。)の指定がされた。本件建物がYからZに対して賃 貸され,引き渡されたのは,最終期日の指定がされた直後であり,Xの訴訟引受けの申立ては, 最終期日前に認められることとなった。 本件訴訟に従前関わっていないZは,弁護士に頼らずに訴訟を追行するのは難しいと考え,直 ちに弁護士Lに訴訟委任をした。Lは,正当事由の判断の基準時が本件契約の期間満了時である としても,Yが本件レストランの経営から退いたことが,Yの従前の主張に関して不利にしんし ゃくされることもあり得ることから,更新拒絶に正当事由があると評価されるのを妨げる事実を 追加して主張するのが適切であろうと考えた。 そこで,Lが改めて本件レストラン経営に係る資料を調査すると,B名義の預金通帳(以下 「本件通帳」という。)に,本件契約締結の際にBがAの預金口座に対して1500万円を振り 込んだ旨の記帳がされていることを発見した。LがYに対してこれについて質問をすると,「B から,亡くなる直前に,本件契約の際に権利金としてAの口座にかなりの額を振り込んだ,本件 土地の更新時にもめるといけないから,本件通帳はきちんと保管しておくように,と伝えられて いました。言われたとおり,本件通帳は本件契約の契約書と共に厳重に保管し,本件訴訟の前に も本件通帳の中身を見てBからAへの振込みも把握していましたが,本件訴訟においてそれほど 重要なものとは思っていませんでした。」との回答を得た。その後,Lは,近隣の土地の相場や 賃料相場を調査した結果,BからAに支払われた権利金は,賃料の前払の性質だけではなく,更 新料の前払の性質も含むものであったと思うに至った。 以下は,弁護士Lと司法修習生Qとの間の会話である。 L:最終期日には,BからAに対して更新料の前払の性質も含む権利金が支払われていた旨の新主 張(以下「本件新主張」という。)をするとともに,この事実を立証するために本件通帳につい ての書証の申出とAの証人尋問の申出をしようと思います。ただ,最終期日にAの証人尋問を実 施するというのは無理がありますから,改めて期日を指定してもらうことになります。 Q:Xは,これらの攻撃防御方法の提出は,時機に後れた攻撃防御方法であるとして,却下決定を 申し立ててくるのではないでしょうか。 L:その可能性は十分にあります。そこで,差し当たり本件新主張が却下されるか否かについて考 えてほしいのです。Xは,①Y自身が最終期日に本件新主張をしたとしたら,時機に後れたもの として却下されるべきである,②そうである以上,Zによる本件新主張も却下されるべきである, と主張してくると思います。まず,Xの立場から,①について,その結論を得るための理由を説 明してください。また,その際には,以後予想されるXとY双方の主張立証活動と,却下決定を 得るのを容易にするためにXがYに対してすることができる訴訟法上の行為にも言及してくださ い。これを「課題1」とします。 その上で,Xの立場から②についてZによる本件新主張は却下されるべきであるという立論を して,さらに,Zの立場からこれに対する反論をしてください。これを「課題2」とします。 「課題2」の検討に当たっては,Y自身が本件新主張をしたとしたら,時機に後れたものとし て却下されるということを前提としてください。 〔設問3〕 あなたが司法修習生Qであるとして,Lから与えられた課題1及び課題2について答えなさい。

論点の一覧

出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。

設問1

  • 民訴法246条の趣旨の摘示(①処分権主義・私的自治に由来する原告の申立てへの拘束=原告意思の尊重、②当事者双方に対する不利益の最大限の予告)6点

設問1(課題1)

  • 増額判決に関するXの現実の意思の特定7点
  • 増額判決ができない場合にすべき判決(請求棄却判決)の特定と、増額判決との比較によるXの合理的意思の推測9点
  • 不利益の最大限の予告の観点からの検討4点・簡潔に

設問1(課題2)

  • 減額判決に関する原告意思(現実の意思・合理的意思)の検討5点
  • 被告に対する不利益の最大限の予告の観点からの具体的検討と結論7点

設問2

  • 訴訟承継制度の趣旨6点
  • 法50条にいう「承継」の意味内容の具体化7点
  • Zが承継人に当たるか否かのあてはめ6点

設問3(課題1)

  • 法157条1項の摘示と各要件の意味内容の明示7点
  • 時機に後れ・故意重過失のあてはめ7点
  • 訴訟の完結の遅延(以後予想されるXY双方の主張立証活動)6点
  • 法174条・167条による説明要求とその効果4点・簡潔に

設問3(課題2前半)

  • 訴訟状態承認義務の論証とZによる本件新主張の却下(Xの立論)8点

設問3(課題2後半)

  • Zの立場からの反論6点

全体

  • 論理的構成・法令用語・表現5点・簡潔に

出題の趣旨(法務省公表)

本問は,XがYに対して,土地(以下「本件土地」という。)の賃貸借契約(以下「本件契
約」という。)終了に基づいて,Yが本件土地上に所有する建物(以下「本件建物」という。)
の収去と本件土地の明渡しを求めて提起した訴えに係る訴訟(以下「本件訴訟」という。)の
係属中にYがZに対して本件建物を賃貸し,これに基づいて本件建物をZに引き渡したという
事案を題材として,①原告が一定の額の立退料の支払と引換えに建物収去土地明渡請求訴訟を
提起した場合に,原告が申し出た額とは異なる額の立退料の支払との引換給付判決をすること
の許否の検討(設問1),②XがZを引受人とする訴訟引受けの申立てをした場合に,Zが民
事訴訟法(以下「法」という。)第50条にいう承継人に該当するか否かの検討(設問2),③
ZがXによる更新拒絶を争うために,BからAに対して権利金が支払われていた旨を主張する
ことが時機に後れた攻撃防御方法として却下されるかどうかの検討(設問3)をそれぞれ求め
るものである。
まず,設問1の課題1では,Xが,Yに対して1000万円程度の立退料の支払を申し出た
上で,1000万円の立退料の支払と引換えに本件建物を収去して本件土地を明け渡せとの判
決を求め,さらに,第1回口頭弁論期日において,1000万円という額には大きなこだわり
はない旨の陳述をしたという事実関係において,Xの申出額と格段の相違のない範囲を超えて
増額した額の立退料の支払との引換給付判決(以下「増額判決」という。)をすることの許否
の検討が求められている。ここでは,法第246条には,原告の意思の尊重と当事者に対する
不利益の最大限の予告という二つの趣旨が認められるところ,とりわけ前者の観点から,増額
判決の許否につき検討する必要がある。訴状の記載及び第1回口頭弁論期日におけるXの陳述
から,Xがいかなる意思であるかを可能な限り具体的に特定するとともに,Xの現実の意思が
明らかにならない部分は,原告の合理的意思の推測により補うことが期待される。原告の合理
的意思を推測する際には,裁判所が増額判決をし得ないとすれば,どのような判決がされるか
を特定した上で,この両者を比較検討しつつ,通常の原告であればいずれを望むかを検討する
ことが求められる。なお,最高裁判所昭和46年11月25日第一小法廷判決・民集25巻8
号1343頁は,原告が「立退料として300万円もしくはこれと格段の相違のない一定の範
囲内で裁判所の決定する金員を支払う旨の意思を表明し,かつその支払と引き換えに(中略)
店舗の明渡を求めている」との事実関係の下で,申出額よりも多額である500万円の支払と
の引換給付判決をした原判決を是認しているが,本設問では,Xが1000万円又はこれと格
段の相違のない一定の範囲内で裁判所の決定する金員を支払う旨の意思しか表明していないと
評価することができるか否かが問題であるから,この判決に依拠して,直ちに申出額と格段の
相違のない範囲を超えて増額した立退料の支払との引換給付判決をすることができないとする
のみでは,課題1に十分に答えたとはいえない。
次に,設問1の課題2では,課題1と同様の事実関係において,Xの申出額よりも少額の立
退料の支払との引換給付判決をすることの許否の検討が求められている。ここでも,法第24
6条の二つの趣旨からの検討が必要となるところ,原告の意思の尊重という観点から行うべき
作業は,課題1と基本的に同様であり,課題2では,当事者,とりわけ被告に対する不利益の
最大限の予告という観点から詳細な検討をする必要がある。訴状の記載のみならず,第1回口
頭弁論期日における陳述も踏まえた上で,Yに対して不利益の最大限として何が予告されてい
たと評価することができるかについて,Xの申出額と裁判所が正当事由を認める上で必要と考
える立退料額との差の大きさが結論に影響を与えるか否かにも留意しつつ,具体的に検討する
ことが期待される。
設問2では,本件訴訟の係属中に,YがZに対して本件建物を賃貸し,これに基づき本件建
物を引き渡したという事実関係において,Zが法第50条の承継人に該当するか否かの検討が
求められている。ここではまず,訴訟承継制度の趣旨を明らかにすることが要求される。具体
的には,訴訟の係属中に第三者による承継が生じた場合において,従前の訴訟状態を流用して
当該第三者との間で訴訟を進めることが訴訟経済に資するとともに,とりわけ相手方が従前の
既得的地位を維持することができるという意味で公平の確保に資するという点を指摘すること
が期待される。次に,このような訴訟承継制度の趣旨と適合的な形で,同条にいう承継の意味
内容を具体的に明らかにすることが要求される。この点については,学説上,種々の見解が示
されており,いずれを採用するかにより評価に差をつけることは想定していないが,承継の意
味内容を具体的に明らかにすることが要求されている以上,最高裁判所昭和41年3月22日
第三小法廷判決・民集20巻3号484頁において用いられている「紛争の主体たる地位の承
継」というのみでは,十分に課題に答えたことにはならない。この判例に依拠する場合も,そ
こでいう紛争の主体たる地位とはいかなるものか等の点についてより踏み込んだ記述が求めら
れる。最後に,以上のように具体的に明らかにされた承継の意味内容に照らして,Zが承継人
に該当するか否かの検討が要求される。例えば,承継前の訴訟において,被承継人を当事者と
して適切な者としていた法的地位が第三者に移転し,この地位が相手方の当該第三者に対する
訴訟において,当該第三者を当事者として適切な者としている場合に同条にいう承継が認めら
れると考えるのであれば,Yを本件訴訟で被告として適切な者としている法的地位は何か,こ
れはYからZに移転しているか,移転しているとして,このような地位はXのZに対する訴訟
においてZを被告として適切な者としているか,といった点を検討する必要がある。
設問3の課題1は,訴訟を引き受けたZが,弁論準備手続の終結及び人証の取調べの後に,
従前当事者から主張されていなかった「BからAに対して更新料の前払の性質をも含む権利金
が支払われていた」との新主張(以下「本件新主張」という。)をしようとしているという事
実関係において,Xの立場から,仮にYが本件新主張をしたとしたら,時機に後れた攻撃防御
方法として却下されることの論証を求めるものである。法第157条第1項を摘示した上で,
同項の定める各要件の具体的意味内容を明らかにし,それぞれが充足されることを説得的に述
べる必要がある。なお,同項の要件のうち,「訴訟の完結を遅延させること」の検討に際して
は,その後予想されるXY双方の主張立証活動を踏まえることが要求される。YがAの証人尋
問を申請することは問題文から明らかであるが,Xとしても,立退料額にも関わることである
から,BからAへの振込みの趣旨について反論をする機会を欲するであろうことを指摘するこ
とが期待される。また,本件新主張は,弁論準備手続終結後にされるものであるから,法第1
74条及び第167条により,XからYに対して説明要求がされ得ること,このような要求が
された場合には,Yは説明義務を負い,Yが説明を拒絶し,又は不十分な説明しかし得なかっ
た場合には,法第157条第1項の「時機に後れた」又は「重大な過失」が推定され得ること
を指摘することも期待される。
設問3の課題2の前半部分では,Yが本件新主張をしたとしたら,同項により却下されるこ
とを前提として,Xの立場から,Zによる本件新主張も却下されるべきであるという立論をす
ることが求められる。具体的には,まず,法第50条の承継人は,承継原因発生時の訴訟状態
を承認する義務を負う旨を,一定の理由をもって論証した上で,そこでいう訴訟状態とはいか
なるものであるかを明らかにする必要がある。その上で,同条にいう承継人であるZは訴訟状
態を承認する義務を負い,その結果,法第157条第1項によりY自身がすることができない
本件新主張は,Zもすることができないという結論に至ることが期待される。
設問3の課題2の後半部分では,Yが本件新主張をしたとしたら,同項により却下されるこ
とを前提として,Zの立場から,そうであるとしても,Zによる本件新主張は,却下されない
という立論をすることが求められる。このような立論としては,Zは訴訟状態を承認する義務
を負うものの,承継の前後で,Xによる更新拒絶の可否を判断する上での本件新主張の重要性
が変容している場合や,Yによる訴訟追行がなれ合いと評価し得る場合には,一定の例外が認
められると論じた上で,本件では,そのような例外が認められるとするものと,承継人は,お
よそ訴訟状態を承認する義務を負わないとするものが考えられる。いずれであっても十分な理
由が示されている限り,評価に差をつけることはない。ただし,後者であれば,訴訟状態承認
義務を伴わない訴訟承継制度はいかなる意義を持つものであるか,という点についても検討す
ることが期待される。

参考答案と AI 採点

第1 設問1 一 課題1 1 民訴法246条の趣旨は、①私的自治の訴訟上の反映として、審判対象の設定を原告の意思に委ね、原告の求めない救済を与えない点(原告の意思の尊重)と、②被告…

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出典:法務省「令和3年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。