平成29年 予備試験 短答式 刑法 第8問 解説
問題
放火の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
- ①甲は,住宅街の駐車場に駐車中の乙所有の自動車を燃やそうと考え,自己の自動車に灯油を積みライターを持って同自動車を運転して同駐車場に向かったところ,その途中,交通事故を起こし,乙所有の自動車に放火することができなかった。この場合,甲には,建造物等以外放火罪の予備罪が成立する。
- ②甲は,乙が居住する乙所有の家屋を燃やそうと考え,同家屋に放火し全焼させたところ,同家屋内で就寝中の乙が焼死した。甲が乙を殺そうと考えて同家屋に放火した場合でも,甲には,法定刑に死刑を含む現住建造物等放火罪のみが成立する。
- ③甲は,山奥で乙を殺害した後,乙の失踪を装うため,乙が一人で居住していた丙所有の家屋を燃やそうと考え,同家屋に放火し全焼させた。同家屋に人がいなかった場合でも,甲には,現住建造物等放火罪が成立する。
- ④甲は,不要となった甲所有の自動車を燃やそうと考え,同自動車に放火し全焼させ,公共の危険を生じさせた。甲に公共の危険が生じることについての認識がなかった場合でも,甲には,建造物等以外放火罪が成立する。正解
- ⑤甲は,乙が居住する乙所有の家屋を燃やそうと考え,同家屋の壁際に駐車されていた乙所有の自動車に放火して焼損し,同家屋への延焼の危険を生じさせたが,その火は通行人により消し止められ,同家屋に燃え移らなかった。この場合,甲には,建造物等以外放火罪のみが成立する。
解説
要点
建造物等以外放火罪(110条)は具体的危険犯だが、判例(最判昭和60年3月28日。110条1項の事案で、同じ規範は2項にも及ぶ)は公共の危険発生についての認識は不要とする。あわせて、110条には予備罪規定がないこと、現住性は放火時点で判断され居住者死亡後は非現住となること、媒介物への放火でも目的建造物への実行の着手が認められれば未遂罪が成立し得ることを整理して覚える。
結論
選択肢4が正しい。判例(最判昭和60年3月28日)は、建造物等以外放火罪(刑法110条)は具体的危険犯であるものの、行為者に公共の危険発生についての認識は不要であり、目的物を焼損する認識があれば足りるとしている。同判例は他人所有物に関する110条1項の事案であるが、同じ規範は自己所有物に関する同条2項にも及ぶと解されている。他の選択肢はいずれも放火罪の各論点について誤った結論を述べている。
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出典:法務省「平成29年予備試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
