令和3年 司法試験 論文式 民事訴訟法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第3問〕(配点:100[〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,40:20:40])
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- 民訴法246条の趣旨の摘示(①処分権主義・私的自治に由来する原告の申立てへの拘束=原告意思の尊重、②当事者双方に対する不利益の最大限の予告)6点
設問1(課題1)
- 増額判決に関するXの現実の意思の特定7点
- 増額判決ができない場合にすべき判決(請求棄却判決)の特定と、増額判決との比較によるXの合理的意思の推測9点
- 不利益の最大限の予告の観点からの検討4点・簡潔に
設問1(課題2)
- 減額判決に関する原告意思(現実の意思・合理的意思)の検討5点
- 被告に対する不利益の最大限の予告の観点からの具体的検討と結論7点
設問2
- 訴訟承継制度の趣旨6点
- 法50条にいう「承継」の意味内容の具体化7点
- Zが承継人に当たるか否かのあてはめ6点
設問3(課題1)
- 法157条1項の摘示と各要件の意味内容の明示7点
- 時機に後れ・故意重過失のあてはめ7点
- 訴訟の完結の遅延(以後予想されるXY双方の主張立証活動)6点
- 法174条・167条による説明要求とその効果4点・簡潔に
設問3(課題2前半)
- 訴訟状態承認義務の論証とZによる本件新主張の却下(Xの立論)8点
設問3(課題2後半)
- Zの立場からの反論6点
全体
- 論理的構成・法令用語・表現5点・簡潔に
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,XがYに対して,土地(以下「本件土地」という。)の賃貸借契約(以下「本件契
約」という。)終了に基づいて,Yが本件土地上に所有する建物(以下「本件建物」という。)
の収去と本件土地の明渡しを求めて提起した訴えに係る訴訟(以下「本件訴訟」という。)の
係属中にYがZに対して本件建物を賃貸し,これに基づいて本件建物をZに引き渡したという
事案を題材として,①原告が一定の額の立退料の支払と引換えに建物収去土地明渡請求訴訟を
提起した場合に,原告が申し出た額とは異なる額の立退料の支払との引換給付判決をすること
の許否の検討(設問1),②XがZを引受人とする訴訟引受けの申立てをした場合に,Zが民
事訴訟法(以下「法」という。)第50条にいう承継人に該当するか否かの検討(設問2),③
ZがXによる更新拒絶を争うために,BからAに対して権利金が支払われていた旨を主張する
ことが時機に後れた攻撃防御方法として却下されるかどうかの検討(設問3)をそれぞれ求め
るものである。
まず,設問1の課題1では,Xが,Yに対して1000万円程度の立退料の支払を申し出た
上で,1000万円の立退料の支払と引換えに本件建物を収去して本件土地を明け渡せとの判
決を求め,さらに,第1回口頭弁論期日において,1000万円という額には大きなこだわり
はない旨の陳述をしたという事実関係において,Xの申出額と格段の相違のない範囲を超えて
増額した額の立退料の支払との引換給付判決(以下「増額判決」という。)をすることの許否
の検討が求められている。ここでは,法第246条には,原告の意思の尊重と当事者に対する
不利益の最大限の予告という二つの趣旨が認められるところ,とりわけ前者の観点から,増額
判決の許否につき検討する必要がある。訴状の記載及び第1回口頭弁論期日におけるXの陳述
から,Xがいかなる意思であるかを可能な限り具体的に特定するとともに,Xの現実の意思が
明らかにならない部分は,原告の合理的意思の推測により補うことが期待される。原告の合理
的意思を推測する際には,裁判所が増額判決をし得ないとすれば,どのような判決がされるか
を特定した上で,この両者を比較検討しつつ,通常の原告であればいずれを望むかを検討する
ことが求められる。なお,最高裁判所昭和46年11月25日第一小法廷判決・民集25巻8
号1343頁は,原告が「立退料として300万円もしくはこれと格段の相違のない一定の範
囲内で裁判所の決定する金員を支払う旨の意思を表明し,かつその支払と引き換えに(中略)
店舗の明渡を求めている」との事実関係の下で,申出額よりも多額である500万円の支払と
の引換給付判決をした原判決を是認しているが,本設問では,Xが1000万円又はこれと格
段の相違のない一定の範囲内で裁判所の決定する金員を支払う旨の意思しか表明していないと
評価することができるか否かが問題であるから,この判決に依拠して,直ちに申出額と格段の
相違のない範囲を超えて増額した立退料の支払との引換給付判決をすることができないとする
のみでは,課題1に十分に答えたとはいえない。
次に,設問1の課題2では,課題1と同様の事実関係において,Xの申出額よりも少額の立
退料の支払との引換給付判決をすることの許否の検討が求められている。ここでも,法第24
6条の二つの趣旨からの検討が必要となるところ,原告の意思の尊重という観点から行うべき
作業は,課題1と基本的に同様であり,課題2では,当事者,とりわけ被告に対する不利益の
最大限の予告という観点から詳細な検討をする必要がある。訴状の記載のみならず,第1回口
頭弁論期日における陳述も踏まえた上で,Yに対して不利益の最大限として何が予告されてい
たと評価することができるかについて,Xの申出額と裁判所が正当事由を認める上で必要と考
える立退料額との差の大きさが結論に影響を与えるか否かにも留意しつつ,具体的に検討する
ことが期待される。
設問2では,本件訴訟の係属中に,YがZに対して本件建物を賃貸し,これに基づき本件建
物を引き渡したという事実関係において,Zが法第50条の承継人に該当するか否かの検討が
求められている。ここではまず,訴訟承継制度の趣旨を明らかにすることが要求される。具体
的には,訴訟の係属中に第三者による承継が生じた場合において,従前の訴訟状態を流用して
当該第三者との間で訴訟を進めることが訴訟経済に資するとともに,とりわけ相手方が従前の
既得的地位を維持することができるという意味で公平の確保に資するという点を指摘すること
が期待される。次に,このような訴訟承継制度の趣旨と適合的な形で,同条にいう承継の意味
内容を具体的に明らかにすることが要求される。この点については,学説上,種々の見解が示
されており,いずれを採用するかにより評価に差をつけることは想定していないが,承継の意
味内容を具体的に明らかにすることが要求されている以上,最高裁判所昭和41年3月22日
第三小法廷判決・民集20巻3号484頁において用いられている「紛争の主体たる地位の承
継」というのみでは,十分に課題に答えたことにはならない。この判例に依拠する場合も,そ
こでいう紛争の主体たる地位とはいかなるものか等の点についてより踏み込んだ記述が求めら
れる。最後に,以上のように具体的に明らかにされた承継の意味内容に照らして,Zが承継人
に該当するか否かの検討が要求される。例えば,承継前の訴訟において,被承継人を当事者と
して適切な者としていた法的地位が第三者に移転し,この地位が相手方の当該第三者に対する
訴訟において,当該第三者を当事者として適切な者としている場合に同条にいう承継が認めら
れると考えるのであれば,Yを本件訴訟で被告として適切な者としている法的地位は何か,こ
れはYからZに移転しているか,移転しているとして,このような地位はXのZに対する訴訟
においてZを被告として適切な者としているか,といった点を検討する必要がある。
設問3の課題1は,訴訟を引き受けたZが,弁論準備手続の終結及び人証の取調べの後に,
従前当事者から主張されていなかった「BからAに対して更新料の前払の性質をも含む権利金
が支払われていた」との新主張(以下「本件新主張」という。)をしようとしているという事
実関係において,Xの立場から,仮にYが本件新主張をしたとしたら,時機に後れた攻撃防御
方法として却下されることの論証を求めるものである。法第157条第1項を摘示した上で,
同項の定める各要件の具体的意味内容を明らかにし,それぞれが充足されることを説得的に述
べる必要がある。なお,同項の要件のうち,「訴訟の完結を遅延させること」の検討に際して
は,その後予想されるXY双方の主張立証活動を踏まえることが要求される。YがAの証人尋
問を申請することは問題文から明らかであるが,Xとしても,立退料額にも関わることである
から,BからAへの振込みの趣旨について反論をする機会を欲するであろうことを指摘するこ
とが期待される。また,本件新主張は,弁論準備手続終結後にされるものであるから,法第1
74条及び第167条により,XからYに対して説明要求がされ得ること,このような要求が
された場合には,Yは説明義務を負い,Yが説明を拒絶し,又は不十分な説明しかし得なかっ
た場合には,法第157条第1項の「時機に後れた」又は「重大な過失」が推定され得ること
を指摘することも期待される。
設問3の課題2の前半部分では,Yが本件新主張をしたとしたら,同項により却下されるこ
とを前提として,Xの立場から,Zによる本件新主張も却下されるべきであるという立論をす
ることが求められる。具体的には,まず,法第50条の承継人は,承継原因発生時の訴訟状態
を承認する義務を負う旨を,一定の理由をもって論証した上で,そこでいう訴訟状態とはいか
なるものであるかを明らかにする必要がある。その上で,同条にいう承継人であるZは訴訟状
態を承認する義務を負い,その結果,法第157条第1項によりY自身がすることができない
本件新主張は,Zもすることができないという結論に至ることが期待される。
設問3の課題2の後半部分では,Yが本件新主張をしたとしたら,同項により却下されるこ
とを前提として,Zの立場から,そうであるとしても,Zによる本件新主張は,却下されない
という立論をすることが求められる。このような立論としては,Zは訴訟状態を承認する義務
を負うものの,承継の前後で,Xによる更新拒絶の可否を判断する上での本件新主張の重要性
が変容している場合や,Yによる訴訟追行がなれ合いと評価し得る場合には,一定の例外が認
められると論じた上で,本件では,そのような例外が認められるとするものと,承継人は,お
よそ訴訟状態を承認する義務を負わないとするものが考えられる。いずれであっても十分な理
由が示されている限り,評価に差をつけることはない。ただし,後者であれば,訴訟状態承認
義務を伴わない訴訟承継制度はいかなる意義を持つものであるか,という点についても検討す
ることが期待される。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「令和3年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
