平成29年 司法試験 論文式 刑事訴訟法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:100)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1・下線部①
- 「必要な処分」(刑訴法222条1項・111条1項)の意義と限界(判断枠組み)7点
- ベランダの柵乗り越え・窓ガラス破壊・解錠の必要性・相当性のあてはめ8点
- 令状呈示(222条1項・110条)の趣旨と呈示前の入室の適否8点
設問1・下線部②
- 「場所」に対する捜索差押許可状の効力が同所にある「物」に及ぶかという問題の所在7点
- 令状の効力が及ぶ範囲の規範定立(場所の管理支配に服する物か否か)7点
- ハンドバッグ捜索のあてはめ(乙の立場・携帯の有無・蓋然性・有形力行使)8点
設問1・下線部③
- 「場所」に対する捜索令状による「身体」の捜索の可否(原則と例外の規範)8点
- 丙のポケット捜索のあてはめ(隠匿の疑い・差押対象物との関連)と実施行為の適法性8点
設問2・1
- 刑訴法328条の趣旨と許容される証拠の範囲(自己矛盾供述に限られるか)8点
- 証拠2・証拠4の個別検討(自己矛盾性・供述者の同一性)8点
- 証拠1の個別検討(署名押印を欠く書面の許容性)7点
設問2・2
- 328条の「証明力を争う」に回復証拠が含まれるか(文言解釈)4点・簡潔に
- 証拠3が甲証言の証明力の回復証拠となり得るかの実質的検討とあてはめ8点
全体
- 論理的構成・条文の正確な引用・文章表現4点
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,国際貨物運送契約及びこれに付随する国際保険契約をめぐる事案を素材として,国
際私法,国際取引法及び国際民事訴訟法に関わる基礎的理解とその応用力を問う出題である。
「国際航空運送についてのある規則の統一に関する条約」(いわゆる「モントリオール条約」
であり,以下「本件条約」という。)は,渉外実務上重要であるところから司法試験用法文に
収録されているものの,これまで出題されていなかった。
〔設問1〕は,統一私法である条約の適用プロセスと国際民事訴訟法上の典型的な論点を問
う出題である。
〔小問1〕では,乙国裁判所を専属管轄裁判所とする旨の航空運送契約中の合意が有効か否
かに関する判断が求められている。解答に当たっては,統一私法である条約を法廷地国が批准
している場合,当該条約が直接に適用されるのか,「手続は法廷地法による」という法原則に
基づいて国際私法を介して適用されるのか,という法適用のプロセスに関する説明が求められ
ている。統一私法である条約の直接適用可能性の有無は,当該条約の趣旨,目的,内容等から
導かれることを示した上で,本件条約の直接適用の有無について論を示さなければならない。
その過程では,少なくとも本件条約第49条の規定に触れることとなろう。本件条約が直接適
用されるとした場合,管轄に関する本件合意の有効性判断に当たっては,本件条約第1条,第
33条及び第49条の解釈及び当てはめが行われなければならない。この統一私法と国際私法
の関係は,複数の基本的体系書において説明されている基本的事項であり,参照条文として引
用されている本件条約の条文を適切に理解して丁寧に当てはめを行えば,解答に達することが
できると思われる。
〔小問2〕では,外国裁判所に債務不存在確認訴訟が係属している場合において,わが国の
裁判所に損害賠償請求訴訟が提起されたとき,後訴をどのように取り扱うべきであるかという,
国際民事訴訟法上の典型的な論点が取り上げられている。前提として,本件条約第33条に基
づいて,甲国裁判所がYの訴えにつき国際裁判管轄権を有するとともに,日本の裁判所が訴訟
物を同一とするXの訴えにつき国際裁判管轄権を有することの確認を通じて,日本における後
訴が二重訴訟となっていることに言及されなければならない。そして,国際的な二重訴訟につ
いて,本件条約及び法の適用に関する通則法等には規定がなく,解釈に委ねられていることを
踏まえて,私見を述べることが求められている。結論としては,本件条約第33条により後訴
の国際裁判管轄権をそのまま認めた上で,執行段階で二重の執行を拒否すれば足りるという処
理もあり得るであろうし,近時,二重訴訟の問題性が指摘されることが多いことを踏まえて,
二重訴訟を禁止すべきであるとする立場から訴えの却下や,訴訟の中止などの処理があり得る。
いずれの立場においても,関連する条文を踏まえつつ,その結論に至る合理的な理由を明らか
にしなければならないし,二重訴訟を禁止すべきであるとする立場であれば,承認予測説,プ
ロパー・フォーラム説(便宜法廷地説)など,しかるべき法律構成が示されなければならない。
民事訴訟法第3条の9の適用可能性に触れる場合,同条が登場する道筋も明らかにされなけれ
ばならない。その上で,問題文から読み取ることのできる事実を丁寧に当てはめる必要がある。
〔設問2〕では,本件貨物の毀損を受けて,Xに対し保険契約に基づいて保険金を支払った
Zが,法律上の代位によりXから本件債権を取得したと主張し,Yに対して損害賠償金の支払
を求める訴えを日本の裁判所に提起した場合において,Zの主張の当否の準拠法いかんが問わ
れている。
XのYに対する債権は本件条約第18条第1項に基づくものであると考えられる。そして,
本件のような,保険契約に基づき保険金を支払ったことを理由として損害賠償請求権を取得す
る,いわゆる法定代位については,本件条約及び通則法のいずれにおいても,明文規定はない。
この点については,本件条約の規律対象になるかどうかを検討した上,条約の規律対象ではな
いとする立場から,別途国内法(通則法)に基づいて準拠法を決定する過程が必要だと考える
かという視点と,法定代位について,債権譲渡と同様に,対象債権の準拠法によると考えるか,
債権の移転原因となった事実(保険契約)の準拠法によると考えるかという視点からの複合的
な検討が求められている。さらに,「保険契約の準拠法(甲国法)による」との構成を採用す
る場合,債務者Yについて,自己の関知しない法によって債務者が不測の不利益を被るべきで
はないという債務者保護の観点から,代位の対象となる債権の準拠法を累積的に適用する必要
があるのではないかという派生的論点も考えられる。また,対象債権の準拠法によると考える
場合には,対象債権が本件条約第18条第1項に直接根拠を持つ債権であることから,本件条
約に規律されていない事項(例えば,債権の移転可能性等)については,どのように属性を決
定するのかという論点もある。
上記のように,本年度の出題も,基礎的知識をいかに運用できるかを問うものとなっている。
どの論点についても,いかなる根拠に基づいていずれの主張を優先するか,それぞれの判断過
程を丁寧に説明することが期待される。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成29年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
