令和2年 司法試験 論文式 刑事訴訟法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:100)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- 問題の所在と実定法上の根拠(刑訴法197条1項・198条1項に基づく任意捜査としての被疑者取調べの限界)5点・簡潔に
- 判断枠組みの提示(最決昭59.2.29の二段階判断枠組み・強制処分の意義)8点
- 強制処分該当性の当てはめ(甲の意思と制約される権利・利益)8点
- 任意取調べの相当性判断の理論的根拠と考慮要素5点
- 具体的事実の抽出と総合的当てはめ(相当性の判断)9点
設問2-1
- 自白法則の根拠及び証拠能力の判断基準8点
- 違法収集証拠排除法則の自白への適用の有無・根拠・判断基準10点
- 両法則の適用関係についての自説の提示5点
設問2-2
- 甲の自白の証拠能力の当てはめ(設問1との整合性を含む)12点
設問3
- 弁護人の証拠意見(関連性なし)を踏まえた問題の所在の把握3点・簡潔に
- 類似事実による犯人性の証明が原則として許されない理論的根拠6点
- 平成24年・25年判例の判断基準とその趣旨6点
- 具体的事実の当てはめと結論(未起訴余罪である点への留意を含む)10点
全体
- 論理的構成・文章表現・設問相互の整合性5点
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,国際的な売買取引をめぐる事案を素材として,財産・取引分野における国際私法及
び国際民事手続法並びに「国際物品売買契約に関する国際連合条約」(以下「ウィーン売買条
約」という。)を中心とする国際取引法に関する基本的理解と応用力を問うものである。
〔設問1〕は,財産関係事件について,被告が外国法人であって日本に主たる営業所等を有
していない場合,すなわち民事訴訟法(以下「民訴法」という。)第3条の2に基づく国際裁
判管轄権が日本の裁判所に認められない場合において,どのような管轄原因があれば日本の裁
判所の国際裁判管轄権が認められるかを問うものである。設問1では,特に民訴法第3条の3
第3号について論ずることが求められている。
まず,Xの訴えが本件契約に基づく未払代金の支払を求めるものであることや,Yが日本で
登録された特許権を有していることなどを指摘した上で,民訴法第3条の3第3号に掲げる「財
産権上の訴え」であること,同号に定める「当該訴えが金銭の支払を請求するものである」こ
と及び「差し押さえることができる被告の財産が日本国内にある」ことを認定する必要がある。
次に,同号括弧書の「その財産の価額が著しく低いとき」について,その趣旨等に基づく法解
釈を行った上で,これに該当するかどうかを判断することが求められる。
民訴法第3条の3第3号に基づき日本の裁判所の国際裁判管轄権が肯定されると解した場合
には,同法第3条の9に定める「特別の事情」の有無についての検討を行う必要がある。
その上で,本件訴えについて,日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるかどうかの結論
を示すことが求められる。
〔設問2〕は,本件契約に甲国法を準拠法と定める条項があった場合において,その後の訴
訟で当事者が日本の民法の適用があることを前提にそれぞれの主張を行ったときに,契約の準
拠法の変更があったといえるかどうかを問うものである。
まず,本件訴えが契約違反によって被った損害の賠償を求めるものであることから,「法律
行為の効力」の問題として法律関係の性質決定がされ,法の適用に関する通則法(以下「通則
法」という。)第7条以下の規定によって準拠法が決定されることを示す必要がある。本件契
約には甲国法を準拠法と定める条項があったため,通則法第7条によれば,当事者が「選択し
た地の法」である甲国法が本件損害賠償請求の問題の準拠法とされよう。
しかし,その後の訴訟で当事者が日本の民法の適用があることを前提にそれぞれの主張を行
っていることから,通則法第9条により,日本法への準拠法の変更がなされたものと解するこ
とができないかが問題となる。この点を判断する前提として,当事者による準拠法の変更が,
明示的なものでなければならないのか,それとも黙示的なものでも足りるのかも論点となろう。
通則法第9条の趣旨等に基づく法解釈を行った上で,この問題に対する結論を導くことが求め
られる。
〔設問3〕は,ウィーン売買条約の適用要件と同条約における物品の契約不適合の問題につ
いての理解を問うものである。
〔小問1〕は,ウィーン売買条約の適用要件を定める同条約第1条に言及することが求めら
れる。まず,XとYの営業所がそれぞれ日本と甲国に所在しており,本件契約が物品売買契約
であることから,本件契約が同条⑴に定める「営業所が異なる国に所在する当事者間の物品売
買契約」に該当するかどうかにつき判断しなければならない。次に,本件契約にウィーン売買
条約が適用されるのは,当事者の営業所の所在する国が「いずれも締約国である場合」(同条
⑴(a))又は「国際私法の準則によれば締約国の法の適用が導かれる場合」(同条⑴(b))であ
ることを指摘する必要がある。甲国がウィーン売買条約の締約国でないことから,(a)の場合
には該当しないため,本件契約に同条約が適用されるためには,(b)の場合でなければならな
い。この点につき,「国際私法」とは法廷地の国際私法をいうと解されていることから,日本
で裁判を行っている本件では,日本の国際私法である通則法第7条以下の規定によって本件契
約の準拠法を判断することが求められる。
本件契約には準拠法が明示的にも黙示的にも定められていなかったため,通則法第7条では
なく同法第8条第1項により,本件契約に「最も密接な関係がある地の法」(最密接関係地法)
が本件契約の準拠法となることを指摘する必要がある。そして,通則法第8条第2項の特徴的
給付の理論に基づく推定規定について,その趣旨や特徴的給付の意味を明らかにした上で,本
件に適用することが求められる。その上で,推定を覆す事情の有無を検討しなければならない。
以上の検討の結果,本件契約の準拠法は売主の営業所所在地国である日本法になろう。
結論として,日本がウィーン売買条約の締約国であることから上記の(b)の場合に該当し,
本件契約について同条約が適用される旨を示すことが求められる。
〔小問2〕は,ウィーン売買条約が適用される場合に,売主が引き渡した物品の不適合を理
由として買主が求める損害賠償についての根拠条文を問うものである。
まず,ウィーン売買条約第45条⑴(b)に基づき,「売主が契約又はこの条約に基づく義務を
履行しない場合」に,買主が損害賠償請求を行うことができることを指摘する必要がある。次
に,売主Xが引き渡した物品Gが契約に適合しないものであってXに契約違反があったことを,
ウィーン売買条約第35条(特に同条⑵(c))に言及して説明しなければならない。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「令和2年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
