平成24年 司法試験 論文式 商法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,2:5:3〕)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- 問題の所在の抽出(6名が341条の決議要件を満たすこと/会社提案4名・定款上選任可能数5名以内との齟齬)6点
- ①取締役として何名が選任され得るかについての自説と理由付け6点
- ②選任可能数を超えて決議要件を満たす候補者がいる場合の決定方法と当てはめ(B・C・D・Pの選任の当否の結論)6点
設問2(1)
- 株主Aの違法行為差止請求(360条1項・3項)6点
- 監査役Fの差止請求(385条1項)および仮処分(385条2項)5点・簡潔に
- 差止めの共通要件『法令若しくは定款に違反する行為』の存否の検討と事実の当てはめ7点
設問2(2)
- 本件貸付けの利益相反取引該当性(365条1項・356条1項2号)5点
- 423条3項各号による任務懈怠の推定とPの無過失責任(428条1項)8点
- 423条1項の責任の内容・損害および推定を覆す事情の検討4点
- 株主Aによる提訴請求と株主代表訴訟(847条)4点
- 監査役Fの提訴権限(386条1項)3点・簡潔に
設問2(1)(2)共通
- 監査役の独任性(390条2項ただし書)と調査権限(381条2項)4点
設問3
- 議案①に係る『否決の決議』が決議取消しの訴えの対象となるか8点
- Fの原告適格(831条1項後段、346条1項)4点
- 監査役の選任に関する意見陳述の機会の剥奪(345条4項・1項)と取消事由(831条1項1号)7点
- A(株主)がFに関する手続上の瑕疵を主張できるか5点
- 設問1の結論に応じた派生的検討(23年総会招集に係る取締役会決議の瑕疵、Q・Rの監査役選任の適否)4点・簡潔に
全体
- 論理的構成・条文摘示の的確さ・文章表現8点
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,22年総会における取締役4名(B,C,D及びP)の選任の当否(設問1),本
件貸付けに関する株主A及び監査役Fによる事前(設問2(1))及び事後(同(2))の対応並び
に23年総会決議に関するA及びFによる決議取消しの訴えの当否(設問3)について,問
うものである。設問2は,会社法の基本的な理解及び事例を踏まえた分析力と論述力を問う
ものである。他方,設問1及び設問3の主な出題意図は,何が問題となるかを見抜き,これ
に論理的に対応する能力を問うことにある。また,全体として,会社法の条文を的確に理解
し,これを摘示することも求められている。
設問1では,22年総会における取締役4名(B,C,D及びP)の選任の当否が問われ
ている。同総会では,㋐A,B,C及びDの4名を候補者とする取締役選任議案が会社提案
として提出され,㋑甲社の定款には,取締役の員数は6名以内と定められている(任期の満
了しない取締役Hがいるため,同総会において選任可能な定款上の取締役の員数は5名以内
となる。)一方で,結果的にはB,C,D,P,Q及びRの6名の取締役候補者について会社
法第341条の選任のための決議要件が満たされていることから,このような場合に,①取
締役として何名が選任され得るか(㋐4名か,㋑5名か,あるいは㋒決議の瑕疵を生じさせ
るにとどまり6名全員かなど)や,②選任され得る取締役の数を超えて同条の決議要件を満
たす候補者がいる場合の決定方法(採決順か得票順かなど)が問題となることを指摘し,自
らの考え方を述べた上,当てはめをすることが求められる。どのような結論を採るにせよ,
その結論が同条を含む会社法の規定から当然に導かれるものではないことに留意しつつ,他
の考え方も意識しながら説得的に自らの考え方を論ずることが期待される。
次に,設問2の本件貸付けに関する株主A及び監査役Fの対応については,事前の対応(小
問(1))としての差止請求と,事後の対応(小問(2))としての損害賠償請求について,それぞ
れ論述することが求められる。小問(1)の差止請求については,会社法第360条第1項及び
第3項と同法第385条第1項を摘示しつつ,その要件(特に「法令に違反する行為」とい
う要件)を検討し,問題文にある事実を抽出した丁寧な当てはめをすることが求められる。
実務的な観点からは,仮処分(同法第385条第2項参照)にも言及することが望ましい。
小問(2)の損害賠償請求については,本件貸付けが利益相反取引(同法第365条第1項,第
356条第1項第2号)に該当することを指摘しつつ,H,D及びPにつき,それぞれ同法
第423条第3項各号により任務懈怠が推定されることを踏まえ(Pについては,更に同法
第428条第1項参照),当てはめをすることが求められる。その上で,株主Aによる責任追
及としては甲社に対する提訴請求及び株主代表訴訟(同法第847条)について,監査役F
による責任追及としてはその提訴権限(同法第386条第1項)について,それぞれ条文を
摘示しつつ論述することが求められる。なお,小問(1)及び(2)に共通して,監査役Fの権限を
論ずるに際しては,甲社の監査役会において,Eが「本件貸付けについては問題視しないこ
とを監査役会の方針とする」旨を提案し,Gがこれに賛成していることから,監査役の独任
性との関係(同法第390条第2項ただし書)について触れることが求められ,また,監査
役の調査権限(同法第381条第2項)についても触れることが望ましい。
最後に,設問3の23年総会決議についての決議取消しの訴えの当否については,まず,
否決を宣言された議案①については,同議案に係る「否決の決議」がそもそも決議取消しの
訴えの対象となるか否かが問題となることを指摘し,これを検討することが求められる。ど
のような結論を採るにせよ,決議取消しの訴えの制度趣旨に立ち返った上で,その対世効や,
決議が取り消された場合には株主は3年経過前でも議案の再提出が可能となること(同法第
304条)等を勘案しながら,自らの考え方を述べることが期待される。次に,可決を宣言
された議案②(上記の検討において,議案①が決議取消しの訴えの対象となるとの結論を採
った場合には,議案①も同様である。)については,Fの主張に関しては,決議取消しにより
監査役としての権利義務を有することとなる者(同法第346条第1項)にも明文で原告適
格が認められていること(同法第831条第1項後段)を踏まえつつ,監査役の選任に関す
る意見陳述の機会(同法第345条第4項,第1項)が奪われていることを,Aの主張に関
しては,このようなFに関する手続上の瑕疵をAが主張することができるか否かを,それぞ
れ条文を摘示しつつ論ずることが求められる。また,設問1において採った結論によっては,
23年総会の招集に係る取締役会決議の瑕疵の存否や,22年総会において取締役に選任さ
れたとも考えられるQやRが監査役に選任されることの適否について論ずることも期待され
る。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成24年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
