令和4年 予備試験 論文式 実務基礎(刑事) 出題の趣旨・論点・解説
問題
[刑 事]
論点の一覧
出題の趣旨をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1(1)
- B供述(犯人はAであるとする部分)の信用性①――客観的証拠・客観的状況との整合性12点
- B供述の信用性②――虚偽供述の動機の不存在、不利益供述、供述の一貫性・具体性10点
設問1(2)
- 共謀共同正犯の成立要件の提示4点・簡潔に
- 共謀(意思連絡)の認定と共謀に基づく実行8点
- Aの正犯性(自己の犯罪として行う意思・重要な役割)8点
設問2
- 公判前整理手続の制度趣旨7点・簡潔に
- 追加の証明予定事実記載書の提出を求めた理由8点
設問3
- 接見等禁止請求における罪証隠滅のおそれの有無(㋒と㋓の対応の差)13点
設問4(1)
- 刑訴法316条の32第1項の「やむを得ない事由」8点
- 証拠⑩の証拠能力――刑訴法328条の弾劾証拠7点
設問4(2)
- 検察官が「同意」ではなく「異議なし」と述べた理由10点
全体
- 論理的構成・文章表現5点
出題の趣旨(法務省公表)
本問は、共謀共同正犯の成否が争点となる住居侵入、強盗致傷事件を題材に、刑
事手続の基本的知識、刑事事実認定の基本構造及び基礎的刑事実務能力を試すもの
である。
設問1は、共犯者供述のうち被疑者が犯人であるとする供述部分の信用性が認め
られると判断した検察官の思考過程と、共謀共同正犯が成立すると判断した検察官
の思考過程を、それぞれ具体的な事実関係を踏まえて検討することを通じて、供述
の信用性判断及び共謀共同正犯についての基本的理解を示すことが求められる。
設問2は、事例に現れた、公判前整理手続における裁判所及び当事者のやり取り
を踏まえ、裁判所が検察官に追加証明予定事実記載書の提出を求めた理由を検討す
ることを通じて、公判前整理手続の意義や機能に対する基本的理解を示すことが求
められる。
設問3は、公判前整理手続に付された事件の起訴後の接見等禁止請求を巡る検察
官の対応に、手続の進展に伴い差が生じている理由を検討することを通じて、接見
等禁止における罪証隠滅のおそれについての理解を正確に示すことが求められる。
設問4は、弁護人が共犯者の証人尋問後に、その捜査段階における供述録取書の
取調べを請求した思考過程と、同請求に対する検察官の証拠意見の理由を検討する
ことを通じて、刑事訴訟法第316条の32第1項の「やむを得ない事由」につい
ての基本的理解を示すとともに、弾劾証拠についての理解を正確に示すことが求め
られる。
[倒 産 法]
次の文章を読んで、後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
【事例】
A株式会社(以下「A社」という。)は、自動車部品の製造及び販売を業とする株式会社である。
A社は、順調な業績を維持していたが、令和2年度に初めて赤字決算となったことから、自己所有
の甲土地をB株式会社(以下「B社」という。)に売却することとし、令和3年9月15日、B社と
の間で、売買代金を取引相当額である5000万円とする売買契約を締結した。A社は、同日、B
社から売買代金の支払を受けるのと引換えに、B社に対し、甲土地を引き渡すとともに、所有権移
転登記手続の申請に必要な書類を交付したが、その際、甲土地を買い戻す意思があり、近く買戻資
金の手当ができる見込みなので、所有権移転の登記申請の実行を半年程度待ってほしいと要請した。
B社はこの要請に応じたが、実際は、A社において買戻資金を調達する予定はなく、むしろ、他の
取引先から信用供与を得る可能性を残すために、甲土地の所有名義をA社のままにしておくことが
目的であった。
しかしながら、令和3年10月以降、A社の売上げの半分以上を占めていたC株式会社(以下「C
社」という。)からの売掛金の支払が滞るようになり、同年12月5日にC社が破産手続開始の申立
てをしてC社からの売掛金の支払が完全に途絶えたため、A社は、資金繰りに窮することとなった。
そこで、A社は、メインバンクを含む金融機関に緊急の融資を求めたものの、十分な額の融資を受
けることができなかったことから、令和4年1月25日を支払期限とするD株式会社に対する買掛
金の支払を遅滞するに至ったほか、同月31日を支払期限とするメインバンクに対する借入金の分
割弁済もできなかった。
その後、A社は、令和4年2月20日、代理人弁護士Eの名義で、取引先や取引金融機関に対し、
A社は近日中にEを申立代理人として破産手続開始の申立てを行う予定であり、債務の支払につい
てもそれまでの間停止する旨の通知(以下「本件通知」という。)を発した。さらに、A社は、同
年3月6日、F地方裁判所に対し、破産手続開始の申立てを行ったところ、F地方裁判所は、翌7
日、破産手続開始決定を発し、併せて弁護士Gを破産管財人に選任した。
〔設問1〕(⑴と⑵は、独立した問題である。)
⑴ B社は、令和4年2月21日に本件通知を受け取ったため、登記手続に必要な印鑑証明書を改
めてA社から取得して、同年3月1日、甲土地についてB社への所有権移転登記手続を行った。
この登記手続を申請する行為につき、破産管財人GのB社に対する否認権の行使が認められるか、
論じなさい。
⑵ B社は、令和4年2月3日、A社において取引先に対する買掛金の支払やメインバンクに対す
る借入金の返済が滞っているとの情報に接したことから、登記手続に必要な印鑑証明書を改めて
A社から取得して、同月12日、甲土地についてB社への所有権移転登記手続を行った。この登
記手続を申請する行為につき、破産管財人GのB社に対する否認権の行使が認められるか、反対
の結論を採る立場にも言及しつつ、論じなさい。
〔設問2〕
仮に、〔設問1〕⑴において、甲土地の所有権移転登記手続を申請する行為が否認された場合、B
社と破産管財人Gとの間の法律関係はどのようになるか、論じなさい。また、甲土地の売買契約に
係る代金額が1000万円であり、廉価売却であるとして甲土地の売買契約自体が否認された場合
のB社と破産管財人Gとの間の法律関係についても、説明しなさい。
(出題の趣旨)
設問1は、危機時期より前に締結された不動産の売買契約に基づいて所有権移転登
記手続がされた事例を題材に、対抗要件具備行為の否認の可否についての検討を求め
るものである。まず、小問⑴については、事例によれば、破産法第164条第1項が
適用されることに異論はないものと考えられることから、同項の定める要件を摘示し
て当てはめを行い、結論として否認権の行使が認められることを淡々と論ずることが
求められる。次に、小問⑵については、所有権移転登記手続の申請行為が「支払の停
止等」に至る前にされたものであることから、同項の要件は満たさないことを前提に、
事例に照らし、同法第160条第1項第1号に基づく否認権の行使の可否についての
検討が求められる。この点に関しては、同法第164条の制度趣旨のほか、対抗要件
具備行為の性質論との関係で様々な考え方を採り得るところであるが、解答に当たっ
ては、反対の結論を採る立場に言及しつつ、自らの考え方に基づいて論理的かつ一貫
性のある解釈を示した上、事例に即した当てはめをして結論を導くことが求められる。
設問2は、対抗要件具備行為が否認された場合と売買契約自体が否認された場合の
それぞれについて、否認の効果に関する説明を求めるものである。解答に当たっては、
登記又はその原因となる行為が否認されたことによって登記に関する法律関係はど
うなるのか、土地所有権の帰属に関する法律関係はどうなるのか、支払済みの売買代
金に関する法律関係はどうなるのかという問題に整理した上、関連する条文を摘示し
て説明することが求められる。その際、対抗要件具備行為が否認された場合の所有権
移転登記手続請求権や、売買契約が否認された場合の売買代金返還請求権が、破産手
続においてどのように取り扱われるかについても言及する必要があろう。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「令和4年予備試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
