平成23年 司法試験 論文式 民事訴訟法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第3問〕(配点:100〔〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,3:4:3〕)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- 問題の所在の確定(③に対するCの認否が権利自白であること、⑨⑩の陳述がその撤回に当たること)4点
- 事実(主要事実)の自白の撤回制限効の根拠に遡った検討7点
- 権利自白の一般論と、所有権の所在に関する自白の特殊性9点
- 「起点」の裁判所に対する効力の意味・正当化と、撤回制限効の肯否(党派的検討と反論への応答)7点
- 自白の撤回が例外的に許される事由の本件へのあてはめ3点・簡潔に
設問2
- 前提の確認(Bは債権者代位訴訟の法定訴訟担当者、訴訟物、Fの立てる請求)6点
- 権利主張参加(47条1項後段)の要件・趣旨と、訴訟物同一でも直ちに否定されないこと10点
- BとFの原告適格(債権者代位権)の両立性の検討と権利主張参加の可否の結論10点
- 共同訴訟参加(52条)の要件と固有必要的共同訴訟の否定6点
- 類似必要的共同訴訟の成否(判決効の拡張・被担当者における既判力の矛盾回避)8点
設問3
- 本訴請求(建物収去土地明渡請求)の共同訴訟形態7点
- 中間確認請求(共有権確認)の共同訴訟形態7点
- Mの認諾・放棄の効力(39条・40条1項)と生ずる矛盾の指摘8点
- 矛盾した結果の当否と自説の展開(判例と異なる解釈を含む検討)8点
出題の趣旨(法務省公表)
〔設問1〕は,第1回口頭弁論期日において,Pがした「Aは,甲土地を現に所有している。」
(③)という陳述につき,Cが認める旨の陳述をしたことが,権利自白に当たることを前提に
して,第2回口頭弁論期日において,Cの訴訟代理人Qが,③の陳述と矛盾する陳述⑨⑩をし
たことが,許されない権利自白の撤回として扱われるべきかどうかを,原告Bないしその訴訟
代理人Pの立場から検討することを求める問題である。その際には,PとRの会話におけるP
の最後の発言で示唆されているように,事実の自白の撤回制限効の根拠に遡って検討すること
が求められる。換言すれば,事実の自白の撤回制限効の根拠論が,権利自白に類推できるかど
うかを検討することが,本問の題意である。
まず,事実の自白の撤回制限効の根拠であるが,少なくとも主要事実の自白には,審判排除
効や証明不要効(民事訴訟法第179条)が生ずることには,見解の一致がある。この審判排
除効や証明不要効が生ずることによって,自白した当事者の相手方は当該主要事実について証
明を免れるという有利な地位を得ることになる。自白の撤回が許されるとすると,相手方はこ
の有利な地位を覆され,立証の負担を負うことになる。伝統的な見解は,以上のような観点か
ら主要事実の自白の撤回は制限されると説いてきた。この根拠論においては,主要事実の自白
の裁判所に対する効力が,撤回制限効の前提とされている。
したがって,権利自白の撤回を論ずるに際しては,Cがした権利自白に裁判所に対する何ら
かの効力が生ずるか,検討する必要がある。その際には,権利自白の一般論も必要であるが,
所有権の所在についての自白には,権利自白の中でも特段の考慮が必要であることに言及され
るべきである。つまり,所有権の所在が権利義務その他の法律関係の中でも一般人による判断
が比較的容易であることだけではなく,所有権の承継に伴う問題点を考慮に入れなければなら
ない。
すなわち,特定人が特定物の所有者であることについて肯定的な判断を下すためには,本来
であれば,直近の原始取得者が原始取得をするための主要事実が主張・立証された上で,その
後の承継取得の主要事実が全て主張・立証される必要がある。しかし,以上のような諸事実は,
立証することが困難であるだけではなく,そもそも主張することすら困難である場合がある。
そこで,実務においては,ある者が所有者であると主張する当事者は,両当事者の間で争いの
ない現在又は過去の所有者を起点として,必要があればその者以降の承継取得の主要事実を主
張すれば足りる,という扱いがされているのである。したがって,この実務の扱いにおける「起
点として」とは,裁判所に対するどのような効力を意味しており,そして,そのような効力が,
権利自白には原則として効力が認められないという一般論(法的な判断・評価は裁判所の専権
であることを根拠として,伝統的にはこのように解されてきた。)との関係で,いかに正当化
されるかが検討されなければならない。さらに,裁判所に対する効力が正当化されるとしても,
事実の自白にはない権利自白に固有の性質から,撤回制限効を認めないという議論が成り立つ
かどうかも検討されなければならない。
これに対して,(主要)事実の自白について認められている撤回が許容される例外的な事由
が,本問の事例において認められるかどうかは,Cのした権利自白に撤回制限効が肯定されて
初めて問題になるものであるから,これらの事由の有無を検討することには,題意においては
副次的な位置付けしかない。
また,本問は「被告側の権利自白の撤回は許されない」という方向からの検討を求めるもの
であるから,党派的な議論が求められる。もっとも,ここで求められる党派的な議論とは,一
面的にBないしPに有利な議論をすることではなく,相手方からの反論を想定し,それに対す
る批判的な検討を試みることである。
〔設問2〕は,訴訟1におけるBの当事者適格が認められない可能性があることを前提に,
Fが訴訟1に当事者として参加する方法として,いわゆる権利主張参加(民事訴訟法第47条
第1項後段)と共同訴訟参加(民事訴訟法第52条)のそれぞれについて,その許否を検討す
ることを求める問題である。
まず,その前提として,訴訟1における原告Bは,Aに対する貸金債権に基づき代位債権者
としてAに代位している法定の訴訟担当者であり,訴訟1の訴訟物は,AのCに対する甲土地
の所有権に基づく甲土地の移転登記請求権であることが確認されなければならない。そして,
Fが当事者として参加する場合も,同じく代位債権者(法定の訴訟担当者)として,AのCに
対する甲土地の所有権に基づく甲土地の移転登記請求権を訴訟物とする請求を立てることにな
ることも確認されなければならない。
次に,権利主張参加の許否であるが,権利主張参加は参加人が「訴訟の目的の全部又は一部
が自己の権利であることを主張する」という要件を満たす場合に許容される。権利主張参加の
趣旨は,訴訟の目的についての権利に関する三者間の法律関係を矛盾なく解決することにある
ことから,この要件は原告の請求と参加人の請求が法律上非両立の関係にあることを意味する
と考えられている。
そこで,本問の事例において,この要件が満たされているかどうかを判断することになるが,
その際に,訴訟物が同一であることだけでこの要件が満たされていないとはいえないことに注
意が必要である。というのも,判例(最判昭和48年4月24日民集27巻3号596頁)・
通説によれば,債権者代位訴訟に,被保全債権の存在を争う債務者が,自らへの給付を求めて
権利主張参加をすることが肯定されているからである。そこでは,訴訟物が同一であるにもか
かわらず,原告と参加人の原告適格が非両立であるために,代位債権者(原告)の第三債務者
(被告)に対する請求と債務者(参加人)の被告に対する請求の双方が同時に認容されること
はない,という関係がある。したがって,本問の事例において,BとFの原告適格が両立する
かどうか,換言すれば,債権者代位権の行使によって債務者の管理処分権が剥奪ないし制限さ
れることとの関係で,BとFの債権者代位権が両立するかどうかが検討されなければならない。
最後に,共同訴訟参加の許否であるが,共同訴訟参加は,「訴訟の目的が当事者の一方及び
第三者について合一にのみ確定すべき場合」に許容される。この要件は,参加人が原告側に参
加する場合には,原告と参加人が共同原告であったと仮定したときに,その訴訟が原告側の必
要的共同訴訟であることを意味する。
したがって,本問の事例では,BとFが共同原告としてCに対する訴えを提起した場合に,
原告側の必要的共同訴訟になるかどうかが検討されなければならない。それぞれ別個独立の被
保全債権を有するBとFは,債権者代位権を共同で行使しなければならない関係にはないから,
固有必要的共同訴訟は成立しない。そこで,類似必要的共同訴訟が成立するかどうかの検討が
必要となる。
原告側の類似必要的共同訴訟は,共同原告の一方が訴えを単独提起した場合に,その訴えが
原告適格に欠けることがないと同時に,その訴えに係る訴訟の確定判決の効力が他方に及ぶと
いう関係が成り立つ場合に成立する。
そこで,B又はFが単独で訴えを提起した場合に,その訴えに係る訴訟の確定判決の既判力
又はその反射的効力がF又はBに及ぶかどうかを検討することになる。複数の法定の訴訟担当
者が原告となった訴訟が類似必要的共同訴訟であるとする最高裁裁判例として,住民訴訟に関
する最判昭和58年4月1日民集37巻3号201頁,最(大)判平成9年4月2日民集51
巻4号1673頁と,株主代表訴訟に関する最判平成12年7月7日民集54巻6号1767
頁があるが,平成9年判決は他の担当権限を有する者(原告適格者)に対する既判力の直接拡
張を,他の2判決は被担当者に既判力が及ぶこと(民事訴訟法第115条第1項第2号)から
被担当者を経由して既判力が他の原告適格者に反射的に及ぶことを前提としている。
他方,本問の事例で,BとFが訴えを共同提起した場合において,これが仮に通常共同訴訟
であるとすると,BとFの受ける本案判決の内容に相違が生ずる可能性があり,かかる相違が
生じたときには,被担当者に既判力が及ぶことから,被担当者であるAにおいて既判力の矛盾
が生ずることになる。このような,被担当者における既判力の矛盾を回避する必要性から,類
似必要的共同訴訟性を根拠付ける考え方もあり得るところである。
〔設問3〕は,訴訟2におけるLとMの関係が必要的共同訴訟と通常共同訴訟のいずれであ
るかという検討を前提に,Mのした請求の認諾及び中間確認請求の放棄の陳述がどのような効
力を有するかを問う問題である。なお,検討に際して,該当する判例を押さえておくことが求
められている。
当然承継後の訴訟2における本訴請求は,LとMが丙建物を共有していることを前提とした,
乙土地の所有権に基づく丙建物収去乙土地明渡請求である。本問の事例とほぼ同様の事例にお
いて,最判昭和43年3月15日民集22巻3号607頁は,このような場合に建物共有者が
負担する建物収去土地明渡義務は不可分債務であり,土地所有者は建物共有者のそれぞれに各
別に請求をすることができることを理由として,被告側の固有必要的共同訴訟ではないとして
いる(通常共同訴訟であるとする趣旨であると考えられる。)。
これに対して,当然承継後の中間確認請求は,「乙土地をL及びMが共有する」ことの確認
請求である。最判昭和46年10月7日民集25巻7号885頁は,このような請求は,共有
者の持分の確認とは区別された,共有権(共有関係)の確認であることを前提として,この訴
訟では,共有者全員が有する一個の所有権が紛争の対象となっており,その解決には共有者全
員が法的利害関係を有することから,全員に矛盾なく解決される必要があることを理由に,原
告側の固有必要的共同訴訟であるとする。
以上の判例を前提とすると,Mの本訴請求の認諾の陳述は,Mとの関係でのみ効力を有し,
Lには効力を及ぼさない(民事訴訟法第39条)のに対して,中間確認請求の放棄の陳述は,
MとLのいずれの関係においても効力を持たない(民事訴訟法第40条第1項)ことになる。
そうすると,終局判決において中間確認請求が認容され,この判決が確定した場合には,Mは
乙土地の共有者であるにもかかわらず,Nに対して乙土地の明渡義務を負うという,実体法上
は矛盾した結果が生ずる。しかも,乙土地の所有者が誰であるかは,本訴請求との関係で,先
決的法律関係であることに注意が必要である。
以上のような矛盾した結果が生ずる可能性があることを踏まえて,これを訴訟法的な観点か
ら放置してよいものかどうか,そして,放置すべきではないとすれば,いかにすればよいかを,
判例とは異なる解釈を採ることを含めて検討することを求めるのが,本問の題意である。
例えば,本訴請求が乙土地の一個の所有権の帰属に関する争いの一環としての訴訟であるこ
とから,本訴請求,中間確認請求のいずれもを固有必要的共同訴訟と解することによって矛盾
を回避すべきとする立場,あるいは,Kは,Mの認諾調書のみではL・Mに対して土地明渡し
の強制執行をすることができない(上記昭和43年判決はそのように判示する。)から,上記
判例による帰結に不都合はないとする立場などがあろう。どのような立場を採るにせよ,法律
論として説得力ある議論を展開することが求められる。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成23年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
