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令和4年 予備試験 論文式 実務基礎(刑事) 出題の趣旨・論点・解説

令4予備 実務基礎(刑事)実務基礎(刑事)

問題

[刑 事]

次の【事例】を読んで、後記〔設問〕に答えなさい。 【事例】 1 A(23歳、男性)は、令和3年3月31日、「被告人は、金品を強取しようと考え、㋐Bと 共謀の上、令和3年3月9日午後1時頃、H県I市J町1丁目2番3号V方に、宅配業者を装 って玄関から侵入し、その頃から同日午後1時10分頃までの間、同所において、V(当時7 5歳)に対し、持っていたサバイバルナイフを突き付け、『金とキャッシュカードを出せ。』な どと申し向け、持っていたロープでVの両手首及び両足首を縛るなどの暴行脅迫を加え、Vの 反抗を抑圧した上、V所有又は管理の現金500万円及びキャッシュカード1枚を強取し、そ の際、Vに加療約10日間を要する両手関節部擦過傷の傷害を負わせた。」旨の住居侵入、強盗 致傷被告事件(以下「本件被告事件」という。)でH地方裁判所に公判請求された。B(21歳、 男性)は、Aが公判請求される前日に、前記住居侵入、強盗致傷の事実で同裁判所に公判請求 されていた。 2 Aが公判請求されるまでに収集された主な証拠の概要は次のとおりである(以下、特に年を 明示していない日付は全て令和3年である。)。なお、Aは、取調べに対し、一貫して黙秘して いた。 ⑴ Vの警察官面前の供述録取書(証拠①) 「私は、自宅に1人で住んでいる。3月9日午後1時頃、玄関のチャイムが鳴り、インター ホンに応対したところ、男が宅配業者を名乗ったため、玄関のドアを開けた。すると、茶色 の作業着上下と帽子を着用した男が玄関内に入ってきてドアを閉め、ポケットから取り出し たナイフを私ののど元に突き付け、『金とキャッシュカードを出せ。』と言ってきた。男の言 うとおりにしないと刺されると思い、寝室のたんすの中に現金やキャッシュカードがあるこ とを伝えた。男は、私にナイフを突き付けたまま、私を連れて寝室に移動し、再び、現金と キャッシュカードを出すように言ってきた。私は、たんすの引き出しを開け、中にあった現 金500万円とR銀行の私名義のキャッシュカード1枚を男に示した。男は、その現金とキ ャッシュカードを奪って作業着上衣のポケットに入れると、私を床にうつ伏せに押さえ付け、 私の両手首と両足首をロープで縛った。そして、男が『キャッシュカードの暗証番号を教え ろ。』と言ってきたので、私は、4桁の暗証番号を教えた。すると、男はその場から立ち去っ た。私は、両手両足を必死に動かし、ロープを緩めて手足を抜いたが、その際、両手首を怪 我してしまった。その後、110番通報した上で、R銀行に電話をかけ、キャッシュカード の利用を停止した。犯人の男が家にいた時間は約10分間だった。」 ⑵ ロープに関する捜査報告書(証拠②) 「Vの110番通報を受け、3月9日午後1時40分頃にV方に臨場した警察官らは、Vの 両手首及び両足首を縛っていたものとして、Vから水色のロープ2本の提出を受けたことか ら、これを領置した。」 ⑶ I市立病院医師作成の診断書(証拠③) 「Vが3月9日、同病院を受診し、同日から約10日間の加療を要する両手関節部擦過傷と 診断された。」 ⑷ Qマンション防犯カメラ画像の精査に関する捜査報告書(証拠④) 「警察官らがV方付近の防犯カメラを検索したところ、V方から北方約50メートルに位置 するQマンション入口に防犯カメラが設置されていることが判明した。同防犯カメラ画像を 精査した結果、3月9日午後0時56分、同マンション前路上に、車両番号『あ 8910』 の黒色ワンボックスカーが止まり、同日午後0時58分、同車両助手席から男(茶色の作業 着上下、帽子を着用)が降り、南方に歩いていく状況と、同日午後1時11分、南方から同 男と思われる男が走ってきて同車両助手席に乗り込み、同車両が発進する状況が記録されて いた。」 ⑸ 車両検索に関する捜査報告書(証拠⑤) 「車両番号『あ 8910』について検索をかけたところ、同車両番号での黒色ワンボック スカーの該当は1台のみであることが確認され、その使用者はBであることが判明した。」 ⑹ V名義のキャッシュカード利用状況に関する捜査関係事項照会回答書(証拠⑥) 「R銀行S支店に開設されたV名義の普通預金口座(口座番号1234567)に係るキャ ッシュカードについては、3月9日午後1時35分頃、Vの申入れにより利用停止の手続が 執られた。同日午後1時40分、UコンビニエンスストアT店に設置されたATMに同キャ ッシュカードが挿入され、出金の操作が行われたが、未遂に終わっている。」 ⑺ UコンビニエンスストアT店防犯カメラ画像の精査に関する捜査報告書(証拠⑦) 「UコンビニエンスストアT店の駐車場及び店内に設置された防犯カメラ画像を精査した結 果、3月9日午後1時38分、黒色ワンボックスカーが駐車場に止まり、運転席から、黒色 の上衣、青色のズボンを着用した男(以下『甲』という。)、助手席から、茶色の作業着上下 を着用した男(以下『乙』という。)がそれぞれ降り、入店する様子が記録されていた。また、 入店後、甲が、同日午後1時39分から同日午後1時41分までの間、ATM前に立ってい る様子、乙が、清涼飲料水コーナーでペットボトル1本を手に取り、同日午後1時41分、 店員にカードを手渡して購入手続を行う様子が、記録されていた。」 ⑻ 商品購入状況に関する捜査報告書(証拠⑧) 「UコンビニエンスストアT店店長からの聴取により、3月9日午後1時41分、同店にお いて、清涼飲料水1本が購入されたこと、その購入に際しては、交通系ICカードが用いら れたことが判明し、同カードの名義人を照会した結果、Bであることが確認された。」 ⑼ B方及びB使用車両の捜索差押調書(証拠⑨) 「3月10日午前7時から同日午前7時45分までの間、B方及びB使用車両の捜索を実施 し、B方において、現金200万円、茶色の作業着上下1着、茶色の帽子1個、水色物干し ロープ1巻及び携帯電話機1台を発見したので、これらを差し押さえた。」 ⑽ Bの警察官面前の供述録取書(3月12日付け)(証拠⑩) 「3月1日の夜、Aから電話で、『家に金をためているばあさんがいるらしい。一緒にその 金を奪わないか。』と誘われ、金に困っていたので承諾した。それから何回か、Aと共に私の 車でV方付近に行き、V方の様子を観察したところ、Vが1人暮らしで、昼前後はV方にい ることが分かったので、昼過ぎ頃にV方に押し入ることにした。その後、Aと話し合い、私 が宅配業者を装ってV方に入り、刃物でVを脅して現金とキャッシュカードを奪うこと、そ の際にVから暗証番号を聞き出すこと、発覚を遅らせるためにVを縛ること、その間Aが見 張りをすることを決めた。Aから、宅配業者のような服とVを縛る道具を用意するように言 われたので、茶色の作業着上下と帽子を購入した。Vを縛るためには、家にあった物干しロ ープを使うことにした。3月9日午後0時過ぎ頃、購入した作業着を着て、私の車でA方に 行き、その後、Aに運転を替わってV方に向かった。Aは、V方付近のマンション前に車を 止めると、『親父のだから、落としたりするなよ。』と言いながら、私にナイフを渡してきた。 そのナイフを受け取って作業着上衣のポケットに入れ、帽子をかぶり、軍手をはめて車から 降りた。その後は計画どおりに実行し、V方のたんすの引き出し内にあった現金の束とキャ ッシュカード1枚を奪い、暗証番号を聞き出した。V方を出た後は、Aが待つ車の助手席に 乗り込み、Aが車を発進させた。Aは、しばらくの間車を走らせていたが、30分ほど経っ た頃、Uコンビニエンスストアの駐車場に車を止め、『カードで金を下ろしてくる。』と言っ てきた。そこで、私は、Vから奪ったキャッシュカード1枚をAに渡して暗証番号を伝え、 Aにナイフを返した。Aが車から降り、私も飲み物でも買おうと思って車から降りた。店内 では、私名義の交通系ICカードを使ってスポーツドリンク1本を買った。それから、Aと 2人で車に戻ったが、この時Aが不機嫌そうに、『もう使えなかった。』と言っていたので、 キャッシュカードが利用停止になっており、出金できなかったことが分かった。その後、A 方に行き、Vから奪った現金500万円を2人で分けた。取り分は、Aが300万円で私が 200万円だった。実行したのは私だったので分け前に少し不満はあったが、地元の先輩で あるAには昔から面倒を見てもらっていて、私が学校でいじめられていたときに助けてもら ったり、金に困っていたときに金を貸してもらったりしていたので仕方ないと思った。」 ⑾ B使用の携帯電話機の精査に関する捜査報告書(証拠⑪) 「B使用の携帯電話機を精査したところ、メッセージアプリがインストールされ、同アプリ に『A』なる者が登録されていること、『A』とBとの間で通話やメッセージが頻繁に交わさ れており、3月1日午後8時32分にも『A』からの着信があり、約14分間の通話があっ たことが判明した。」 ⑿ A方の捜索差押調書(証拠⑫) 「3月10日午後3時から同日午後3時45分までの間、A方の捜索を実施し、Aが使用 する部屋において、R銀行発行に係るV名義のキャッシュカード1枚(口座番号12345 67)及びサバイバルナイフ1本を発見したので、これらを差し押さえた。」 ⒀ A父の警察官面前の供述録取書(証拠⑬) 「私は、妻、息子のAと3人で自宅に住んでいる。警察官から、サバイバルナイフを所持 しているかと尋ねられたが、1本持っている。特注品であり、柄には私の名前が入っている。 本日、Aの部屋から発見されたというサバイバルナイフ1本を見せてもらったが、柄に入っ た名前などから私のものに間違いない。3月7日にもそのナイフを持って釣りに行った。B のことは知っているが、ここ数年は会ったことがなく、そのナイフを貸したこともない。」 ⒁ 指紋対照結果に関する捜査報告書(証拠⑭) 「証拠⑫記載のサバイバルナイフ1本から採取した指紋のうち、柄から採取した指紋2個 が、それぞれBの右手拇指及び右手中指の指紋と一致した。」 ⒂ Qマンション防犯カメラ画像の精査に関する捜査報告書(証拠⑮) 「3月1日以降の防犯カメラ画像を新たに入手して精査した結果、同月3日から同月5日ま での各日午前8時頃から午後6時頃までの間、車両番号『あ 8910』の黒色ワンボック スカーがQマンション前路上に止められ、同車両を男2名が出入りする様子が記録されてい た。」 ⒃ Aの債務に関する捜査報告書(証拠⑯) 「消費者金融各社に対する照会の結果、本件犯行日である3月9日時点で、Aが消費者金融 Y社に対して105万円、消費者金融Z社に対して220万円の債務を負っていたこと、Y 社に対する債務につき、3月10日午前9時32分に100万円が返済され、Z社に対する 債務につき、同日午前9時34分に200万円が返済されていることがそれぞれ判明した。」 ⒄ Bの検察官面前の供述録取書(3月26日付け)(証拠⑰) 証拠⑩と同旨の供述に加え、「事件の翌朝、警察官が家に来たとき、初めはしらを切ろうか と思ったが、嘘を言っても通用しないだろうと思い、最初から全部本当のことを話すことに した。Vに怖い思いをさせて申し訳ない。」旨の供述が録取されている。なお、Bは、取調べ に対し、一貫して本件犯行を認め、証拠⑩と同旨の供述をしていた。 3 受訴裁判所は、4月2日、本件被告事件を公判前整理手続に付する決定をした。 検察官は、同月14日、本件被告事件について、犯行に至る経緯、犯行状況等をB供述に沿 って時系列で記載した証明予定事実記載書を裁判所に提出するとともに、証拠の取調べを裁判所 に請求し、当該証拠を弁護人に開示した。 その後、所定の手続を経て、弁護人は、「AがBと共謀した事実はなく、Aは無罪である。」 旨の予定主張記載書を裁判所に提出し、検察官請求証拠に対する意見を述べた。これを受け、 ㋑裁判所は、検察官に対し、どのような事実と証拠に基づいてAB間の共謀を立証するのか、 その主張と証拠の構造が分かるような証明予定事実記載書を追加で提出するように求めた。 その後、検察官による追加の証明予定事実記載書の提出、Bの証人尋問請求等の所定の手続 が行われ、9月21日、裁判所は、争点を整理し、検察官が請求したBを証人として尋問する 旨の決定をするなどした上、審理計画を策定し、公判前整理手続を終了した。裁判所が策定し た審理計画は、第1回公判期日に冒頭手続、検察官請求証拠のうち証拠書類等の取調べ、第2 回公判期日にBの証人尋問、第3回公判期日に被告人質問、第4回公判期日に論告、弁論等を 行い、第5回公判期日に判決を言い渡すというものであった。 4 検察官は、Aについて、起訴後の接見等禁止決定がなされていたものの、その終期が公判前整 理手続の終了する日までとされていたことから、㋒同日、接見等禁止の請求をし、裁判官は、そ の終期を第1回公判期日が終了する日までとして接見等禁止決定をした。 第1回公判期日において、冒頭手続、検察官請求証拠のうち証拠書類等の取調べが行われた。 検察官は、同期日終了後、裁判所に対し、接見等禁止の請求をし、裁判所は、その終期を第2回 公判期日が終了する日までとして接見等禁止決定をした。 その後、第2回公判期日において、Bの証人尋問が行われ、Bは、証拠⑰と同旨の証言をし た。㋓検察官は、同期日終了後、接見等禁止の請求をしなかった。 〔設問1〕 下線部㋐に関し、検察官は、Aが本件被告事件に関与した状況についてのB供述の信用性が認め られ、同供述の内容等を踏まえればAに共謀共同正犯が成立すると判断したものであるところ、 以下の各問いに答えなさい。なお、証拠①から⑨及び証拠⑪から⑯に記載された内容については、 信用性が認められることを前提とする。 ⑴ B供述のうち本件被告事件に関与したのはAであるとする供述部分の信用性が認められると判断 した検察官の思考過程について、具体的事実を指摘しつつ答えなさい。 ⑵ Aに共謀共同正犯が成立すると判断した検察官の思考過程について、具体的事実を指摘しつつ答 えなさい。 〔設問2〕 下線部㋑に関し、裁判所が検察官に対し、追加の証明予定事実記載書の提出を求めた理由を、公 判前整理手続の制度趣旨に言及しつつ答えなさい。 〔設問3〕 下線部㋒及び㋓に関し、検察官は、下線部㋒では接見等禁止の請求をしたのに、下線部㋓ではこ れをしていないが、検察官がこのように異なる対応を採った理由を、具体的事実を指摘しつつ答 えなさい。 〔設問4〕 仮に、第2回公判期日に実施されたBの証人尋問の主尋問において、Bが「今回の事件は、全て Aに言われたとおりにやった。当日私が着ていた作業着やロープもAが用意したものだ。」旨証言 した後、反対尋問において、弁護人がその点に関し捜査段階でどのような供述をしていたのかに ついて尋問を尽くしても、「覚えていない。」旨の証言に終始したとする。この場合において、弁 護人は、Bの証人尋問終了後、「やむを得ない事由」(刑事訴訟法第316条の32第1項)があ り、かつ、証拠能力も認められるとして、証拠⑩の取調べを請求した。これに対し、検察官は、 「やむを得ない事由」があることは争わないとした上で、証拠意見として「異議なし」と述べた。 ⑴ 弁護人が証拠⑩の取調べを請求した思考過程について、「やむを得ない事由」があり、かつ、証 拠能力も認められると考えた理由にも言及しつつ答えなさい。 ⑵ 検察官が証拠意見として「同意」ではなく「異議なし」と述べた理由を答えなさい。

論点の一覧

出題の趣旨をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。

設問1(1)

  • B供述(犯人はAであるとする部分)の信用性①――客観的証拠・客観的状況との整合性12点
  • B供述の信用性②――虚偽供述の動機の不存在、不利益供述、供述の一貫性・具体性10点

設問1(2)

  • 共謀共同正犯の成立要件の提示4点・簡潔に
  • 共謀(意思連絡)の認定と共謀に基づく実行8点
  • Aの正犯性(自己の犯罪として行う意思・重要な役割)8点

設問2

  • 公判前整理手続の制度趣旨7点・簡潔に
  • 追加の証明予定事実記載書の提出を求めた理由8点

設問3

  • 接見等禁止請求における罪証隠滅のおそれの有無(㋒と㋓の対応の差)13点

設問4(1)

  • 刑訴法316条の32第1項の「やむを得ない事由」8点
  • 証拠⑩の証拠能力――刑訴法328条の弾劾証拠7点

設問4(2)

  • 検察官が「同意」ではなく「異議なし」と述べた理由10点

全体

  • 論理的構成・文章表現5点

出題の趣旨(法務省公表)

本問は、共謀共同正犯の成否が争点となる住居侵入、強盗致傷事件を題材に、刑
事手続の基本的知識、刑事事実認定の基本構造及び基礎的刑事実務能力を試すもの
である。
設問1は、共犯者供述のうち被疑者が犯人であるとする供述部分の信用性が認め
られると判断した検察官の思考過程と、共謀共同正犯が成立すると判断した検察官
の思考過程を、それぞれ具体的な事実関係を踏まえて検討することを通じて、供述
の信用性判断及び共謀共同正犯についての基本的理解を示すことが求められる。
設問2は、事例に現れた、公判前整理手続における裁判所及び当事者のやり取り
を踏まえ、裁判所が検察官に追加証明予定事実記載書の提出を求めた理由を検討す
ることを通じて、公判前整理手続の意義や機能に対する基本的理解を示すことが求
められる。
設問3は、公判前整理手続に付された事件の起訴後の接見等禁止請求を巡る検察
官の対応に、手続の進展に伴い差が生じている理由を検討することを通じて、接見
等禁止における罪証隠滅のおそれについての理解を正確に示すことが求められる。
設問4は、弁護人が共犯者の証人尋問後に、その捜査段階における供述録取書の
取調べを請求した思考過程と、同請求に対する検察官の証拠意見の理由を検討する
ことを通じて、刑事訴訟法第316条の32第1項の「やむを得ない事由」につい
ての基本的理解を示すとともに、弾劾証拠についての理解を正確に示すことが求め
られる。
[倒 産 法]
次の文章を読んで、後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
【事例】
A株式会社(以下「A社」という。)は、自動車部品の製造及び販売を業とする株式会社である。
A社は、順調な業績を維持していたが、令和2年度に初めて赤字決算となったことから、自己所有
の甲土地をB株式会社(以下「B社」という。)に売却することとし、令和3年9月15日、B社と
の間で、売買代金を取引相当額である5000万円とする売買契約を締結した。A社は、同日、B
社から売買代金の支払を受けるのと引換えに、B社に対し、甲土地を引き渡すとともに、所有権移
転登記手続の申請に必要な書類を交付したが、その際、甲土地を買い戻す意思があり、近く買戻資
金の手当ができる見込みなので、所有権移転の登記申請の実行を半年程度待ってほしいと要請した。
B社はこの要請に応じたが、実際は、A社において買戻資金を調達する予定はなく、むしろ、他の
取引先から信用供与を得る可能性を残すために、甲土地の所有名義をA社のままにしておくことが
目的であった。
しかしながら、令和3年10月以降、A社の売上げの半分以上を占めていたC株式会社(以下「C
社」という。)からの売掛金の支払が滞るようになり、同年12月5日にC社が破産手続開始の申立
てをしてC社からの売掛金の支払が完全に途絶えたため、A社は、資金繰りに窮することとなった。
そこで、A社は、メインバンクを含む金融機関に緊急の融資を求めたものの、十分な額の融資を受
けることができなかったことから、令和4年1月25日を支払期限とするD株式会社に対する買掛
金の支払を遅滞するに至ったほか、同月31日を支払期限とするメインバンクに対する借入金の分
割弁済もできなかった。
その後、A社は、令和4年2月20日、代理人弁護士Eの名義で、取引先や取引金融機関に対し、
A社は近日中にEを申立代理人として破産手続開始の申立てを行う予定であり、債務の支払につい
てもそれまでの間停止する旨の通知(以下「本件通知」という。)を発した。さらに、A社は、同
年3月6日、F地方裁判所に対し、破産手続開始の申立てを行ったところ、F地方裁判所は、翌7
日、破産手続開始決定を発し、併せて弁護士Gを破産管財人に選任した。
〔設問1〕(⑴と⑵は、独立した問題である。)
⑴ B社は、令和4年2月21日に本件通知を受け取ったため、登記手続に必要な印鑑証明書を改
めてA社から取得して、同年3月1日、甲土地についてB社への所有権移転登記手続を行った。
この登記手続を申請する行為につき、破産管財人GのB社に対する否認権の行使が認められるか、
論じなさい。
⑵ B社は、令和4年2月3日、A社において取引先に対する買掛金の支払やメインバンクに対す
る借入金の返済が滞っているとの情報に接したことから、登記手続に必要な印鑑証明書を改めて
A社から取得して、同月12日、甲土地についてB社への所有権移転登記手続を行った。この登
記手続を申請する行為につき、破産管財人GのB社に対する否認権の行使が認められるか、反対
の結論を採る立場にも言及しつつ、論じなさい。
〔設問2〕
仮に、〔設問1〕⑴において、甲土地の所有権移転登記手続を申請する行為が否認された場合、B
社と破産管財人Gとの間の法律関係はどのようになるか、論じなさい。また、甲土地の売買契約に
係る代金額が1000万円であり、廉価売却であるとして甲土地の売買契約自体が否認された場合
のB社と破産管財人Gとの間の法律関係についても、説明しなさい。
(出題の趣旨)
設問1は、危機時期より前に締結された不動産の売買契約に基づいて所有権移転登
記手続がされた事例を題材に、対抗要件具備行為の否認の可否についての検討を求め
るものである。まず、小問⑴については、事例によれば、破産法第164条第1項が
適用されることに異論はないものと考えられることから、同項の定める要件を摘示し
て当てはめを行い、結論として否認権の行使が認められることを淡々と論ずることが
求められる。次に、小問⑵については、所有権移転登記手続の申請行為が「支払の停
止等」に至る前にされたものであることから、同項の要件は満たさないことを前提に、
事例に照らし、同法第160条第1項第1号に基づく否認権の行使の可否についての
検討が求められる。この点に関しては、同法第164条の制度趣旨のほか、対抗要件
具備行為の性質論との関係で様々な考え方を採り得るところであるが、解答に当たっ
ては、反対の結論を採る立場に言及しつつ、自らの考え方に基づいて論理的かつ一貫
性のある解釈を示した上、事例に即した当てはめをして結論を導くことが求められる。
設問2は、対抗要件具備行為が否認された場合と売買契約自体が否認された場合の
それぞれについて、否認の効果に関する説明を求めるものである。解答に当たっては、
登記又はその原因となる行為が否認されたことによって登記に関する法律関係はど
うなるのか、土地所有権の帰属に関する法律関係はどうなるのか、支払済みの売買代
金に関する法律関係はどうなるのかという問題に整理した上、関連する条文を摘示し
て説明することが求められる。その際、対抗要件具備行為が否認された場合の所有権
移転登記手続請求権や、売買契約が否認された場合の売買代金返還請求権が、破産手
続においてどのように取り扱われるかについても言及する必要があろう。

参考答案と AI 採点

第1 設問1⑴ 1 B供述は共犯者の供述であり、自己の責任を軽減し第三者を引き込む危険があるから、客観証拠との符合、供述の変遷の有無、虚偽供述の動機等から慎重に信用性を検討すべきで…

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出典:法務省「令和4年予備試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。