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令和2年 司法試験 論文式 民事訴訟法 出題の趣旨・論点・解説

令2司法 民事系科目第3問(民事訴訟法)民事訴訟法

問題

〔第3問〕(配点:100[〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,40:20:40])

次の文章を読んで,後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。 なお,解答に当たっては,文中において特定されている日時にかかわらず,試験時に施行されて いる法令に基づいて答えなさい。 【事 例】 1.Xは,旧友Aとの間で,Xが所有する賃貸用建物(以下「本件建物」という。)について,賃 料月額20万円,期間の定めなしとの約定でAに賃貸するとの賃貸借契約(以下「本件契約」 という。)を締結し,Aに対し,本件契約に基づき,本件建物を引き渡した。 2.Aは,本件建物で書店を経営し,Aの子であるY1及びY2(以下「Yら」という。)が書店 を手伝っていた。 3.Aは,5月に死亡した。Aの配偶者は,既に死亡しており,Aの相続人は,Yらのみである。 Yらは,まだAの遺産についての遺産分割をしていない。 4.Xは,7月末,Yらに対し,「XとAは,今年の4月1日,本件契約について9月30日をも って終了するとの解約の合意をした。Aは,その際,Xに対し,9月30日までに本件建物を 明け渡すと言った。」と述べた上で,本件建物の明渡しの具体的な時期を問い合わせた。 5.Y1とY2は,8月初め頃に話合いをした。この話合いの場において,Y1は,「Aから本件 契約の解約の合意をしたとは聞いていない。Y1とY2は,相続によってAから本件建物の賃 借権を承継し,書店の経営も引き継いでいる。Y1は,Xに対し,Aの死亡後,Y1が本件契 約に基づく賃料の請求先となったことを知らせたが,Xは,本件契約が終了するとは言わずに, これを了承した。また,本件契約に基づく賃料は,現在まで滞りなく支払ってきた。」とし,本 件建物を明け渡す必要はないと述べた。これに対し,Y2は,「本件建物を明け渡し,敷金を返 還してもらった方がよい。Y2は,Aの生前,Aから,Xに敷金を差し入れてあると聞いてい た。実際に,本件契約を締結した頃の日付で120万円を受領した旨のX名義の受領書がAの 遺品の中にあった。この受領書が敷金の差し入れの証拠になる。」と述べた。 6.Y2が8月中旬に,Xに対して敷金が全額返還されるか問い合わせたところ,Xは,Y2に 対し,「8月分まで賃料の滞納はなく,本件建物をきれいに使ってくれて修繕の必要もない。し かし,Aから本件契約の締結時に受け取ったのは礼金であって,返還の必要のある敷金ではな い。」と述べた。 7.そこで,Y2は,その翌日,かねてより相談していた弁護士Lに,上記1から6までの経緯 を説明した上で,Xから敷金を返還してもらうことができるかどうかを検討してもらうことと した。 以下は,弁護士Lと司法修習生Pとの間の会話である。 L:Y2は本件建物を明け渡して敷金を返還してもらうことを希望しています。Y1が本件契約の 解約の合意を争っているため,本件建物の明渡しの見通しはついていませんが,Xに対し敷金返 還を請求する訴えを提起した場合に,本件建物の明渡しをしないままの状態であっても,本案判 決を得ることはできるでしょうか。ここでは,敷金返還請求権は,賃貸借終了後,不動産が明け 渡されたときに,敷金によって担保されるそれまでに生じた一切の債務の額を控除した残額につ き発生するものと考えましょう。 P:そうすると,本件建物の明渡し前には敷金返還請求権は発生しないので,将来給付の訴えの適 法性を検討せよということですね。敷金返還請求権が本件建物の明渡しを条件とする条件付請 求権ということであれば,将来給付の訴えの適法性が認められるのではないでしょうか。 L:条件付請求権であっても,将来給付の訴えの適法性が認められるとは限りませんよ。ここでは, Y2の法定相続分が2分の1であることを考慮し,60万円のみの請求をすることとして,「X は,Yらから本件建物の明渡しを受けたときは,Y2に対し,60万円を支払え。」との請求の 趣旨による将来給付の訴えの適法性につき検討してもらいましょう。これを「課題1」としま す。検討の際には,本件の具体的状況を踏まえた上で,敷金返還請求権の特質のほか,当事者 間の衡平の観点から,適法性が認められた場合の被告の負担を考慮する必要があります。ただ し,応訴の負担は考慮する必要がありません。 P:はい,分かりました。ところで,もし,将来給付の訴えの適法性が認められないという結論に なるとすると,敷金に関する確認の訴えを提起することになるのでしょうか。 L:良い機会ですから,将来給付の訴えが不適法とされる場合に備え,敷金に関する確認の訴えの 利益についても考えましょう。Y2の立場から,どのような訴えであれば確認の利益が認めら れるかを検討してください。その際には,既判力により確定する必要性を考慮して,なぜその 訴えであれば確認の利益が認められるのかについて説明してください。これを「課題2」とし ます。 〔設問1〕 あなたが司法修習生Pであるとして,Lから与えられた課題1及び課題2について答えなさい。 【事 例(続き)】 8.Xは,Yらが9月30日を経過しても本件建物の明渡しをしないことから,Yらを被告とし て,本件契約の終了に基づく本件建物の明渡しを求める訴えを提起した(以下,この訴えに係 る訴訟を「本件訴訟」という。)。Xは,訴状において,Yらの被相続人であり,本件契約の相 手方当事者であったAとの間で本件契約の解約の合意がされた旨主張している。 9.本件訴訟は,裁判官Jが単独で審理及び裁判をすることとなった。本件訴訟の第1回口頭弁 論期日において,Xは,訴状を陳述した。これに対し,Yらはいずれも,請求を棄却するとの 判決を求め,本件契約の解約の合意について,Y1は否認し,Y2は知らないとした。 10.その後に指定された和解期日において,裁判官Jが他の当事者を退席させた上でX,Y1, Y2を順次個別に面接する方式により,和解協議が実施された。Y2は,その際,裁判官Jに 対し,「Xは,Aが差し入れた敷金を礼金であるとして返還しようとしないが,敷金を返還して くれるのであれば,Y2は,Xに本件建物を明け渡してもよい。Y2としては,無理に書店の 経営を続けなくともよいのではないかと思っている。今から思えば,Aも,日頃から店の経営 不振に悩んでおり,Xに相談しているという話もしていた。本件建物を明け渡して敷金が戻る ような和解が成立することを希望している。」と述べた。しかし,Y1が飽くまで本件契約の継 続を希望したため,和解は成立しなかった。 以下は,裁判官Jと司法修習生Qとの間の会話である。 J:今日は和解成立には至りませんでした。和解手続における当事者の発言内容をその後の判決に 影響させることがないように,注意する必要があります。 Q:それでは,先ほどの和解期日におけるY2の発言から,XA間の解約の合意は存在したという 心証を得て,それに基づいて判決をすることはできないのですね。 J:もちろん許されません。それを理解してもらうために,まず,民事訴訟法においては,裁判所 は何を心証形成の資料とすることができるとされているのかを示した上で,和解期日における Y2の発言がそれに当たらないことを説明してください。また,和解手続における当事者の発 言内容を心証形成の資料とすることができるとすると,どのような問題が生ずるかについて, 理由を示して検討してください。これらを「課題」とします。 〔設問2〕 あなたが司法修習生Qであるとして,Jから与えられた課題について答えなさい。 【事 例(続き)】 11.本件訴訟の第2回口頭弁論期日において,Xは,Aが生前にXとの間で本件契約の解約の合 意をしていたことを裏付けるため,「Xは,4月3日,本件建物の内外を検分し,Aに対して, 『大変きれいに使ってくれていますね。これなら修繕の必要はない。』と述べるなど,Aとの間 で本件建物の明渡しの準備について話をした。Y2は,書店の手伝いをしていたことから,そ の際,XとAとの会話を聞いたはずである。」と主張した。これに対し,Y2は,「4月3日に Xが主張するXとAの会話を聞いた記憶はない。Aが作成していた業務日誌を見ても,Xとの 間で本件契約の解約や本件建物の明渡しを前提とした会話があったことは記載されていない。」 と主張し,Xが主張するような会話がなかったことを立証するため,Aが作成した同日の業務 日誌(以下「本件日誌」という。)を提出して書証の申出をした。裁判所は,同期日において, 本件日誌を取り調べた。 12.本件訴訟の第3回口頭弁論期日が指定された後,X,Y1及びY2は,訴訟外で解決に向け た協議をした。その結果,XとY1の間では協議が整わなかったが,XとY2の間では,解決 に向けた合意がされ,XがY2に対する訴えを取り下げることとなった。そこで,Xは,裁判 所に対し,Y2に対する訴えの取下書を提出し,それを受け,Y2は,裁判所に対し,Xの訴 えの取下げに同意する旨の書面を提出した。 以下は,裁判官Jと司法修習生Rとの間の会話である。 J:XがY2に対する訴えの取下書を提出し,Y2もその同意書を提出しています。XはY2に対 する訴えのみを取り下げることができるのでしょうか。 R:それを考えるに当たっては,まず,本件訴訟が共同訴訟のどの類型に当たるのかを考慮する必 要があります。 J:そうですね。それでは,その結果を踏まえて,XはY2に対する訴えのみを取り下げることが できるのかを検討してください。これを「課題1」とします。 また,仮にXがY2に対する訴えのみを取り下げることができるとして,残されたXとY1 のみの訴訟において本案判決がされる場合に,第2回口頭弁論期日にY2が提出した本件日誌 の取調べの結果を事実認定に用いてよいかを,共同訴訟における証拠調べの効果及びそれが訴 えの取下げによって影響を受けるかどうかを踏まえて検討してください。これを「課題2」と します。 〔設問3〕 あなたが司法修習生Rであるとして,Jから与えられた課題1及び課題2について答えなさい。

論点の一覧

出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。

設問1

  • 課題1:敷金返還請求権の法的性質の把握と将来給付の訴えの位置付け(法135条の指摘)6点
  • 課題1:将来給付の訴えの適法性の判断枠組みの定立(請求適格と権利保護の利益の区別/蓋然性と必要性の総合判断、判例の3要件の採否の意識)7点
  • 課題1:本件事案へのあてはめ(敷金返還請求権の特質・被告Xの請求異議の負担・結論)8点
  • 課題2:確認の利益の一般的指標の提示4点・簡潔に
  • 課題2:確認対象の適切性(現在の権利・法律関係と位置付ける立場/将来の権利・法律関係と位置付ける立場)とY2の立場からの具体的設定7点
  • 課題2:即時確定の必要性・方法選択の適切性のあてはめ6点

設問2

  • 民事訴訟法247条の指摘と心証形成資料(口頭弁論の全趣旨・証拠調べの結果)の意義8点
  • 和解期日におけるY2の発言が心証形成資料に当たらないことのあてはめ5点
  • 和解手続における発言を心証形成資料とできるとした場合の問題点6点

設問3

  • 課題1:本件訴訟の共同訴訟類型の判定(訴訟共同の必要の有無)8点
  • 課題1:Y2に対する訴えのみの取下げの可否(39条・261条1項/40条)7点
  • 課題2:共同訴訟における証拠調べの効果(証拠共通の原則)の意義と根拠8点
  • 課題2:訴えの取下げの効果(法262条1項)の指摘と問題意識の提示6点
  • 課題2:本件日誌の証拠調べの結果を事実認定に用いてよいかの結論と論証9点

全体

  • 論理的構成・文章表現5点

出題の趣旨(法務省公表)

本問は,XとAとの建物(以下「本件建物」という。)の賃貸借(以下この賃貸借に係る契
約を「本件契約」という。)の継続中,賃借人であるAが死亡し,Y1及びY2(以下「Yら」
という。)がAを相続したところ,XがYらに対してAとの間で本件契約の解約の合意をした
と主張している事案を題材として,①敷金に関する将来給付の訴えの適法性及び確認の訴えに
おける確認の利益の検討(設問1),②和解手続における当事者の発言の内容を裁判官が心証
形成の資料とすることができない理由の検討(設問2),③本問の共同訴訟(以下「本件訴訟」
という。)において共同被告の一方に対する訴えを取り下げることの可否と,仮にそれができ
るとする場合に取下げにより当事者ではなくなった者が取下げの前に提出して取り調べられた
証拠の証拠調べの結果を事実認定に用いることができるかどうかの検討(設問3)をそれぞれ
求めるものである。
まず,設問1の課題1では,Xが本件契約の締結時にAから交付された120万円について
敷金であることを否定し,Y1がXとAとの間の本件契約の解約の合意を争って本件建物の明
渡しを拒んでいるという事実関係の下において,敷金の返還を求めるY2の立場から,本件建
物の明渡しをしないままの状態で敷金の返還を求める将来給付の訴えの適法性についての検討
が求められている。ここでは,敷金返還請求権が目的物の明渡しを条件として,それまでに生
じた敷金の被担保債権一切を控除した残額につき発生するため,本件建物の明渡し前には請求
権の成否及び額が明確に定まらないこと,したがって本件訴訟はその事実審の口頭弁論終結時
(基準時)には請求権の成否及び額が具体化しない将来給付の訴えであることを踏まえ,民事
訴訟法(以下「法」という。)第135条の将来給付の訴えの利益に言及した上で,将来給付
の訴えの適法性につき検討する必要がある。基準時までにその成否及び額が定まらない請求権
を行使する給付の訴えの適法性については,判断の枠組みとそのような権利の性質の位置付け
に関していくつかの考え方が成り立ち得る。いわゆる権利保護の資格(請求の適格)と権利保
護の利益とを分けて前者の問題として論ずる考え方,将来の権利発生の蓋然性と現在これを行
使する必要性とを総合的に判断するとの観点から論ずる考え方などが考えられるが,いずれに
せよ,設問において敷金返還請求権の特質のほか,当事者間の衡平の観点から将来給付の適法
性が認められた場合の被告の負担を考慮することが求められているとおり,将来における権利
発生の蓋然性のみならず,将来の強制執行に対する防御のために請求異議の訴えを提起しなけ
ればならなくなるかもしれない被告の負担につき論ずる必要がある。その際には,判例(最高
裁判所昭和56年12月16日大法廷判決・民集35巻10号1369頁,最高裁判所昭和6
3年3月31日第一小法廷判決・裁判集民事153号627頁等)が示した将来給付の訴えの
適法性の判断基準を用いることが適当かどうかも意識しつつ敷金返還請求権に即して検討する
ことが求められるとともに,本件におけるXとY2間の争いの状況を踏まえて具体的に考察す
ることが期待される。
次に,設問1の課題2では,本件建物の明渡し前における敷金関係の確認の訴えにつき,確
認の利益の一般的指標とされる確認訴訟という方法を選択することの適切性,確認対象の適切
性,即時確定の必要性に従って,あるいは確認訴訟における権利保護の資格と利益に沿って,
Y2の立場からそれぞれが肯定されるように,説得的な立論をすることが求められる。そのう
ちでも特に,敷金返還請求権が設問1の課題1では将来の給付訴訟の対象と性質付けられてい
ることとの関係で,どのような確認対象であれば基準時に確定する必要が認められるかにつき,
即時確定の必要性又は権利保護の利益と関係付けた確認対象又は権利保護の資格の理解を示す
必要がある。その際には,賃貸借契約継続中における敷金債権の確認の利益を肯定した判例(最
高裁判所平成11年1月21日第一小法廷判決・民集53巻1号1頁)のように確認対象を現
在の権利又は法律関係と位置付ける立場のほか,将来の権利又は法律関係と位置付けた上で確
認対象となり得ると解する立場もある。どちらを採るかにより評価に差が生ずるわけではない
が,前者については,敷金返還請求権を単に条件付債権と位置付けるにとどまらず,設問1の
課題1では将来と性質付けた給付訴訟との違いを示し,本件の紛争状況から見て確認の利益が
肯定される対象を具体的に検討することが期待される。また,後者については,XがAの支払
った金銭は敷金でないと争っている等といった具体的な事情をできるだけ挙げた上で,将来具
体化する対象であっても即時確定の利益又は権利保護の利益が認められることを本件に即して
説得的に論ずることが求められる。
設問2では,和解手続におけるY2の発言から本件契約の解約の合意の存在を認定すること
ができない理由の検討が求められている。ここでは,法第247条において,裁判所が「口頭
弁論の全趣旨及び証拠調べの結果」をしん酌して心証を形成するものとされていることを指摘
した上で,和解手続における当事者の発言がこれらに当たらないことを論証する必要がある。
また,設問2では,和解手続における当事者の発言内容を心証形成の資料とすることができる
とした場合の問題についても検討することが求められている。ここでは,単に「手続保障を欠
く」などとするにとどまる答案は,論証として不十分であり,当事者の発言内容が裁判官の心
証に影響し得るとすると,例えば,和解の成立に向けた当事者の自由な発言を阻害するおそれ
があること,本問のようにいわゆる交互面接方式により行われた和解手続では情報の共有や反
論の機会の保障がないままに判決がされるおそれがあることなど,より実質的な観点から,具
体的に問題点を指摘することが期待される。
設問3の課題1では,本件訴訟において,XがY2に対する訴えのみを取り下げることがで
きるかどうかの検討が求められている。そこで,その前提として,本件訴訟について訴訟共同
の必要があるものかどうか,すなわち,本件訴訟が通常共同訴訟であるのか,固有必要的共同
訴訟であるのかという点が問題となる。本件訴訟が通常共同訴訟であると考える場合には,例
えば,相続財産の共有が民法第249条以下の共有と性質を異にするものではないこと,建物
明渡義務が不可分債務に当たり義務者各自が全部につき除去義務を負うことなどを指摘して,
本件訴訟が通常共同訴訟であり,共同訴訟人独立の原則(法第39条)が本件訴訟にも適用さ
れること,その帰結として,XがY2に対する訴えの取下げをすることができることを示す必
要がある。本件訴訟について,固有必要的共同訴訟であると解し,XはY2に対する訴えの取
下げをすることはできないとする場合であっても,説得力のある理由が示されていれば評価に
差異はないが,いずれにせよ,自説の根拠と結論との整合性が求められる。
次に,設問3の課題2では,Xが適法にY2に対する訴えのみを取り下げたという前提の下
において,XとY1のみの訴訟において本案判決がされる場合に,取下げがされる前の期日に
おいてY2が提出して取調べがされた本件日誌の証拠調べの結果を事実認定に用いてよいかど
うかの検討が求められている。ここでは,「共同訴訟における証拠調べの効果」と「それが訴
えの取下げによって影響を受けるかどうか」という問題文中で示された二つの視点を踏まえつ
つ検討を進める必要がある。まず,一つ目の視点,すなわち「共同訴訟における証拠調べの効
果」については,共同訴訟人の一人が提出した証拠から得られる証拠資料はその援用がなくと
も他の共同訴訟人に関する事実認定にも用いることができるという通常共同訴訟における証拠
共通の原則の意義や証拠共通の原則が認められる根拠を説明することが求められる。次いで,
二つ目の視点,すなわち「それが訴えの取下げによって影響を受けるかどうか」という点につ
いては,訴えの取下げがあった部分は初めから係属していなかったものとみなされる(法第2
62条第1項)という訴えの取下げの効果を指摘することが必要となるが,これらの論証を通
じ,XのY2に対する訴えの取下げがY2の申出により取調べがされた本件日誌についての証
拠共通に影響を与えるのではないかという問題意識が導かれることとなる。これが課題2にお
ける主要な検討事項となる。本件日誌を証拠として用いることができるとの結論を採る場合に
は,その根拠として,例えば,判例(最高裁判所昭和32年6月25日第三小法廷判決・民集
11巻6号1143頁)によれば,証拠申出の撤回は,証拠調べの終了後においては許されな
いとされており,その結論は相手方に有利な証拠資料が得られている可能性があることを考慮
すると是認されることや,Y2の申出によりされた証拠調べの結果は,証拠共通の原則により
XとY1との関係においても心証を形成する資料となっているところ,それは,係属が消滅し
た訴訟における訴訟行為から別の訴訟法律関係が生じているといい得ることから,取下げによ
ってもその効果は維持されるべきであることなどを指摘することが考えられる。これに対し,
本件日誌を証拠として用いることができないとする結論を採る場合には,その根拠として,例
えば,取下げの結果,当事者の訴訟行為によって形成された法律効果は全て消滅することを前
提とし,証拠申出の撤回は,弁論主義に照らし,相手方の同意があれば許されるとした上で,
XがY2に対する訴えの取下げをしたことにより,実質的には,Y2の証拠申出とこれに基づ
く証拠調べの結果の消滅に同意をしているものとみることができることなどを指摘することが
考えられよう。課題2については,いずれの結論であっても,評価に差異はないが,いずれに
せよ,論理的かつ説得的な論証が求められる。

参考答案と AI 採点

第1 設問1 一 課題1(将来給付の訴えの適法性) 1 敷金返還請求権の性質と将来給付の訴え 敷金返還請求権は、賃貸借が終了し、かつ目的物が明け渡された時において、それまでに生じた…

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答案を書いて AI 採点する

出典:法務省「令和2年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。