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平成30年 司法試験 論文式 行政法 出題の趣旨・論点・解説

平30司法 公法系科目第2問(行政法)行政法

問題

〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕⑴,〔設問1〕⑵,〔設問2〕の配点割合は,35:40:25〕)

宗教法人Aは,宗教法人法に規定された宗教法人で,同法の規定により登記された事務所を,約 10年前からB市の区域内に有している。Aは,以前から墓地用石材の販売等を扱う株式会社Cと 取引関係にあったが,Cから,B市内に適当な広さの土地(以下「本件土地」という。)を見付け たので,大規模な墓地の経営を始めないかとの提案を持ち掛けられた。Cがこのような提案をした のは,B市においては,「B市墓地等の経営の許可等に関する条例」(以下「本件条例」という。) 第3条の定めにより,株式会社であるCは墓地の経営許可を受けることができず,墓地経営のため に宗教法人であるAの協力が必要であったという事情による。Aは,大規模な墓地の経営に乗り出 すことは財政的に困難であると考えたが,Cから,用地買収や造成工事に必要な費用を全額無利息 で融資するとの申出を受けたため,Cの提案を受け入れ,本件土地において墓地(以下「本件墓地」 という。)の経営を行うことを承諾した。そこで,Aは,Cから融資を受けて,平成29年9月2 5日に本件土地を購入した(なお,本件土地に所有権以外の権利は設定されていない。)。さらに, Aは,「墓地,埋葬等に関する法律」(以下「法」という。)第10条第1項に基づき,本件墓地の 経営許可を得るため,本件条例に基づく必要な手続を開始した。なお,B市においては,法に基づ く墓地経営許可の権限は,法第2条第5項に基づき,B市長が有している。 Aは,平成29年11月17日,周辺住民らに対して,本件条例第6条に基づく説明会(以下「本 件説明会」という。)を開催した。本件説明会は,Aが主催したが,Cの従業員が数名出席し,住 民に対する説明は,Aの担当者だけではなくCの従業員も行った。本件土地の周囲100メートル 以内に住宅の敷地はなかったが,本件土地から100メートルを超える場所に位置する住宅に居住 する周辺住民らが,本件説明会に出席し,本件土地周辺の道路の幅員はそれほど広いものではない ため,墓参に来た者の自動車によって渋滞が引き起こされること,供物等の放置による悪臭の発生 並びにカラス,ネズミ及び蚊の発生又は増加のおそれがあることなど,生活環境及び衛生環境の悪 化への懸念を示した。しかし,Aは,その後も本件墓地の開設準備を進め,平成30年3月16日, B市長に対して本件墓地の経営許可の申請(以下「本件申請」という。)をした。 他方,本件土地から約300メートル離れた位置にある土地には宗教法人Dの事務所が存在し, Dは,同所で約10年前から小規模な墓地を経営していた。Dは,本件説明会の開催後,本件土地 において大規模な墓地の経営が始まることを知り,自己が経営する墓地の経営悪化や廃業のおそれ があると考えた。Dの代表者は,その親族にB市内で障害福祉サービス事業を営む法人Eの代表者 がいたことから,これを利用して,本件申請に対するB市長の許可処分を阻止しようと考えた。D の代表者は,Eの代表者と相談し,本件土地から約80メートル離れた位置にあるDの所有する土 地(以下「D所有土地」という。)に,Eの障害福祉サービスの事業所を移転するよう求めた。E は,これを受けて,特に移転の必要性はなかったにもかかわらず,D所有土地を借り受けて事業所 (以下「本件事業所」という。)を設置し,平成30年3月23日,D所有土地に事業所を移転し た。本件事業所は,「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」に定められ た要件に適合する事業所で,短期入所用の入所施設を有しており,本件条例第13条第1項第2号 の「障害福祉サービスを行う施設(入所施設を有するものに限る。)」に該当する。本件事業所は, 従来のEの施設の利用者を引き継いでいたことから,定員に近い利用者が日常的に利用し,また, 数日間連続して入所する利用者も見られた。 B市は,本件事業所の移転やDの代表者とEの代表者に親族関係があるという事情を把握してい なかったが,D及びEがB市長に対して平成30年4月16日,本件申請に対して許可をしないよ う求める旨の申入れを行ったことにより,上記事情を把握するに至った。D及びEの申入れの内容 は,①本件墓地が大規模であるため,B市内の墓地の供給が過剰となり,Dの墓地経営が悪化し, 廃業せざるを得ないこともあり得る,②本件事業所が本件土地から約80メートル離れた位置にあ り,本件条例第13条第1項の距離制限規定に違反する,③本件墓地の経営が始まることにより, 本件事業所周辺において,本件説明会で周辺住民が指摘したのと同様の生活環境及び衛生環境の悪 化が生じ,本件事業所の業務に無視できない影響を与える懸念がある,④本件墓地の実質的経営者 は,AではなくCである,⑤仮にB市長が本件申請に対して許可をした場合には,D,E共に取消 訴訟の提起も辞さない,というものであった。 B市長は,本件墓地の設置に対する周辺住民の反対運動が激しくなったことも踏まえ,本件申請 に対して何らかの処分を行うこととし,平成30年5月16日,法務を担当する総務部長に対し, 法に関する許可等を所管する環境部長及びB市の顧問弁護士Fを集めて検討会議を行い,本件申請 に対して,許可処分(以下「本件許可処分」という。)を行うのか,あるいは不許可処分(以下「本 件不許可処分」という。)を行うのか,また,それぞれの場合にどのような法的な問題があるのか を検討するよう指示した。 以下に示された【検討会議の会議録】を読んだ上で,弁護士Fの立場に立って,設問に答えなさ い。ただし,検討に当たっては,本件条例は適法であるとの前提に立つものとする。 なお,関係法令の抜粋を【資料 関係法令】に掲げてあるので,適宜参照しなさい。 〔設問1〕 B市長が本件申請に対して本件許可処分を行い,D及びEが本件許可処分の取消しを求めて取消 訴訟を提起した場合について,以下の点を検討しなさい。 ⑴ D及びEは,上記取消訴訟の原告適格があるとして,それぞれどのような主張を行うと考えら れるか。また,これらの主張は認められるか。B市が行う反論を踏まえて,検討しなさい。 ⑵ 仮に,Eが上記取消訴訟を適法に提起できるとした場合,Eは,本件許可処分が違法であると して,どのような主張を行うと考えられるか。また,これに対してB市はどのような反論をすべ きか,検討しなさい。 〔設問2〕 B市長が本件申請に対して本件不許可処分を行い,Aが本件不許可処分の取消しを求めて取消訴 訟を提起した場合,Aは,本件不許可処分が違法であるとして,どのような主張を行うと考えられ るか。また,これに対してB市はどのような反論をすべきか,検討しなさい。 【検討会議の会議録】 総務部長:市長からの指示は,本件申請に対して本件許可処分を行った場合と本件不許可処分を行っ た場合それぞれに生じる法的な問題について,考えられる訴訟への対応も含めて検討してほ しいというものです。法第10条第1項は,墓地経営許可の具体的な要件をほとんど定めて おらず,本件条例が墓地経営許可の要件や手続を具体的に定めているのですが,本件条例の 法的性質についてはどのように考えるべきでしょうか。 弁護士F:法第10条第1項の具体的な許可要件や手続を定める条例の法的性質については,様々な 見解があり,また,地方公共団体によっても扱いが異なるようです。本日の検討では,本件 条例は法第10条第1項の許可要件や手続につき,少なくとも最低限遵守しなければならな い事項を具体的に定めたものであるという前提で検討することにしましょう。 総務部長:分かりました。では,まず,本市が本件申請に対して本件許可処分を行った場合の法的問 題について検討しましょう。この場合,D及びEが原告となって本件許可処分の取消しを求 めて取消訴訟を提起することが考えられます。このような訴訟は,法的に可能なのでしょう か。 弁護士F:D及びEに取消訴訟を提起する原告適格が認められるかどうかが争点となります。取消訴 訟の他の訴訟要件については特に欠けるところはないと思います。D及びEは,本件許可処 分が行われた場合,それぞれどのような不利益を受けると考えて取消訴訟を提起しようとし ているのでしょうか。 環境部長:まず,Dについては,既にDの墓地は余り気味で,空き区画が出ているそうです。本件墓 地は規模が大きく,本件墓地の経営が始まると,Dは,自らの墓地経営が立ち行かなくなる のではないかと懸念しています。墓地経営には公益性と安定性が必要であり,墓地の経営者 の経営悪化によって,墓地の管理が不十分となることは,法の趣旨目的から適切ではないと 考えることもできるでしょうね。 弁護士F:ええ。そのことと本件条例が墓地の経営主体を制限していることとの関連も検討する必要 がありそうです。 環境部長:次に,Eについては,D所有土地に本件事業所を置いています。Eは,本件墓地の経営が 始まることにより,本件事業所周辺において,本件説明会で周辺住民が指摘したのと同様の 生活環境及び衛生環境の悪化が生じ,本件事業所の業務に無視できない影響を与える懸念が あると考えています。本件事業所の利用者は数日間滞在することもありますので,その限り では住宅の居住者と変わりがない実態があります。 総務部長:D及びEに原告適格が認められるかどうかについては,いろいろな考え方があると思いま す。本市としては,D及びEが,原告適格が認められるべきであるとしてどのような主張を 行うことが考えられるのか,そして,それに対して裁判所がどのような判断をすると考えら れるのかを検討する必要があると思います。これらの点について,F先生に検討をお願いし ます。 弁護士F:了解しました。 総務部長:次に,仮に原告適格が認められるとした場合,本件許可処分の違法事由としてどのような 主張がされるのかについて検討します。主張される違法事由については,DとEとで重複が 見られますので,本日は,Eの立場からの主張のみを検討したいと思います。 環境部長:Eは,まず,本件事業所がD所有土地に存在することで本件許可処分は本件条例第13条 第1項の規定に違反すると主張しています。そのような主張がされた場合,本市としてはど のように反論するのか考えておく必要がありますね。 弁護士F:そうですね。また,本件においては,仮に,本件墓地の経営許可を阻止するため,DとE が協力して本件事業所を意図的にD所有土地に設置したという事情があるならば,このよう な事情を距離制限規定との関係で法的にどのように評価すべきかについても,検討する必要 がありそうです。 総務部長:F先生が今指摘された事情は,Eの原告適格に関しても問題になるのではないでしょうか。 弁護士F:原告適格の問題として整理する余地もあると思います。しかし,本日の検討では,原告適 格ではなく,本案の主張の問題として考えておきたいと思います。 環境部長:本件許可処分の他の違法事由として,Eは,本件墓地の実質的な経営者は,AではなくC であると主張しています。 総務部長:本件墓地の実質的な経営者が,AとCのいずれであるかは検討を要する問題ですね。仮に 実質的な経営者がCであるとした場合,法的に問題があるのでしょうか。 弁護士F:本件条例によると,墓地の経営者は,地方公共団体のほか,宗教法人,公益社団法人等に 限られています。仮に本件墓地の実質的な経営者がCであるとすれば,このような点も踏ま え,法や本件条例の関連諸規定に照らして違法となるのかについて,注意深く検討する必要 がありますね。 総務部長:では,この点についてもF先生に検討をお願いします。また,以上のような本件許可処分 の違法事由について,Eがこれら全てを取消訴訟において主張できるかについても,検討す る必要がありますね。 弁護士F:はい。Eが,自己の法律上の利益との関係で,いかなる違法事由を主張できるかにも注意 して検討すべきと考えています。 総務部長:次に,本件申請に対して,本件不許可処分を行った場合です。この場合にはAが本件不許 可処分の取消しを求めて取消訴訟を提起することが想定されます。本日は,この取消訴訟に おける本案の主張の検討をお願いします。 環境部長:環境部では本件不許可処分をする場合の処分理由として,次のことを考えています。(ア) 本件墓地周辺の生活環境及び衛生環境が悪化する懸念から,周辺住民の反対運動が激しくな ったこと,(イ)Dの墓地を含むB市内の墓地の供給が過剰となり,それらの経営に悪影響が 及ぶこと,(ウ)本件事業所が本件土地から約80メートル離れた位置にあること,の3点で す。 弁護士F:(ウ)については先ほど検討しましたので,本件不許可処分の問題としては,検討を省略し ましょう。まず,(ア)について補足される点はありますか。 環境部長:Aは,本件墓地の設置に当たっては,植栽を行うなど,周辺の生活環境と調和するよう十 分配慮しているとしていますが,住民の多くはそれでは十分ではないと考えています。 弁護士F:次に,(イ)についてですが,本件墓地の経営は,B市内の既存の墓地に対して大きな影響 を与えるのでしょうか。 環境部長:Dの墓地を含めて,B市内には複数の墓地がありますが,いずれも供給過剰気味で,空き 区画が目立つようになっています。本件墓地の経営が始まれば,Dの墓地のような小規模な 墓地は経営が破綻する可能性もあると思います。 総務部長:では,これらの(ア)及び(イ)の処分理由に対して想定されるAからの主張について,本市か らの反論を含めて,F先生に検討をお願いします。 弁護士F:了解しました。 【資料 関係法令】 ○ 墓地,埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号)(抜粋) 第1条 この法律は,墓地,納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が,国民の宗教的感情に適合し,且 つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から,支障なく行われることを目的とする。 第2条 この法律で「埋葬」とは,死体(中略)を土中に葬ることをいう。 2,3 (略) 4 この法律で「墳墓」とは,死体を埋葬し,又は焼骨を埋蔵する施設をいう。 5 この法律で「墓地」とは,墳墓を設けるために,墓地として都道府県知事(市又は特別区にあつ ては,市長又は区長。以下同じ。)の許可を受けた区域をいう。 6,7 (略) 第10条 墓地,納骨堂又は火葬場を経営しようとする者は,都道府県知事の許可を受けなければな らない。 2 (略) ○ B市墓地等の経営の許可等に関する条例(抜粋) (趣旨) 第1条 この条例は,墓地,埋葬等に関する法律(昭和23年法律第48号。以下「法」という。) 第10条の規定による経営の許可等に係る事前手続並びに墓地,納骨堂又は火葬場(以下「墓地等」 という。)の設置場所等,構造設備及び管理の基準その他必要な事項を定めるものとする。 (墓地等の経営主体) 第3条 墓地等を経営することができる者は,原則として地方公共団体とする。ただし,次の各号の いずれかに該当し,B市長(以下「市長」という。)が適当と認める場合は,この限りでない。 ⑴ 宗教法人法(中略)に規定する宗教法人で,同法の規定により登記された事務所を,B市(以 下「市」という。)の区域内に有するもの ⑵ 墓地等の経営を目的とする公益社団法人又は公益財団法人で,登記された事務所を,市の区域 内に有するもの 2 前項に規定する事務所は,その所在地に設置されてから,3年を経過しているものでなければな らない。 (説明会の開催) 第6条 法第10条第1項の規定による経営の許可を受けて墓地等を経営しようとする者は,当該許 可の申請に先立って,規則で定めるところ〔注:規則の規定は省略〕により,墓地の設置等の計画 について周知させるための説明会を開催し,速やかにその説明会の内容等を市長に報告しなければ ならない。 (経営の許可の申請) 第9条 法第10条第1項の規定による経営の許可を受けようとする者は,次の各号に掲げる事項を 記載した申請書を市長に提出しなければならない。 ⑴~⑹ (略) 2 墓地又は火葬場の経営の許可を受けようとする者は,前項の申請書に次の各号に掲げる書類を添 付しなければならない。 ⑴ 法人(地方公共団体を除く。)にあっては,その登記事項証明書 ⑵ 墓地又は火葬場の構造設備を明らかにした図面 ⑶ 墓地にあっては,その区域を明らかにした図面 ⑷ 墓地又は火葬場の周囲100メートル以内の区域の状況を明らかにした図面 ⑸ 墓地又は火葬場の経営に係る資金計画書 ⑹ (略) 3 (略) (墓地等の設置場所等の基準) 第13条 墓地及び火葬場は,次の各号に定めるものの敷地から100メートル以上離れていなけれ ばならない。ただし,市長が市民の宗教的感情に適合し,かつ,公衆衛生その他公共の福祉の見地 から支障がないと認めるときは,この限りでない。 ⑴ 住宅 ⑵ 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(中略)に規定する障害福祉サ ービスを行う施設(入所施設を有するものに限る。) ⑶~⑸ (略) 2 墓地及び火葬場は,飲料水を汚染するおそれのない場所に設置しなければならない。 3 墓地等の土地については,当該墓地等の経営者(地方公共団体を除く。)が,当該墓地等の土地 を所有し,かつ,当該土地に所有権以外の権利が設定されていないものでなければならない。ただ し,市長が当該墓地等の経営に支障がないと認めるときは,この限りでない。 (墓地の構造設備の基準等) 第14条 墓地には,次の各号に掲げる構造設備を設けなければならない。ただし,市長が市民の宗 教的感情に適合し,かつ,公衆衛生その他公共の福祉の見地から支障がないと認めるときは,この 限りでない。 ⑴ 外部から墳墓を見通すことができないようにするための障壁又は密植した垣根 ⑵ 雨水等が停滞しないようにするための排水路 ⑶ 墓地の規模に応じた管理事務所,便所,駐車場並びに給水及びごみ処理のための設備(墓地の 付近にあるこれらのものを含む。) 2 墓地の構造設備については,植栽を行う等周辺の生活環境と調和するように配慮しなければなら ない。

論点の一覧

出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。

設問1(1)

  • 第三者の原告適格の判断枠組み(行訴法9条1項・2項)8点
  • Dの原告適格(既存墓地経営者の経営上の利益)13点
  • Eの原告適格(事業所を適切な環境で円滑に運営する利益)14点

設問1(2)

  • 法10条1項の許可における裁量の有無・性質8点
  • 違法事由① 本件条例13条1項(距離制限)違反の主張7点
  • 違法事由①に対するB市の反論(権利濫用・信義則)10点
  • 違法事由② 名義貸し(実質的経営者がCであること)10点
  • 行訴法10条1項による主張制限9点

設問2

  • (ア)周辺住民の反対運動・環境悪化を理由とする不許可に対するAの主張とB市の反論11点
  • (イ)市内の墓地の需給過剰を理由とする不許可に対するAの主張とB市の反論9点

全体

  • 論理的構成・条文引用の正確性・文章表現1点・簡潔に

出題の趣旨(法務省公表)

本問は,「墓地,埋葬等に関する法律」(以下「法」という。)第10条第1項に基づいて,宗教法人
Aが墓地(以下「本件墓地」という。)の経営許可を申請した場合(以下「本件申請」という。),それに
関して生じる法的な問題について,経営許可の権限を有する地方公共団体B市の主張を考慮しつつ,検
討を求めるものである。本問で論じられるべき第1の問題は,本件申請に対して許可(以下「本件許可
処分」という。)が行われた場合,本件墓地の近隣で別の墓地を経営している宗教法人Dと,障害福祉サ
ービス事業を行う法人Eに,本件許可処分に対して取消訴訟を提起する原告適格が認められるかである
(設問1(1))。論じられるべき第2の問題は,仮にEに原告適格が認められた場合,本件許可処分が違
法であるとして,Eがどのような主張をすることが考えられるか,また,それらの主張が制限を受ける
ことはないかである(設問1(2))。そして,論じられるべき第3の問題は,本件申請に対して不許可処
分(以下「本件不許可処分」という。)が行われ,Aが,本件不許可処分に対して取消訴訟で争う場合,
Aが本件不許可処分の違法事由としてどのような主張をすることができるかである(設問2)。これらの
点を,法,法に関して最小限必要な許可要件や手続を定めた「B市墓地等の経営の許可等に関する条例」
(以下「本件条例」という。)等の資料を踏まえて論じることが求められている。
〔設問1(1)〕は,取消訴訟の原告適格という,取消訴訟の基本的な訴訟要件の理解を問うものであ
る。本問では,DとEは,それぞれ本件許可処分の名宛人ではなく,第三者であることから,行政事件
訴訟法第9条第1項と同条第2項の基準に基づいて,原告適格に関しどのような主張がなされるのか,
また,原告適格は認められるのかを,B市からの反論を踏まえて検討することが求められている。
Dの原告適格の検討に当たっては,既存の墓地の経営主体であるDが,本件墓地によって経営上悪影
響を受けることを理由に,原告適格が認められるのかを論じることとなる。法第1条は,公衆衛生や宗
教感情の保護等を法目的としているが,既存の墓地の保護については特に触れるところはない。しかし,
本件条例第3条第1項が墓地の経営主体を原則として地方公共団体としていることや,本件条例第9条
第2項の経営許可に関する要件を定めた規定により,法や本件条例がその趣旨目的として墓地経営の安
定を求めていると考えることもできることから,墓地経営許可に際して,既存の墓地の利益保護が考慮
されているかどうかを論じることが求められる。
Eの原告適格の検討に当たっては,Eは障害福祉サービス事業を行う事業所を運営していることから,
本件墓地の経営によって,衛生環境や生活環境の悪化を理由に原告適格が認められるのかが問題となる。
本件条例第13条第1項や第14条第1項等を手掛かりとして,法や本件条例が,Eの事業所に対して,
障害福祉サービス事業を行う事業所として,適切な環境の下で円滑に業務を行う利益を保護しているか
を論じることが求められる。
〔設問1(2)〕では,Eが,本件許可処分に対する取消訴訟を適法に提起できるとした場合,本件許
可処分が違法であるとして,どのような主張が可能か,また,それらの主張が制限を受けないかを検討
することが求められる。法第10条第1項に基づく許可については,公益的見地からその許否が判断さ
れ,行政に一定の裁量が認められると考えられるが,どのような根拠に基づいて,いかなる裁量が認め
られるのか,さらに,本件許可処分が,どのような理由から裁量権の範囲を逸脱・濫用し,違法とされ
るのかについて,検討を進めることが求められている。
Eが主張する違法事由としては以下の2点を論じることが求められる。第1に,本件墓地から約80
メートルの距離にあるEの事業所が本件条例第13条第1項(2)の「障害福祉サービスを行う施設(入所
施設を有するものに限る。)」に該当し,本件条例第13条第1項の距離制限に違反することから,本件
許可処分は違法ではないかという点である。さらに,たとえ距離制限に違反していても,Eが,Dと相
談して,説明会や本件申請の後に事業所を移転している等の事情から,本件許可処分を妨害するため,
意図的に本件事業所を移転したとすれば,権利濫用として,そのような違法事由は主張できないのでは
ないかという点もあわせて論じることが求められている。第2に,本件墓地の実質的な経営者は,Aで
はなく,営利企業のCではないのかという,いわばAとCの間で一種の「名義貸し」に当たる行為が行
われたのではないかという点である。法や本件条例には「名義貸し」を明文で禁止する定めは見られな
いが,本件条例が,墓地の経営主体を地方公共団体や宗教法人等に限定し,営利企業への墓地営業許可
を認めていないことや,経営主体に一定の要件を求めていることから,仮に,本件許可処分が「名義貸
し」によって認められたものであるとすれば,法や本件条例の趣旨を潜脱して違法ではないかという主
張を行うことが考えられよう。法や本件条例を踏まえて,資料に示された具体的な事実を通して,Eの
主張を検討することが求められている。
さらに,本件許可処分の違法事由については,Eの「自己の法律上の利益」に関係があるかどうか,
すなわち,行政事件訴訟法第10条第1項による主張制限についても検討することが求められている。
行政事件訴訟法第10条第1項の「自己の法律上の利益」の基本的な理解に基づき,上で述べた各違法
事由の主張が制限されるかどうかを,個別に検討することが求められている。
〔設問2〕は,Aが本件不許可処分に対して取消訴訟を提起した場合,本件不許可処分が違法である
としてどのような主張がなされるのかを問うものである。本件不許可処分の理由としてB市が想定して
いる理由のうち,本問で論じられるべきものは,(ア)本件墓地周辺の住環境が悪化する懸念から,近隣
住民の反対運動が激しくなったこと及び(イ)Dの墓地を含むB市内の墓地の供給が過剰となり,その
経営に悪影響が及ぶことであるが,これらに関して,B市の主張を踏まえて,検討することが求められ
ている。
(ア)については,単に近隣住民の反対運動が激化するということを理由とするにとどまるのであれ
ば,本件不許可処分の根拠としては認められないとの見解もあり得る一方で,B市の立場からは,法第
10条第1項が,墓地の経営許可につき市長に裁量を認めていることを前提にして,住環境の悪化を懸
念する反対運動の存在を考慮することは適法との見解もあり得,これらを比較して論じることが求めら
れている。(イ)についても,B市内の墓地の需給を考慮して本件不許可処分を行うことは許されないと
の見解と,B市の立場からは,墓地の公共性や墓地の経営の安定性を求める法や本件条例の規定から,
経営状態が悪化しないように,需給状況を考慮することは,裁量の範囲を超えるものではないという見
解もあり得,これらを比較して論じることが求められている。

参考答案と AI 採点

第1 設問1⑴ 1 原告適格の判断枠組み ⑴ 取消訴訟の原告適格は「法律上の利益を有する者」(行政事件訴訟法9条1項)に認められるところ、これは当該処分により自己の権利若しくは法律…

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