平成29年 司法試験 論文式 刑法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第1問〕(配点:100)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
甲のクレジットカード利用行為(詐欺罪)
- 時計店店主Cに対する1項詐欺罪の成否(名義人の承諾を超えた他人名義カード利用、欺罔行為の内容、財産上の損害、1項・2項の区別)11点
甲のクレジットカード利用行為(文書偽造)
- 売上票へのA名義の署名・交付についての有印私文書偽造罪及び同行使罪の成否9点
甲のクレジットカード利用行為(共犯)
- カード利用を承諾したAとの共同正犯の成否3点・簡潔に
甲のクレジットカード利用行為(対A)
- 約束に反してカードを利用した行為につきAとの関係で成立する犯罪(背任罪又は横領罪)9点
甲乙のAに対する暴行・傷害
- 傷害罪の構成要件該当性及び共同正犯の成否(一連の行為としての把握、共謀の範囲・終了の有無)10点
- 急迫不正の侵害及び防衛の意思4点・簡潔に
- 「やむを得ずにした行為」の意義と共同正犯における相当性判断の方法・具体的当てはめ12点
- 甲の罪責(違法性阻却事由の錯誤/個別判断による正当防衛)と乙の過剰防衛9点
甲乙の財布持ち去り行為
- 窃盗罪の客観的構成要件該当性(Aの占有と窃取)3点・簡潔に
- 死者の占有(窃盗罪の故意におけるAの占有侵害の認識)と抽象的事実の錯誤9点
- 不法領得の意思(甲・乙)7点
- 異なる構成要件間における共同正犯の成否5点・簡潔に
全体
- 罪数処理3点・簡潔に
- 答案構成・論理的整合性・論述の均衡6点
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,外国籍を有する当事者らの身分関係に関わる事案を素材として,国際私法,特に国
際家族法における基礎的理解とその応用力を問う出題である。
〔設問1〕は,外国で外国法に基づき行われた認知について,日本においてもこれが成立し
ていると判断し得るかを問うものであり,認知の成立の準拠法に関する基礎的理解を確認する
問題である。具体的には,根拠条文を示し,事案に当てはめながら,認知の実質的成立要件及
び方式の準拠法をそれぞれ導き出し,その準拠法上定められる要件を満たしているかを検討し
なければならない。
まず,認知の実質的成立要件については,いわゆる認知保護の観点から,親子関係の成立を
容易にできるように選択的適用主義が採用されている。すなわち,子の出生当時(法の適用に
関する通則法(以下「通則法」という。)第29条第1項前段)若しくは認知当時の認知する
者の本国法又は認知当時の子の本国法(同条第2項前段)のいずれか一つの法の実質的成立要
件を満たせばよい。これを理解した上で事案に当てはめることを要するが,その際には,同条
第1項後段及び同条第2項後段に定める,いわゆる「セーフガード条項」として適用される子
の本国法が累積的に適用される場合であるかの見極めも必要となる。
次に,認知の方式については,通則法第34条により,法律行為の実質的成立要件の準拠法
に加えて,法律行為の成立を容易にし,当事者の便宜を図るため,行為地法も方式の準拠法と
する選択的適用主義が採用されている。本問においては乙国において乙国民法に定める方式で
認知が行われていることから,乙国法が同条に定める法であるかを検討することを要する。
以上の検討を踏まえて,結論として,本件認知が日本において有効に成立しているかを判断
することが求められる。
〔設問2〕は,血縁関係の不存在を理由とする認知無効の主張権者に関する準拠法の決定と
適用を問うものであり,設問1と比較すると,やや応用的な出題である。本問では,認知の方
式に関しては通則法が定める準拠法上の要件を満たすものと問題文で設定されていることか
ら,認知の実質的成立要件を欠くことによる認知の無効が問題となる。このような認知の無効
は,その主張権者の範囲も含めて,認知の成立自体に関わる問題であり,同法第29条に定め
る認知の準拠法によると考えられている。
前述のとおり,認知の準拠法については選択的適用主義が採られているが,本問のように,
準拠法とされる複数の法が認知無効の主張権者について異なる定めをする場合,いずれの法に
よるべきかが問題となる。この点に関し,通則法第29条が基礎としている認知保護の趣旨や
選択的適用主義を敷衍して,認知を否定する局面である無効についてどのように法適用するか
を述べた上で,結論を導くことが求められる。
〔設問3〕は,親族間の扶養義務の準拠法の決定と適用に関する基礎的理解を問うものであ
る。まず,扶養義務の準拠法に関する法律(以下「扶養義務法」という。)第1条から,本問
での傍系血族間の扶養義務の問題が扶養義務法の適用範囲となることは明らかであり,通則法
ではなく,扶養義務法が適用されることを示すことを要する。通則法第43条第1項において
その点を明確にするための規定が設けられている。
続いて,扶養義務法第2条の当てはめを丁寧に行い,どの国の法が準拠法となるかを適切に
導き出すことが求められる。同条第1項本文では,扶養権利者の常居所地法を第1順位の準拠
法として定めている。問題文から得られる常居所認定に関する間接事実には日本と乙国の双方
を示唆するものが含まれているが,いずれの結論であっても,常居所をどのように理解し,ど
のような判断基準に基づいて決定するかについて一定の私見を示し,問題文から得られる間接
事実を当てはめて本問における扶養権利者の常居所地法を導き出すことが求められる。
当該常居所地法によって扶養権利者が扶養義務者から扶養を受けることができない場合に
は,扶養権利者の保護を図るため,扶養義務法第2条第1項ただし書により,当事者の共通本
国法が適用される。本問で扶養を求めているDと求められているEとは,4親等の傍系親族関
係にある。日本法及び乙国法上,4親等内の傍系親族間での扶養義務は認められていないため,
本問においても当事者の共通本国法が準拠法となるかを更に検討しなければならない(なお,
共通本国法によって扶養権利者が扶養義務者から扶養を受けることができないときは,更に同
条第2項により日本法が準拠法となる。)。この点に関しては,本問における扶養権利者が二重
国籍者であることから,共通本国法がどのように決定されるかを理解することができているか
も評価ポイントとなる。通則法第38条第1項のような重国籍者の本国法を一つに絞る規定は,
扶養義務法にはなく(扶養義務への通則法第38条の適用は,同法第43条により排除されて
いる。),また,扶養権利者の保護を厚くするという立法趣旨にも合致するように,当事者双方
が共通に国籍を有する国があればその国の法を共通本国法とすると理解されている。この点を
理解した上で,共通本国法として甲国法を導くことを要する。
以上のように,問題文に設定された条件に基づき丁寧に準拠法を決定するための当てはめを
行い,4親等内の傍系親族間の扶養義務が甲国法上認められることから,甲国法が準拠法とな
ることを結論として述べることを要する。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成29年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
