平成23年 司法試験 論文式 行政法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕,〔設問2〕(1),〔設問2〕(2),〔設問3〕の配点の割合は,
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- 第三者の原告適格の判断枠組み(行訴法9条1項・2項と判例法理)7点
- モーターボート競走法・施行規則・通達の各規定の読解と原告適格判断上の意味13点
- X1(法科大学院を設置する学校法人)の原告適格7点
- X2(近隣住民・自治会構成員)の原告適格7点
設問2(1)
- 取消処分の差止めの訴え(最も適法かつ実効的な訴え)8点・簡潔に
- 要求措置を対象とする訴えの候補と比較検討6点・簡潔に
設問2(2)
- 許可要件・不許可判断における裁量の有無と範囲7点
- 本件通達の法的性格・効果と行政手続法上の位置づけ7点
- 地元同意を求める行政手法の意義と問題点7点
- 国土交通大臣が執り得る措置の範囲・限界(指導にとどまるか/不許可事由となるか)8点
- 本件許可の職権取消しの適法性(取消しの可否・公益と信頼保護の衡量)9点
設問3
- 条例に置くべき規定の骨子(実効性確保・手続整備)7点・簡潔に
- 条例の適法性の問題点(法律との抵触・憲法上の制約)5点・簡潔に
全体
- 論理的構成・文章表現・設問の指示への対応2点・簡潔に
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,国土交通大臣による場外舟券売場の設置許可を,近隣に法科大学院を設置する学校
法人X1及び周辺住民X2が争う場面(設問1),許可が取り消される可能性が生じ,許可を
受けた社団法人Aが争う場面(設問2),T市が場外舟券売場の設置を規制する場面(設問3)
という,三つの場面を想定して,第三者の観点から論じさせるものである。類似の法分野(自
転車競技法)について近時最高裁判決が下されて注目されたが,本問はもとより,モーターボ
ート競走法に関する特別な知識・理解を問う趣旨ではない。問題文と資料から基本的な事実関
係を把握した上で,関係法令を読み解き,行政処分の第三者,行政指導を受けた許可の名宛人,
国の法令とは別に条例を定めようとする基礎的な地方公共団体という,それぞれの立場に関わ
る基本的な法律問題を論じる力を試すものである。本問では,通達を定めて,許可の申請に際
し地元同意の取得を求めるという,日本でしばしば用いられてきた行政手法を法律論に織り込
むことも要求される。また,設問3では,日頃具体的な事例と法令を読んで解釈論を勉強して
いれば十分対応できる範囲で,立法論に論及することも求めている。
設問1は,X1及びX2による取消訴訟の訴訟要件のうち,原告適格を論じさせる問題であ
る。まず,行政事件訴訟法の条文と判例を踏まえ,いかなる判断枠組みにより,いわゆる行政
処分の第三者の原告適格を判断すべきかを明らかにしなければならない。そして,モーターボ
ート競走法上,法律の趣旨を定める規定や許可の根拠規定などは,場外発売場内の秩序や競走
の公正・安全以外には,具体的に保護法益を特定していないこと,同法施行規則は,文教上の
利益を保護しているが,個別の文教施設を保護する趣旨を明確にしていないことなどを,具体
的な条文を挙げて示すことが求められる。一定の距離内の文教施設を許可の申請書類に記載す
ることを求める同法施行規則の規定や,様々な内容の関係通達が,原告適格を認める根拠又は
手掛かりにならないかという点も,検討する必要がある。その上で,本件施設の規模,開場さ
れる期間・時間,距離関係や位置関係などから想定されるX1及びX2の不利益の内容・程度
など,さらに,X1及びX2が特定の利益を代表して主張する適格性などを考慮して,原告適
格を根拠付けられないかを,判断することが求められる。
設問2(1)は,行政訴訟としてAがどのような請求を立てることが最も適切かを問う問題
である。想定されている状況において,取消措置の可能性を除去するというAの目的を最も直
接的に実現する訴えは,本件許可を取り消す処分の差止めを求める抗告訴訟と考えられる。も
う一つ,要求措置を対象にする何らかの当事者訴訟又は抗告訴訟を候補として具体的に挙げて,
訴訟要件が満たされるか,及びAの目的を実現するために適切な請求かという点を,比較しな
がら検討することが求められる。
設問2(2)は,行政実体法及び広義の行政手続に関わる問題を基礎から一つ一つ検討して
解きほぐし,最終的に,本件許可を取り消す処分の適法性を判断するように求めるものである。
まず,法令の文言や,刑法上の違法性を阻却するという許可の性質などを考慮して,国土交通
大臣による許可・不許可の判断に裁量が認められるかを検討しなければならない。次に,本件
の通達の法的効果は何か,行政手続法上は何に当たるかを示すことが求められる。こうして,
通達に定められている地元同意を許可申請に際して求める裁量が,関係法令に照らして認めら
れるか,またどの範囲で認められるかが論点であることを確認することになる。その上で,地
元同意の意義と問題点を,コミュニケーションと手続参加の促進,手続の公正性・透明性・明
確性などの観点から具体的に検討することが求められる。
以上のような法令解釈及び地元同意に対する評価を踏まえて,地元同意を行政指導として求
め得るにとどまるのか,地元との十分な協議を経なければ許可を拒否できるか,十分な協議を
経ても同意がなければ許可を拒否できるか,協議の不十分さや同意の不存在が許可を拒否する
一つの考慮要素になるか,といった点を,どのように判断するか,示さなければならない。そ
して,本件における許可の取消しの公益性及びAの信頼の要保護性の程度を考慮した場合に,
本件許可の取消しが適法か,各人の結論を示すことが要求される。
設問3は,T市が場外舟券売場の設置許可制を条例で定める場合に,配慮すべき点を指摘さ
せる問題である。いろいろな解答があり得るが,第一に,許可後の是正命令,罰則などを条例
に定めて実効性を確保する必要性,第二に,住民,利害関係者,専門家などが参加して周辺環
境との調和について判断する手続を構築する必要性,第三に,モーターボート競走法や建築基
準法など国の法律と条例とが抵触しないか,検討する必要性など,豊かな着想で指摘すること
が期待される。
なお,設問のうち,設問1と設問2(2)においては,事実関係,関係法令の解釈及び行政
法の一般理論を総合して,論理的かつ説得的に筋道を示した解答を期待しているのに対し,設
問2(1)と設問3では,ポイントを的確かつ簡潔に示すことを要求するにとどめている。こ
うした出題の趣旨を十分に理解して受験者が実力を発揮できるように,昨年に続き本年も各設
問の配点割合を明示することとした。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成23年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
