平成23年 司法試験 論文式 憲法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第1問〕(配点:100)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- 訴訟類型の特定5点・簡潔に
- 制約される憲法上の権利の構成(表現の自由=自由な情報の流れの保障)14点
- 明確性の主張(「生活ぶりがうかがえるような画像」と「個人権利利益侵害情報」)7点
- 営業の自由の制約の位置づけ5点・簡潔に
- 制約の態様と判断枠組みの提示(X社側)10点
- X社側のあてはめ(規制の必要性・相当性の否定)7点
設問2
- 被告側の反論の要点の摘示6点・簡潔に
- 自説:保護される権利の確定(表現の自由か営業の自由か)10点
- 自説:判断枠組みの設定(事案に即した調整)9点
- 核心的検討:「公道から見える」ことと「インターネット上で見ることができる」ことの相違12点
- 個別的・具体的な利益衡量(問題文の事実の活用)5点
- 中止命令という制約態様の相当性・自説の結論4点・簡潔に
全体
- 論理的構成・文章表現6点
出題の趣旨(法務省公表)
今年の問題でも,「暗記」に基づく抽象的,観念的,定型的記述ではなく,問題に即した憲
法上の理論的考察力,そして事案に即した個別的・具体的考察力を見ることを主眼としている。
問題を解くに当たって,問題文を注意深く読むことが必要である。議論が不必要に拡散しな
いように,問題文の中にメッセージが書かれている。例えば,「行政手続法の定める手続に従
って」中止命令が出されたことは,手続上の問題は存在しないことを示している。
設問1は,まず,X社側が訴えを提起する場合の訴訟類型を尋ねている。訴訟法上の問題を
詳論する必要はなく,提起する訴訟類型を簡潔に記述すればよい。
法令違憲の主張に関しては,何でも書けばよいのではない。憲法の論文式問題において登場
する弁護士は重要な憲法判例や主要な学説を知っている,と想定している。したがって,憲法
論として到底認められないような主張を書くのは,全く不適切である。一定の筋の通った憲法
上の主張を,十分に論述する必要がある。例えば,本問では,検閲が問題になることはない。
あるいは,本問の法律で,「個人の権利利益を害するおそれ」等の文言の明確性が,一般的に
問題になるわけではない。本問で明確性を問題にするとすれば,「生活ぶりがうかがえるよう
な画像」が「個人権利利益侵害情報」に含まれるのか否かが明確ではない,という点である。
また,本問において,X社はユーザーの「知る権利」侵害を理由として違憲主張できるとする
のは,不適切であり,不十分でもある。まず,ここで「知る権利」と記すことが,「知る権利」
に関する理解が不十分なものであることを示している。X社の提供する情報は,政治に有効に
参加するために必要な情報ではないし,政府情報等の公開が問題となっているわけでもない。
さらに,ユーザーは不特定多数の第三者であるので,特定の第三者に関する判例を根拠にX社
がユーザーの「知る自由」を理由に違憲主張できるとするのは,不適切であり,不十分である。
そもそも「知る自由」は,他者の私生活をのぞき見する自由を意味しない。
法令違憲に関して本問で問題となるのは,実体的権利の制約の合憲性である。この点での本
問における核心的問題は,肖像権やプライバシーを護るために制約されている憲法上の権利は
何か,である。確かに,本問の法律によってX社は,営業の自由も制約される。とりわけ国家
賠償請求訴訟も提起するならば,経済的損失に関わる営業の自由への制約の違憲性・違法性を
主張することが理論的に誤っているとはいえない。しかし,本問でその合憲性が争われる法律
は,許可制を採るものではない。そして,営業の自由とプライバシーの権利との比較衡量にお
いて,前者が優位することを説得力を持って論証することは,容易ではない。この点では,言
わば「憲法訴訟」感覚が問われているといえるであろう。
したがって,X社側としては,表現の自由の制約と主張することになる。それに関して検討
すべきことは,憲法第21条第1項が保障する権利の「領域」・「範囲」ではない。憲法上,表
現の自由の保障「領域」・「範囲」があらかじめ確定しているわけではない。問われているのは,
表現の自由の内容をどのように把握するか,である。本問の地図検索システムは,X社の思想
や意見を外部に伝達するものとはいえない。そこで,当該システムを表現の自由として位置付
けようとすると,表現の自由の権利内容の新たな構築が必要となる。つまり,自由な情報の流
れを保障する権利としての表現の自由である。本問における判断枠組みに関する最大のポイン
トは,判例や学説を参考にしつつ,相応の説得力を有する論拠を示して,自由な情報の流れを
保障する表現の自由論を論述することである。
本問における表現の自由の制約の合憲性をめぐって問われているのは,表現の自由とプライ
バシーの権利の調整である。
本問の地図検索システムによって提供される情報は,「自己統治」の機能に関わる情報とは
いえない。また,私的な事柄に関する情報が含まれているが,その対象者が「公職にある人」
や「著名人」という問題でもない。したがって,「原告の主張」・「被告の反論」・「あなた自身
の見解」それぞれの立場において審査基準論のあれこれを定型的に書くのは,全く不適切であ
る。当該合憲性の結論は,事案に即して個別的・具体的に検討することから導き出される。
今年の問題では,両者のサイドにとってそれぞれヒントとなる主張が問題文の中に書き込ま
れている。例えば,ユーザーにとっての利便性の向上等は,情報提供側のプラス面として挙げ
ることができる。被告側にとっては,例えば,インターネット上の個人情報の二次利用による
被害の拡大である。個別的・具体的検討において最も重要なポイントは,「公道から見える」
ことと「インターネット上で見ることができる」ことの相違をどのように考えるか,である。
設問2では,「被告側の反論を想定しつつ」検討することが求められている。想定される被
告側の反論を書く部分では,結論として憲法上のポイントだけを記せばよい。「被告側の反論」
では,表現の自由の制約ではなく,営業の自由の制約でしかない,とする主張はあり得る。被
告側の反論の詳細な内容や論拠は,「あなた自身の見解」で書くことが求められている。
「あなた自身」の結論や理由を「原告と同じ」あるいは「被告と同じ」と書くだけでは,全
く不十分である。X社側あるいは被告側のいずれかと同じ立場に立つにしても,それらとは別
の見解を採るにしても,求められているのは,X社側及び被告側それぞれの見解を検討した上
で「あなた自身」の結論及びその理由を述べることである。問われるのは,理由の説得力であ
る。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成23年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
