平成25年 司法試験 論文式 商法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,2:5:3〕)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- 株式譲渡の当事者間の効力・会社に対する効力・対抗要件の枠組みの整理(株券発行会社・非公開会社)3点・簡潔に
- 会社法145条1号のみなし承認の要件充足と、Aが取締役会に諮ることを回避した事情の摘示5点
- 制度趣旨と異なる目的でみなし承認制度を利用した場合のみなし承認の効力5点
- 名義書換未了のFを会社側から株主として取り扱うことの当否(130条・最判昭30.10.20・不当拒絶類似)7点
設問2(1)
- 招集通知に記載のない議題を当日提案・決議したこと(309条5項違反)→831条1項1号の決議取消事由8点
- 共有株式の権利行使者の指定(106条)の効力とBの議決権行使を認めなかった取扱いの評価9点
- 831条1項3号(特別利害関係人の議決権行使による著しく不当な決議)7点
- 設問1の結論に応じたEへの招集通知漏れ・Fの議決権行使に係る取消事由3点・簡潔に
- 831条2項による裁量棄却の可否3点・簡潔に
設問2(2)
- 決議取消しの遡及効→平成23年総会決議の報酬総額枠の存続→枠超過の取締役会決議の効力(全部無効・一部無効)10点
- A・D・Gに対する不当利得としての報酬返還請求の可否と具体的金額10点
設問3
- 株主割当てによる募集株式発行に対する210条2号(著しく不公正な方法)該当性12点
- 「株主が不利益を受けるおそれ」の要件の検討4点・簡潔に
- 差止請求権を被保全権利とする仮処分(民事保全法23条2項)4点・簡潔に
- 新株発行無効の訴え(828条1項2号)の可否・無効事由10点
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,非公開会社である甲社において代表取締役が自己の支配権を確立するために一連の
方策を講じた事例に関して,譲渡制限株式の譲渡の効力と名義書換未了の場合の取扱い(設問
1),株主総会における取締役の報酬の増額決議の効力,この決議に基づいて支払われた報酬
の返還請求の可否及び範囲(設問2),株主割当てによる新株発行の差止めの可否及び新株発
行の効力(設問3)を問うものである。
設問1前段は,EのFに対する株式譲渡の甲社に対する効力を問うものである。甲社は,株
券発行会社であり,非公開会社であるから,甲社株式の譲渡が甲社に対する関係で効力を生ず
るには,株券の交付により当事者間における株式譲渡の効力が発生することを前提として,取
締役会の決議により株式譲渡の承認がされなければならない。本問では,会社法第145条の
規定によるみなし承認の要件を形式的に充足していることを踏まえた上で,代表取締役Aが,
取締役会においてFに対する株式譲渡が承認されないことを懸念し,これを取締役会に諮るこ
とを回避して上記のみなし承認の要件を充足させたという事情を指摘する必要がある。そして,
このような本来の制度の目的とは異なる目的でみなし承認の制度を利用した点がみなし承認の
効力に影響を与え得るか否かについて,株式譲渡自由の原則,株式の譲渡制限とみなし承認の
制度趣旨,甲社の既存株主又は譲受人Fのいずれの利益を保護すべきか等に触れながら,説得
的に論ずることが求められる。
設問1後段では,基準日の定めがなく,株主総会当日の株主に議決権を行使させればよいこ
とを前提として,名義書換をしていないFを会社側から株主として取り扱うことができるか否
かについて,名義書換が対抗要件であること(会社法第130条)やその趣旨に照らして論ず
ることが求められる(最判昭和30年10月20日民集9巻11号1657頁参照)。本問で
は,代表取締役Aの言動が原因となってFから名義書換の請求がされていないことから,Fに
法定の手続を履践していないという一定の落ち度は認められるものの,名義書換の不当拒絶に
類似する状況であるという視点から論ずることも考えられる。設問1前段において,みなし承
認の効力を否定し,EのFに対する株式譲渡は甲社に対して効力を生じていないという結論を
採った場合には,株式譲渡の効力要件を具備しながらも名義書換未了の株主を会社側から株主
として取り扱うことができるかという問題とは異なることを意識した上で,論ずることが必要
である。
設問1全体を通じて,株式譲渡の当事者間における効力,会社に対する効力及び会社に対す
る対抗要件について,その制度趣旨,要件,相互の論理的関係等を理解した上で,筋の通った
解答をすることが求められる。
設問2前段は,平成25年総会における取締役の報酬の増額決議の効力を問うものである。
具体的には,まず,①取締役会設置会社である甲社の株主総会において,その招集の際に定め
られた株主総会の目的である事項(会社法第298条第1項第2号)以外の事項について決議
をしたことについて,同法第309条第5項に違反し,株主総会の決議方法の法令違反という
同法第831条第1項第1号の決議取消事由に該当することを指摘する必要がある。また,②
Qの死亡により遺産共有状態にある株式の権利行使者の指定(同法第106条)が共有者の持
分の過半数の同意により行われたことについて,同条の規定の趣旨,上記の権利行使者の指定
の持つ意味,権利行使者の指定に共有者の全員一致を要するとする見解との比較等を踏まえ,
その指定の効力を論じた上で,議長AがBによる議決権の行使を認めなかった取扱いの法的評
価につき,上記①と同様の決議取消事由に該当するか否かを論ずる必要がある(最判平成9年
1月28日集民181号83頁参照)。さらに,③同法第831条第1項第3号の決議取消事
由に関しても,取締役の報酬総額を定める株主総会決議について取締役である株主が特別利害
関係人に該当するか否か,その議決権行使によって著しく不当な決議がされたか否かについて,
本問の事実関係に即して論ずることが求められる。上記①から③までに加え,設問1において,
譲受人Fを株主として取り扱うことができないという結論を採った場合には,Eに株主総会の
招集通知を発していないこと及びFの議決権行使を許容したことについても,決議取消事由に
該当するか否かを論ずることが考えられる。なお,これらの決議取消事由については,同法第
831条第2項の裁量棄却の余地があるか否かを論ずることも期待される。
設問2後段では,平成25年総会における取締役の報酬の増額決議が取り消されると,当該
増額決議は遡及的にその効力を失うこと,その結果,平成23年総会における取締役の報酬総
額の決議がなお効力を有することとなることを前提として,平成23年総会において定められ
た報酬総額の枠を超える額の個別報酬額を定めた取締役会決議の効力を論ずる必要がある。具
体的には,この取締役会決議が全部無効となるのか又は一部無効にとどまるのか,一部無効と
なる場合には,各取締役に対する報酬決定について無効となる金額,全部無効となる場合には,
全部返還を求め得るのか等の検討を踏まえて,結論の妥当性をも意識しつつ,各取締役に対し
て不当利得として報酬の返還を求め得ること及びその具体的金額について,説得的かつ論理的
に論ずることが求められる。
設問3前段は,本問のような株主割当てによる新株発行に対し,不公正発行を理由とする差
止請求(会社法第210条第2号)ができるか否かを問うものである。同号は,株式の発行が
「著しく不公正な方法」により行われることを要件とするところ,本問では,株主全員に申込
みの機会を付与する株主割当ての事案であること,新株発行の目的がAによる支配権の確立に
あること,Aは,取締役の報酬の増額により,払込資金を用意するために有利な状況を自ら作
出していること等の事実を的確に摘示した上で,上記の要件に該当することを説得的に論じ,
また,「株主が不利益を受けるおそれ」という要件についても,株主Bが持株比率の低下とい
う不利益を受けるおそれがあることを記述することが必要である。さらに,差止請求の実効性
を確保する観点から,これを被保全権利とする仮処分(民事保全法第23条第2項)について
も,保全の必要性に関する事情を指摘しつつ,言及すべきである。
設問3後段では,新株発行無効の訴え(会社法第828条第1項第2号)の可否について論
ずることが求められる。この訴えに係る無効事由について法の定めがないことを前提として,
新株発行により形成された法律関係の安定性や新株発行が会社の業務執行に準ずるものである
ことを重視する見解(最判平成6年7月14日集民172号771頁参照)を踏まえつつ,本
問では,甲社が非公開会社であり,株主の持株比率の利益が重視されるべきであること,他方
で,Bは,新株発行差止請求権を被保全権利とする仮処分により救済を受けることが可能であ
ったこと等を意識しながら,説得的に論ずることが必要である。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成25年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
