令和4年 司法試験 論文式 刑事訴訟法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:100)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- おとり捜査の意義5点
- おとり捜査の法的性質と違法とされる実質的理由8点
- 適法性の判断基準の定立(平成16年決定の理解)8点
- あてはめ① 対象事件の性質と捜査の必要性7点
- あてはめ② 甲の犯意と働きかけの態様・程度10点
設問2-1
- 問題の所在の把握と訴因の本質5点
- 訴因変更の要否の判断枠組み(平成13年決定)8点
- 第1段階のあてはめ(審判対象画定に必要不可欠か)4点
- 第2段階のあてはめ(防御上の重要性と訴因への明示)4点
- 例外該当性のあてはめ(不意打ち・不利益)9点
設問2-2
- 問題の所在(共謀の日にちは訴因に明示されていない)6点
- 釈明内容の訴因該当性の検討と訴因変更の要否7点
- 争点顕在化・不意打ち防止の法理(昭和58年判決)6点
- あてはめ(アリバイ主張をめぐる攻防と11月2日の認定)8点
全体
- 論理的構成・論述の説得力・文章表現5点・簡潔に
出題の趣旨(法務省公表)
本問は、渉外性を有する物品売買契約の事案を素材として、財産関係事件の国際裁判管轄
権、財産法領域(契約や不当利得など)における準拠法、「国際物品売買契約に関する国際連
合条約」(以下「ウィーン売買条約」という。)の適用範囲に関する基本的理解と応用力を問
うものである。
[設問1]は、契約債務の不履行を理由とする損害賠償請求訴訟について、被告が外国に
住所を有する場合、すなわち民事訴訟法(以下「民訴法」という。)第3条の2の規定に基づ
く国際裁判管轄権が日本の裁判所に認められない場合において、どのような管轄原因があれ
ば日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるかを問うものである。特に民訴法第3条の3
第1号について論ずることが求められている。
まず、本件訴えは、Yの債務不履行を理由とする損害賠償請求訴訟であるから、「契約上の
債務の不履行による損害賠償の請求を目的とする訴え」(民訴法第3条の3第1号)に該当す
ることを指摘した上で、「契約において定められた当該債務の履行地が日本国内にあるとき」
又は「契約において選択された地の法によれば当該債務の履行地が日本国内にあるとき」に
は、日本の管轄権が肯定されることを示すことが求められている。
次に、本件の損害賠償債務は、Yの契約上の本来債務がその不履行によって転化したもの
であるから、「当該債務」は、Yの物品引渡債務であること、契約中に履行地(物品引渡地)
の定めはないが、準拠法として選択された甲国法(契約法第Q条)によれば、不特定物につ
いては債権者の営業所で引き渡さなければならないこと、そして、本件商品が不特定物であ
り、債権者Xの営業所が日本国内にあることから、「契約において選択された地の法によれば
当該債務の履行地が日本国内にあるとき」に該当し、日本の裁判所の国際裁判管轄権が肯定
されるとの結論が導き出されることになろう。
なお、日本の裁判所の国際裁判管轄権が肯定されると解した場合には、日本の裁判所での
訴訟が当事者間の衡平を害し、適正・迅速な審理の実現を妨げることとなる特別の事情(民
訴法第3条の9)についても検討した上で、最終的な結論を示すことが必要である。
[設問2]の〔小問1〕は、契約の方式の準拠法の決定に関する理解を問うものである。
まず、本件契約が消費者契約ではないため法の適用に関する通則法(以下「通則法」とい
う。)第10条によって準拠法を決定すべきこと、通則法第10条によれば、契約成立の準拠
法(同条第1項)と行為地法(同条第2項)のいずれかの方式に適合していればよいことを
指摘することが求められる。そして、本件契約の場合、その成立の準拠法は、当事者が選択
した甲国法である(通則法第7条)こと、Xが甲国内で滞在していたホテルから本件契約を
締結していた場合(外出禁止令の場合)には、Xも甲国内から意思表示しているため、本件
契約の締結地法(行為地法)は、甲国法となることを示した上で、方式準拠法である甲国法
(契約法第P条)の方式要件に適合していない本件契約は無効であり、Xの主張が認められ
るとの結論が導き出されることになろう。
これに対して、Xが日本国内の自宅から意思表示していた場合(入国制限措置の場合)に
は、異なる法域に所在する当事者間の隔地的契約であるから、契約成立の準拠法(通則法第
10条第1項)と申込み又は承諾の発信地法(同条第4項)のいずれかの方式に適合してい
ればよいこと、当事者の便宜の観点からは、申込みと承諾を分解して、それぞれについて申
込み又は承諾の発信地法を適用することまでは不要であり、申込みと承諾を一体として申込
み又は承諾の発信地法の選択的な適用を認めれば足りることを指摘した上で、本件では、申
込み又は承諾の発信地法は日本法であること、日本法上、原則として特別な方式は不要であ
る(民法第522条第2項参照)から、本件契約は日本法上の方式要件に適合しており、方
式上有効と解されることを示し、Xの主張が認められないとの結論が導き出されることにな
ろう。
[設問2]の〔小問2〕は、不当利得の準拠法についての理解を問うものである。
まず、Xの支払済み代金の返還請求は、「不当利得」を理由とするものであるから、通則法
第14条以下の規定によって準拠法を決定することを指摘することが求められる。同条によ
れば、不当利得によって生ずる債権の成立及び効力は、不当利得の原因事実発生地法による
こと、本件では、Xの損失が日本で、Yの利得が甲国で、それぞれ生じていること、そして、
このような隔地的不当利得の場合に、損失地法と利得地法のいずれの法を準拠法と解すべき
かを理由を付して解答することが求められる。
次に、本件の不当利得が当事者間の契約に関連して生じたもの(通則法第15条)である
ことを指摘した上で、契約に関連して生ずる不当利得については契約準拠法を適用するのが
当事者の合理的期待にかない、契約準拠法との不一致による調整問題の発生を回避すること
ができることから、むしろ契約準拠法と明らかにより密接に関連すると解されないかの検討
を行い、最終的な結論を導き出すことが求められる。
なお、本問において、不当利得ではなく、契約の効力(通則法第7条以下)と法性決定し
た上で、本件契約の準拠法は、当事者が選択した甲国法であることから、裁判所が、甲国法
を適用すべきとの結論を導いて解答することも考えられる。
[設問3]は、ウィーン売買条約の適用範囲についての理解を問うものである。
まず、ウィーン売買条約が適用されるためには、「営業所が異なる国に所在する当事者間の
物品売買契約」(ウィーン売買条約第1条)であって、同条(1)(a)又は(b)の条件を満たす必
要があることを指摘した上で、本件契約は物品売買契約であり、契約当事者XYの営業所は
それぞれ日本と甲国に所在すること、また、日本と甲国はいずれも同条約締約国である((a)
の条件を満たす)から、同条約第1条によれば、本件契約にウィーン売買条約が適用される
ことを示すことが求められる。
次に、本件商品は、Xが家族用に購入している(ウィーン売買条約第2条(a)本文)こと、
Xが配偶者へのプレゼントである旨をYに伝えていたことから、売主Yも家族用の購入である
ことを知っていたはずである(同ただし書)ことを指摘した上で、同条約第2条によれば、本
件契約にウィーン売買条約が適用されないことから、最終的に、日本の裁判所は、本件契約に
ウィーン売買条約を適用すべきでないとの結論が導き出されることになろう。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「令和4年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
