令和3年 司法試験 論文式 刑法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第1問〕(配点:100)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- 甲が丙にサバイバルナイフを示した行為の強盗罪該当性の否定(強盗の実行行為性・故意)10点
- 本件腕時計の占有の帰属(店長Cの占有の有無)と窃盗罪の成否12点
- 甲と丙の窃盗罪の共同正犯の成立(簡潔に)5点・簡潔に
- 乙の正犯性(共謀共同正犯の成否・幇助犯との区別)9点
- 乙の共犯の錯誤(強盗の故意と窃盗の実現)と構成要件の重なり合い11点
- 丁の盗品等保管罪(委託時に盗品性の認識を欠く場合)9点
設問2
- ⑴⑵で論ずべき論点の抽出と両論点の論理関係6点
- 共犯関係の解消(共謀の射程)の判断基準の定立7点
- ⑴ 共犯関係の解消を肯定する当てはめ(心理的・物理的因果性)8点
- ⑵ 共犯関係の解消を否定する反論の当てはめ6点
- ⑴ 同時傷害の特例(刑法207条)の適用を否定する論拠(本事例の特殊性)6点
- ⑵ 同時傷害の特例の適用を肯定する反論4点・簡潔に
全体
- 論理的構成・事案の全体像の把握・論述の明確さ7点
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,渉外性を有する婚姻の事案を素材として,身分関係事件の国際裁判管轄権と婚姻の
無効・取消し及び方式の準拠法に関する基本的理解と応用力を問うものである。
〔設問1〕の〔小問1〕は,BによるAC間の婚姻無効の訴えについて,日本の裁判所の国
際裁判管轄権が認められるかを問うものである。特に人事訴訟法(以下「人訴法」という。)
第3条の2第2号について論ずることが求められている。
まず,Bによる訴えが,人訴法第2条第1号の「婚姻の無効の訴え」として人事訴訟に該当
することを指摘した上で,本件訴えは人訴法第3条の2第2号の規定が定める「身分関係の当
事者の双方に対する訴え」であること,また,「その一方又は双方の住所が日本国内にあると
き」が管轄原因とされていることを示す必要がある。本件で,AC双方の住所は日本国内にあ
ると認定し得ることから,本件訴えについては,人訴法第3条の2第2号の規定に基づき日本
の裁判所が国際裁判管轄権を有することになろう。さらに,人訴法第3条の5の規定が定める
「特別の事情」による訴えの却下に該当する事情が存在しないことについても言及する必要が
あろう。
〔小問2〕は,婚姻の無効・取消しの準拠法に関する理解を問うものである。
まず,婚姻の無効・取消しは,婚姻の成立と表裏一体の関係にあること,また,重婚禁止の
要件のように実質的成立要件の欠缺が問題となるときは,「婚姻の成立」の問題として法律関
係の性質決定がされ,法の適用に関する通則法(以下「通則法」という。)第24条第1項の
規定によって準拠法が決定されること及び配分的適用と呼ばれる適用方法について示す必要が
ある。Aの本国法は甲国法であり,日本国籍及び甲国籍の重国籍者であるCの本国法は,通則
法38条1項ただし書の規定に基づき日本法であるとされることになろう。
次に,通則法第24条第1項の規定の解釈として,通説は,いわゆる一方的要件か双方的要
件かの判断を国際私法の次元で行い,重婚禁止を双方的要件と捉えている。それに対し,この
問題を準拠実質法の解釈問題と捉え,性質決定の段階で一方的要件か双方的要件かを区別すべ
きではないとする見解も有力に主張されている。婚姻の一方的要件と双方的要件とを国際私法
又は実質法のいずれの次元の問題と捉えるにしても,重婚禁止の要件は一方的要件か双方的要
件かについて,理由を示した上で,言及することが求められている。通説の立場からは,Aの
本国法たる甲国民法の重婚禁止の要件は,その相手方であるCも充足する必要があり,Cの本
国法である日本民法の重婚禁止の要件は,その相手方であるAも充足する必要があると解され
ることから,AC間の婚姻は実質的成立要件を欠いていると判断することとなろう。
さらに,婚姻の実質的成立要件を欠く場合に生じる効果についても検討することを要する。
AC間の婚姻については,各当事者の本国法による婚姻の実質的成立要件が共に充足されず,
また,その効果が無効と取消しで異なっていることから,各準拠法が異なる効果を定める場合
の処理についても検討しなければならない。通則法第24条第1項の趣旨にのっとった上で解
釈・適用を行い,結論を導くことが求められている。
〔小問3〕は,Bによる婚姻無効の請求を認める判決が確定し,AC間の婚姻が無効となっ
た場合のその婚姻から生まれた子の嫡出性の準拠法について問うものである。通説によれば,
婚姻の無効後の嫡出である子の法的地位は,嫡出親子関係の成立の問題と性質決定され,通則
法第28条第1項の規定に基づき準拠法が決定される(通則法第28条適用説又は準用説)。
通則法第28条第1項の選択的連結の趣旨に則した上で解釈・適用を行い,結論が示されなけ
ればならない。
〔設問2〕は,婚姻の方式の準拠法及び通則法第24条第3項ただし書のいわゆる日本人条
項の理解を問うものである。
まず,本件は,「婚姻の方式」の問題として性質決定されることに言及する必要がある。そ
の上で,Cは国籍法第14条の規定に基づき日本国籍を選択しており,本件は,通則法第24
条第3項ただし書の規定が定める「日本において婚姻が挙行された場合において,当事者の一
方が日本人であるとき」に当たることから,規定の趣旨に沿った解釈・適用を行い,同項本文
の規定の適用が排除され,同条第2項の規定に基づき,婚姻挙行地法である日本法が準拠法と
して指定されることを示すことが求められている。本件のような甲国民法の規定に従った日本
での領事婚は,日本民法が定める戸籍法に基づく婚姻の届出という方式要件を満たしておらず,
本件婚姻は日本において有効に成立しないとの結論が導き出されることになろう。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「令和3年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
