平成30年 司法試験 論文式 商法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,25:50:25〕)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- 会社法433条1項の請求としての位置付けと要件の確認(総勘定元帳・補助簿の会計帳簿該当性、Dの持株要件、請求の理由の明示)4点・簡潔に
- 433条2項1号(権利の確保又は行使に関する調査以外の目的)該当性10点
- 433条2項3号「実質的に競争関係にある事業」該当性(乙社の事業と甲社の業務)6点
- Dが「事業を営み、又はこれに従事するもの」に当たるか4点
設問2⑴
- 無償の連帯保証が「財産上の利益の供与」(120条1項)に当たるか、供与の相手方(G/D)9点
- 「株主の権利の行使に関し」の要件該当性7点
- 本件決議1の取消事由(831条1項1号・決議の方法の法令違反)4点
- 本件決議2における議長Aの制止の違法性(株主提案権の実質的侵害・議事整理権限(315条1項)の濫用)4点
- 否決決議の取消しを求める訴えの適法性(最判平成28年3月4日)4点
設問2⑵
- Aの利益供与に関する支払義務(120条4項、会社法施行規則21条1号)8点
- Aの任務懈怠責任(423条1項)6点
- Gの利益返還義務(120条3項)と責任追及等の訴えの対象5点
設問3
- 会社法174条の趣旨4点・簡潔に
- 本件請求の適否に関する諸事情の総合考慮(制度趣旨からの逸脱・支配権取得目的)8点
- 臨時株主総会決議の取消事由(831条1項3号・特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議)7点
- 決議内容の法令違反(830条2項)・定款(その趣旨)違反(831条1項2号)と、本件請求の効力への帰結5点
全体
- 論理的構成・文章表現5点
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,①会計帳簿の閲覧の請求の拒絶事由(設問1),②株主の権利の行使に関する利益
の供与を理由とする株主総会の決議の取消しの訴え,株主総会の否決決議の取消しを請求する
訴え(設問2⑴),③株主の権利の行使に関して財産上の利益を供与することに関与した取締
役及び当該利益の供与を受けた者に対する責任追及等の訴え(設問2⑵),④譲渡制限株式の
相続人に対する売渡しの請求(設問3)についての理解等を問うものである。
設問1においては,⑴Dによる閲覧の請求が会社法第433条第1項の会計帳簿の閲覧の請
求に該当すること,当該請求の要件等に言及した上で,⑵当該請求が同条第2項第1号又は第
3号の拒絶事由等に該当し,甲社が当該請求を拒むことができるかどうかについて検討するこ
とが求められる。
⑵のうち,Dによる閲覧の請求が会社法第433条第2項第1号の拒絶事由に該当するか否
かを検討するに当たっては,Dが,その権利の確保又は行使に関する調査の目的でなく,D保
有株式をAに買い取らせる目的で当該請求を行ったと認めることができるかどうかについて,
Dの言動等の事実関係を適切に評価した上で説得的に論ずることが求められる。
また,Dによる閲覧の請求が会社法第433条第2項第3号の拒絶事由に該当するか否かを
検討するに当たっては,乙社の営む事業が甲社の「業務と実質的に競争関係にある」と認める
ことができるかどうかについて,甲社及び乙社はいずれもハンバーガーショップを営んでいる
こと,甲社は関東地方のP県に,乙社は近畿地方のQ県に,それぞれ出店していること,甲社
はQ県には出店する予定がないことなどの事実関係を適切に評価した上で,説得的に論ずるこ
とが必要となろう。さらに,Dが「~事業を営み,又はこれに従事するものである」と認める
ことができるかどうかについても,Dは,乙社の発行済株式の全部を有していること,乙社の
経営には関与していないこと,乙社の代表取締役であるFと親子関係にあることなどの事実関
係を踏まえて,具体的に検討することが求められる。
設問2⑴においては,甲社がGから保証料の支払を受けないでGの丙銀行に対する借入金債
務について連帯保証したことが,「何人に対しても」(会社法第120条第1項)という文言に
照らして,Gに対する財産上の利益の供与(同項)に該当するか否か(同項の文言上,利益供
与の相手方は誰でもよく,現に株主である者に限られない。),あるいはこのことがD保有株式
の売買契約が成立する前提となっており,Dに対する財産上の利益の供与(同項)に該当する
か否かについて説得的に論ずることが求められる。そして,上記連帯保証が,(G又はDに対
する)財産上の利益の供与に該当するとすれば,当該利益の供与が株主の権利の行使に関して
されたもの(同項)ということができるかどうかについて,本件契約によれば,Dが本件株主
総会には自らは出席しないでAを代理人として議決権の行使に関する一切の事項を委任するこ
ととされていたといった諸々の事実関係に即して検討することが望まれる。その上で,本件決
議1についての株主総会の決議の取消しの訴えに関して,当該利益の供与により,本件決議1
が株主総会の決議の方法が法令に違反したもの(同法第831条第1項第1号)と認めること
ができるかどうかについて検討することが求められる。
また,本件決議2についての株主総会の決議の取消しの訴えに関しては,本件決議2が株主
総会の決議の方法が法令に違反し,又は著しく不公正なもの(会社法第831条第1項第1号)
と認めることができるかについて,CがAを取締役から解任する旨の議案の提案の理由を説明
しようとしたところ,議長であるAがこれを制止し,直ちに採決に移ったことを,株主による
提案理由の説明の拒絶として株主提案権の(実質的)侵害に該当し,あるいは議長の議事整理
に関する権限(同法第315条第1項)の濫用に該当すると位置付けることができるのではな
いかといった観点から,検討することが考えられる。さらに,判例は,ある議案を否決する株
主総会等の決議の取消しを請求する訴えは不適法であるとしていること(最判平成28年3月
4日民集70巻3号827頁)を意識した上で,その適否を論ずることが求められる。
設問2⑵においては,Aに対する責任追及等の訴え(会社法第847条第1項)については,
甲社がGから保証料の支払を受けないでGの丙銀行に対する借入金債務について連帯保証した
ことが,G又はDに対する財産上の利益の供与(同法第120条第1項)に該当するとすれば,
①Aは,同条第4項及び会社法施行規則第21条第1号に基づき,少なくとも,供与した利益
の価額に相当する額である60万円を支払う義務を負うと認めること,②甲社がGの丙銀行に
対する借入金債務について連帯保証したことに関するAの行為は,法令に違反し,又は善管注
意義務に違反するため,任務懈怠(同法第423条第1項)に該当し,Aは,甲社に対し,少
なくとも,保証債務の履行として丙銀行に弁済した800万円を支払う義務を負うと認めるこ
とが考えられる。なお,Aが支払義務を負う金額(①にあっては「供与した利益の価額に相当
する額」,②にあっては会社の損害額)については,上記の各金額以外の額であるとする論理
も考えられるところであり,事案に即して説得的に論じられていれば,必ずしも,上記の各金
額でなければならないものではない。
Gに対する責任追及等の訴え(会社法第847条第1項)については,Gが,「当該利益の
供与を受けた者」に該当するのであれば,同法第120条第3項に基づき,供与を受けた財産
上の利益である60万円を返還する義務を負うと認めることが考えられる。なお,Gが返還義
務を負う金額についても,同様に,必ずしも,上記の金額でなければならないものではない。
設問3においては,譲渡制限株式の相続人等に対する売渡しの請求(会社法第174条)の
趣旨は,株式会社が,定款にその旨の定めを設けることにより,相続その他の一般承継により
当該株式会社の譲渡制限株式を取得した者に対し,当該譲渡制限株式を当該株式会社に売り渡
すことを請求することができることとし,当該株式会社にとって必ずしも好ましくない者が当
該株式会社の株主となることを防ぐことができるようにすることにあることを踏まえつつ,本
件請求の適否について,具体的に検討することが求められる。
その際には,Bは甲社株式を相続する前から甲社の株主であったこと,Bが相続した甲社株
式450株の全部についてではなく,Cが甲社の総株主の議決権の過半数を確保するために最
低限必要な401株についてのみ,甲社がBに対して売渡しの請求をすることとしたこと,A
が取締役を退任した後はCも取締役を退任してBが代表取締役社長を務める旨のAC間の合意
が存在していたこと,本件請求はCが甲社の支配権を取得する目的でされていること,他方で,
会社法第174条の文言上は,これらのことにより,譲渡制限株式の相続人等に対する売渡し
の請求が不適法となるとは規定されていないこと,甲社定款第9条の定めは設立当初から設け
られていたことなどの諸事情を総合的に考慮して,説得的に論ずることが求められる。
その上で,平成29年7月3日に開催された臨時株主総会における甲社がBに対して売渡し
の請求をすることに関する議案を可決した決議について,①特別の利害関係を有する者が議決
権を行使したことによる著しく不当な決議に該当するか否か(会社法第831条第1項第3
号),②決議の内容が法令に違反するか否か(同法第830条第2項),又は③決議の内容が定
款(定款の趣旨)に違反するか否か(同法第831条第1項第2号),及び当該決議が取り消
され,又は無効であることが確認されることにより,本件請求が効力を生じないこととなるこ
となどについて,検討することが考えられる。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成30年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
