平成24年 司法試験 論文式 行政法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,4:4:2〕)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- 処分性の判断枠組みと大法廷判決(最大判平20.9.10)の論旨の把握6点
- 都市計画決定が権利制限を受ける土地を具体的に特定する法的効果7点
- 収用の前提となる効果と、都市計画事業認可の効果との比較(切迫性)10点
- 建築制限の効果とその処分性根拠性8点
- 実効的権利救済の観点からの必要性の検討と結論7点
設問2
- 都市計画の変更・不変更に関する行政裁量の存否と範囲8点
- 適法とする法律論(旧市街地活性化という政策目的の考慮、地元の要望)6点
- 基礎調査に基づく計画見直しの要請と将来交通需要推計の合理性(違法とする法律論の中核)10点
- 基準道路密度という運用基準の適否と機械的適用の可否6点
- 計画実現までの長期間性と本件の具体的事情5点
- 両論を踏まえた自説の提示3点
設問3
- 損失補償の根拠規定5点・簡潔に
- 補償の要否の判断基準(考慮要素)6点
- 本件事情に即したあてはめと収用時補償との関係7点
全体
- 論理的構成・文章表現6点
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,都市計画施設として道路を定める都市計画の事業が40年以上施行されていない区
域内に土地を所有し建築制限を受けているPが,土地上の建物を建て替えることが必要になっ
たために,都市計画を定めているQ県に対し,都市計画の適法性を争い,又は建築制限に対す
る補償を請求する事案における法的問題について論じさせるものである。問題文と資料から基
本的な事実関係を把握し,都市計画法及び同法施行規則の趣旨を読み解いた上で,都市計画に
関する行政訴訟の訴訟要件,本案における違法事由,及び損失補償の要件を論じる力を試すも
のである。
設問1は,Q県が都市計画を変更せずに存続させていること(以下,単に「計画の存続」と
いう。)の適法性を争うために,Pがどのような行政訴訟を提起できるかを考える前提として,
都市計画決定の処分性を検討させる問題である。全体としては,【資料1】に示された土地区
画整理事業の事業計画の決定に処分性を認める大法廷判決の論旨をよく理解した上で,都市計
画決定の処分性を判断するためのポイントを押さえること,及び,処分性の判断に関わる都市
計画決定の法的効果を,後続する都市計画事業認可の法的効果と関係付け,また比較しながら
的確に把握することが求められる。
個別にいえば,都市計画決定が権利制限を受ける土地を具体的に特定すること,都市計画決
定が土地収用法上の事業認定に代わる都市計画事業認可の前提となること,及び,都市計画が
決定されるとその実現に支障が生じないように建築が制限されることを,都市計画法令の諸規
定から読み取らなければならない。その際,都市計画決定と都市計画事業認可の関係図書等や
法的効果等を比較することを通じて,都市計画決定においては,収用による権利侵害の切迫性
が土地区画整理事業の事業計画の決定に伴う換地の切迫性よりは低いことも,併せて考慮する
ことが求められる。大法廷判決が,建築制限について,それ自体として処分性の根拠になるか
否かを明言していない点にも,注意を要する。そして以上の考察を踏まえて,権利救済の実効
性を図るために都市計画決定に処分性を認める必要性について,都市計画事業認可取消訴訟,
建築確認申請に対する拒否処分取消訴訟及び都市計画に関する当事者訴訟など他の行政訴訟の
可能性及び実効性を考慮して,判断することが求められる。
設問2は,計画の存続の適法性について,適法とする立場及び違法とする立場の双方から総
合的に検討させる問題である。行政法の基本的な考え方,都市計画法の規定,及び本件の具体
的な事情を,説得的に結び付けて法律論を展開することがポイントになる。なお,計画の存続
を違法とする立場による場合に,Q県が都市計画を変更しなくても,都市計画決定及びそれに
基づく建築制限が当然に失効していると解釈されるか否かにまで論及することは,求めていな
い。
計画の存続を適法とする立場からは,行政裁量の存在が重要であるから,都市計画変更決定
に関する行政裁量の存否及び幅を,都市計画法の文言,都市計画の性質,及び裁量に関する判
例を考慮して,判断することが求められる。そして,Q県がR市の旧市街地の活性化という政
策目的を考慮することの適法性を論じることになる。これに対し計画の存続を違法とする立場
からは,行政裁量が認められるとしても,裁量権行使の前提となる事実の調査及び認定に過誤
があれば,裁量権の行使が違法となり得ること,特に都市計画法は,定期の基礎調査及びそれ
に基づく計画の変更を定めており,前提事実の再検討による計画の見直しを重視していること
を,論じなければならない。そして,Q県による将来交通需要推計が旧市街地の現況及び一般
的な人口動向等から乖離している点,その背後に旧市街地の事業者の利益の不当な重視が疑わ
れる点を,指摘することになる。
さらに論じるべき点として,道路密度については,都市計画変更決定に係る裁量基準として
採用できるとしても,地域の実態及び個別事情を考慮せずに機械的に基準として適用すること
が正当かを,検討しなければならない。都市計画の実現までに要する期間については,一般に
社会的及び財政的制約から長期に及ぶことに着目した上で,本件に関し,本件計画道路の整備
状況やQ県の財政状況の推移等に鑑みて,なお計画の存続が正当化できるかという問題を,論
じることが求められる。そして以上の考察を通じて,計画の存続の適法性に関する受験者の見
解を説得的に示さなければならない。
設問3は,計画の存続を適法と仮定して,建築制限を受けるPに対する損失補償の要否を検
討させる問題である。損失補償の根拠として,憲法第29条第3項の直接適用が可能なことを
指摘した上で,補償の要否を判断するための考慮要素として,財産権侵害の重大性,公用制限
としての性格,土地利用の現況の固定に当たるか否か等を挙げることが求められる。そして,
本件における建築制限の内容及び期間等の事情から,補償の要否を判断しなければならない。
本件の損失補償に関しては,都市計画事業として土地が収用される際には,被収用地が建築
制限を受けていないとすれば有するであろうと認められる価格で補償するものとされるため,
仮に収用前の時点で補償を認める場合,収用時の補償との関係をどう考えるか,という問題が
ある。しかし,この点を詳細に論じることは試験時間内では困難なため,設問3は損失補償の
基本的な根拠及び要件を問う形式にして,配点を下げることにした。
なお,受験者が出題の趣旨を理解して実力を発揮できるように,本年も各設問の配点割合を
明示することとした。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成24年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
