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令和4年 司法試験 論文式 民事訴訟法 出題の趣旨・論点・解説

令4司法 民事系科目第3問(民事訴訟法)民事訴訟法

問題

〔第3問〕(配点:100[〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は、45:30:25])

次の文章を読んで、後記の〔設問1〕から〔設問3〕までに答えなさい。 なお、解答に当たっては、文中において特定されている日時にかかわらず、試験時に施行されて いる法令に基づいて答えなさい。また、商号のうち「株式会社」は省略して差し支えありません。 【事 例】 1.動画コンテンツの企画・制作を行う会社(商号「株式会社Mテック」)(この会社は平成30年5 月21日に設立された。以下、この会社を「甲」という。)の設立者で代表取締役であるAは、事務 所の移転先を検討していたところ、都内に雑居ビルを所有するXを知人から紹介された。Xが同ビル の4階部分(以下「本件事務所」という。)を勧めるとAは即決し、令和2年4月10日、Xは甲と の間で、賃料を月額30万円、毎月末日に翌月分を支払う、期間を2年とすることを主な内容とする 賃貸借契約を締結した(以下「本件賃貸借契約」という。)。同月14日、Aは、本件事務所の所在 地を甲の本店とする本店移転の登記をし、Xにその旨を伝えた。 2.移転後の甲の業績は当初好調であったが、令和2年10月頃から徐々に業績が悪化し、運転資金に 不足が生じるようになった。賃料の支払が滞り、令和3年3月の時点で賃料の未払は3か月に及んだ。 Xは、同年3月10日、甲に対し、3月末日までに未払賃料の全額を支払うように催告するとともに、 その支払がなければ、本件賃貸借契約を解除するとの意思表示をし、訴えを提起して明渡しを求める 旨を内容証明郵便で通知した。甲は、期間内に未払賃料を支払わなかった。Aは、Xの訴えを空振り させて時間稼ぎができるように一計を案じ、同年4月2日、まず甲の商号を「株式会社Gテック」に、 代表取締役をAの配偶者であるBに変更し、商号の変更等の登記をした。さらにAは、同日、代表取 締役をA、商号を「株式会社Mテック」とする株式会社を設立し、設立の登記をした(以下、新設さ れた会社を「乙」という。)。乙の商業登記簿上の本店所在地、目的等は甲のそれと同一であった。 3.Xは、令和3年4月20日、Aによる一連の行為を知らぬまま、本件事務所の所在地を住所とする 「株式会社Mテック」を被告として表示し、請求の原因として、⑴原告は、被告との間で、令和2年 4月10日に本件事務所につき賃貸借契約を締結した、⑵原告は、同日、本件事務所を被告に引き渡 した、⑶原告は、被告が令和3年1月分以降の賃料を支払わないため、催告の上同契約を解除した(以 下省略)旨を記載した訴状を作成し、賃貸借契約の終了に基づき、本件事務所の明渡しを求める訴え を提起した(以下、この訴えに係る訴訟手続を「本件訴訟」という。)。なお、訴状には、同年4月 16日に発行された乙の代表者事項証明書が附属書類として添付されていた。代表者事項証明書には、 会社の商号、本店所在地、法人番号、代表者の資格、氏名及び住所の記載はあるが、会社の設立年月 日については記載がないため、Xは、乙を甲と誤認していた。 4.第1回口頭弁論期日の呼出状を受領したAは、Xの請求を棄却するとの判決を求める旨を記載した 答弁書を提出したものの、同期日には出頭しなかった。なお、答弁書には、請求の原因に対する認否 につき、「追って認否する。」とのみ記載されていた。 5.第2回口頭弁論期日に出頭したAは、請求原因事実⑴、⑵及び⑶を認める旨の陳述をした。その際、 Aは、同年4月2日付けで行われた甲の商号変更及び新会社乙の設立については一切明らかにしなか った。裁判所は、以上の経過を踏まえて口頭弁論を終結し、判決の言渡期日を指定した。 6.ところが、Aは、判決の言渡期日の直前に、⑴本件訴訟に係る訴えの提起時において「株式会社M テック」は乙の商号であるから被告は乙である、⑵乙はXとの間で本件賃貸借契約を締結していない、 ⑶第2回口頭弁論期日におけるXの主張を認める旨の陳述は事実に反するからこれを撤回する、⑷被 告たる乙はXに対していかなる債務も負わないからXの請求は棄却されるべきである、として口頭弁 論の再開を申し立てた。再開された第3回口頭弁論期日において、Aは、上記と同旨の主張をし、⑴ の証拠として、乙の全部事項証明書を提出した。全部事項証明書には、乙の設立年月日が記載されて いる。裁判所は、Xに対し、対応について検討するように指示し、次回期日を指定した。 以下は、裁判官Jと司法修習生Pとの間の会話である。 J:本件訴訟の被告に疑義が生じていますから、裁判所としては被告を確定しなければなりません。 当事者の確定の基準については様々な見解がありますが、ここでは、本件訴訟の被告が甲となる ような見解、乙となるような見解をそれぞれ一つ取り上げ、これらの見解に従って、被告を甲又 は乙と確定することができることをそれぞれ論じてもらえますか。これを「課題1」とします。 P:承知しました。 J:次に、仮に被告を乙と確定した場合について、裁判所は、第2回口頭弁論期日における乙の代 表者としてのAの陳述につき、自白が成立していると取り扱うべきか、仮に自白が成立している とすると、再開後の第3回口頭弁論期日における自白の撤回をどのように取り扱うべきかを検討 してください。これを「課題2」とします。なお、最高裁判所昭和48年10月26日第二小法 廷判決・民集27巻9号1240頁(以下「最判昭和48年」という。)は、新旧会社が実質的 に同一という事案において、新会社が旧会社と別人格であることを信義則によって実体法上否定 し、新会社は旧会社の責任を負うべきものとしましたが、課題1及び課題2について最判昭和4 8年を考慮する必要はありません。 〔設問1〕 あなたが司法修習生Pであるとして、Jから与えられた課題1及び課題2について答えなさい。 【事 例(続き)】 7.第3回口頭弁論期日後、本人訴訟を続けることに不安を覚えたXは、相談のため弁護士Lの事務所 を訪問した。Lは、事件の経過を一通り確認し、本件訴訟の被告が甲と確定される可能性は必ずしも 高くはないとの見方を示した。Xは、Lの指摘を踏まえ、甲に対する給付判決を得て、本件事務所の 明渡しを実現したい旨をLに伝え、対処法の検討を依頼した。 以下は、弁護士Lと司法修習生Qとの間の会話である。 L:Xは、甲に対する給付判決を得たいとのことですが、本件訴訟の被告が乙と確定されることを 前提とした場合に、Xにとって便宜な手段はありますか。 Q:甲を被告に追加する主観的追加的併合を申し立てることが考えられます。もっとも、最高裁判 所昭和62年7月17日第三小法廷判決・民集41巻5号1402頁(以下「最判昭和62年」 という。)は、この場合につき、仮に新旧両訴訟の目的たる権利又は義務につき現行の民事訴訟 法(以下「法」という。)第38条所定の共同訴訟の要件が具備する場合であっても、新訴が法 第152条1項の適用をまたずに当然に旧訴訟に併合されるとの効果を認めることはできない旨 判示しました。最判昭和62年によれば、甲に対して別訴を提起し、裁判所の裁量により弁論が 併合されるのを待つしかないと思います。 L:基本はそのとおりですが、本件訴訟においてXが被告の追加を求めるに至った原因が、甲が被 告にならないように乙を設立して甲の旧商号を乙に使用させたAの一連の行為にあるとしますと、 Xには主観的追加的併合を求めるだけの理由があると思います。それでも最判昭和62年と同様 に考えるべきでしょうか。 Q:最判昭和62年が主観的追加的併合を認めた場合の問題として指摘したのは、主として次の4 点に整理できると思います。第1に、新たな当事者に対する別訴(新訴)に対し、係属中の訴訟 (旧訴訟)の訴訟状態を当然に利用できるとは限らないので、訴訟経済に資するとはいえないこ と、第2に、全体として訴訟を複雑化させる弊害が予測されること、第3に、訴訟の途中で被告 の間違いや被告の脱漏が判明しても、原告は被告を追加できるため、軽率な提訴等が誘発される おそれがあること、第4に、新訴の提起の時期いかんによっては訴訟の遅延を招きやすいことで す。 L:そうですね。では、これらの4点を踏まえ、甲を被告に追加するXの申立てが認められるよう に立論してもらえますか。これを「課題」とします。 〔設問2〕 あなたが司法修習生Qであるとして、Lから与えられた課題について答えなさい。 【事 例(続き)】 8.本件訴訟の被告は乙と確定された。そこで、Xから訴訟委任を受けたLは、甲を被告として、本件 賃貸借契約の終了に基づき、本件事務所の明渡しを求める訴えを提起した。第1回口頭弁論期日に出 頭したBは、令和3年1月15日、甲はXとの間で賃料の支払猶予につき協議し、支払が遅れた賃料 及びその後2か月分の賃料の支払を猶予する旨の合意(以下「本件合意」という。)が成立したため、 Xは本件賃貸借契約を解除することはできないと主張し、「賃料支払猶予合意書」と題する電子ファ イル(以下「本件合意書」という。)を保存したUSBメモリを証拠として申し出た。Bの説明によ れば、本件合意書は、Aがコンピュータで賃貸人記名欄を未入力にした原案を作成し、Xに対し電子 メールで送信し、Xが内容を確認した上で賃貸人記名欄に氏名及び住所を入力して完成させた後、U SBメモリに保存し、Aに渡されたものとのことである。これに対し、Lと共に出頭したXは、本件 合意の成立を否認し、本件合意書は知らないと反論した。 以下は、裁判官Jと司法修習生Pとの間の会話である。 J:Bが証拠として申し出たUSBメモリは、情報を電磁的に記録する媒体であり、情報の読み出 しにはコンピュータやプリンター等の出力機器が不可欠ですから、新種証拠と呼ばれます。Xが 本件合意の成立を否認している以上、USBメモリを取り調べる必要があります。新種証拠の証 拠調べの方法をめぐっては、見解の対立がありますが、電磁的記録媒体のうち録音テープ及びビ デオテープについては法第231条により立法的に解決されました。これに対し、USBメモリ のようなコンピュータ用の記録媒体は、同条に挙がっていないため解釈が必要です。良い機会で すから、この種の記録媒体の取り調べは書証によるべきであるとの見解に立って、同条をUSB メモリに適用することができることを論証してもらえますか。 P:USBメモリは、法第231条の「情報を表すために作成された物件で文書でないもの」に該 当し、同条を適用することができる理由を明らかにせよということですね。 J:そのとおりです。ただし、論証する際には、まず「文書」を定義して、USBメモリが「文書 でないもの」に当たることを論証してください。その上で、USBメモリを録音テープ等と同様 に取り調べることが許容される理由を明らかにしてください。以上を「課題」とします。 〔設問3〕 あなたが司法修習生Pであるとして、Jから与えられた課題について答えなさい。

論点の一覧

出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。

設問1

  • 課題1:被告を甲と確定することができる見解とその当てはめ(意思説又は実質的表示説)10点
  • 課題1:被告を乙と確定することができる見解とその当てはめ(行動説又は表示説)10点
  • 課題2前半:裁判上の自白の成立要件と第2回期日のAの陳述への当てはめ10点
  • 課題2後半:自白の撤回禁止の原則と撤回が許される要件の構成(理由付け)7点
  • 課題2後半:自白撤回の許否についての当てはめ6点

設問2

  • 第1点:旧訴訟の訴訟状態の利用可能性と訴訟経済7点
  • 第2点:訴訟の複雑化という弊害が生じない旨の立論7点
  • 第3点:軽率な提訴等を誘発するおそれがない旨の立論7点
  • 第4点:著しい訴訟遅延を招来しない旨の立論7点

設問3

  • 「文書」の定義5点
  • USBメモリが「文書でないもの」に当たることの論証6点
  • 「情報を表すために作成された物件」該当性4点
  • 書証の意義とUSBメモリを録音テープ等と同様に取り調べ得る理由(法231条の適用)9点

全体

  • 論理的構成・表現5点・簡潔に

出題の趣旨(法務省公表)

本問は、令和3年4月20日、Xが、その所有する建物の一部(以下「本件事務所」とい
う。)につき、平成30年5月21日設立の会社である甲(商号「株式会社Mテック」)との
間で締結した賃貸借契約(以下「本件賃貸借契約」という。)の終了に基づき、「株式会社M
テック」を被告と表示して本件事務所の明渡しを求める訴えを提起した(以下、この訴えに
係る訴訟手続を「本件訴訟」という。)ところ、本件訴訟の提起前である令和3年4月2日、
甲の代表者Aが、甲の商号を「株式会社Mテック」から「株式会社Gテック」に変更し、甲
の代表取締役としてAの配偶者Bを就任させ、商号の変更等の登記をした一方で、自身を代
表取締役とし、商号を「株式会社Mテック」とする乙という会社を新たに設立し、設立の登
記をしていたことに加え、Xが訴状の附属書類として添付した代表者事項証明書には「株式
会社Mテック」の設立年月日の記載がないため、乙を甲と誤認したまま本件訴訟を提起して
いたという事案を素材としている。この事案について、①原告が請求の原因として主張した
本件賃貸借契約締結及びその解除の事実等を被告が認めたことを踏まえて口頭弁論が終結さ
れた後、Aから口頭弁論の再開が申し立てられ、被告と表示された乙はXと賃貸借契約を締
結していない等として自白の撤回が主張された場合における当事者の確定の基準及び自白の
撤回を主張することの当否の検討(設問1)、②本件訴訟の被告が乙であることを前提とした
場合に、Xが甲を被告として追加する主観的追加的併合を申し立てる際に留意すべき4つの
問題点の検討(設問2)、③本件訴訟の被告が乙と確定され、Xが甲を被告として本件賃貸借
契約の終了に基づき本件事務所の明渡しを求める訴えを提起した場合において、甲が本件賃
貸借契約には賃料支払猶予の合意(以下「本件合意」という。)があることを理由に解除する
ことができないと主張し、その証拠として提出された本件合意を記録した電子ファイルを保
存したUSBメモリの取調べを書証によってすることができることの論証(設問3)をそれ
ぞれ求めるものである。
まず、設問1の課題1では、当事者の確定の基準に関する種々の見解から、被告を甲と確
定し得る見解と乙と確定し得る見解をそれぞれ一つ取り上げ、これらの見解に従えば被告を
甲又は乙と確定し得ることを実際に論証することが求められている。甲は訴状に現れていな
いため、被告を甲と確定することができる見解としては、例えば、意思説が考えられ、この
見解によるならば、この見解が、原告の意思に着目するものであることを指摘した上で、X
が甲を被告とする意思であったことを、訴状の記載等に言及しつつ、説得的に論証すること
が求められる。次に、被告を乙と確定することができる見解としては、例えば、行動説が考
えられ、この見解によるならば、この見解が、被告らしく行動した者は誰であるかに着目す
るものであることを指摘した上で、実際に訴訟追行をしたのは乙の代表者Aであることに言
及するなどして被告らしく行動したのは乙であることを説得的に論証することが期待される。
次に、設問1の課題2では、被告を乙と確定した場合に、第2回口頭弁論期日において乙
(代表者A)が請求原因事実を認める旨を陳述したことにより裁判上の自白が成立したこと
になるか、仮に自白が成立したとして、再開後の第3回口頭弁論期日における自白の撤回が
許されるかどうかの検討が求められる。課題2の前半部分では、裁判上の自白の成立要件を
明らかにした上で、乙(代表者A)の上記陳述について要件該当性を検討することが求めら
れる。課題2の後半部分では、裁判上の自白が成立した場合には、原則としてその撤回が禁
止されることを踏まえ、例外として自白撤回が許される場合を明らかにすることが期待され
る。本件において問題となる自白撤回の要件としては、自白した事実が真実に反し、かつ、
自白が錯誤に基づくことが証明されたことが挙げられるが、個々の要件につき、反真実を錯
誤よりも重視する見解、また、錯誤を反真実よりも重視する見解が主張されていることに鑑
み、撤回要件の当てはめに先立ち、自白撤回の要件をどのように構成するかを理由付けとと
もに明らかにすることが期待される。この理由付けができている限り、自白撤回の要件をど
の見解に従って構成したかによって評価に差を設けることはない。当てはめにおいては、自
らが採用した見解に従い、乙(代表者A)による自白撤回の許否を検討する必要があるとこ
ろ、反真実については、本件賃貸借契約の締結当時、賃借人は「株式会社Mテック」こと甲
であるから、Xと乙との間で賃貸借契約が締結された事実はないことに言及する必要がある。
他方で、錯誤については、乙(代表者A)は、請求原因事実を認める旨を陳述した際、本件
賃貸借契約の賃借人が乙ではないことを知っていたことに言及する必要がある。
設問2では、本件訴訟の被告が乙と確定されることを想定し、Xが甲に対する給付判決を
得る上で便宜な手段として主観的追加的併合の申立てがあるところ、最判昭和62年7月1
7日民集41巻5号1402頁が主観的追加的併合を認めた場合の問題として主に4点を指
摘していることを踏まえ、Xによる主観的追加的併合の申立てが認められるような立論を上
記4点を踏まえて検討することが求められている。第1に、新たな当事者に対する別訴に対
し、旧訴訟の訴訟状態を利用することができ、それが訴訟経済に資する旨の立論については、
Xが乙を甲と誤認して旧訴訟(X乙間の訴訟)に提出した資料は、本来甲に対する新訴訟(X
甲間の訴訟)において提出すべきであったことを踏まえ、甲と乙はたとえ別法人であっても、
それはAがXに乙を甲と誤認させるように図った結果であるから、信義則上、旧訴訟におい
て形成された乙に不利な訴訟状態が弁論の併合を通じて新当事者が引き継ぐことを甲は拒否
することができないのではないか、といった点に言及することが期待される。第2に、主観
的追加的併合を認めることにより全体として訴訟が複雑化するという弊害は予測されない旨
の立論については、旧訴訟では請求原因事実について乙が自白しているところ、弁論の併合
の結果、この訴訟状態が新訴訟に引き継がれることにより、裁判所は事案全体を統一的に把
握することができるようになるから、必ずしも訴訟が複雑化するという弊害は生じないので
はないか、といった点に言及することが期待される。第3に、主観的追加的併合を認めても
軽率な提訴等を誘発するおそれはない旨の立論としては、Xが乙を甲と誤認した主な原因が、
甲の商号変更、乙の設立及び甲の旧商号の使用等のAによる一連の行為にあることから、X
は被告の誤認について帰責性が乏しいため、この事案において主観的追加的併合による被告
の追加を認めたからといって、必ずしも軽率な提訴は誘発されないのではないか、といった
点に言及することが期待される。第4に、主観的追加的併合が訴訟の遅延を招来しない旨の
立論としては、例えば、主観的追加的併合の申立ては、甲を被告に追加するXの申立てを伴
うところ、追加された甲に対して防御の機会を保障するには新たな期日を設ける必要がある
以上訴訟手続の遅延は生じるが、そもそも訴訟手続の遅延はそれが著しい場合に限り不適法
となることに鑑みると(民事訴訟法(以下「法」という。)第143条第1項ただし書の類推)、
甲を被告に追加する旨をXが申し立てた時期は第1審手続の係属中であり、旧訴訟の訴訟状
態が引き継がれることなどからすれば、著しい訴訟遅延が生じるおそれはないといった点に
言及することが考えられる。
設問3では、Xが、甲を被告として、本件賃貸借契約の終了に基づいて提起した、本件事務
所の明渡しを求める訴えに係る訴訟手続において、第1回口頭弁論期日に出頭した甲の代表者
Bが証拠として提出したUSBメモリが、「情報を表すために作成された物件で文書でないも
の」(法第231条)に該当し、書証により取り調べることができることの論証が求められて
いる。設問3の課題前半部分では、「文書」の定義を明らかにした上で、USBメモリが「文
書でないもの」に該当することの論証が求められる。文書は、「文字その他の記号を使用して
人間の思想、判断、認識、感情等の思想的意味を可視的状態に表示した有形物」(大阪高決昭
和53年3月6日高民集31巻1号38頁)のように定義されることから、このような文書の
定義に照らして、USBメモリが文書に当たらないことを論証することが期待される。設問3
の課題後半部分では、USBメモリを録音テープ等と同様に取り調べることが許される理由の
検討が求められる。ここでは、証拠方法の一つとしての書証がどのようなものであるかを明ら
かにした上で、法第231条においては、USBメモリのようなコンピュータ用の電磁的記録
媒体が例示されていないことに留意しつつ、USBメモリに保存された電子ファイルは、適切
な出力装置によってこれを閲読可能な状態にすることができる限り、これを閲読し、その結果
を証拠資料にすることができることに言及する必要がある。

参考答案と AI 採点

第1 設問1 一 課題1 1 被告を甲と確定し得る見解——意思説 (1) 意思説は、原告が訴訟物たる権利関係の主体として被告とする意思を有した者を当事者とし、訴状の表示のみならず請…

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出典:法務省「令和4年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。