平成30年 司法試験 論文式 民事訴訟法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第3問〕(配点:100[〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,40:30:30])
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- Bの訴え(債務不存在確認の訴え)の訴訟物の明示5点
- 民訴法142条(重複起訴の禁止)の趣旨と事件の同一性の検討7点
- 課題⑴:Aの乙地裁におけるBに対する訴えの適法性(反訴構成)8点
- 課題⑴:Cを共同被告とすることの可否(共同訴訟要件と主観的追加的併合)8点
- 課題⑵:甲地裁への別訴提起が適法であるとする立論10点
- 給付の訴え提起によるBの訴えの確認の利益の消滅(最判平16.3.25の趣旨)2点・簡潔に
設問2
- 220条4号の一般的提出義務からの出発と除外事由ハ・197条1項2号の摘示10点
- 秘密の主体が相手方当事者Aであることの意味(最決平19.12.11の趣旨を踏まえた除外事由不該当の立論)12点
- 220条3号前段(利益文書)を根拠とする立論5点・簡潔に
- 結論の明示と申立ての枠組みの整理3点
設問3
- 主張(ア)の当否:第一審で補助参加していなかった者による控訴の可否10点
- 主張(イ)の当否:補助参加の利益(42条)の判断基準8点
- 本件におけるBの補助参加の利益のあてはめ(最判昭51.3.30の趣旨)8点
- 控訴の適法性についての丙高裁の判断の結論4点
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,Aが,Bが運転するタクシーとCが運転する自動車との衝突事故(本件事故)によ
って負傷したという事例を基本的な題材として,①BがAを被告として150万円を超える損
害賠償債務の不存在確認の訴えを提起し,その訴訟が係属した後,AがB及びCを被告として
提起する損害賠償請求の訴えが適法であるとする立論をすること(設問1),②Aを原告,B
及びCを被告とする損害賠償請求訴訟において,Bが,病院開設者である法人Dを所持者とし
てAの診療記録について文書提出命令を申し立てた場合に,Dに文書提出義務があるとする立
論をすること(設問2),③当該訴訟の第一審判決においてAのCに対する請求が棄却された
場合に,Bが,Aのために補助参加の申出をするとともに,Aを控訴人,Cを被控訴人として
提起した控訴が適法かどうかを論ずること(設問3)をそれぞれ求めるものである。
なお,甲地裁及び乙地裁が本問に現れる訴えの土地管轄及び事物管轄を有することは解答の
前提にするよう問題文に明記しているので,これらの管轄の有無を論ずる必要はない。
設問1では,まず,Bが既にAを被告として150万円を超える損害賠償債務の不存在確認
の訴えを提起し,訴状がAに送達されて訴訟係属が生じていることとの関係で,AがBに対し
て400万円の支払を求める訴えの適法性が問題となる。そして,AのBに対する訴えの適法
性に関しては,民事訴訟法第142条の重複起訴の禁止との関係を重複起訴禁止の趣旨を踏ま
えて論じなければならず,その前提として,Bの訴えの訴訟物を明示する必要がある。
Bの訴えの訴訟物は,例えば,判例による訴訟物の捉え方を踏まえると,本件事故に係るB
のAに対する不法行為に基づく損害賠償債務のうち150万円を超える部分と解することとな
り,AのBに対する400万円の支払請求の訴えのうち150万円を超える部分については,
事件の同一性(当事者と訴訟物の同一性)が認められるので,重複起訴の禁止との関係が問題
となる。また,Bの訴えの訴訟物について,Bが義務を自認している150万円の部分をも含
むと解する考え方に立つと,AのBに対する400万円の支払請求の訴えの全部について重複
起訴の禁止との関係が問題となる。訴訟物の捉え方については,複数の考え方があり得るとこ
ろであり,どの立場に立つかによって評価に差がつくわけではないが,いずれにせよ,Bの訴
えの訴訟物は,設問1を考える上で当然に明示する必要がある。
そして,設問1で重複起訴の禁止との関係を論ずる際には,Aがその訴えを提起する裁判所
が,Bの訴えに係る訴訟が係属している裁判所(乙地裁)であるのか,それ以外の裁判所(甲
地裁)であるのかという課題(1)と課題(2)の違いを意識しつつ検討を進める必要がある。
設問1の課題(1)では,まず,Aが乙地裁にBを被告とする訴えを提起することが適法であ
ることを論ずる必要があり,金銭債務不存在確認の訴えの被告は原告に対してその金銭の支払
を求める反訴を提起することができ,これによると重複起訴の禁止の規定に抵触しないこと(そ
もそも同条が禁止する「更に訴えを提起すること」に当たらないと考えられること,又は「更
に訴えを提起すること」には当たるが,重複起訴禁止の趣旨に反しないので適法と考えられる
こと)を指摘することが求められる。
設問1の課題(1)では,これに加えて,Aが,乙地裁において,CをBとの共同被告として
損害賠償請求の訴えを適法に提起できることを論ずる必要がある。これについては,共同訴訟
の一般的要件(同法第38条前段)を満たすことを指摘すべきであるのはもちろんであるが,
そのほかに,上記のようにAがBに対する反訴を提起する場合,この反訴請求と併合して本訴
原告以外の者であるCに対する請求に係る訴えを提起できるかを検討する必要がある。すなわ
ち,Bに対する反訴請求と本訴原告ではないCに対する請求とを併合して訴えを提起すること
を許せば,法が定めていない主観的追加的併合を認めることになるが,それでよいかという問
題が存在するので,この問題を意識しつつ,それが許されるとの立論をすることが求められる。
他方,Aが,Bの訴えに対する反訴ではなく,別訴として,BとCを共同被告とする訴えを乙
地裁に提起することも考えられるところ,この場合には主観的追加的併合の許否という問題は
生じないが,前記の重複起訴の禁止の問題との関係で,Aが受訴裁判所に口頭弁論の併合を求
め,口頭弁論が併合されることにより重複起訴禁止の趣旨に反しなくなることを指摘して,訴
えの適法性を理由づけることが望まれる。
また,金銭債務不存在確認の訴えの被告が原告に対してその金銭の支払を求める反訴を提起
した場合には,その確認の訴えについて確認の利益が認められなくなる旨の判例(最高裁判所
平成16年3月25日第一小法廷判決・民集58巻3号753頁)の趣旨を意識しつつ,Aが
Bに対する給付の訴えを提起することにより,Bの訴えについては確認の利益がなくなること
を指摘して,重複起訴禁止の趣旨に反せず適法であるとする解答も,一応の評価ができるとこ
ろである。
次に,設問1の課題(2)は,Aが,甲地裁において,BとCに対する訴えを提起する場合で
あってもそれが適法であるとする立論をすることを求めている。課題(1)と異なり,反訴によ
ることはできず,また,官署としての裁判所を異にするため直ちに口頭弁論を併合することも
できない。そこで,本件でAが甲地裁にBとCを共同被告とする訴えを提起する場合,Bの訴
えに係る訴訟が係属する裁判所とは別の裁判所に提起する別訴であっても,これを適法と認め
るべき必要性及び重複起訴の禁止の趣旨が妥当しないとする理由を示すことにより,Aの訴え
が適法であることを述べることになる。そこでは,債務不存在確認訴訟と給付訴訟とでは得ら
れる判決の効果に違いがあること(給付判決には執行力が認められる。),Bの訴えの訴訟物が
150万円を超える部分のみであると解する見解に立つ場合には,Aの訴えの訴訟物のうちB
の訴えの訴訟物となっていない150万円については訴訟物の重なりがないこと,Bが自己に
有利な管轄裁判所に消極的確認の訴えを提起することにより,Aが甲地裁で訴えを提起できる
はずの地位を損なうこと,本件では,Aの訴えの提起がBの訴えについての第1回口頭弁論期
日前の時点でされており,Bの訴えについて審理が進んでいる状態ではないことなどの諸事情
を考慮に入れて論ずることが期待される。
設問2では,Aの診療記録について所持者Dが文書提出義務を負うかどうかが問題となり,
同法第220条の規定に即して文書提出義務を肯定する立論をすることが求められる。同条の
規定のうち根拠として検討する必要があるのは,一般的な文書提出義務を定めた同条第4号で
ある。本問では,除外事由としての同号ハ・第197条第1項第2号(医師の守秘義務に係る
文書)への該当性が問題となり,医師の守秘義務によって保護されているのが訴訟の当事者で
あるAについての情報であることがDの文書提出義務に影響するのではないかという点を考慮
に入れ,文書の所持者が当該訴訟の当事者に対して負う守秘義務が問題となった場合の判例(最
高裁判所平成19年12月11日第三小法廷決定・民集61巻9号3364頁)の趣旨等をも
考慮して,除外事由に当たらないことの理由を示すことが必要となる。
そのほかに,同法第220条第3号前段の利益文書を根拠とする立論をすることにも一定の
評価が可能であるところ,Aの診療記録についてAの相手方当事者であるBの利益のために作
成されたといえるか,同条第4号の除外事由の適用又は類推適用がないか(それがあるとする
と,除外事由に該当しないか)等の問題点について,提出義務を肯定する方向で論ずることが
求められる。
なお,同号ニ(いわゆる自己利用文書)の該当性も一応問題になり得るが,一般に診療記録
が各種の事項に関して証拠方法となり得ること等を踏まえると,専ら所持者の利用に供するた
めの文書とは解することができないので,自己利用文書の該当性を論ずる必要はない。
設問3では,主張(ア)との関係で,第一審で補助参加をしていなかったBがAのために控訴
をすることの可否について,主張(イ)との関係で,補助参加の利益(同法第42条参照)につ
いて,それぞれ論じ,Bの控訴が適法か否かの結論を示す必要がある。
前者に関しては,第一審で補助参加をしていなかった者も,補助参加の申出とともに被参加
人のために控訴ができるとするのが同法第43条第2項及び第45条第1項から導かれる適切
な解釈である。後者の補助参加の利益の有無に関しては,考え方が分かれ得るところであり,
最高裁判所昭和51年3月30日第三小法廷判決・裁判集民事117号323頁の趣旨等をも
意識しつつ,自らの考え方を述べることが求められる。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成30年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
