平成30年 司法試験 論文式 行政法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕⑴,〔設問1〕⑵,〔設問2〕の配点割合は,35:40:25〕)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1(1)
- 第三者の原告適格の判断枠組み(行訴法9条1項・2項)8点
- Dの原告適格(既存墓地経営者の経営上の利益)13点
- Eの原告適格(事業所を適切な環境で円滑に運営する利益)14点
設問1(2)
- 法10条1項の許可における裁量の有無・性質8点
- 違法事由① 本件条例13条1項(距離制限)違反の主張7点
- 違法事由①に対するB市の反論(権利濫用・信義則)10点
- 違法事由② 名義貸し(実質的経営者がCであること)10点
- 行訴法10条1項による主張制限9点
設問2
- (ア)周辺住民の反対運動・環境悪化を理由とする不許可に対するAの主張とB市の反論11点
- (イ)市内の墓地の需給過剰を理由とする不許可に対するAの主張とB市の反論9点
全体
- 論理的構成・条文引用の正確性・文章表現1点・簡潔に
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,「墓地,埋葬等に関する法律」(以下「法」という。)第10条第1項に基づいて,宗教法人
Aが墓地(以下「本件墓地」という。)の経営許可を申請した場合(以下「本件申請」という。),それに
関して生じる法的な問題について,経営許可の権限を有する地方公共団体B市の主張を考慮しつつ,検
討を求めるものである。本問で論じられるべき第1の問題は,本件申請に対して許可(以下「本件許可
処分」という。)が行われた場合,本件墓地の近隣で別の墓地を経営している宗教法人Dと,障害福祉サ
ービス事業を行う法人Eに,本件許可処分に対して取消訴訟を提起する原告適格が認められるかである
(設問1(1))。論じられるべき第2の問題は,仮にEに原告適格が認められた場合,本件許可処分が違
法であるとして,Eがどのような主張をすることが考えられるか,また,それらの主張が制限を受ける
ことはないかである(設問1(2))。そして,論じられるべき第3の問題は,本件申請に対して不許可処
分(以下「本件不許可処分」という。)が行われ,Aが,本件不許可処分に対して取消訴訟で争う場合,
Aが本件不許可処分の違法事由としてどのような主張をすることができるかである(設問2)。これらの
点を,法,法に関して最小限必要な許可要件や手続を定めた「B市墓地等の経営の許可等に関する条例」
(以下「本件条例」という。)等の資料を踏まえて論じることが求められている。
〔設問1(1)〕は,取消訴訟の原告適格という,取消訴訟の基本的な訴訟要件の理解を問うものであ
る。本問では,DとEは,それぞれ本件許可処分の名宛人ではなく,第三者であることから,行政事件
訴訟法第9条第1項と同条第2項の基準に基づいて,原告適格に関しどのような主張がなされるのか,
また,原告適格は認められるのかを,B市からの反論を踏まえて検討することが求められている。
Dの原告適格の検討に当たっては,既存の墓地の経営主体であるDが,本件墓地によって経営上悪影
響を受けることを理由に,原告適格が認められるのかを論じることとなる。法第1条は,公衆衛生や宗
教感情の保護等を法目的としているが,既存の墓地の保護については特に触れるところはない。しかし,
本件条例第3条第1項が墓地の経営主体を原則として地方公共団体としていることや,本件条例第9条
第2項の経営許可に関する要件を定めた規定により,法や本件条例がその趣旨目的として墓地経営の安
定を求めていると考えることもできることから,墓地経営許可に際して,既存の墓地の利益保護が考慮
されているかどうかを論じることが求められる。
Eの原告適格の検討に当たっては,Eは障害福祉サービス事業を行う事業所を運営していることから,
本件墓地の経営によって,衛生環境や生活環境の悪化を理由に原告適格が認められるのかが問題となる。
本件条例第13条第1項や第14条第1項等を手掛かりとして,法や本件条例が,Eの事業所に対して,
障害福祉サービス事業を行う事業所として,適切な環境の下で円滑に業務を行う利益を保護しているか
を論じることが求められる。
〔設問1(2)〕では,Eが,本件許可処分に対する取消訴訟を適法に提起できるとした場合,本件許
可処分が違法であるとして,どのような主張が可能か,また,それらの主張が制限を受けないかを検討
することが求められる。法第10条第1項に基づく許可については,公益的見地からその許否が判断さ
れ,行政に一定の裁量が認められると考えられるが,どのような根拠に基づいて,いかなる裁量が認め
られるのか,さらに,本件許可処分が,どのような理由から裁量権の範囲を逸脱・濫用し,違法とされ
るのかについて,検討を進めることが求められている。
Eが主張する違法事由としては以下の2点を論じることが求められる。第1に,本件墓地から約80
メートルの距離にあるEの事業所が本件条例第13条第1項(2)の「障害福祉サービスを行う施設(入所
施設を有するものに限る。)」に該当し,本件条例第13条第1項の距離制限に違反することから,本件
許可処分は違法ではないかという点である。さらに,たとえ距離制限に違反していても,Eが,Dと相
談して,説明会や本件申請の後に事業所を移転している等の事情から,本件許可処分を妨害するため,
意図的に本件事業所を移転したとすれば,権利濫用として,そのような違法事由は主張できないのでは
ないかという点もあわせて論じることが求められている。第2に,本件墓地の実質的な経営者は,Aで
はなく,営利企業のCではないのかという,いわばAとCの間で一種の「名義貸し」に当たる行為が行
われたのではないかという点である。法や本件条例には「名義貸し」を明文で禁止する定めは見られな
いが,本件条例が,墓地の経営主体を地方公共団体や宗教法人等に限定し,営利企業への墓地営業許可
を認めていないことや,経営主体に一定の要件を求めていることから,仮に,本件許可処分が「名義貸
し」によって認められたものであるとすれば,法や本件条例の趣旨を潜脱して違法ではないかという主
張を行うことが考えられよう。法や本件条例を踏まえて,資料に示された具体的な事実を通して,Eの
主張を検討することが求められている。
さらに,本件許可処分の違法事由については,Eの「自己の法律上の利益」に関係があるかどうか,
すなわち,行政事件訴訟法第10条第1項による主張制限についても検討することが求められている。
行政事件訴訟法第10条第1項の「自己の法律上の利益」の基本的な理解に基づき,上で述べた各違法
事由の主張が制限されるかどうかを,個別に検討することが求められている。
〔設問2〕は,Aが本件不許可処分に対して取消訴訟を提起した場合,本件不許可処分が違法である
としてどのような主張がなされるのかを問うものである。本件不許可処分の理由としてB市が想定して
いる理由のうち,本問で論じられるべきものは,(ア)本件墓地周辺の住環境が悪化する懸念から,近隣
住民の反対運動が激しくなったこと及び(イ)Dの墓地を含むB市内の墓地の供給が過剰となり,その
経営に悪影響が及ぶことであるが,これらに関して,B市の主張を踏まえて,検討することが求められ
ている。
(ア)については,単に近隣住民の反対運動が激化するということを理由とするにとどまるのであれ
ば,本件不許可処分の根拠としては認められないとの見解もあり得る一方で,B市の立場からは,法第
10条第1項が,墓地の経営許可につき市長に裁量を認めていることを前提にして,住環境の悪化を懸
念する反対運動の存在を考慮することは適法との見解もあり得,これらを比較して論じることが求めら
れている。(イ)についても,B市内の墓地の需給を考慮して本件不許可処分を行うことは許されないと
の見解と,B市の立場からは,墓地の公共性や墓地の経営の安定性を求める法や本件条例の規定から,
経営状態が悪化しないように,需給状況を考慮することは,裁量の範囲を超えるものではないという見
解もあり得,これらを比較して論じることが求められている。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成30年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
