平成24年 司法試験 論文式 民事訴訟法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第3問〕(配点:100〔〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,3.5:4:2.5〕)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1(1)
- 書証による証明の基本構造(書証の意義・処分証書と報告文書の区別・形式的証拠力=成立の真正)4点
- 当初の請求原因②(XB間の保証契約締結)の立証における本件連帯保証契約書の意味4点
- 二段の推定の意味内容と本件への当てはめ(印影が持つ意味・推定の揺らぎ)6点
- 第2の請求原因③(BのCに対する代理権授与)との関係で本件契約書が直接証拠とならないこと3点・簡潔に
- Bの印章による印影が代理権授与の間接証拠となり得る推認過程4点
設問1(2)
- 弁論主義の第1テーゼと主要事実への適用4点
- 代理権授与・顕名が主要事実であることの論証とPの見解の問題点8点
設問2
- 訴訟告知による効力の性質(参加的効力)と形式的に当てはめた場合の帰結の提示8点
- 参加的効力の客観的範囲による限定(表見代理の要件事実と無権代理の認定が傍論であること)15点
- 告知者と被告知者の利害対立に着目した参加的効力の制限10点
- Cの立場からの主張という視点と結論(当否)の明示5点・簡潔に
設問3
- 同時審判申出共同訴訟の意義・趣旨・性質8点
- 控訴提起の効力(確定遮断・移審)と共同訴訟人独立の原則の上訴への適用6点
- ①Cのみが控訴した場合の審判範囲と両負けの可能性5点
- ②C及びXが控訴した場合の審判範囲と審判統一の程度5点
全体
- 論理的構成・用語の正確性・事例に即した具体性5点
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,原告Xが被告Bに対し連帯保証債務の履行を求める訴えを提起したが,Bの陳述
から,その保証契約の締結の際,代理人としてCが関与していた可能性があることが明らか
になったため,XがXC間での保証契約の締結という第2の請求原因を追加することを検
討しているという事案を基に,書証による証明(設問1・小問(1)),当事者からの主張
の要否(同・小問(2)),訴訟告知の効力(設問2)及び同時審判申出共同訴訟の機能(設
問3)について論じることを求めている。
〔設問1〕の小問(1)は,連帯保証債務の履行を求める訴えである訴訟1において,原
告Xが当初の請求原因②の事実(XB間における連帯保証契約の締結)を立証する場合と第
2の請求原因③の事実(BのCに対する代理権授与)を立証する場合のそれぞれについて,
書証である本件連帯保証契約書,特に同契約書中にBの印章による印影が顕出されているこ
とが持つ意味を説明することを求める問題である。説明をする際には,問題文にあるとおり,
弁護士Lと司法修習生Pの会話を踏まえることが求められており,具体的には,本件連帯
保証契約書の連帯保証人欄の作成者とされるのが誰であるのかと関連付けつつ,処分証
書や二段の推定の意義及び訴訟上の機能を明確にして論じることが期待されている。
本件連帯保証契約書が持つ意味を簡潔に述べるとすれば,『本件連帯保証契約書は,当初
の請求原因②の事実(XB間における連帯保証契約の締結)の存在を直接証明するための証
拠となるが,第2の請求原因③の事実(BのCに対する代理権授与)を直接的に証明する証
拠となることはない。』ということである。
『XB間における連帯保証契約の締結』という要証事実を立証する場合には,本件連帯
保証契約書の連帯保証人欄には連帯保証をする旨のBの意思が表現されていることになる
から,その成立の真正が認められれば,直ちに『XB間における連帯保証契約の締結』の事
実が証明されることになる。文書の成立の真正を認定する際には,いわゆる二段の推定が働
く。以上のことを,二段の推定の意味内容も含めて丁寧に説明していけば,処分証書や二段
の推定の意義や訴訟上の機能を正確に理解し表現するという課題に応えたことになり,また,
二段の推定の意味内容を説明すれば,その中でBを作成者と見る趣旨との関連がおのずから
明確にされることになる。
これに対し,『BのCに対する代理権授与』という要証事実を立証する場合には,問題文
にあるとおり,本件連帯保証契約書の連帯保証人欄の作成者をCと見る前提に立つ以上,そ
こにBのCに対する代理権授与の意思が表現されていることはなく,本件連帯保証契約書が
『BのCに対する代理権授与』の事実を直接的に証明する証拠となることもない。
本件連帯保証契約書ではなく,そこにBの印章による印影が顕出されていることをもって,
『BのCに対する代理権授与』という要証事実との関係で間接証拠となることを論じること
は考えられるが,その場合には,それがどのような意味で間接証拠になり得るのか,すなわ
ち,どのような過程をたどって要証事実を推認させるのかを,丁寧に説明する必要がある。
例えば,一般に印章の管理は厳格に行われ,それにもかかわらず本件連帯保証契約書の連帯
保証人欄にBの印章による印影が顕出されていることからすれば,Bは,本件連帯保証契約
書の連帯保証人欄の作成に先立って,自分の印章をCに交付しており,その際,Cに対し本
件連帯保証契約の締結についての代理権も授与していたことが推認され得るといった説明で
ある。
〔設問1〕の小問(2)は,司法修習生Pの見解を批判的に検討することを求める問題で
ある。この見解は,最判昭和33年7月8日民集12巻11号1740頁〔百選第4版・
47〕の説示する内容に沿うものであるが,裁判所は当事者の主張しない事実を裁判の資料
としてはならないという弁論主義の命題との関係で検討すべき点がある。上記命題が主要事
実について働くものであることや,代理権の発生原因事実等は主要事実であることを確認し
つつ,論じることが期待されている。
〔設問2〕は,訴訟1において表見代理が成立することを理由としてXのBに対する請求
を認容する判決が言い渡され,同判決が確定したことを受けて,BがCに対し提起した不
法行為に基づき損害賠償を求める訴え(訴訟2)において,原告Bが,請求原因として主
張した,①Cの顕名及び法律行為,②Cの無権代理の各事実をCが否認することの可否を
検討することを求める問題である。
問題文からも明らかなように,訴訟1においてBがした訴訟告知に基づく判決の効力を受
けることを回避するための理論構成を,まずは被告Cの立場から検討することが求められ
ており,具体的には,訴訟告知に基づく判決効によってCが①②の事実を争えなくなるとい
う帰結に至る可能性を示した上で,被告知者であるCが受けることとなる効力の性質,効力
を制限するための論拠と本件事案への当てはめといったことを明確に論じることが期待され
ている。
訴訟告知を,専ら告知者の利益保護のための制度であり,第三者に判決効を及ぼすための
手段であると見る考え方もあるものの,このような考え方に対しては異論が強く,本問にお
いても,被告知者Cに対する効力が全く制限されないという結論を採りつつ説得力のある論
述をすることは容易でない(以上につき,仙台高判昭和55年1月28日高裁民集33巻1
号1頁〔百選第2版・111〕,最判平成14年1月22日集民205号93頁〔百選第4
版・105〕参照)。
なお,被告知者Cに参加的効力が及ぶか否かを検討する際に,Cに補助参加の利益があっ
たといえるか否かという観点から論じることも可能ではあるが,一般に補助参加の利益が広
く解されていることからすると,Cにとって望ましい結論を得るのは難しく,本問において
そのような観点から論じることの実益は乏しいと思われる。
被告知者が受けることとなる参加的効力を制限する論拠としては,大きくとらえれば,被
告知者と告知者との利害対立の可能性に着目することと,参加的効力の及ぶ客観的範囲に着
目することの二つが考えられる。
前者の観点からは,参加的効力の趣旨は,補助参加人と被参加人との間で被参加人敗訴の
責任の分担を図ることにある以上,被告知者が参加的効力を受ける場合とは,被告知者が告
知者と協同して相手方に対し攻撃防禦を尽くすことにつき利害の一致があり,そうすること
を期待できる立場にあるときに限られる,そして,BC間にそのような利害の一致はない
(BからCに対する代理権授与は,Bにとっては不利であるが,Cにとっては有利で
ある)ことからすれば,①②の事実ともにCには参加的効力が及ばない,と論じること
が考えられる。
また,後者の観点からは,次のように論じることができる。すなわち,参加的効力が及ぶ
客観的範囲は,判決の主文に包含された訴訟物たる権利関係の存否についての判断のほか,
その前提として判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断な
どにも及ぶが,判決理由中の判断については,いわゆる傍論が拘束力を持つ理由は乏しく,
判決主文中の判断を導き出すために必要かつ十分なものに限られる。これを本件について見
ると,訴訟1においては,B敗訴の判決で表見代理の成立が認定されているものの,そのた
めにCの無権代理の判断が必要であるわけではない。このような論拠からは,参加的効力の
客観的範囲に含まれるのは①の事実(Cの顕名及び法律行為)だけであり,②の事実(Cの
無権代理)はこれに含まれないことになる。
〔設問3〕は,同時審判の申出がある共同訴訟において,上訴があった場合の審判の統一
がどのように,また,どの程度まで図られるかを検討することを求める問題である。検討
をする際には,問題文において与えられた事案において,①Cのみが控訴し,Xは控訴し
なかった場合と,②C及びXが控訴した場合とを比較し,控訴審における審判の範囲を明
確にしつつ,「両負け防止」の趣旨が実現される仕組みやその程度を論じることが求められ
ている。
同時審判申出共同訴訟は,民法第117条の無権代理人の責任と本人の責任のように実体
法上併存し得ない請求について,実体法上あり得ないはずの両負けを避けるために設けられ
たものであり,弁論及び裁判の分離が禁止され(民事訴訟法第41条第1項),同一手続で
審理及び判決がされることによって事実上裁判の統一が図られることが期待できる。もっと
も,同時審判共同訴訟の性質はあくまでも通常共同訴訟であり,共同訴訟人独立の原則が妥
当する(同法第39条)ことから,共同被告の一方の上訴又は一方に対する上訴の提起があ
っても,その余の部分は確定してしまい,移審もしないと解されている。
このように,上訴のあった当事者間の請求についてしか確定遮断と移審の効果が生じず,
上訴審の審判対象となるのもその範囲のみである(敗訴当事者が上訴しなかった請求
については附帯上訴の余地もない)ことから,移審する部分と移審しない部分とで審
判の統一が図られない可能性があり,①Cのみが控訴した場合には,控訴審での両負けがあ
り得る。これに対し,②双方が控訴した場合には,弁論及び裁判の併合が要求され(同法第
41条第3項),第一審段階と同様に事実上裁判の統一が図られることが期待できる。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成24年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
