令和元年 司法試験 論文式 刑事訴訟法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:100)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- 問題の所在の把握(本件強盗致死事件の捜査・取調べを目的とした業務上横領事件による身体拘束=いわゆる別件逮捕・勾留の適否)4点
- 身体拘束の理由たる本件業務上横領事件についての逮捕・勾留・勾留延長の要件充足の検討(根拠条文の摘示)8点
- 〔設問1-1〕自説の理論構成(適法性の判断基準+その理論的根拠)12点
- 〔設問1-1〕自説の基準への具体的事実の当てはめと結論13点
- 〔設問1-2〕自説と結論・理論構成の双方を異にする反対説の提示7点
- 〔設問1-2〕反対説の基準への当てはめと結論6点
- 〔設問1-2〕反対説を採用しない理由(自説の正当性と連動した批判)7点
設問2
- 訴因変更の可否:刑訴法312条1項の摘示と「公訴事実の同一性」(狭義の同一性)が要求される趣旨8点
- 狭義の同一性の判断基準の定立(基本的事実関係の同一性/非両立性)とその理論的根拠7点
- 両訴因への当てはめ(公訴事実の同一性の有無)10点
- 訴因変更の許否:公判前整理手続の制度趣旨と、手続後の訴因変更が制限され得る根拠5点
- 許否の当てはめと結論5点
全体
- 論理的構成・文章表現8点
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,名誉,プライバシー,著作権の侵害が問題となる事案を素材として,国際私法と国
際民事手続法に関する基本的理解とその応用力を問うものである。
〔設問1〕は,名誉,プライバシー,著作権の侵害の準拠法の決定について問うものである。
まず,請求①について,名誉毀損の準拠法の決定が問題となる。これについては通則法第1
9条があることを指摘し,同条の趣旨について説明した上,本件への当てはめを行うべきであ
る。同条によって外国法によるべき場合には,通則法第22条について指摘することを忘れて
はならない。
次に,請求②について,プライバシー侵害の準拠法の決定が問題となる。これについては学
説・判例ともに,通則法第19条によるとする立場と,通則法第17条によるとする立場とに
分かれている。いずれの立場による場合にも,その理由の説明が必要である。第17条説によ
る場合には,甲国と日本の侵害について一つの連結点によらしめるのか,それぞれ異なる連結
でよい(モザイク連結)と考えるのかについても論じてほしい。なお,一部又は全部外国法によ
るべき場合には,通則法第22条について指摘すべきである。
また,請求③については,①②の場合とは異なり,被侵害権利である著作権自体がそれ自体
一つの単位法律関係を構成すると考えられる。これに関して,資料に掲げたベルヌ条約第5条
第2項第3文が国際私法の準則を含んでいるかどうかが問題となる。いずれの立場をとるにし
ても,その理由を示すことが求められる。
次に著作権侵害による損害賠償の性質決定が問題となる。通則法第17条によるべきか,損
害賠償請求も前掲のベルヌ条約によるとすべきかが問題となる。理由を付して論じることが求
められる。なお,いずれの立場をとる場合でも,被侵害権利たる著作権が日本と甲国とで別に
存在していることを指摘すべきであろう。なお,通則法第17条によるとの立場をとり,外国
法によるべき場合は,通則法第22条の指摘が必要である。
〔設問2〕は,甲国で判決が出た場合に,その外国判決が承認されるべきか否かについて,
小問1と小問2の二つのケースについて論じることを求め,もって,外国判決承認と送達につ
いての基礎的理解について問うたものである。
小問1では,執行判決訴訟が問題となっているので,懲罰的損害賠償判決も民事判決である
ことを肯定する立場では,平成30年改正民事執行法第24条第5項(項番号繰下)について
触れることが望ましい(それに対し,否定説では,項番号まで特定する必要はないが,同法第
24条には触れたほうがよいであろう。)。いずれの説に立つ場合でも,懲罰賠償判決の意義に
ついて述べた上,民事判決かどうかの問題があることを指摘すべきである。
民事判決性肯定説によるにせよ,否定説によるにせよ,その理由を述べなければならないが,
最高裁判例(最判平成9年7月11日民集51巻6号2573頁)にも言及することが望まし
い(なお,その射程の理解については,民事判決性を肯定することを前提としているとの多数
説の理解でも,民事判決性の有無については判示していないとの少数説の理解でもよい。)。肯
定説をとる場合には,次に,民事訴訟法(以下「民訴法」という。)第118条第3号違反の
問題が生じること,その解釈の結論とその理由を述べることが必要である。
いずれの立場をとる場合でも,本小問についての結論をまとめる際には,本件外国判決の慰
謝料部分が承認されるかどうかについても触れるべきである。
小問2では,いわゆる直接郵便送達の効力の問題を取り上げている。この問題は,民事又は
商事に関する裁判上及び裁判外の文書の外国における送達及び告知に関する条約(以下「送達
条約」という。)(昭和45年条約第7号)との関係で問題とされることが多い。しかし,日本
はこの問題に関して重要な送達条約第10条(a)に定める「直接に裁判上の文書を郵送する権
能」について長年拒否宣言をしていなかったところ,平成30年12月21日に拒否宣言をし,
同日その効力が生じた。そこで,送達条約については従来の条約の状態を前提に問うことは試
験時にすでに過去のものとなった状態について問うことになって適切ではなく,また,平成3
0年の拒否宣言は受験生の間にはまだ知られていないと考えられたので,これについて問うこ
とも適切ではないと考え,結局,送達条約には言及しない出題の仕方をした。
答案では民訴法第118条第2号を指摘し,その趣旨について述べ,本件についての結論を
理由とともに示すことが必要である。いずれの結論とするにせよ,外国から直接郵便により裁
判の呼出状等が送られてくることの意味や是非も踏まえて,論ずることが必要である。甲国が
送達条約の締約国である場合まで考えて場合分けして解答する答案には,それが過去の状態を
前提とするものであっても,拒否宣言をしたことを前提とするものであっても,加点の対象と
する。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「令和元年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
