令和元年 司法試験 論文式 商法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,30:50:20〕)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- 少数株主による臨時株主総会の招集手続(会社法297条等)の説明と当てはめ10点
- 議題提案権(303条)の行使手続の説明と当てはめ7点・簡潔に
- 議案要領通知請求権(305条)の行使手続の説明と当てはめ7点・簡潔に
- 両手続の比較検討(議事運営の主導権・費用及び労力の負担・時期の選択)6点
設問2
- 新株予約権無償割当てに対する差止請求の根拠(会社法247条の類推適用)8点
- 株主平等原則違反(法令違反・247条1号)の主張と規範定立10点
- 株主平等原則違反の主張の当否に関する具体的当てはめ(必要性・相当性)12点
- 著しく不公正な方法(247条2号・主要目的ルール)の主張と当否10点
設問3
- 本件決議1の効力(295条2項と取締役会設置会社の株主総会決議事項の限界)8点
- 本件決議2の効力と取締役の株主総会決議遵守義務(355条)7点
- Aの任務懈怠の有無と423条1項の責任(事情変更を踏まえた具体的検討)10点
- 経営判断原則への言及の適否3点・簡潔に
全体
- 論理的構成・条文の摘示・文章表現2点・簡潔に
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,①少数株主による株主総会の招集及び株主提案権の行使(設問1),②買収防衛策
としての差別的な内容の新株予約権無償割当て(設問2),③取締役会設置会社における株主
総会の権限,取締役の株主総会の決議の遵守義務及び取締役の株式会社に対する損害賠償責
任(設問3)についての理解等を問うものである。
設問1においては,乙社が採ることができる会社法上の手段として,少数株主による株主
総会の招集の手続(会社法第297条等)並びに議題提案権(同法第303条)及び議案要
領通知請求権(同法第305条)の行使の手続について説明し,比較検討した上で,論ずる
ことが求められる。
少数株主による株主総会の招集の手続並びに議題提案権及び議案要領通知請求権の行使の手
続について比較検討するに当たっては,例えば,下記①から③までのことについて,言及する
ことが期待される。
① 議事運営の主導権
少数株主が臨時株主総会を招集する場合には,少数株主は株主総会の招集等の手続を行うこ
とにより株主総会の議事運営にその意向を反映し得ること,他方で,取締役が招集する定時株
主総会の開催に当たり少数株主が議題提案権及び議案要領通知請求権を行使する場合には,取
締役が株主総会の招集等の手続を行うため,少数株主が臨時株主総会を招集する場合と比べる
と,株主総会の議事運営に少数株主の意向を反映することに支障があり得ること。
② 費用等の手続面の負担
少数株主が臨時株主総会を招集する場合には,少数株主が株主総会の招集及び開催の費用
及び労力を負担すること,他方で,議題提案権及び議案要領通知請求権を行使する場合には,
株式会社が株主総会の招集及び開催の費用及び労力を負担すること。
③ 時期の選択
少数株主が臨時株主総会を招集する場合には,定時株主総会が開催されるのを待つことを
要せず,それよりも前に,株主総会を開催することができること,他方で,議題提案権及び
議案要領通知請求権を行使する場合には,定時株主総会が開催されるのを待たなければなら
ないこと。
設問2においては,乙社による本件新株予約権無償割当ての差止めの請求(会社法第24
7条類推)が認められるか否かについて,問題文中の事実関係を適切に評価した上で説得的
に論ずることが求められる。
乙社による本件新株予約権無償割当ての差止めの請求が認められるか否かについて論ずる
に当たっては,まず,新株予約権無償割当てに関して,会社法第247条が類推適用される
か否かについて,検討することが求められる。
そして,新株予約権無償割当てについて,会社法第247条が類推適用される(東京地決
平成19年6月28日金判1270号12頁)と解する場合には,乙社による差止事由に関
する主張について,条文及びその文言を引用しつつ,具体的に検討することが求められる。
乙社による差止事由に関する主張としては,例えば,下記①又は②の主張について,検討す
ることが求められる。
① 本件新株予約権無償割当ては,新株予約権者の差別的な取扱いを内容とするものであり,
株主平等の原則(会社法第109条第1項)又はその趣旨に反し,法令に違反するもので
あるとの主張(同法第247条第1号。最決平成19年8月7日民集61巻5号2215
頁参照)。
② 本件新株予約権無償割当ては,新株予約権者の差別的な取扱いを内容とするものであっ
て,会社の企業価値ひいては株主の共同の利益を維持するためではなく,専ら経営を担当
している取締役等の経営支配権を維持するためのものであり,著しく不公正な方法により
行われるものであるとの主張(会社法第247条第2号。東京高決平成17年3月23日
判時1899号56頁,判タ1173号125頁参照)。
その上で,その主張の当否に関して,例えば,上記①の主張については,前掲最決平成1
9年8月7日を参考にするなどしつつ,本件新株予約権無償割当ては,新株予約権者の差別
的な取扱いを内容とするものであり,非適格者である乙社を差別的に取り扱うものであるが,
他方で,買収防衛策としての導入等の是非が株主総会の決議(ただし,いわゆる勧告的決議
である。)に委ねられていること,さらに,本件新株予約権無償割当ては,乙社に経済的損害
を与える性質を有するものであるが,他方で,乙社がこれ以上の甲社の株式の買い増しを行
わない旨を確約した場合には,甲社の取締役会が,その決議により,本件新株予約権無償割
当てにより株主に割り当てた新株予約権の全部を無償で取得することができる仕組みとなっ
ており,乙社に撤退可能性が保障されていることなどの問題文中の事実関係に即し,条文の
適用と当てはめを丁寧に行い,説得的に検討することが求められる。
また,上記②の主張については,前掲東京高決平成17年3月23日を参考にするなどし
つつ,本件新株予約権無償割当ては,いわゆる主要目的ルールに照らすと経営支配権の維持
を主要な目的とするものであるが,他方で,上記のとおり買収防衛策としての導入等の是非
が株主総会の決議に委ねられていることなどの問題文中の事実関係を踏まえ,この株主総会
の決議の意義がどのようなものであるかや,前掲東京高決平成17年3月23日が挙げる四
つの具体例に照らし,株主全体の利益の保護という観点から本件新株予約権無償割当てを正
当化する特段の事情があるかどうかなどについて検討した上で,同様に,説得的に論ずるこ
とが求められる。
設問3においては,①甲社の財産の処分を株主総会の決議によってもすることができるよ
うにする定款の変更に関する議案を可決した本件決議1の効力を検討した上で,②本件決議
1に基づく本件決議2の効力及び取締役の株主総会の決議の遵守義務(会社法第355条)
を前提として,③下記の問題文中の事実関係を踏まえ,甲社の取締役会が遅くとも平成30
年度中にP倉庫を適正な価格で売却することに関する議案を可決した本件決議2に関して,
甲社の代表取締役社長Aは,これを遵守してはならなかったにもかかわらず遵守したことに
より,その任務を怠ったものと認められるのではないか,結果として,甲社に対し,会社法
第423条第1項に基づき,損害賠償責任を負うか否かについて,論ずることが求められる。
本件決議1の効力を検討するに当たっては,まず,①取締役の業務執行権限に属する事項
を株主総会の決議事項とすることができるかどうかについて,論ずることが求められる。
そして,②取締役の業務執行権限に属する事項であっても,定款で定めることにより株主
総会の決議事項とすることができ(会社法第295条第2項),本件決議1及び本件決議2は
いずれも有効であると解する場合には,取締役は株主総会の決議を遵守しなければならない
こと(同法第355条)について,言及することが求められる。
その上で,③株主総会の決議の遵守義務を前提として,例えば,Q県において発生した大
地震により,Q倉庫が倒壊したため,海外から到着する貨物をP倉庫において保管しなけれ
ばならず,P倉庫を売却すると,競合他社に多数の顧客を奪われるなど,50億円を下らな
い損害が甲社に生ずることが見込まれ,他方で,P倉庫の近隣の不動産価格が下落する兆候
はうかがわれなかったことなどの問題文中の事実関係を踏まえ,(ア)代表取締役社長Aは,
甲社に損害を与えないように業務を執行するのであれば,本件決議2を遵守してはならなか
ったにもかかわらず,本件決議2を遵守し,その任務を怠ったものと認められるから,甲社
に対し,損害賠償責任を負うと解するか,(イ)本件決議2の後に重大な事情の変更が生じた
ことに鑑み,改めて株主の意思を確認しなければならなかった(改めて株主総会の決議を得
なければならなかった)にもかかわらず,事情の変更が生ずる前の本件決議2を遵守するこ
とに固執し,その任務を怠ったものと認められるから,甲社に対し,損害賠償責任を負うと
解するか,あるいは(ウ)上記の問題文中の事実関係を踏まえても,代表取締役社長Aは,
本件決議2を遵守しなければならず,その任務を怠ったとは認められないから,甲社に対し,
損害賠償責任を負うとは認められないと解するかなどについて,説得的に論ずることが求め
られる。
①の検討の結果,本件決議1が無効であると解する場合には,これを前提とする本件決議
2も株主総会の決議としての効力はないこととなるが,(エ)なお株主の意向を示すものとし
て尊重する必要がないかや,代表取締役社長Aが本件決議2を遵守する義務があると考えて
P倉庫を売却するという決定をしたことに取締役としての任務懈怠や過失がなかったかどう
かについて,説得的に論ずることが求められる。
なお,設問3は,株主総会の決議の遵守義務が問題となっている場面であり,いわゆる経
営判断原則の適用が問題となる典型的な場面ではないため,経営判断原則に言及する場合に
は,その趣旨や適用範囲について検討した上で言及することが望まれる。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「令和元年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
