平成27年 司法試験 論文式 民事訴訟法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第3問〕(配点:100〔〔設問1〕から〔設問3〕までの配点の割合は,4:3:3〕)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- 平成3年判決の射程と問題の所在の設定(142条の趣旨の類推、弁論併合でも妥当すること)6点
- 予備的反訴とされると既判力の矛盾抵触が生じない理由(弁論の分離の可能性と解除条件)12点
- 二重の利益(相殺の担保的利益と債務名義取得)を享受しない理由10点
- 訴え変更の手続を要せず予備的反訴とすることが処分権主義に反しない理由6点
- 反訴被告(本訴原告X)の利益を害しない理由4点・簡潔に
設問2
- 114条1項・2項により両判決が確定した場合に生ずる既判力の内容の比較14点
- 不利益変更禁止の原則の意義と本件への当てはめ・結論12点
設問3
- 不当利得返還請求権の要件とYの言い分の当てはめ・整理8点
- 114条2項の既判力の内容(基準時における反対債権の不存在)6点
- 既判力の具体的作用(積極的作用・消極的作用)によるY請求棄却の説明14点
全体
- 論理的構成・表現(問題文の指示の把握、自らの言葉による論述)8点
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,リフォーム工事を内容とする請負契約に係る瑕疵修補に代わる損害賠償請求事件(本
訴)を基本的な題材として,反訴で訴求されている債権を自働債権とする相殺の抗弁を本訴に
おいて提出することの適法性(〔設問1〕),相殺の抗弁を認めた第一審判決に対する控訴と不
利益変更禁止の原則との関係(〔設問2〕),民事訴訟法第114条第2項が規定する既判力の
内容とその具体的な作用の仕方(〔設問3〕)について検討することを求めている。
これらの課題に含まれる論点には基礎的なものが含まれており,それだけに,受験者には,
その基礎的な論点に係る正確な知識をもとにして,問題文に示された事実関係及び関連判例を
踏まえ,結論を導き出す論述を行うことが期待されている。
〔設問1〕は,XがYに対して提起した上記損害賠償請求事件(本訴)でYがXに対して反
訴を提起した場合において,反訴で訴求されている債権を自働債権とする相殺の抗弁を本訴に
おいて提出することの適法性を検討することを求めている。その検討に当たっては,重複起訴
を禁止する民事訴訟法第142条の趣旨は,別訴で訴求されている債権を自働債権とする相殺
の抗弁を本訴において提出する場合にも妥当する,とした判例(最高裁判所平成3年12月1
7日第三小法廷判決・民集45巻9号1435頁。以下「平成3年判決」という。)と,反訴
で訴求されている債権を自働債権とする相殺の抗弁を本訴において提出する場合には重複起訴
の問題は生じない,とした判例(最高裁判所平成18年4月14日第二小法廷判決・民集60
巻4号1497頁。以下「平成18年判決」という。)との相互関係を正しく理解しているこ
とが必要である。
より具体的にいうと,第一に,反訴で訴求されている債権を自働債権とする相殺の抗弁を本
訴において提出すると,訴えの変更の手続を経由せずに,既に提起されていた反訴が予備的反
訴として扱われる,というのが平成18年判決の考え方であるが,平成3年判決は,重複起訴
の禁止を定める民事訴訟法第142条の趣旨を類推する主な根拠を,たとえ本訴と別訴とが併
合審理されていてもなお既判力の矛盾抵触のおそれがあることに求めているところ,平成18
年判決のように考えるとなぜそのおそれが生じないこととなるのかについて説明することが求
められている。第二に,平成3年判決は,相殺の担保的機能という利益と反対債権について債
務名義を取得するという利益とを二重に享受することは許さないとする趣旨と解されるが,平
成18年判決の考え方ではなぜ二重の利益を享受する結果にならないのかについて,説明する
ことが求められている。
〔設問2〕は,XがYに対して提起した上記損害賠償請求事件(本訴)において提出された
相殺の抗弁を認めて本訴請求を棄却した第一審判決に対し,Xのみが控訴した場合において,
控訴審における審理の結果,本訴の訴求債権の不存在が明らかとなったとき,控訴審が第一審
判決を取り消し,上記訴求債権の不存在を理由として改めて請求棄却の判決をすることが許さ
れるかどうかを問うものである。より具体的にいうと,控訴審が第一審判決を取り消し請求棄
却の判決をすることが,控訴したXにとって原判決の不利益変更となるか,なると考える場合
のその理由について,説明を求めるものである。上記第一審判決が確定すると,本訴の訴求債
権の不存在の判断(民事訴訟法第114条第1項)及び反対債権の不存在の判断(同条第2項)
の双方に既判力が生じるが,第一審判決を取り消し,訴求債権の不存在を理由として請求を棄
却した判決が確定すると,反対債権の不存在という,Xに有利に作用する既判力が生じないこ
ととなる。こうした理由から控訴棄却にとどめるべきであるとするのが,判例(最高裁判所昭
和61年9月4日第一小法廷判決・判例時報1215号47頁)の考え方であるが,本問では,
この二つの判決が確定したと仮定した場合に生ずる既判力の内容の相違に注目して,不利益変
更禁止の原則に抵触するかどうかを説明することが求められている。
〔設問3〕は,XがYに対して提起した上記損害賠償請求事件に係る第一審判決(その内容
は,Yの相殺の抗弁が認められ,Xの本訴請求が棄却されたというもの)が確定した後に,新
たに,Yが不当利得の返還を求める文書を送付してきたという事案を題材に,当該第一審判決
の既判力の作用について具体的に説明することを求めるものである。また,本問は,問題文に
おけるL2の発言(問題文5頁19行目から27行目のもの)において具体的に示唆するとお
り,民事訴訟法第114条第2項が規定する既判力の内容は,基準時における反対債権の不存
在の判断であるとの考え方に依拠したとしても,相殺の抗弁が認められて勝訴したYが,訴求
債権は本来存在しなかったから相殺はその効力を生じていないとの理由に基づき,反対債権の
金額に相当する不当利得の返還を請求した場合,その既判力によって棄却することが可能であ
ることを説明することを求めている。より具体的にいうと,不当利得返還請求権の要件,すな
わち利得,損失,両者の因果関係及び利得に法律上の原因がないことのうち,どの要件に関す
る主張がその既判力と抵触するのかを,Yがその言い分において主張する事実関係に則して,
受験者自らの言葉で具体的に説明することが求められている。こうした観点からは,既判力は
訴訟物同一,先決関係又は矛盾関係において作用するところ,不当利得返還請求権の主張は反
対債権の不存在の判断と矛盾関係にあるから,確定した第一審判決の既判力に抵触する,と述
べるにとどまる答案は,本問の題意を的確に捉えたものとは評価し難い。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成27年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
