平成24年 司法試験 短答式 刑法 第15問 解説
問題
次の【事例】に関する後記1から5までの各【記述】を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2個選びなさい。【事 例】甲と乙は,V経営の食料品店で買った弁当を食べたら食中毒になった旨の嘘を言って因縁を付けてVを脅迫するとともに,同人に軽度の暴行を加え,これらの暴行・脅迫により同人を畏怖させて,損害賠償金の名目で50万円を支払わせ,これを分配することを計画した。乙は,計画に従い,同店に行き,Vに対し,「この店の弁当を食べたら食中毒になった。店の営業を続けたければ50万円払え。払わないと,この店の弁当で食中毒になったと書いたビラをばらまくぞ。」と語気鋭く申し向けた上,Vの額を手の平で軽くたたいた。Vは,これをよけようとした際,バランスを崩して転倒し,全治約1週間を要する後頭部打撲の怪我を負った。Vは,乙が食中毒になったことは嘘であると気付いたが,乙の要求に応じないと,更に暴力を振るわれたり,店を中傷するビラをまかれるかもしれないと畏怖し,手持ちの現金30万円を乙に渡し,残りの20万円は翌日支払うことで乙を納得させた。乙は,同店を出て,甲と会い,前記経緯を説明した上,Vから受け取った30万円のうち15万円を分け前として甲に渡した。乙は,翌日,同店を訪れてVから残りの20万円を受け取ろうとしたが,通報を受けた警察官が同店近くにいたので,20万円の受取は断念した。乙は,甲に事前に相談することなく,腹いせに,「V経営の食料品店で買った弁当を食べた客が食中毒になった。」という虚偽の事実が書かれたビラを多数の者に配った。なお,甲は,乙がVに怪我を負わせることや前記ビラを配ることを予想していなかった。【記 述】
1.Vに怪我を負わせたことについて,甲には,傷害罪は成立しない。
2.Vに怪我を負わせたことについて,乙には,傷害罪が成立する。
3.Vに30万円を交付させたことについて,甲及び乙には,恐喝既遂罪が成立する。
4.虚偽のビラを配ったことについて,甲には,信用毀損罪も業務妨害罪も成立しない。
5.乙から15万円を受け取ったことについて,甲には,盗品等無償譲受け罪が成立する。
※ 該当するものを2個選ぶ問題です。2個の組合せを選んでください。
- ①1と2
- ②1と3
- ③1と4
- ④1と5正解
- ⑤2と3
- ⑥2と4
- ⑦2と5
- ⑧3と4
- ⑨3と5
- ⑩4と5
解説
要点
傷害罪は暴行罪の結果的加重犯であり、判例は重い結果についての予見可能性を要求しないため、暴行についての共謀(共同正犯)があれば、傷害結果を予見していなくても共犯者に傷害罪が成立する(予見可能性必要説でも本問では結論は同じ)。他方、共同正犯者が自ら受け取った分け前は盗品等関与罪の客体とならず、本犯の正犯者は同罪の主体になり得ない。
結論
誤っている記述は1と5であり、選択肢4が正しい。甲は乙と暴行・脅迫による恐喝を共謀しており、暴行の共同正犯が認められる以上、暴行から生じた傷害結果についても結果的加重犯として傷害罪の共同正犯が成立するため記述1は誤り。また、甲自身が恐喝罪の共同正犯(本犯の正犯者)である以上、その取り分として受け取った金銭について盗品等無償譲受け罪は成立しないため記述5も誤り。
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出典:法務省「平成24年司法試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
