令和2年 司法試験 論文式 行政法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕⑴,〔設問1〕⑵,〔設問2〕の配点割合は45:30:25〕)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1(1)
- 処分性の判断定式の提示3点・簡潔に
- 農用地利用計画(本件計画)の設定が農地所有者の権利義務に及ぼす法的効果の整理8点
- 最判昭57.4.22(用途地域指定)の理解と本件計画との異同の検討10点
- 個別農地を農用地区域から除外するための計画変更の処分性8点
- 申出の拒絶の処分性(申請権の法的根拠)9点
- 抗告訴訟による救済の必要性(紛争の成熟性)5点
設問1(2)
- 申出の申請該当性とB市の対応の法的意味(行政手続法)8点
- 提起すべき抗告訴訟の選択(不作為の違法確認訴訟)5点
- 不作為の違法確認訴訟の訴訟要件の充足性8点
- 本案の主張(相当の期間の経過)7点
設問2
- 違法事由の検討枠組み(要件該当性・法令解釈の問題であることの把握)3点・簡潔に
- 農振法13条2項5号・10条3項2号・施行規則4条の3第1号該当性の検討とあてはめ12点
- 農振法施行令9条の8年の期間制限に例外を認める解釈9点
全体
- 論理的構成・文章表現5点
出題の趣旨(法務省公表)
農地を他の目的に転用するに際しては,農地法第4条第1項に基づく都道府県知事等による
農地転用許可を要するが,当該農地が農業振興地域の整備に関する法律(以下「農振法」とい
う。)第8条第1項に基づく市町村の農用地利用計画により,農用地区域内の農地に指定され
ている場合には,原則として,農地の転用は認められない。したがって,こうした農地を転用
するためには,その前提として,農振法第13条第1項に基づく計画変更による当該農地の農
用地区域からの除外を求めなければならない。本問は,近隣農家のための医院設置を目的とし
て農地(以下「本件農地」という。)を転用するため,それを農用地区域から除外するための
B市による農用地利用計画(以下「本件計画」という。)の変更が求められた事例について,
農振法や関係法令の仕組みを踏まえながら,そこでの法律問題を分析することが求められてい
る。
まず,本問の事例においては,Xによる本件農地を農用地区域から除外するための本件計画
の変更をB市が認めておらず,それを争う前提として,本件計画の変更及びその申出の拒絶の
処分性が問われている(設問1(1))。さらに,本件計画の変更及びその拒絶が処分であること
を前提として,Xによる本件農地の農用地区域からの除外の申出をB市が受け付けず,これに
対する可否の通知をしていない状況において,Xが選択すべき抗告訴訟の検討が求められる(設
問1(2))。最後に,B市により,本件申出を拒絶する通知がなされた場合に,それに対する取
消訴訟において,Xがどのような違法事由を主張すべきかが問われている(設問2)。以上の
点について,【法律事務所の会議録】を踏まえながら,そこで示されている弁護士Cの指示に
沿って,B市による反論も想定しつつ,弁護士Dの立場から検討することが求められる。
まず,【設問1】(1)は,いわゆる処分性を問うものであるが,農用地区域の設定や除外の処
分性については,なお,下級審判決は分かれている。まず,農用地区域の設定自体については,
その法的効果として,農振法等により,様々な農地の利用制限が規定されている。こうした土
地利用を規制する計画の法的性格については,都市計画法上の用途地域に関し,これを法令類
似のものであるとする判例(【法律事務所の会議録】に掲げられた最高裁判所昭和57年4月
22日第一小法廷判決)がある。しかし,その適用範囲や規制の強度等を考えると,これと農
用地区域の規制を同視し得るか否かは問題となろうし,さらに,その範囲の点からも,個別の
農地についての農用地区域からの除外について,同様に解してよいかについては,別途,検討
を要する。さらに,本件の事例においては,B市の内部規程とはいえ,運用指針には,農用地
区域からの除外の申出と可否の通知が制度化されており,これを農振法の趣旨を具体化したも
のとみて,農用地区域からの除外について,農地所有者等の申請権を読み取り,本件申出に対
する可否の通知に処分性を認める解釈もあり得よう。さらに,処分性の判断においては,救済
の必要性に関する実質的考慮も求められることから,本問の事案においても,後に予想される
農地法第4条第1項に基づく農地転用許可の拒否処分に対する取消訴訟の段階での救済可能性
の評価についても,言及が求められている。
次に,【設問1】(2)は,本件計画の変更及びその申出の拒絶に処分性が認められることを前
提としつつ,B市が本件申出を返送して,1年以上たっても,これに対する可否の通知をして
いないという事案について,Xがいかなる抗告訴訟を選択すべきかの検討が求められる。それ
らが処分であることを前提とすると,本件計画の変更の申出は申請であることになるが,まず
は,行政手続法第7条に照らすと,Xの申出は,いかなる状況に置かれていることになるか。
行政手続法の基本的な理解が問われている。その結果,Xが選択すべき抗告訴訟は,不作為の
違法確認訴訟ということになるが,事案から読み取れる範囲で,その訴訟要件充足性及び本案
の主張の検討も求められる。Xの申出の置かれている状況を前提として,訴訟要件としては,
Xの申出が「法令に基づく申請」に該当すること,それに対する処分がなされていないこと,
本案の主張としては,申出から「相当の期間」が経過していることが整理されなければならな
い。なお,申請型義務付け訴訟の併合提起が考えられるが,本問では,その検討は求められて
いない。
最後に,【設問2】においては,その後にXの申出に対する拒絶の通知がなされたと仮定し
て,その取消訴訟において,この申出を拒絶することの違法事由として,Xが主張すべき違法
事由の検討が求められる。農用地区域からの除外については,農振法や関係法令において,極
めて多岐にわたる積極又は消極の要件が規定されているが,ここでは,事前の相談においてB
市から示された拒絶の理由について,その妥当性が問題とされる。すなわち,土地改良事業で
ある用排水施設の改修との関係について,やや複雑な法令の適用関係に照らして,農振法第1
3条第2項第5号の要件の充足性を検討することが求められる。まず,本件事業の目的や本件
農地との関係など,与えられた事案の範囲で,農業の振興という本件計画の基本的な目的も踏
まえつつ,本件事業が農振法第10条第3項第2号及び同法施行規則第4条の3第1号イの事
業に該当するか否かが検討され,それに基づいて申出の拒絶の違法事由が提示されなければな
らない。次に,同法施行令第9条の規定する8年という期間制限の本件農地に対する適用が問
題とされる。同条の文言上は,農用地区域からの除外が例外なく一律に排除されているように
も読めるが,こうした政令は,無効とまでは言えないとしても,委任した法律の趣旨目的に適
合するように解釈されなければならない。土地改良事業との関係で農用地区域からの除外を制
限する農振法の目的は,「公共投資により得られる効用の確保」である。このことから,本件
農地の農用地区域からの除外が本件事業の「効用」に与える影響との関係を踏まえて,一律の
期間制限に例外を認める解釈が求められることとなる。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「令和2年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
