令和4年 予備試験 論文式 民法 出題の趣旨・論点・解説
問題
[民 法]
論点の一覧
出題の趣旨をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1(1)
- 仕事の目的物の契約不適合の認定(塗料βによる塗装が「契約の内容に適合しない」といえるか)10点
- 報酬減額請求の根拠条文と要件(559条・563条、追完の催告とその不要事由)10点
- 減額の範囲・算定方法と結論(【事実】6に即した割合的減額の可否)10点
設問1(2)
- 修補に代わる損害賠償請求の根拠と要件(559条・564条・415条)8点
- Aの追完の申入れをBが拒絶した事情の評価(請求の可否の実質的判断)12点
- 損害の有無・範囲の検討(塗料βの方が高価値であることの考慮)5点・簡潔に
設問2
- Dの占有の性質(使用貸借に基づく他主占有)と使用貸借の帰趨8点
- 他主占有の自主占有への転換(185条後段「新権原」)と相続の位置付け12点
- 所有の意思の有無の具体的認定(立証責任を含むあてはめ)10点
- 取得時効の起算点・期間計算と完成猶予、結論10点
全体
- 論理的構成・文章表現5点・簡潔に
出題の趣旨(法務省公表)
設問1は、請負契約の内容に適合しない仕事の目的物が引き渡されたが、その目的
物は契約内容に適合した仕事の目的物よりも客観的価値が増加している事例を題材
として、契約不適合責任としての報酬減額請求の可否及び修補に代わる損害賠償請求
の可否を問うものである。請負の契約不適合責任や債務不履行責任に係る民法の規律
構造を踏まえた上で、事案に即した論述を展開することが求められる。
設問2は、所有の意思なく不動産を占有していた者の相続人が、自らが所有者であ
ると信じて占有を開始した事例を題材として、取得時効の成否を問うものである。い
わゆる他主占有の自主占有への転換の成否とその時期(取得時効の起算点)を踏まえ
た上で、事案に即した論述を展開することが求められる。
[商 法]
次の文章を読んで、後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
1.甲株式会社(以下「甲社」という。)は、農産物加工品の通信販売を業とする取締役会設置会社
であり、監査役設置会社である。甲社は種類株式発行会社ではなく、甲社の定款には、譲渡による
株式の取得について取締役会の承認を要する旨の定めがある。甲社の発行済株式の総数は5000
株であり、そのうち、Aが2000株を、Bが400株を、Cが1000株を、Dが1600株を
それぞれ保有している。
甲社の取締役はA、B及びEの3名であり、Aが代表取締役である。また、監査役にはFが就任
している。Dは、かつて甲社の取締役であったが、数年前に甲社の経営方針をめぐってAと対立し、
その際、CがAの側についたことから、甲社の取締役に再任されず、その後も取締役に選任される
ことはなかった。AとDの対立は現在まで続いている。
2.甲社は、かねてより商品を保管する倉庫を建設するための用地を探していたところ、Cが保有し
ている土地(以下「本件土地」という。)が倉庫建設に適していることが判明した。AはCとの間
で、本件土地の売買交渉を進め、もう少しで契約が成立するというところまでこぎつけた。
ところが、不動産業者から倉庫建設に適した別の土地の情報がもたらされた。その情報を受け、
甲社の取締役会において審議したところ、本件土地に倉庫を建設するより不動産業者から提案され
た土地に倉庫を建設した方が円滑に商品を出荷することが可能となることから、本件土地の買取り
を見送るとの結論に達した。
3.上記のような取締役会での決定を受け、AがCのもとに赴き、本件土地を買い取ることができな
くなったことを説明したところ、Cは納得しなかった。AはCの説得を続けたが、Cは聞き入れず、
ついに本件土地の買取りができないなら今後の対応についてDに相談すると言い出した。CとDが
協調して行動することを恐れたAは、本件土地の買取りを再検討する旨をCに告げてCのもとを去
った。
4.甲社の取締役会では、Aからの報告を受け、Cから本件土地を買い取ることとし、さらに、準備
されていた本件土地に関する資料をもとに買取価格を検討し、2億円で本件土地を買い取ることを
A、B及びEの賛成によって決定した(以下「本件取締役会決議」という。)。本件土地に関する
資料によれば、本件土地の適正価格は2億円であった。
5.Aが、すぐさまCに甲社の本件取締役会決議の内容を知らせてCと再度交渉したところ、Cは本
件土地を2億円で売却することを承諾し、本件土地の売買契約が成立した(以下「本件取引」とい
う。)。
6.この頃、甲社の完全子会社である乙株式会社(以下「乙社」という。)の取締役が任期中に死亡
したため、乙社の取締役に欠員が生じた。乙社の代表取締役を兼任するAは、Fを乙社の取締役に
することとし、乙社においてFを取締役に選任する手続を採るとともに、Fに対して乙社の取締役
に就任するよう要請した。それを受け、FはAに乙社の取締役に就任すると返答した。
7.本件取引のことを聞きつけたDは、本件土地より倉庫に適した土地があったにもかかわらず本件
取引をしたことは、Cが甲社の株主であるために特別に優遇したものであり、不適切であると考え、
友人の弁護士に対し、A、B及びE並びにC(以下「Aら」という。)が、本件取引に関して甲社
に対して何らかの責任を負わないか検討してほしいと依頼した。
8.弁護士のアドバイスを受けたDは、Aらに対して責任追及等の訴えを提起することとし、Fに対
して、甲社としてAらに対して訴訟を提起するよう請求した(以下「本件提訴請求」という。)。
本件提訴請求から60日以内に甲社がAらに対して訴訟を提起しなかったことから、Dは、甲社の
ためにAらに対する責任追及等の訴え(以下「本件訴え」という。)を提起した。
〔設問1〕
本件訴えにおいて、Dの立場において考えられる主張及びその当否について、論じなさい。
〔設問2〕
本件訴えの被告であるAらは、本件提訴請求は適法とはいえず、本件訴えは違法であると主張し
ている。本件訴えは適法か、Aらの主張を踏まえて論じなさい。
(出題の趣旨)
本問は、株主の権利行使に関する利益供与に関与した者の責任及び株主がその責任
を追及する訴えを提起するための手続を問うものである。
設問1では、A、B及びEに対する請求については会社法第120条第4項を、C
に対する請求については同条第3項を根拠とすることが考えられる。いずれの請求に
ついても、本件取引が、同条第1項によって禁止される株主の権利行使に関する利益
供与に該当するかを検討することが求められる。その際、一度は本件土地の買取りを
見送ることとしたにもかかわらず、改めて本件取引をすることを決定したA、B及び
Eの意図について、甲社の株主構成と株主の持株比率、更にAとDが対立しているこ
となどの事情を踏まえて検討する必要がある。また、本件取引が適正な対価での売買
であることにも触れることが望ましい。A、B及びEについては、利益の供与をする
ことに関与した取締役(同条第4項、会社法施行規則第21条第1号、第2号)に当
たることを指摘しなければならない。
設問2では、設問1で検討したCに対する返還請求も会社法第847条第1項の
責任追及等の訴えの対象となることを確認した上で、本件訴えが適法な手続を経て
提起されたといえるかを検討することが求められる。Dによる提訴請求は適法にさ
れたとはいえないとするAらの主張は、監査役設置会社においては監査役に対して
提訴請求をすべきであるところ(同法第386条第2項第1号)、甲社の監査役F
が同社の完全子会社である乙社の取締役に就任したことにより兼任禁止(同法第3
35条第2項)に抵触するため、提訴請求の時点でFは甲社の監査役を辞任してい
たことになり(最判平成元年9月19日集民第157号627頁参照)、Fに対す
る提訴請求は適法とはいえないというものである。この主張を踏まえて、提訴請求
の時点でFは甲社の監査役又は監査役の権利義務を有する者(同法第346条第1
項)であったといえるか否かなどを考慮して検討する必要がある。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「令和4年予備試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
