平成26年 司法試験 論文式 憲法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第1問〕(配点:100)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- 制約される憲法上の権利の特定(職業選択の自由か営業の自由か/22条1項)と、本件規制が職業選択自体に関わる許可制であることの指摘8点
- 本条例の規制目的の読解と複合性の指摘(条例1条の文言を出発点とすること)11点
- 審査基準(判断枠組み)の定立と理由付け——規制目的二分論の限界と判例の理解12点
- 車種要件(4条1号:電気自動車・エアバッグ・AED)の違憲性10点
- 営業所要件(4条2号:5年以上継続してB市内に営業所)の違憲性8点
- 運転者要件(4条3号イ・ロ・ハ)の違憲性10点
- 参入規制による消費者(利用者)利益の侵害・競争制限の指摘5点
設問2
- 被告側反論のポイント(簡潔)8点・簡潔に
- 自己の見解——複合的目的の下での判断枠組みの構築12点
- 自己の見解——政策的目的の射程と地元業者・地場産業保護の位置付け7点
- 自己の見解——各要件への個別的・具体的当てはめと結論8点
全体
- 全体の論理的一貫性・構成・表現1点
出題の趣旨(法務省公表)
本年の問題は,職業の自由に対する制約の合憲性に関する出題である。このテーマに関連す
る判例に関しては,法科大学院の授業においても,十分に学んでいると思われる。関連する判
例それぞれを外在的にではなく,内在的に理解し,判例の動向を的確に捉えた上で,それらを
主体的に検討して判断枠組みを構築し,事案の内容に即して個別的・具体的に検討することが
求められている。本年の問題でも,定型的・パターン的・観念的な答案は求められていない。
問題となっている条例の規制目的は複合的である。したがって,その違憲性(合憲性)判断
の根幹は,規制目的をいわゆる消極目的と見るのか,それとも積極目的と見るのかという点に
あるのではない。規制目的が複合的である場合に,その違憲性(合憲性)をどのように判断す
るのかという点にある。したがって,単純に,原告側主張で消極目的の条例とし,被告側主張
で積極目的の条例として論じることは,問題の核心を見誤っている。その意味において,本年
の問題では,単純に規制目的二分論を用いて答えを導き出すことはできない。近時,登記手続
代理業務を司法書士以外の者に禁止している司法書士法の合憲性をめぐる判決(最三判平成1
2年2月8日刑集54巻2号1頁)や,農業災害補償法が定める農業共済組合への「当然加入
制」の合憲性をめぐる判決(最三判平成17年4月26日判例時報1898号54頁)のよう
に,判例も規制目的二分論に言及することなく判断している。また,酒類販売業免許制をめぐ
る判決(最三判平成4年12月15日民集46巻9号2829頁)では,租税の適正かつ確実
な賦課徴収という第三の目的の存在が示されてもいる。これらの判例も踏まえつつ,複合的な
規制目的をめぐり,条例の違憲性(合憲性)を,どのような判断枠組みの下で,どのように判
断するのかが問われている。
そして,仮に職業の自由に対する制約の合憲性を判断する際に,薬事法違憲判決(最大判昭
和50年4月30日民集29巻4号572頁)の判断枠組みを参考にして検討するとしても,
その判断枠組みが「中間審査の基準」(厳格な合理性の基準)を採用した判決と解するのか,
それとも事実に基づいて個別的・具体的に審査した結果,違憲という結論も導かれる「合理性
の基準」を採った判決と捉えるのか検討する必要がある。また,積極目的規制の場合に「明白
の原則」と結び付いた「単なる合理性の基準」を用いる見解を採ったとしても,その「明白の
原則」が法令の合憲性審査を全く排除するものであってよいのかが問われる。さらに,本年の
問題では,タクシー会社や運転手の「人格的価値」の実現のための新規参入が問題となってい
るものではないし,許可要件には主観的要件と客観的要件が混在している。したがって,ドイ
ツ流の段階理論を用いれば自動的に答えが導き出せるというものでもないし,利益衡量論であ
るドイツ流の比例原則で答えを導き出そうとするならば,どのような利益の衝突をどのように
衡量するのかを個別的・具体的に示す必要がある。
本年の問題では,職業の自由を規制し得る政策的目的が何を意味するのかも問題となる。生
存権の保障と関連する「経済的弱者の保護」のための政策遂行目的に限定されるのか,それと
も,「経済的弱者の保護」を超えて,より広く「国民経済の円満な発展や社会公共の便宜の促
進」等のための政策遂行目的も含むのかである。本年の問題では,地域の企業や業者の保護あ
るいは優遇・優先策,そして観光の振興であるが,それぞれがどのように位置付けられるかで
ある。さらに,それぞれの目的を達成するための規制手段の合憲性についても検討する必要が
ある。政策的目的を達成するために,どこまで競争制限的手段が認められるのかである。本年
の問題では,地域のタクシー会社を保護するために同じく経済的「弱者」といえるタクシー会
社の新規参入を規制することの合憲性が問題となる。その際には,参入規制による消費者利益
の侵害も考慮して,その合憲性を検討する必要がある。
また,本年の問題では,条例の目的として,乗客の安全の確保が挙げられている。この点は,
交通死傷事故の発生をできるだけ防止することによって達成される。そこで問題となるのは,
一般的にいえば,自由と安全のバランスである。交通死傷事故の防止という目的のために,リ
スクを排除する全ての手段を採ることができるのか;条例が定めるそれぞれの主観的要件及び
客観的要件は,その目的にとって必要不可欠な規制といえるのか,それとも過剰な規制なのか,
具体的に検討する必要がある。
上記に加えて,条例の目的として,乗客の安心の確保という主観的要素に関わるものも挙げ
られている。当該目的の憲法論としての位置付けを検討し,その達成手段の合憲性を個別的・
具体的に検討する必要もある。乗客を安心させるために全てのタクシーにAEDを搭載するこ
とまで必要なのか;市営の路線バスの場合にはAEDの搭載が義務付けられていないようなの
に,なぜタクシーには搭載を義務付けてもよいのか;乗客の安心の確保という目的は市や県の
政策なのに,タクシー会社の経費負担で目的を達成しようとすることは認められるのかなどに
ついて,検討することが求められている。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成26年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
