令和2年 司法試験 論文式 刑法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第1問〕(配点:100)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- 恐喝罪の構成要件該当性の基本的検討(1項恐喝か2項恐喝か、客体の特定、恐喝行為・畏怖・処分行為・移転の各要素)8点
- ①被害額が600万円となる立場の説明(個別財産に対する罪としての理解・財産上の損害の要否)8点
- ②被害額が100万円にとどまる立場の説明(実質的な財産的損害・債権の存在による法益侵害の否定)8点
- 自説の選択と結論(①②のいずれが妥当かを根拠を示して決し、成立する罪名・被害額を確定)6点
設問2
- 事実①(X剤・Y剤を自車内に置いたままで、第2行為に着手していないこと)に基づく実行行為性・実行の着手の否定6点・簡潔に
- 事実②(Aの特殊な心臓疾患は一般人も甲も認識できなかったこと)に基づく因果関係の否定6点・簡潔に
- 事実③(睡眠薬は一般的医薬品で致死量でなく、甲も死亡しないと思っていたこと)に基づく殺人の故意の否定6点・簡潔に
設問3
- (1) 甲名義口座からの600万円払戻し行為についての1項詐欺罪の成否8点
- (2) 600万円を払い戻しCへの自己の債務弁済に充てた行為についての(委託物)横領罪の成否9点
- (3)-a 強盗罪の実行行為である『暴行』該当性(睡眠薬を飲ませる行為・有毒ガス吸引行為の評価)5点
- (3)-b 早すぎた構成要件実現における実行行為の構成(第1行為・第2行為の一体的評価か第1行為単独か)6点
- (3)-c 採用した実行行為構成を前提とする因果関係と故意(殺意・強盗の故意)の検討5点
- (3)-d 2項強盗における『財産上不法の利益を得た』の意義と当てはめ4点
- (3)-e 実行の着手を否定した場合の代替犯罪の検討(殺人予備罪・強盗予備罪、傷害致死罪・(重)過失致死傷罪等)3点・簡潔に
- (4) A方の高級腕時計を持ち去った行為についての財産犯(窃盗罪)の成否5点
全体
- 論理的構成・論述の優先順位付け・文章表現(罪数処理を含む)7点
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,離婚(及びその附帯処分や関連請求)が問題となる事案を素材として,国際私法と国
際民事手続法に関する基本的理解と応用力を問うものである。離婚は事件数も多く実務上の重
要性も高いため,今回出題した。
〔設問1〕は離婚の方法について問うものである。
まず,法律関係の性質決定が問題となる。本設問の問題は,離婚の実質(法の適用に関する
通則法(以下「通則法」という。)第27条)の問題であると性質決定する説が多数説である。
この説によった場合には,離婚準拠法たる甲国法の手続を日本の調停手続によって代行するこ
とができるかどうかという問題(実体と手続の適応問題)が生じる。代行を認める立場(多数
の家裁実務)も,代行を認めない立場もあり得るが,いずれの立場を採るにせよ,甲国法の内
容と日本の調停手続の性質を踏まえて論じることが求められる。調停手続による代行を認めな
い場合には,(現在の学説によれば)審判によることができる。審判によるとした場合にも,
調停に代わる審判(家事事件手続法(以下「家事法」という。)第284条)か,合意に相当
する審判(家事法第277条)かという問題があり,これについても論じることが望ましい。
その他の説として,日本で調停離婚によることが可能かは手続の問題と性質決定して法廷地
法によらしめる説もある。もっとも,この説も,実体の準拠法を全く適用しないわけではなく,
離婚が法律行為によって可能か,裁判所による形成が必要かは,実体かつ実質の問題であって
離婚準拠法により,そこで裁判所の手続によるとされていることを前提としている。この説に
よる場合には,調停離婚も裁判所による離婚形成に当たることとなろう。
さらに,方式(通則法第34条)の問題とする説もある。この説は,多数説とは根本的に異
なる立場であるので,この説を採る場合には,多数説についても記述した上で,これを採る理
由を述べるべきである。
〔設問2〕は離婚請求とそれに伴う財産分与請求,慰謝料請求の国際裁判管轄権と準拠法の
決定について問うものである。
〔小問1〕は国際裁判管轄権についての問題である。
まず,離婚請求についてであるが,これは「人事に関する訴え」(人事訴訟法(以下「人訴法」
という。)第2条第1号,第3条の2柱書)に当たるので,その国際裁判管轄権は人訴法第3
条の2による。人訴法第3条の2各号の定める管轄原因のうち本件に当てはまるのは第6号(最
後の共通住所)である。同規定の要件への丁寧な当てはめが求められる。
次に財産分与請求についてであるが,これについてはまず人訴法第3条の4第2項の存在を
指摘すべきである。これはもともと審判事項であるが,人事訴訟において申し立てられていれ
ば,人訴法第32条第1項により,訴訟に附帯して裁判される(附帯処分)。人訴法第3条の
4はそのような附帯処分について国際裁判管轄権を定めている。家事法第3条の12各号の定
める管轄原因のうち本件に該当するのは第3号である(その趣旨は人訴法第3条の2第6号と
同じ。)。最後に慰謝料請求についてであるが,これについてはまず人訴法第3条の3の存在
を指摘すべきである。これは人事訴訟に係る請求ではないが,その関連請求であり,離婚請求
と併合することによって人訴法による国際裁判管轄権が認められる。同規定の要件への丁寧な
当てはめが求められる。
〔小問2〕は準拠法の決定についての問題である。
離婚請求については通則法第27条による。同条本文において準用する第25条を適用し,
同一本国法たる乙国法による。
財産分与として請求されているのは清算的要素のみとした。これについては離婚と性質決定
する27条説と夫婦財産制と性質決定する26条説がある。いずれの説による場合もその理由
を述べるべきであるが,27条説による場合には,その理由の中で26条によるべき問題との
区別(夫婦財産制の準拠法と離婚準拠法の役割分担)についても論じることが望ましい。
慰謝料請求については一括して離婚と性質決定する説,一括して不法行為と性質決定する説,
離婚自体による慰謝料と個別的不法行為による慰謝料を区別する説がある。このうち不法行為
と性質決定する場合には,本問では夫婦という特別の関係によって結ばれた者の間の不法行為
なので,通則法第20条がこの場合に適用されるかどうかについても検討すべきである。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「令和2年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
