平成29年 司法試験 論文式 商法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,35:40:25〕)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1(1)
- 設立費用に関する判例の立場の指摘(大判昭和2年7月4日等)6点
- 判例の当否の検討(設立中の会社・発起人の権限との関係)8点
- 総額100万円が定款記載額80万円を超える場合の債務の帰属とD・Eへの支払拒否の可否15点
設問1(2)
- 定款に記載のない財産引受けの効力と追認の許否(判例の立場を踏まえた検討)10点
- 甲社が本件機械の引渡しを受けるための方法と必要な会社法上の手続(事後設立)12点
設問2
- Gの原告適格(831条1項柱書後段)2点・簡潔に
- Kによる議決権の代理行使と代理人資格を株主に制限する定款(決議方法の定款違反・831条1項1号)7点
- Jの株式併合を必要とする理由の説明(180条4項)と決議方法の法令違反6点
- Lに議決権を行使させなかったことの適否(130条1項が相続に適用されるか・基準日)7点
- 甲社による議決権行使と特別利害関係人による著しく不当な決議(831条1項3号)5点
- 決議無効事由としての株主平等原則(109条1項)違反3点・簡潔に
設問3
- 1株に満たない端数の処理の手続(235条、234条2項〜5項)6点
- 反対株主の株式買取請求(182条の4)とLの「反対株主」該当性9点
全体
- 論理的構成・条文の引用の正確性・文章表現4点
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,①発起人が取引の相手方に対し設立費用について未払額を残した状態で会社が成立
した場合において設立費用の総額が定款に記載した金額を超えていたときの設立費用の負担
(設問1⑴),②定款に記載がない財産引受けの効力及び当該財産引受けの追認の許否等(設
問1⑵),③買収者が対象会社の少数株主を会社から退出させる(締め出す)目的で行われた
株式の併合に係る株主総会の決議の取消事由及び無効事由(設問2),④株式の併合により株
式の数に1株に満たない端数が生ずるときの当該端数の処理の手続や反対株主の株式買取請求
(設問3)に関する理解等を問うものである。
設問1⑴においては,判例は,設立費用の全部又は一部が未払の状態で会社が成立した場合
には,債務は,定款に記載した金額(会社法第28条第4号)の範囲で,成立後の会社に帰属
し,その金額の範囲では,取引の相手方は,成立後の会社に対し,弁済等を請求することがで
き,発起人に対しては,弁済等を請求することができないという立場を採っていること(大判
昭和2年7月4日民集6巻428頁,大判昭和8年3月27日法学2巻1356頁)を明らか
にするとともに,判例に賛成し,又は反対するいずれかの立場から,その当否を検討すること
が求められる。
判例に賛成する見解としては,設立費用の総額が定款に記載した金額を超えていた場合にお
いては,債務は,①契約を締結した順序により,契約を締結した順序が明らかでないときは,
債務の額に応じた按分の方法により,定款に記載した金額の範囲で,成立後の会社に帰属する
というものや,②契約を締結した順序にかかわらず,債務の額に応じた按分の方法により,定
款に記載した金額の範囲で,成立後の会社に帰属するというものなどが考えられる。他方で,
判例に反対する見解としては,債務は,①定款に記載した金額の範囲であっても,成立後の会
社に帰属せず,取引の相手方は,発起人に対し,弁済等を請求することができるにとどまり,
弁済等をした発起人が,定款に記載した金額の範囲で,成立後の会社に対し,求償をすること
ができるにすぎないというものや,②定款に記載した金額にかかわらず,全て成立後の会社に
帰属し,取引の相手方は,成立後の会社に対し,弁済等を請求することができ,定款に記載し
た金額を超えている部分については,会社が,発起人に対し,求償をすることができるという
もの,③取引の相手方は,会社及び発起人のいずれに対しても,弁済等を請求することができ
るというものなどがある。判例に賛成し,又は反対するいずれの立場を採る場合であっても,
これらの見解といわゆる設立中の会社の概念や発起人の権限の範囲との関係を意識し,甲社が
Dから求められた賃料60万円の支払及びEから求められた報酬40万円の支払を拒否するこ
とができるかどうかについて,事案に即して説得的に論ずることが望まれる。
設問1⑵においては,甲社の代表取締役Cから相談を受けた弁護士の立場に立って,判例が,
定款に記載がない財産引受けは,無効であり,譲渡人も無効を主張することができ,会社成立
後,株主総会の特別決議をもってこれを承認しても,有効とならず,成立後の会社が追認して
も,有効とならないとしていること(最判昭和28年12月3日民集7巻12号1299頁,
最判昭和42年9月26日民集21巻7号1870頁,最判昭和61年9月11日裁判集民1
48号445頁)を意識しながら,本件購入契約に関する会社法上の問題点として,定款に記
載がない財産引受けの効力及び当該財産引受けの追認の許否について,説得的に論ずることが
求められる。その上で,甲社が本件機械の引渡しを受けるために採ることができる方法及びこ
れに必要となる会社法上の手続について,判例に賛成する見解からは,甲社がFから本件機械
を購入する契約を改めて締結しなければならず(この場合には,Fの増額要求をある程度受け
入れるのもやむを得ないであろう。),そのために,本問においては,本件機械の価額及び甲社
の純資産額等に照らし,本件機械の取得が事後設立に当たり,株主総会の特別決議によって,
当該契約の承認を受けなければならないこと(会社法第467条第1項第5号,第309条第
2項第11号)に言及しながら,事案に即して検討することが望まれる。他方で,判例に反対
し,定款に記載がない財産引受けの追認を認める見解からは,本件購入契約を追認することが
考えられるが,そのために,本問においては,本件機械の価額及び甲社の純資産額等に照らし,
株主総会の特別決議によって,当該契約の承認を受けなければならないと考えられること(同
法第467条第1項第5号類推,第309条第2項第11号類推)などに言及しながら,事案
に即して検討することが望まれる。
設問2においては,乙社の創業者の一族である株主Gが,平成28年7月11日を効力発生
日とする株式の併合により株主の地位を失ったとしても,本件決議の取消しにより株主の地位
を回復するので,本件決議の取消しの訴えについて原告適格を有すること(会社法第831条
第1項柱書き後段)を前提として,Gの立場から,買収者である甲社が対象会社である乙社の
少数株主を会社から退出させる(締め出す)目的で行われた株式の併合に係る本件決議の取消
事由について論ずるとともに,その無効事由についても,事案に即して説得的に論ずることが
求められる。
本件決議の取消事由として,第1に,本件持株会の会員であるKが,株主名簿に記載されて
いる株主でないにもかかわらず,本件持株会理事長Hの代理人として議決権を行使したことが,
株主総会の決議の方法の定款違反(会社法第831条第1項第1号)に当たるか否かについて,
株主は,代理人によってその議決権を行使することができる(同法第310条第1項)が,乙
社の定款第16条は,議決権を行使する株主の代理人の資格を当該会社の株主に制限している
ところ,判例が,そのような定款の規定は,株主総会が,株主以外の第三者によって攪乱され
ることを防止し,会社の利益を保護する趣旨に出たものと認められ,合理的な理由による相当
程度の制限ということができるから,有効であるとしていること(最判昭和43年11月1日
民集22巻12号2402頁)を前提として,そのような趣旨も踏まえて,検討することが求
められる。例えば,Kは,株主名簿上の株主ではないが,実質的に乙社の株主であることをど
のように評価するかが検討対象となろう。
第2に,乙社の代表取締役Jは本件株主総会において株式の併合をすることを必要とする理
由を説明している(会社法第180条第4項)が,Jの説明の内容に照らし,その説明が株主
総会の決議の方法の法令違反(同法第831条第1項第1号)に当たるか否かについて,事案
に即して検討することが求められる。
第3に,Iの相続人である株主Lに議決権を行使させなかったことが,株主総会の決議の方
法の法令違反(会社法第831条第1項第1号)に当たるか否かなどについて,株式の譲渡の
対抗要件に関する同法第130条第1項が株式の相続にも適用されるか否かに言及しながら,
事案に即して検討することが求められる。
第4に,買収者である甲社の代表取締役Cが甲社を代表して議決権を行使しているところ,
本件決議が,株主総会の決議について特別の利害関係を有する者が議決権を行使したことによ
る著しく不当な決議(会社法第831条第1項第3号)に当たるか否かについて,事案に即し
て検討することが求められる。
本件決議の無効事由としては,買収者である甲社が対象会社である乙社の少数株主を会社か
ら退出させる(締め出す)目的で行われた株式の併合が,株主平等原則(会社法第109条第
1項)に違反するか否かについて,論ずることが求められる。
設問3においては,平成28年7月11日を効力発生日とする株式の併合により乙社の株式
を失うこととなる株主Lの経済的利益が会社法上どのように保護されるかについて,説明及び
検討することが求められる。
まず,株式の併合により株式の数に1株に満たない端数が生ずるときの当該端数の処理の手
続(会社法第235条,第234条第2項から第5項まで)について説明する必要がある。
次に,反対株主の株式買取請求(会社法第182条の4)についても説明することが求めら
れる。その際には,株主Lは,本件株主総会に先立って株式の併合に反対する旨を乙社に対し
通知したが,本件株主総会の会場への入場を認められなかったため,本件株主総会において株
式の併合に反対していないこと(同法第182条の4第2項第1号参照)から,株主Lが乙社
に対し株式買取請求をすることができるかどうかについて,同法第130条第1項が株式の相
続にも適用されるか否かについての設問2における検討と整合的かつ説得的に論ずることが求
められる。
例えば,株式の相続は「株式の譲渡」(会社法第130条第1項)に当たらないとの立場を
採ると,相続人は名義書換えをすることなく,株式の取得を会社に対抗することができ,した
がって,Lは本件株主総会において議決権を行使することができた株主となる。この場合には,
前述のとおり,形式的には,Lは同法第182条の4第2項第1号に規定する株主の要件を満
たしていないものの,その原因が,Lが本件株主総会の会場への入場を求めたにもかかわらず,
これを乙社の受付担当者が代表取締役Jの指示に基づき不当に拒否したことにあるから,乙社
は同号の規定によるLからの株式買取請求を信義則上拒否することができないと解し,又はL
は同項第2号に規定する株主(「当該株主総会において議決権を行使することができない株主」)
に当たり,Lは乙社に対し株式買取請求をすることができると解することが考えられよう。
他方で,株式の相続は「株式の譲渡」(会社法第130条第1項)に含まれるとの立場を採
ると,相続人は株主総会に係る議決権行使の基準日までに名義書換えをしなければ,株式の取
得を会社に対抗することができず,したがって,Lは本件株主総会において議決権を行使する
ことができなかった株主となる。この場合には,Lが乙社に対し株式買取請求をすることがで
きるかどうかについて,同法第182条の4第2項第2号に規定する株主(「当該株主総会に
おいて議決権を行使することができない株主」)に,株主総会の基準日以前に議決権を有する
株式を取得しながら名義書換えを怠った者(株主総会の基準日後に株主名簿の名義書換えをし
た株主)が含まれるか否かに言及しながら,検討することが期待される(なお,この点に関す
る裁判例として,例えば,東京地決平成21年10月19日金判1329号30頁,東京地決
平成25年9月17日金判1427号54頁参照)。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成29年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
