平成29年 司法試験 論文式 行政法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕⑴,〔設問1〕⑵,〔設問2〕⑴,〔設問2〕⑵の配点割合は,
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1(1)
- 訴訟類型の選択と「一定の処分」の特定(行訴法3条6項1号・37条の2)6点
- 原告適格(37条の2第3項・4項,9条2項)13点
- 重大な損害を生ずるおそれ(37条の2第1項・2項)8点
- 補充性(他に適当な方法がないこと)と民事訴訟の可能性6点
設問1(2)
- 道路法43条2号違反該当性と要件裁量9点
- 監督処分についての効果裁量と裁量権の逸脱濫用(37条の2第5項)9点
設問2(1)
- 処分性の判断枠組みと公権力性5点・簡潔に
- 道路の区域決定・供用開始の敷地所有者に対する法効果と路線廃止による解除8点
- 通行者の法的地位に対する影響5点
設問2(2)
- 道路法10条1項「一般交通の用に供する必要がなくなつた」の要件解釈7点
- 10条1項の要件裁量・効果裁量の有無5点
- 裁量権の逸脱濫用(調査不足・考慮事項の不足)7点
- 内部基準(隣接土地所有者全員の同意)の法的性質と逸脱の違法7点
全体
- 論理的構成・文章表現・設問の指示への対応5点・簡潔に
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,道路法第8条により市町村道としての認定を受けていた道路(以下「本件市道」と
いう。)に,本件市道に隣接する保育園(以下「本件保育園」という。)を経営する社会福祉法
人Aが簡易フェンス(以下「本件フェンス」という。)を設置し,さらに,本件市道を管理す
るY市が同法第10条第1項に基づき本件市道の路線を廃止してAに売り渡すことを検討して
いるという事案における法的問題について論じさせるものである。論じさせる問題は,本件市
道の路線がまだ廃止されていない状態における本件フェンスを撤去させるための抗告訴訟(〔設
問1〕)及びY市長が本件市道を廃止した場合を想定した取消訴訟(〔設問2〕)である。問題
文と資料から基本的な事実関係を把握し,同法の関係規定の趣旨を読み解いた上で,非申請型
義務付け訴訟における訴訟要件及び一定の処分がされないことの違法事由並びに取消訴訟にお
ける処分性及び本案の違法事由について論じることを求めるものである。
〔設問1⑴〕は非申請型義務付け訴訟の訴訟要件に関する基本的な理解を問うものである。
行政事件訴訟法第3条第6項第1号及び第37条の2の規定に従って,本件フェンスを撤去さ
せるために道路管理者Y市長が道路法第71条第1項の規定に基づき行うべき処分を「一定の
処分」として具体的に特定した上で,当該処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそ
れがあるか,また,その損害を避けるため他に適当な方法がないか,そして原告適格の有無に
ついて論じなければならない。
重大な損害を生ずるおそれの検討に当たっては,損害の回復の困難の程度を考慮し,損害の
性質及び程度並びに処分の内容及び性質を勘案した上で,本件市道を,X2が小学校への通学
路として利用できないこと及びXらが災害時の避難路として利用ができないこと(以下「本件
被侵害利益」という。)がそれぞれ「重大な損害」に当たるかどうかについて論じることが求
められる。
損害を避けるための他に適当な方法の検討に当たっては,参考判例に示されているように「通
行の自由権」を主張して民事訴訟によるAに対する妨害排除請求の可能性があることを指摘し,
それが「他に適当な方法」に当たるかどうかを検討することが求められる。
原告適格の検討に当たっては,行政事件訴訟法第37条の2第4項で準用されている同法第
9条第2項の規定に基づき,道路法第71条第1項及び第43条第2号の規定の趣旨・目的を
踏まえ,本件被侵害利益がこれらの規定によって考慮されているか,また本件被侵害利益の内
容・性質及びそれが害される態様・程度を勘案しなければならない。
〔設問1⑵〕は,道路管理者による「一定の処分」がなされないことが違法であるかどうか
を論じさせるものである。道路法第71条第1項第1号は「この法律(中略)に違反している
者」に対して監督処分が可能としているため,まず,Aによる本件フェンスの設置行為が同法
第43条第2号に違反しているかどうかを,道路管理者の要件裁量の有無も含めて検討しなけ
ればならない。その上で,Aの行為が同法第43条第2号に違反していると評価された場合で
も,同法第71条第1項第1号は,監督処分を行うかどうか,いかなる監督処分を行うかにつ
いて道路管理者の効果裁量を認めていることを指摘した上で,一方ではXらが受ける本件被侵
害利益,他方でY市側が主張するような諸事情が,裁量権を行使するに当たって考慮すべき事
項に当たるか,考慮に当たってどの程度重視されるべきかについて検討することが求められる。
〔設問2⑴〕は,取消訴訟の訴訟要件である処分性に関する理解を問う問題である。Y市長
が道路法第10条第1項に基づき行うことが想定される本件市道の路線の廃止が,行政事件訴
訟法第3条第2項に定める「行政庁の処分その他公権力の行使」に当たるかどうかを検討する
ことが求められている。
設問に示されているD弁護士の指示に従って道路法の規定を分析して,道路の区域決定・供
用開始が敷地所有者及び道路通行者に対してそれぞれどのような法効果を及ぼすかを検討し,
道路法第10条第1項に基づくY市長による本件市道の路線の廃止が,それらの法効果を一方
的に消滅させるものであることについて論じること,道路通行者については,当該市道を生活
上不可欠な道路として利用していた通行者の生活に著しい支障が生ずる場合があることを踏ま
えた上で論じることが求められる。
〔設問2⑵〕は,Y市長が道路法第10条第1項に基づき行うことが想定される本件市道の
路線の廃止の違法性の有無について論じさせるものである。本件市道の路線の廃止は,同法第
10条第1項「一般交通の用に供する必要がなくなつた」ことを要件にしていることを指摘し
た上で,まず,現に通行者による利用が存在して道路としての機能が喪失していない以上は同
条の要件を満たさないといえるのか,それとも,現に利用が存在しても,通行者による利用の
程度の乏しさ,代替的な交通路の存在などに鑑みて一般交通の用に供するに適さない状況があ
れば「必要がなくなつた」として廃止できるのかを検討し,更に上記の要件該当性の判断につ
いて行政庁に裁量権が認められるのかを検討しなければならない。また,同法第10条第1項
が「廃止することができる」という文言を用いていること,廃止するかどうかの判断に当たっ
て考慮される事項などの性質に着目して,要件が充足されている場合において廃止するかどう
かの判断についても行政庁に裁量権が認められるのかを検討することが期待される。
その上で,要件裁量又は効果裁量が認められる場合は,裁量権の範囲の逸脱濫用の有無を検
討しなければならない。Y市による調査が通行の実態を適切に調査できていないのではないか,
Xらが主張する本件被侵害利益が適切に考慮されていないのではないかなどの点について検討
することが求められる。
また,Y市は道路法第10条第1項の路線廃止について,隣接土地所有者の同意を必要とす
る内部基準を定め,これをウェブサイトで公表しているが,本件において,当該内部基準の法
的性質及び,本件において隣接土地所有者であるX1の同意が得られていないことが,裁量権
の範囲の逸脱濫用の有無とどのように関係するかを検討することが求められる。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成29年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
