平成23年 司法試験 論文式 商法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:100)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問①前段
- 売主追加請求の通知(会社法160条2項)の懈怠——161条・162条の特則が適用されないことの指摘8点
- 特定の株主Bの議決権行使(160条4項)の瑕疵と株主総会決議取消しの要否8点
- 分配可能額の算定と財源規制(461条1項3号)違反8点
- 手続違反・財源規制違反と本件自己株式取得の効力の総合的結論7点
設問①後段
- 財源規制違反に基づくBの責任(462条1項)6点
- 取得の効力に関する結論を踏まえたBが受領した金銭および株式の帰属6点
- Bの同時履行の抗弁の可否5点
設問②
- 第2号議案の審議における説明義務違反(314条)6点
- 特別利害関係人(乙社)の議決権行使と831条1項3号6点
- 決議の瑕疵が自己株式処分無効の訴え(828条1項3号)の無効原因となるか8点
- 自己株式取得の瑕疵と処分の効力の関係5点・簡潔に
設問③
- Cの462条(1項柱書・1項2号)の責任と注意を怠らなかったことの抗弁6点
- 465条1項3号の欠損塡補責任6点
- 423条1項の任務懈怠責任——何が任務懈怠か、および損害額8点
全体
- 論理的構成力・条文に即した記述・文章表現7点
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,甲社が特定の株主(B)から自己の株式を取得した行為(本件自己株式取得)の効
力(設問①前段)及びこれに関する甲社とBとの間の法律関係(設問①後段)と,それによっ
て取得した自己株式を乙社に処分した行為(本件自己株式処分)の効力(設問②)について,
会社法の基本的な理解と論理的構成力を問うものである。併せて,本件自己株式取得及び本件
自己株式処分に関して,甲社の代表取締役(C)が甲社に対して負う会社法上の責任(設問③)
について,問うものである。
設問①前段では,本件自己株式取得の効力が問われている。本件自己株式取得には,㋐市場
価格を超えているので「市場価格のある株式の取得の特則」(会社法第161条)の適用がな
く,また,会社法上の公開会社であるため「相続人等からの取得の特則」の適用がない(同法
第162条第1号)にもかかわらず,売主追加請求の通知(同法第160条第2項)を怠った
こと,㋑第1号議案の採決に際して議決権行使が禁止される特定の株主(同条第4項)である
Bが議決権を行使したこと,という二つの手続的瑕疵について記述した上,これらの手続的瑕
疵と本件自己株式取得の効力との関係について論述することが求められる。このうち,㋐の点
については,自己の株式の取得に関する手続違反となるのに対し,㋑の点については,決議の
方法が法令に違反している(同法第831条第1項第1号)と見るか,自己の株式の取得に関
する手続違反の一つと見るかによって,株主総会決議取消しの訴えを提起する必要があるかど
うかに違いが生ずることにも留意する必要がある。また,㋒甲社の正しい貸借対照表によれば,
本件自己株式取得の効力発生日における分配可能額は5億円しかなかったので,本件自己株式
取得が財源規制(同法第461条第1項第3号)に違反することを記述した上で,これと本件
自己株式取得の効力との関係について論述することが求められる。㋐,㋑及び㋒に関する各論
述によれば,本件自己株式取得の効力についての個別の論証結果が有効と無効とに分かれるこ
とがあるとしても,全体として,本件自己株式取得の効力をどのように考えるかについて,論
理的整合性を意識しながら論述することが期待される。
次に,設問①後段の甲社とBとの間の法律関係については,まず,財源規制違反との関係で,
会社法第462条の責任について記述することが求められる。また,設問①前段の結論を踏ま
え,Bが受け取った金銭の扱いや本件自己株式取得の対象となった株式の帰属等について,そ
の根拠と併せて検討することが求められる。その際,甲社が,Bから取得した自己株式を乙社
に処分し,乙社がその一部を市場で売却していることから,Bが主張するであろう同時履行の
抗弁権をどのように考えるかについても論ずることが求められる。
さらに,設問②の本件自己株式処分の効力については,本件自己株式処分には,㋐第2号議
案の審議に際して説明義務(会社法第314条)の違反があるかどうか,㋑第2号議案の採決
に際して特別利害関係人(乙社)が議決権を行使したことが同法第831条第1項第3号に掲
げる場合に該当するかどうかについて検討した上で,これらが肯定されるとした場合に,それ
らが自己株式処分無効の訴え(同法第828条第1項第3号)の無効原因となるかどうかにつ
いて論述することが求められる。加えて,㋒設問①前段との関連において本件自己株式処分の
対象となった自己株式がそもそも有効に取得されたものとはいえないといった瑕疵との関係に
ついても,同様に,無効原因となるかどうかを検討することが期待される。
最後に,設問③の本件自己株式取得及び本件自己株式処分に関するCの甲社に対する会社法
上の責任については,本件自己株式取得に関して,㋐同法第462条(第1項柱書又は第1項
第2号)の責任と,㋑同法第465条第1項第3号の欠損塡補責任について記述することが求
められる。これらの責任の成否に関しては,Cが「その職務を行うについて注意を怠らなかっ
た」(同法第462条第2項,第465条第1項ただし書)かどうかを検討することが求めら
れる。さらに,本件自己株式取得及び本件自己株式処分に関して,㋒同法第423条の任務懈
怠責任も問題になるが,その検討に当たっては,設問①②における論述との整合性を意識しな
がら,何が任務懈怠に当たるのかを分析することが求められるほか,損害額に関する論理的な
記述が期待される。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成23年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
