令和3年 予備試験 短答式 刑事訴訟法 第22問 解説
問題
後記アからオまでの【記述】のうち,次に掲げる【判例】(住居侵入,窃盗,現住建造物等放火被告事件に係る最高裁判所平成24年9月7日第二小法廷判決・刑集66巻9号907頁)に整合しないものは幾つあるか。後記1から6までのうちから選びなさい。【判例】「前科も一つの事実であり,前科証拠(被告人の前科の存在を示す証拠)は,一般的には犯罪事実について,様々な面で証拠としての価値(自然的関連性)を有している。反面,前科,特に同種前科については,被告人の犯罪性向といった実証的根拠の乏しい人格評価につながりやすく,そのために事実認定を誤らせるおそれがあり,また,これを回避し,同種前科の証明力を合理的な推論の範囲に限定するため,当事者が前科の内容に立ち入った攻撃防御を行う必要が生じるなど,その取調べに付随して争点が拡散するおそれもある。したがって,前科証拠は,単に証拠としての価値があるかどうか,言い換えれば自然的関連性があるかどうかのみによって証拠能力の有無が決せられるものではなく,前科証拠によって証明しようとする事実について,実証的根拠の乏しい人格評価によって誤った事実認定に至るおそれがないと認められるときに初めて証拠とすることが許されると解するべきである。本件のように,前科証拠を被告人と犯人の同一性の証明に用いる場合についていうならば,前科に係る犯罪事実が顕著な特徴を有し,かつ,それが起訴に係る犯罪事実と相当程度類似することから,それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるようなものであって,初めて証拠として採用できるものというべきである。」【記述】
ア.前科証拠を用いて,被告人と起訴に係る事件の犯人の同一性を証明しようとする場合,当該前科証拠と証明すべき事実との間に自然的関連性があるかどうかのみによって,その証拠能力の有無が決せられるわけではない。
イ.前科証拠を用いて,被告人に起訴に係る犯罪事実と同種の前科があるという事実から,起訴に係る事件の犯人が被告人であることを推認しようとする場合は,実証的根拠の乏しい人格評価につながりやすい。
ウ.前科証拠を用いて,起訴に係る事件の犯人が被告人であることを推認しようとする場合に伴う弊害には,訴訟の円滑な進行に支障をもたらすおそれがあることが含まれる。
エ.前科証拠を用いて,被告人と起訴に係る事件の犯人の同一性を証明しようとする場合において,当該前科に係る犯罪事実の有する特徴が顕著なものではないため,その特徴が起訴に係る犯罪事実と相当程度類似していても,それ自体で両者の犯人が同一であることを合理的に推認させるとはいえないときは,これを証拠として採用することはできない。
オ.事実認定者が前科証拠に触れることに伴う弊害を軽視することは相当ではないから,裁判員の参加する合議体が審理する事件においては,前科証拠を証拠として採用することはできない。
- ①0個
- ②1個正解
- ③2個
- ④3個
- ⑤4個
- ⑥5個
解説
要点
前科証拠の同一性推認への使用は、自然的関連性だけでなく「顕著な特徴+相当程度の類似」があって初めて許容されるという最判平24.9.7の規範を正確に押さえ、裁判員裁判だから一律に排除されるという命題は判例の論理と結び付かない点を見抜く。
結論
整合しないのは記述オのみであり、選択肢2(1個)が正しい。判例は「前科に係る犯罪事実が顕著な特徴を有し,かつ起訴事実と相当程度類似する場合に初めて証拠として採用できる」という基準を示しているにすぎず,「裁判員裁判だから前科証拠は採用できない」という一般化は判例の論理から導かれない。
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出典:法務省「令和3年予備試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
