令和4年 司法試験 論文式 刑法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第1問〕(配点:100)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1(1)
- 主張⑴の問題の所在の特定(横領罪の「占有」は委託に基づく占有に限られることを前提に、窃盗犯人Aとの委託関係も保護に値するか)8点・簡潔に
- 主張⑴の当否についての自説・論拠(横領罪の罪質に基づく論述)9点・簡潔に
設問1(2)
- 横領行為(「横領した」)の意義の提示(越権行為説か領得行為説か)8点・簡潔に
- 隠匿行為の「横領」該当性(利用処分意思の要否)とあてはめ9点・簡潔に
設問2
- 乙のAに対する刺突行為の傷害罪の構成要件該当性3点・簡潔に
- 他人のための正当防衛における急迫性の判断基準(被侵害者甲と防衛者乙のいずれを基準とするか)10点
- 甲を基準とした侵害の急迫性の検討(予期された侵害・行為全般の状況)11点
- 急迫不正の侵害を誤信した乙の故意犯の成否(誤想防衛・誤想過剰防衛の処理)11点
- 刑法36条2項(準用)による刑の減免の可否4点・簡潔に
- 本件原付を乗り去った行為の窃盗罪の構成要件・不法領得の意思5点・簡潔に
- 緊急避難(37条1項)の要件検討6点
- 自招危難(自ら招いた危難に対する避難行為の許容性)9点
全体
- 論理的構成・論述の体系性・表現7点
出題の趣旨(法務省公表)
本問の〔設問1〕は、渉外性を有する成年後見開始の審判事件及び成年後見人の選任の審
判事件を素材として、成年後見開始の審判事件及び成年後見人の選任の審判事件の国際裁判
管轄権と成年後見開始の審判及び成年後見人の選任の準拠法に関する基本的理解と応用力を
問うものである。また、本問の〔設問2〕は、渉外性を有する未成年後見人の選任の事案を
素材として、後見人の選任の準拠法についての理解を、本問の〔設問3〕は、渉外性を有す
る遺言による贈与により遺留分が侵害されているとして遺留分侵害額に相当する金銭の支払
を請求する訴えが提起された事案を素材として、遺言能力、遺言の方式、遺言による贈与の
有効性、遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求の準拠法についての理解を問うものである。
〔設問1〕は、BによるAの後見開始の審判の申立て及びAの後見人の選任の申立てにつ
いて、日本の家庭裁判所の国際裁判管轄権が認められるか、また、日本の家庭裁判所がいず
れの申立てについても国際裁判管轄権を有すると仮定した場合に、Aの後見開始の審判及び
Aの後見人の選任の準拠法がそれぞれいずれの国の法になるかを問うものである。
まず、BによるAの後見開始の審判の申立てが、法の適用に関する通則法(以下「通則法」
という。)第5条の規定が定める後見開始の審判であること、また、成年被後見人となるべき
者が日本に住所若しくは居所を有するとき又は日本の国籍を有するときは、日本の裁判所の
国際裁判管轄権が認められることを示す必要がある。本件申立てについては、Aは甲国人で
あり、Aの住所は日本国内に所在すると認定し得ることから、BによるAの成年後見開始の
審判の申立てについては、通則法第5条の規定に基づき、日本の家庭裁判所が国際裁判管轄
権を有することとなろう。
次に、BによるAの成年後見人の選任の申立てについて日本の家庭裁判所の国際裁判管轄
権が認められるかに関しては、これについて直接定めた明文規定が存在しないため、本問で
は、Aの後見人の選任の申立てについても日本の家庭裁判所に国際裁判管轄権が認められる
かを検討し、その根拠について説明することが求められている。例えば、成年後見に関する
審判事件の国際裁判管轄権については、条理により、被後見人が日本に住所若しくは居所を
有するとき又は日本の国籍を有するときは、日本の裁判所に国際裁判管轄権を認めるべきで
あるとする立場や、通則法第5条と通則法第35条の規定は連動しており、通則法第5条の
規定により成年後見が開始した場合には、日本法上要求される後見人の選任、辞任、解任や
後見監督人の選任等の全ての国際裁判管轄権が日本の裁判所に認められるとする立場などが
考えられよう。
本問は、日本の家庭裁判所が国際裁判管轄権を有すると仮定した場合に、Aの成年後見開
始の審判及びAの成年後見人の選任について、それぞれいずれの国の法によるべきかについ
ても問うている。まず、Aの後見開始の審判については、通則法第5条の規定に従い、日本
法が準拠法となることの説明が求められている。次に、Aの後見人の選任については、「後見」
の問題として法律関係の性質決定がされ、通則法第35条の規定によって準拠法が決定され
ることを示す必要がある。外国人が被後見人である場合の後見人の選任の審判については、
同条第2項第2号の規定によれば、「日本において当該外国人について後見開始の審判等があ
ったとき。」は、日本法によると定められており、本問では、日本法に従い、Aの後見人の選
任を行うことを説明する必要があろう。
〔設問2〕は、Cの後見人の選任の審判事件について日本の家庭裁判所が国際裁判管轄権
を有すると仮定した場合に、DをCの後見人に選任することができるか、すなわち、未成年
後見の場合の後見人の選任の準拠法の理解を問うものである。Cが未成年者であるかという
問題は、通則法第4条の「人の行為能力」の問題として法律関係の性質決定がされ、同条第
1項の規定に従い、Cの本国法である甲国法により判断されること、甲国民法を本件事案に
当てはめると、Cが未成年者であることの説明が求められている。本問では、Cの父母であ
るABが共に死亡しているため、Cについて親権を行う者が存在せず、DをCの後見人に選
任することができるかが問題となる。Cの後見人の選任の問題は、通則法第35条の「後見」
の問題として法律関係の性質決定がされ、同条第1項の規定に従い、被後見人Cの本国法で
ある甲国法が準拠法となることを示す必要がある。甲国民法の規定によれば、未成年者に対
して、親権を行う者がないときは、後見が開始するほか、未成年者の父若しくは母が死亡し
ているか又は親権を喪失したときは、①祖父母、②兄、姉、③その他の親族の順序で、特別
の手続を要することなく、当然に後見人となる。本問では、Cの祖母であるDはCの後見人
となることができるという、実質法の本件事案への当てはめの結果を説明することが求めら
れている。
〔設問3〕の〔小問1〕は、遺言能力、遺言の方式及び遺言による贈与の有効性について
の準拠法の理解を問うものである。
まず、Aの遺言能力の有無については、遺言能力の準拠法について定める規定が通則法の
いずれの規定かを検討して準拠法を決定し、実質法の本件事案への当てはめの結果を説明す
ることが求められている。通説的な理解に従いAの遺言能力を意思表示としての遺言の実質
的有効性の問題であると解すれば、遺言能力は、通則法第37条第1項の「遺言の成立」の
問題と性質決定され、遺言の成立の当時における遺言者Aの本国法である甲国法が準拠法と
なること、甲国民法によれば、Aは遺言能力を有しており、意思表示としての遺言は本件で
は有効に成立していることを説明する必要があろう。
次に、遺言の方式上の有効性については、「遺言の方式」の問題と性質決定されること、遺
言は、遺言の方式の準拠法に関する法律(以下「方式法」という。)第2条の規定が掲げるい
ずれかの法の定める要件に合致しているときは方式上有効とされることを指摘した上で、方
式法第2条の規定の本件事案への適用の結果を丁寧に述べ、本件遺言は、甲国民法又は日本
民法の要求する方式を満たし、有効に成立していることを説明する必要がある。
仮に、本件遺言が有効に成立しているとした場合には、本件遺言による贈与は有効に成立
しているかが問題となるが、本問では、遺言による贈与の有効性の準拠法について定める規
定について検討することが求められている。通説的な理解に従い、遺言の内容となる法律行
為の問題については、意思表示としての遺言自体の問題とは区別し、当該法律行為の準拠法
によると解すれば、本問では、遺言による贈与の有効性は、通則法第36条の「相続」に関
する問題と性質決定され、被相続人Aの本国法である甲国法が準拠法となり、実質法の本件
事案への当てはめの結果として、甲国民法によれば、本件遺言による贈与が有効に成立して
いることを説明する必要があろう。
〔設問3〕の〔小問2〕は、B及びCが主張する遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求が
認められるか否かの問題の準拠法についての理解を問うものである。通説的な理解では、この
問題は通則法第36条の「相続」の問題と性質決定され、被相続人Aの本国法である甲国法が
準拠法とされることになろう。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「令和4年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
