平成27年 司法試験 論文式 憲法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第1問〕(配点:100)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1(1)
- 問題の所在の把握と全体構成(①Cとの同一取扱い、②Dらとの差別的取扱い、③甲市シンポジウムでの意見表明を理由とする不採用の三点の抽出と相互関係の整理)8点
- Dらとの差別的取扱い:相対的平等の理解と「信条」による差別の主張12点
- Cとの同一取扱い:「違う」のに「同じ」に扱われたことの憲法上の構成10点
- 表現の自由(21条1項):制約の構成と萎縮効果10点
設問1(2)
- A市の反論(平等):Dらとの区別・Cとの同一取扱いの合理性6点・簡潔に
- A市の反論(表現の自由):直接制約の不存在と業務支障のおそれ4点・簡潔に
設問2
- 自説:平等違反の判断枠組みの定立(自由権侵害とは異なる場面としての平等)10点
- 自説:Dらとの差別的取扱いについての具体的検討10点
- 自説:Cとの同一取扱いについての具体的検討8点
- 自説:表現の自由についての判断枠組みと具体的検討14点
全体
- 論理的構成・一貫性・文章表現8点
出題の趣旨(法務省公表)
本年は,平等の問題と表現の自由の問題を問うこととした。本年の問題も,憲法上の基本的
な問題の理解や,その上での応用力を見ようとするものである。しかし,問題の構成について
は,次の点で従来のものを変更した。
まず,従来は,「被告の反論」を「あなた自身の見解」を中心とする設問2に置いていたが,そ
れを「原告の主張」と対比する形で設問1に置き,さらに,各設問の配点も明記することにした。
これまで出題側としては,「被告の反論」の要点を簡潔に記述した上で,「あなた自身の見解」を手
厚く論じることを期待して,その旨を採点実感等に関する意見においても指摘してきたが,依然と
して「被告の反論」を必要以上に長く論述する答案が多く,そのことが本来であれば手厚く論じて
もらいたい「あなた自身の見解」の論述が不十分なものとなる一つの原因になっているのではない
かと考えたからである。そこで,本年は,「原告の主張」と「被告の反論」の両者を設問1の小問
として論じさせることとし,かつ,配点を明記することによって,「被告の反論」について簡にし
て要を得た記述を促し,ひいては「あなた自身の見解」の論述が充実したものとなることを期待し
た。
また,論文式試験においては,設問の具体的事案のどこに,どのような憲法上の問題があるのか
を的確に読み取って発見する能力自体も重視される。しかし,本年は,論述の出発点である原告と
なるBが憲法との関係で主張したい点を問題文中に記載することとした。これは,後述するように,
本問には平等に関してこれまで論じられてきた典型的な問題とは異なる問題も含まれており,この
点も含めてひとまず平等に着目した論述を期待する見地からである。また,平等の問題と表現の自
由の問題は,いずれも多くの論点を含む憲法上の基本的な問題であるため,着眼点を具体的に示す
ことで,その分,論述内容の充実を求めたいとの考えもあった。そこで,本年は,原告となるBが
主張したい点につき問題文中で明記するとともに,設問1において,「Bの主張にできる限り沿っ
た訴訟活動を行うという観点から」との条件を付した。
本年の問題の一つは平等である。憲法第14条第1項の「法の下の平等」について,判例・
多数説は,絶対的平等ではなく,相対的平等を意味するとしている。この平等に関し,原告と
なるBは,Dらとの比較において,これまで論じられてきた問題を提起しているほか,Cとの
比較において,「違う」のに「同じ」に扱われたという観点からの問題も提起している。平等
が問題となる具体的事例においては,何が「同じ」で,何が「違う」のかを見分けることが議
論の出発点となることから,本問でも,まずは,Bの主張を踏まえ,「同じ」点と「違う」点
についての具体的な指摘とその憲法上の評価が求められることとなる。その上で,憲法が要請
する平等の本質等にも立ち返りつつ,自由権侵害とは異なる場面としての平等違反に関する判
断枠組みをどのように構成するかが問われることになる。
そして,典型的な問題であるDらとの比較については,判定期間中のBの勤務実績は,正式採用
された「Dらと比較してほぼ同程度ないし上回るものであった」にもかかわらず,A市は,Dらを
正式採用する一方で,「Y採掘事業に関する・・・考えを踏まえると,Y対策課の設置目的や業務
内容に照らしてふさわしい能力・資質等を有しているとは認められなかった」として,Bを正式採
用しなかったことについての検討が必要となる。すなわち,Bは,「Yが有力な代替エネルギーで
あると考えているが,その採掘には・・・危険性があることから,この点に関する安全確保の徹底
が必要不可欠であると考えて」おり,Y採掘事業の必要性や有益性を認めているが,その採掘にお
いては種々の危険があるので,安全性が最重要と考えている者である。この場合,天然資源開発に
伴う危険性を踏まえ,その安全性の確保を最重要視する考え自体が不当な考えであるとは言えない
はずである。それにもかかわらず,A市が上述のような考えを持つBを正式採用せず,ほぼ同程度
ないし下回る勤務実績のDらを正式採用したことは,天然資源開発における安全性の確保という言
わば当然とも言うべき基本的な考え自体を否定的に評価するもので,憲法第14条第1項で例示さ
れている「信条」に基づく不合理な差別となるのではないかという検討が必要である。
また,本年の問題で,原告となるBは,Cと「違う」にもかかわらずCと「同じ」に扱われ
て正式採用されなかったという点からも問題提起をしている。ここで問題となるのは,BとC
はいずれも正式採用されなかったところ,Y採掘事業に関する両者の意見は,結論としては反
対意見の表明という共通性があるとしても,その具体的な内容が違うことに加え,BとCがそ
れぞれの意見表明に当たってとった手法・行動等も違うことである。したがって,ここでは,
こうしたBとCとの具体的な「違い」を憲法上どのように評価するかを踏まえた論述が求めら
れる。
本年のもう一つの問題は,表現の自由である。すなわち,Bは,自分の意見・評価を甲市シ
ンポジウムで「述べたこと」が正式採用されなかった理由の一つとされたことを問題視してい
るので,そこでは,内面的精神活動の自由である思想の自由の問題よりも,外面的精神活動の
自由である表現の自由の問題として論じることが期待される。その際には,意見・評価を述べ
ること自体が直接制約されているものではないことを踏まえつつ,「意見・評価を甲市シンポ
ジウムで述べたこと」が正式採用されなかった理由の一つであることについて,どのような意
味で表現の自由の問題となるのかを論じる必要がある。そのような観点からは,上述のような
理由により正式採用されないことは,Bのみならず,一般に当該問題について意見等を述べる
ことを萎縮させかねないこと(表現の自由に対する萎縮効果)をも踏まえた検討が必要となる。
その上で,この点に関しては,正式採用の直前においてもBが反対意見を述べていることな
どから惹起される「業務に支障を来すおそれ」の有無についての検討も必要となる。その検討
に当たっては,外面的精神活動の自由である表現の自由の制約に関する判断枠組みをどのよう
に構成するかが問われることとなるところ,例えば,内容規制と評価し,表現の自由が問題と
なった様々な判例を踏まえた判断枠組みも考えられるであろう。どのように判断枠組みを構成
するかは人それぞれであるが,いずれにしても,一定の判断枠組みを用いる場合には,学説・
判例上で議論されている当該判断枠組みがどのような内容であるかを正確に理解していること
が必要である。その上で,本問においてなぜその判断枠組みを用いるのかについての説得的な
理由付けも必要であるし,判例を踏まえた論述をする際には,単に判例を引用するのではなく,
当該判例の事案と本問との違いも意識した論述が必要となる。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成27年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
