平成26年 予備試験 短答式 刑法 第13問 解説
問題
次の【事例】及び【見解】に関する後記1から5までの各【記述】のうち,正しいものを2個選びなさい。【事 例】Xが甲に暴行を加えていたところにXの知人Yが通り掛かり,XとYが意思を通じ合った上で,その場で更に両名で甲に暴行を加えた。これらの暴行によって甲は傷害を負ったが,X及びYのどの暴行で傷害を負ったのかは不明であった。【見 解】本件では,Y加担前のXの暴行で甲に傷害が生じていた場合,YのXとの共謀やそれに基づく行為と甲の傷害との間に因果関係がない以上,X及びYに傷害罪の承継的共同正犯は成立しない。一般に,傷害の結果が,全く意思の連絡がない2名以上の者の同一機会における各暴行によって生じたことは明らかであるが,いずれの暴行によって生じたものであるかは確定することができない場合には,同時犯の特例として刑法第207条により傷害罪の共同正犯として処断される。また,共謀成立前後にわたる一連の暴行により傷害の結果が発生したことが明らかであるが,共謀成立前後のいずれの暴行により生じたものであるか確定することができない場合にも,一連の暴行が同一機会に行われたものである限り,刑法第207条が適用され,全体が傷害罪の共同正犯として処断されると解するのが相当である。X及びYは,傷害の結果につき同時傷害が成立し,全体につき傷害罪の共同正犯として処断すべきである。けだし,このような場合でも,単独犯の暴行によって傷害が生じたのか,共同正犯の暴行によって傷害が生じたのか不明であるという点で,やはりその傷害を生じさせた者を知ることができないときに当たることに変わりはないと解されるからである。【記 述】
1.【見解】の考え方によれば,本件でY加担前のXの暴行以前にXY間の共謀が成立していたとしても,刑法第207条の適用がなければ,X及びYを傷害罪の共同正犯として処罰することはできない。
2.【見解】の考え方によれば,仮に本件で刑法第207条が適用されない場合には,X及びYのいずれも暴行罪の共同正犯として処罰することになる。
3.【見解】に対しては,「刑法第207条は,被害者が傷害を負っているにもかかわらず,誰にも傷害罪の責任を問えないことの不合理性を回避するための例外的な規定と考えるべきである。」との批判が可能である。
4.【見解】に対しては,「仮に本件でXY間に意思の疎通が一切なかった場合には刑法第207条が適用されてX及びYを傷害罪で処罰することとの均衡を失する。」との批判が可能である。
5.【見解】の考え方によれば,仮に本件の甲の傷害がY加担前のXの暴行か,Y加担後のXの暴行によって生じたことが明らかであるが,そのいずれであるかが不明という場合には,X及びYを刑法第207条の適用により傷害罪の共同正犯として処罰することができる。
※ 該当するものを2個選ぶ問題です。2個の組合せを選んでください。
- ①1と2
- ②1と3
- ③1と4
- ④1と5
- ⑤2と3
- ⑥2と4
- ⑦2と5
- ⑧3と4
- ⑨3と5正解
- ⑩4と5
解説
要点
刑法207条は『誰の暴行か不明で誰にも傷害の責任を問えない』不合理を回避する特例である。本事例では先行者Xはいずれの暴行で傷害が生じても傷害罪の責任を負うから、207条を適用する必要性を欠くという批判(記述3)が成り立つ。他方、【見解】自身が共謀成立前後の一連の暴行で因果関係不明の場合に207条を適用すると明言している以上、記述5はその帰結を事例に当てはめたものとして正しい。
結論
正しいのは記述3と記述5であり、選択肢9が正解である。記述3は207条の趣旨(誰の暴行か分からず誰にも傷害罪の責任を問えない不合理の回避)から【見解】の拡張適用を批判するものとして成り立ち、記述5は【見解】が明示的に述べる『共謀成立前後にわたる一連の暴行で因果関係不明の場合も207条を適用する』という帰結をそのまま事例に当てはめたものだからである。
この分野を、あなたの弱点に合わせて演習
無料で始める間違えた問題は忘れかけた頃に出し直し。論文の AI 採点も(Pro)。
出典:法務省「平成26年予備試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
