令和3年 司法試験 論文式 民法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第1問〕(配点:100〔〔設問1〕,〔設問2〕及び〔設問3〕の配点は,35:25:40〕)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- 請求1の法的性質(所有権に基づく返還請求権)とCの㋐の主張の位置づけ(所有権喪失の抗弁/占有権原の抗弁)5点
- Dによる即時取得(民法192条)の要件の抽出と事実への当てはめ7点
- ㋑の主張(指図による占有移転と「占有を始めた」要件)の当否8点
- ㋒の主張(民法193条による盗品の回復請求)の当否6点
- 請求2(使用利益)— 不当利得構成と193条の回復請求までの所有権(使用収益権限)の帰属7点
設問2(1)
- 契約①におけるEの債務の内容と契約の性質決定8点
設問2(2)
- Aによる解除の法的性質(任意解除権)と債務不履行解除の可否6点
- 請求3(令和3年8月分の月額報酬60万円)の可否5点
- 請求4(9月・10月分120万円の損害賠償)の可否と損害の範囲5点
設問3(1)
- HのFに対する請求の請求原因の摘示3点・簡潔に
- 消滅時効の援用と主債務者の承認による時効更新の保証人への効力9点
- 主債務者の相殺権による保証人の履行拒絶(457条3項)7点
- 時効消滅した債権を自働債権とする相殺の可否(508条・最判平25・2・28)8点
設問3(2)
- Fの主債務者Aに対する求償の可否と額6点
- FのGに対する共同保証人間の求償の可否と額5点
全体
- 論理的一貫性・構成・表現5点
出題の趣旨(法務省公表)
1 設問1について
⑴ 設問1は,民法第192条及び第193条に関する基本知識を確認する趣旨の出題であり,
これらの規定がどのような関係に立つか,指図による占有移転による即時取得は認められる
か,盗品・遺失物につき被害者が回復請求をするまでの使用利益が誰に帰属するかなどにつ
いて理解を問うものである。
⑵ 請求1については,Aが占有者Cに対して甲の所有権に基づく返還請求権を行使するもの
であることを示す必要がある。これに対し,Cは,下線部㋐において,Dが甲の所有権を即
時取得したことにより,Aが所有権を喪失したとの抗弁を主張していると考えられ,この抗
弁に言及することが求められる。占有権原を有するとの抗弁を主張していると考える余地も
あるが,仮にそのような主張をしようとする場合には,使用貸主が所有権を有していること
が前提とされなければならず,また,使用借権は第三者対抗力を欠くから,結局は,Dが甲
を即時取得し,それによってAが甲の所有権を喪失したことに言及する必要がある。
Dの即時取得が認められるかを解答するに当たっては,即時取得の要件について,本問に
おける具体的な事実に当てはめて検討することが必要になる。その際,要件の一部について
は推定が認められていること,善意無過失の意義などについても触れておくことが望ましい。
本問においては「占有を始めた」という要件がポイントとなり,Dは指図による占有移転に
よってその間接占有を承継取得したことを指摘する必要がある。
下線部㋑におけるAの反論は,指図による占有移転によっては即時取得に必要な「占有を
始めた」という要件は満たされないと主張するものであり,観念的な占有の移転によっては
「占有を始めた」とはいえないことを指摘する趣旨のものであることを示す必要がある。そ
の上で,民法第192条の「占有を始めた」という要件が同法第178条の「引渡し」の要
件と区別されることから,後者を満たしても前者を満たすとは当然にはいえないことも指摘
されていることが望ましい。
次に下線部㋒におけるAの反論は,甲が盗品であることから,たとえ民法第192条の要
件が満たされるとしても,同法第193条に基づき,Aは甲の回復を求めることができると
いう趣旨を述べるものであると考えられる。そこで,甲が盗品であること,Cが甲の「占有
者」であること,Aによる回復請求は盗難の日から2年を経過していないことを指摘する必
要がある。その際,同条における「占有者」を同法第192条の「占有を始めた者」と同義
に解すべき理由がないことも示されていることが望ましい。もっとも,この点に関しては,
同法第193条と同法第192条の「占有者」を同義に解したうえで,Dが「占有者」に当
たり,Dとの使用貸借関係に基づき甲を占有するCはDと別個独自の地位を主張して甲の回
復請求を拒むことはできないとの説明や,盗難時から2年間は同条による即時取得がそもそ
も生じ得ないとして,同法第193条の要件のうち盗品であることと期間以外のものが充足
されているかどうかの検討を経ることなく,Aは所有権に基づき甲の返還請求権を行使する
ことができ,Aとの関係で占有権原を有しないCはこれを拒むことができないという説明も
考えられる。
請求1の当否を検討するに当たっては,下線部㋐から㋒までの各主張の趣旨を正確に理解
した上でそれぞれの当否を検討する必要がある。まず,下線部㋑のAの反論に関しては,そ
の当否についていずれの立場に立つにしても,民法第192条の「占有を始めた」とは,占
有者が「一般外観上従来の占有状態に変更を生ずるがごとき占有を取得すること」を意味す
るものと解する判例準則(最判昭和35・2・11民集14巻2号168頁)が確立してい
ることを踏まえ,下線部㋑におけるAの反論の内容がこの判例準則の理解として適切である
かどうかについて理由を付して述べることが求められる。そして,Dによる即時取得の成否
について検討した上で,民法第193条の適用の可否について検討し,CはAからの甲の返
還請求を拒絶することができないという結論を述べる必要がある。
⑶ 請求2では,Cが甲の占有を開始した令和2年5月1日から甲をAに返還するまでの間の
使用利益が誰に帰属するかが問われている。盗品・遺失物の占有者が占有の開始時から被害
者又は遺失者に目的物を返還するまでの間の使用利益の帰属について,民法第194条が適
用される事例においては,所有権帰属の観点ではなく,同条の趣旨に基づき,代価弁償の提
供があるまでの間の使用収益権が占有者に認められている(最判平成12・6・27民集5
4巻5号1737頁)。しかし,本問は同条の適用事例ではなく,同法第193条が同法第
192条とどのような関係に立ち,どのような効果を定めているのかが別途問題となり得る。
まず,Aは,Aに甲の所有権が帰属するという前提に立ち,使用貸借契約に基づく占有権
原を主張することができないCに対し,不当利得返還請求権に基づいて使用利益の返還を請
求していることを示す必要がある。
そこで,民法第193条の趣旨に鑑み,盗難又は遺失から回復請求がされるまでの間の所
有権が原権利者と占有者のいずれに帰属するかが問題になり,この点について理由を付して
その結論を述べる必要がある。判例は,同条の効果について,占有者がいったんその物につ
き即時取得した所有権その他の本権を回復するのではなく,占有者が盗難又は遺失の時から
2年以内に被害者又は遺失主より回復の請求を受けない場合にはじめてその物の上に行使す
る権利を取得する趣旨を定めたものであると解している(大判大正10・7・8民録27輯
1373頁)。原所有者帰属説によると,CはBからDへの譲渡がされた後も無権原でAの
所有物である甲を占有し使用していたこととなり,使用利益の返還に関しては同法第189
条及び第190条の定めに従うべきこととなる。Cが善意であれば同法第189条第1項に
基づき甲の果実収取権を有し,少なくとも回復請求をされるまでの使用利益についても返還
する必要がなく,Aは,令和2年5月1日以降回復請求がされるまでの間の甲の使用料相当
額の支払をCに求めることができない。もっとも,本権に基づく訴えに敗訴し,悪意占有者
とみなされる場合,Cは訴え提起時以降甲を返還するまでの使用料相当額の支払義務を負う。
なお,甲を直接占有するCは「占有者」に当たり,間接占有者としてBがかつて存在してい
た,あるいは現にDが存在するとしても,上記の結論に影響を及ぼさないことも併せて指摘
されることが望ましい。
占有者帰属説は,回復請求の効果が遡及するという立場と将来に向かって効力を生ずると
いう立場に分かれ得るが,効果が遡及するという立場からは,甲の所有権はAの下にとどま
っていたことになるため,AC間の法律関係は原所有者帰属説と同様に処理される。他方,
将来に向かって効力を生ずるという立場を採る場合には,占有者に使用収益権能が帰属する
以上,占有者の主観的態様を問わず,およそ原権利者がその間の使用利益相当額の支払請求
をすることができないとする結論が比較的に自然に導かれるが,目的物の所有権の帰属と使
用利益の帰属が分離して規律されているとする見方もあり得ないではない。いずれの立場で
あっても,DがBから甲を譲り受ける令和2年5月15日以前の使用料相当額にかかる請求
に関しては,Cは無権原占有であるという評価を免れないから,この間の使用利益の返還に
ついては別途検討する必要がある。
2 設問2について
⑴ 設問2は,有償の役務提供契約が中途で終了した場合の法律関係を,特にその場合の報酬
及び損害賠償について問うものである。当該役務提供契約の性質決定に関して,当該契約に
おける債務の内容及びその特徴を明らかにし,民法の規定する役務提供型の契約類型の特質
を踏まえて,当該契約の性質を決定することができるか,また,それを前提として,その中
途終了の場合の報酬や損害賠償に関連する民法の規定の構造を理解しているか,契約類型に
伴う異同について理解しているかを問うものである。
⑵ AE間の契約①は有償の役務提供契約であるところ,雇用(労働契約)は使用者との間の
指揮命令関係の下での役務提供,請負は仕事の完成という結果の保証,委任は結果保証を伴
わない事務の委託と裁量ある他人の事務の処理をもって,それぞれの特質と解されている。
AE間には,使用者・労働者の指揮命令関係は認められず,EはAから独立して役務を提供
するものであるから,契約①の性質としてあり得るのは,請負,委任(法律行為でないこと
から準委任(民法第656条)),またはいずれでもない非典型契約(無名契約)である。
契約①の性質をいずれと決定するかに当たっては,それぞれの契約類型の特質とともに,
その特質に対応した契約①におけるEの役務提供の内容を明らかにすることが求められる。
すなわち,請負の場合には,何をもって仕事の完成・結果保証といえるのか,委任の場合に
は,何をもってAの事務の委託あるいは裁量ある事務の処理といえるのか,また,無名契約
の場合は典型契約の類型に該当しないという判断がどのように基礎付けられるのかを,Eの
債務内容に照らして明らかにする必要がある。
契約①の性質の決定に当たっては,月額報酬と成果報酬が組み合わされているという契約
①における報酬の定め方の捉え方も手がかりとなるため,契約①におけるEの債務内容の確
定とその特質の抽出,契約①の性質決定においては,報酬の定め方を通じて,これらの報酬
が何に対して支払われるものかについても考慮することが望ましい。
⑶ Aによる契約①の解除の性質は,任意解除権の行使によるものであると考えられる。請負,
委任については,民法に任意解除権に関する規定が設けられている。無名契約であるときは,
そのルール自体を構築していく必要があるが,Aのための役務提供であることなどに鑑み,
請負や委任等の規定を手掛かりとして,少なくとも,Aからの解除は認められると論じるこ
とになろう。それぞれの立場から,根拠条文の要件を踏まえ,【事実】に即して当てはめる
必要がある。
Aの解除を債務不履行解除とみる余地がないわけではないが,Eが提供する役務の性質上,
Eには相当の裁量が認められるものと解されるので,Aによる改善要求が抽象的なものにと
どまっていることも考慮すると,Eによる講座の運営がその裁量を逸脱したものとして債務
不履行に当たると評価することは,結論的には困難であると考えられる。
⑷ AE間の報酬の取決めは,Eによる本件講座の提供に対して月々の報酬と,Aの従業員で
ある受講者の乙検定の合格者数に応じた成果の報酬(成功報酬)という2本立てでされてい
る。Eの請求3は,Aによる契約①の解除に伴い,講座提供がされた8月分について未払報
酬の支払を求めるものである。
報酬については,準委任の場合も請負の場合も役務提供が先履行であり後払いが原則であ
る(民法第648条第2項,第633条)。約定の月額報酬については,契約①を準委任と
みる考え方においては,民法第648条第2項ただし書により準用される同法第624条第
2項により,期間経過後に報酬を請求することができる。もっとも,対応する期間に履行が
されていることが前提であるから,Eの役務提供が契約に適合した債務の履行であったかが
問題となり,債務不履行の該当性を判断することになる。請負の場合は,民法第633条た
だし書・第624条第1項により,約定の役務提供が終わった後でなければ報酬を請求する
ことができない。仕事完成前の解除がされた場合には,同法第634条により,既にした役
務提供によってAが利益を受けているかどうかが問題となる。5か月の役務提供をもって仕
事の完成とみるか,月々の講義・役務提供が5か月分用意されるものとみるかによって中途
解約であるかどうかが異なり,報酬の根拠条文が異なるため,Eの債務内容に即して根拠条
文及び請求の可否を示す必要がある。その前提として,債務の履行が必要であることは準委
任の場合と同様である。
⑸ 請求4の120万円の支払請求は,役務提供がされていない9月分,10月分についてそ
の月額報酬相当分を損害賠償として請求するものと考えられる。また,通学講座における代
替講師のこの間の報酬40万円の支払は,Eが9月・10月の履行の準備のために支出を余
儀なくされたものであり,約定どおりの報酬が得られたならばそれに織り込まれる性格の支
出である。
中途解除の場合の損害賠償については,任意解除の場合,契約①が準委任であれば民法第
651条第2項によることになる。したがって,Eに不利な時期の解除であるとき,契約①
が受任者Eの利益をも目的とするものであるときのいずれかの場合には,AはEに対しその
損害を賠償しなければならない。設問では,Eは,期間全体にわたり他の講座を断り(他の
収入機会の喪失),また,代替要員の手配(準備費用投下)などを行っており,「不利な時期」
の解除に該当する余地がある。そのため,同項第1号にいう「不利な時期」とは何を指すの
かを明らかにしつつ,本件のそれらへの該当性を判断し,また,それぞれの場合の損害賠償
の内容について検討する必要がある。損害賠償を認める場合,まず,具体的に何が損害賠償
の範囲に含まれるかを示す必要がある。損害賠償の範囲は不利な時期に解除したことによる
損害に限られるというのが通説であり,そのように解釈される理由についても示すことが望
ましい。また,委任契約が解除されなければ受任者が得たであろう利益から受任者が債務を
免れることによって得た利益を控除する必要がある。
同項第2号の「受任者の利益」については,報酬を得るだけでは該当しないことが明文化
されている。設問では,それ以外に受任者の利益として評価できる事実は見受けられない。
任意解除の場合のEの損害賠償請求については,これらについても言及することが望ましい。
準委任の場合には,損害賠償の成否は「やむを得ない事由」の存否に左右されるため(民
法第651条第2項柱書ただし書),それについて検討する必要がある。
請負の場合は,完成前に解除されたと捉えるのであれば民法第641条により損害賠償が
必要であり,その場合の損害賠償は履行利益賠償となる。したがって,Eは,9月分,10
月分について,報酬から節約できた費用を差し引いた分を請求でき,一方,10月分につい
て他所の講座を引き受けたことで得た報酬分は,損益相殺によって差し引くことになる。
無名契約の場合には,請負と委任のいずれに引き付けて考えるかによる。
3 設問3について
⑴ 設問3は,連帯保証ないし共同保証に関する条文と判例を正確に理解し,これを事例の解
決のために適切に用いることができるかを問うものである。
⑵ 小問⑴は,保証人が債権者からの請求を拒絶することのできる事由について問うものであ
る。
HはFに対して保証債務の履行を請求しているが,本問を検討する上では,まずHのFに
対する500万円の支払請求についての請求原因を明らかにしておくことが求められる。H
のFに対する請求の根拠(請求原因)は,AがHとの間で諾成的消費貸借契約である契約②
を締結し,借入金500万円の交付を受けたこと,Fは,Hとの間で本件債務を連帯保証す
る旨の契約③を書面により締結していることである。
Fは,Hによる保証債務の履行請求に対して,まず,保証債務の消滅時効を援用し,債務
の全額の支払を拒むことが考えられる。また,Fとしては主債務の時効消滅を援用すること
もでき(民法第145条括弧書),主債務が消滅すれば,付従性によって保証債務も消滅す
る。解答に当たっては,関連条文を示しながら,事実に即して消滅時効を主張することの可
能性を指摘することが求められる。
本問では,Aが令和10年6月20日に弁済の猶予を求める書面を送付して債務を承認し
ており,これによって時効は更新されている(民法第152条第1項)。本問の場合,令和
15年5月10日の時点では,それから5年は経過していないので,消滅時効は完成してい
ないことになる。Fが自身の負う保証債務の消滅時効を援用しようとしても,主債務者によ
る時効の更新は保証人に対してもその効力を生ずるものとされているため,これは認められ
ない。また,Fが主債務の消滅時効を主張しようとする場合も,主債務について消滅時効の
更新がされており,保証人はこれを否定することができないから,やはり認められない。F
がどちらの債務の消滅時効を援用するか,ということと,Aの債務承認による時効更新の影
響が同債務にどのように及ぶのか,ということとが矛盾なく説明されている必要がある。こ
こでは,主債務者の債務承認による時効更新の保証債務に対する影響関係が理解できている
かが問われることとなる。
次に,AはHに対して絵画丙の売買契約による100万円の売買代金債権を有しており,
Aが本件債務についてこの売買代金債権を自働債権とする相殺権を有していることを理由と
して,保証人であるFは,100万円分の支払を拒むことが考えられる(民法第457条第
3項)。ここでは,主債務者の相殺権をもってする履行拒絶の可能性とその根拠条文が摘示
されている必要がある。
もっとも,AがHに対して有する売買代金債権の弁済期は令和4年8月31日であり,令
和15年5月10日の時点ではそれから11年が経過しているため,FがAの相殺権を理由
として履行を拒絶した場合,Hとしては,自働債権が時効消滅しており,Aの相殺(ひいて
は,そのことに基づくFの履行拒絶)は認められない,と主張することが考えられる。時効
によって消滅した債権を自働債権とする相殺をするためには,自働債権の消滅時効期間経過
以前に受働債権と相殺適状にあったことを要し,そのためには受働債権の弁済期が現実に到
来していたことを要するとした判例があり(最判平成25・2・28民集67巻2号343
頁),解答に当たっては,この判例を正しく理解している必要がある。単に判例の結論を知
っていてそれを問題の事例に当てはめる,というだけでなく,なぜそのような解釈が採られ
るべきなのか,そして判例と同じ結論が本問の事例においても妥当するのかを説明すること
が求められる。
⑶ 小問⑵は,連帯保証人と主債務者,共同連帯保証人との関係について,弁済をした連帯保
証人がすることのできる求償の範囲を問うものである。
連帯保証債務の弁済をしたFは,主債務者Aに対して求償をすることができる。FがAの
委託を受けない保証人であるため,求償の根拠は,民法第462条第1項ないし事務管理に
基づく費用償還請求(同法第702条第1項)に求められる。求償が認められる範囲につい
ては,同法第462条第1項が準用する同法第459条の2第1項により,主債務者が弁済
の当時利益を受けた限度となる。このことから,FはAに対して弁済以後の法定利息や費用
等までは請求できないことを示したうえで,求償額が300万円となることを説明すること
が求められる。
共同保証人のうちの1人が自己の負担部分を超える額を弁済したときは,他の共同保証人
に対して求償をすることができる(民法第465条第1項)。共同保証人間の求償の場合は,
弁済額が負担部分を超えていなくても負担部分の割合に応じて認められるという連帯債務者
間の求償とは要件が異なり,負担部分を超える額を弁済したことが必要である。本問におい
ては,FがHにした300万円の弁済が自己の負担部分を超えるものであるならば,FはG
に対してその分の求償をすることができる。
そこで,共同保証人の内部的負担割合は特約等がなければ各自平等となること,Fが債権
者から一部免除を得ていることを踏まえて,本問における具体的な事実関係に当てはめてF
の負担部分を算出し,その上で求償の可否及び求償権の額を解答することが求められる。F
がHにした免除がGをも免除する趣旨のものと解すべき事情が認められない限り,当該免除
があってもFとGの内部的負担部分は各250万円のままであり,Fとしては,弁済をした
300万円から250万円を差し引いた50万円をGに対して求償できることとなる。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「令和3年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
