平成27年 司法試験 論文式 行政法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:100〔〔設問1〕,〔設問2〕,〔設問3〕の配点割合は,2:5:3〕)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- 訴訟類型の選択(本件命令の差止めの訴え)と対象処分の特定4点
- 「一定の処分…がされようとしている」(処分の蓋然性・処分の一定性)4点
- 「重大な損害を生ずるおそれ」(37条の4第1項・第2項)の判断基準とあてはめ8点
- 補充性要件(他に適当な方法があるとき)その他の訴訟要件4点・簡潔に
設問2
- 消防法12条2項・危険物政令9条1項1号(19条1項準用)の趣旨・要件効果と市町村長の裁量8点
- 危険物政令9条1項1号ただし書の趣旨(既存施設の保護)と本件への意味8点
- 危険物政令23条の趣旨・要件・適用範囲と9条1項1号ただし書との関係・本件への適用の余地10点
- 本件基準の法的性質(裁量基準=行政手続法上の処分基準)6点
- 本件基準①(用途地域ごとの倍数上限という短縮条件)の合理性8点
- 本件基準②(短縮限界距離)の合理性6点
- 個別事情を考慮した基準の例外の可否(裁量権の逸脱・濫用)4点
設問3
- 消防法12条1項の維持義務の性質と損失補償の要否8点
- 最判昭和58年2月18日(道路法70条1項・地下道新設に伴う石油タンク移転)の趣旨の援用8点
- 事後的事情変更と『計画的回避可能性』の視点6点
- 本件事実のあてはめ(用途地域の指定替えと保安物件の予見可能性)8点
出題の趣旨(法務省公表)
本問は,Xが消防法及び危険物の規制に関する政令(以下「危険物政令」という。)上の一
般取扱所(以下「本件取扱所」という。)を設置していたところ,近隣に葬祭場(以下「本件
葬祭場」という。)が建築されたことから,Y市長がXに対して移転命令(以下「本件命令」
という。)を発しようとしている事案における法的問題について論じさせるものである。論じ
させる問題は,本件命令に対する事前の抗告訴訟の適法性(設問1),本件命令が発せられた
場合における本件命令の適法性(設問2),Xが本件命令に従った場合における損失補償の要
否(設問3)である。問題文と資料から基本的な事実関係を把握し,消防法及び関係法令の
関係規定の趣旨を読み解いた上で,行政処分の適法性,抗告訴訟の訴訟要件,及び損失補償
の要否を論じる力を試すものである。
設問1は,処分の差止め訴訟の訴訟要件に関する基本的な理解を問う問題である。考えら
れるXの訴えとして本件命令の差止め訴訟を挙げた上で,本件の事実関係の下で,当該訴え
が行政事件訴訟法第3条第7項及び第37条の4に規定された「一定の処分…がされようと
している」,「重大な損害を生ずるおそれ」,「損害を避けるため他に適当な方法がある」とは
いえない等の訴訟要件を満たすか否かについて検討することが求められる。特に,「重大な損
害を生ずるおそれ」の要件については,最高裁平成24年2月9日第一小法廷判決(民集6
6巻2号183頁)を踏まえて判断基準を述べた上で,本件命令後直ちにウェブサイトで公
表されて顧客の信用を失うおそれがあることが,同要件に該当するかを検討することが求め
られる。
設問2は,保安距離の短縮に関するY市の内部基準(以下「本件基準」という。)に従って
行われる本件命令の適法性の検討を求めるものである。まず,本件命令の根拠規定である消
防法第12条第2項及び危険物政令第9条第1項第1号の趣旨,内容及び要件・効果の定め
方から,Y市長が本件命令を発するに当たり,裁量が認められるか,そして,距離制限によ
る保安物件の安全の確保と,保安物件が新設された場合に既存の一般取扱所の所有者等が負
う可能性のある負担とを,どのように考慮して調整することが求められるかを検討しなけれ
ばならない。次いで,危険物政令第9条第1項第1号ただし書及び第23条のそれぞれの趣
旨,要件・効果及び適用範囲を比較して両者の相互関係を論じ,後者の規定を本件に適用す
る余地があるかを検討することが求められる。そして,本件基準の法的性質について,それ
が上記の裁量を前提にすると裁量基準(行政手続法上の処分基準)に当たることを示し,本
件基準①,②それぞれについて,法令の関係規定の趣旨に照らし裁量基準として合理的かど
うか,基準としては合理的であっても,本件における個別事情を考慮して例外を認める余地
がないか,検討することが求められる。すなわち,本件基準①の短縮条件として,工業地域
につき倍数(取扱所で取り扱われる危険物の分量)の上限が定められていることは合理的か,
本件基準②の短縮限界距離が,本件基準③所定の防火塀の高さを前提に諸事情を考慮して設
けられていることは合理的か,そして,本件基準①及び②を僅かに満たさない場合に,水準
以上の防火塀や消火設備の設置を理由に同基準の例外を認めるべきか等の論点を指摘しなけ
ればならない。
設問3は,損失補償の定めが法律になくても,憲法第29条第3項に基づき損失補償を請
求できるという解釈を前提にした上で,本件の事実関係の下でXがY市に損失補償を請求す
ることができるかについて論じることを求めている。まず,消防法第12条1項の維持義務
の性質についての検討が求められる。その際,地下道新設に伴う石油貯蔵タンクの移転に対
する道路法第70条第1項に基づく損失補償の要否が問題となった最高裁昭和58年2月1
8日第二小法廷判決(民集37巻1号59頁)の趣旨も踏まえなければならない。この維持
義務が公共の安全のための警察規制であって,取扱所の所有者等は許可を受けた時点以降も
継続的に基準適合状態を維持しなければならないという趣旨であるとすれば,事後的な事情
変更があっても,少なくとも本件取扱所の所有者等が当該事情の発生を本件取扱所の設置時
にあらかじめ計画的に回避することが可能であった場合については,損失補償は不要といえ
ないか,検討しなければならない。その上で,第一種中高層住居専用地域から第二種中高層
住居専用地域への用途地域の指定替えによる本件葬祭場の新設は,計画的に回避することが
不可能な事情といえるか,そもそも指定替え前の第一種中高層住居専用地域においても学校,
病院等が建築可能であることをどう考えるかなどを論じることが求められる。
なお,受験者が出題の趣旨を理解して実力を発揮できるように,本年も各設問の配点割合
を明示することとした。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成27年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
