平成29年 予備試験 短答式 刑法 第1問 解説
問題
因果関係に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,正しいものを2個選びなさい。
1.甲が,Vの胸部,腹部及び腰部を殴打したり足蹴りしたりする暴行を加えたところ,それに耐えかねたVは,その場から逃走した際,逃げることに必死の余り,過って路上に転倒し,縁石に頭部を打ち付けたことによって,くも膜下出血により死亡した。この場合,甲の暴行とVの死亡との間には,因果関係がある。
2.甲が,Vを突き倒し,その胸部を踏み付ける暴行を加え,Vに血胸の傷害を負わせたところ,Vは,Vの胸腔内に貯留した血液を消滅させるため医師が投与した薬剤の影響により,かねてVが罹患していた結核性の病巣が変化して炎症を起こし,同炎症に基づく心機能不全により死亡した。この場合,甲の暴行とVの死亡との間には,因果関係がない。
3.甲は,自動車を運転中,過って同車をVに衝突させてVを同車の屋根に跳ね上げ,その意識を喪失させたが,Vに気付かないまま同車の運転を続けるうち,同車の助手席に同乗していた乙がVに気付き,走行中の同車の屋根からVを引きずり降ろして路上に転落させた。Vは,頭部打撲傷に基づくくも膜下出血により死亡したところ,同傷害は,自動車と衝突した際に生じたものか,路上に転落した際に生じたものかは不明であった。この場合,甲の衝突行為とVの死亡との間には,因果関係がある。
4.甲は,狩猟仲間のVを熊と誤認して猟銃弾を1発発射し,Vの大腿部に命中させて大量出血を伴う重傷を負わせた直後,自らの誤射に気付き,苦悶するVを殺害して逃走しようと決意し,更に至近距離からVを目掛けて猟銃弾を1発発射し,Vの胸部に命中させてVを失血により即死させた。Vの大腿部の銃創は放置すると十数分で死亡する程度のものである一方,胸部の銃創はそれ単独で放置すると半日から1日で死亡する程度のものであった。この場合,甲の2発目の発射行為とVの死亡との間には,因果関係がない。
5.甲は,Vの頭部を多数回殴打する暴行を加えた結果,Vに脳出血を発生させて意識喪失状態に陥らせた上,Vを放置して立ち去った。その後,Vは,甲とは無関係な乙から角材で頭頂部を殴打される暴行を加えられ,死亡するに至った。Vの死因は甲の暴行により形成された脳出血であり,乙の暴行は,既に発生していた脳出血を拡大させ,幾分か死期を早める影響を与えるものであった。この場合,甲の暴行とVの死亡との間には,因果関係がある。
※ 該当するものを2個選ぶ問題です。2個の組合せを選んでください。
- ①1と2
- ②1と3
- ③1と4
- ④1と5正解
- ⑤2と3
- ⑥2と4
- ⑦2と5
- ⑧3と4
- ⑨3と5
- ⑩4と5
解説
要点
因果関係は、実行行為の危険性が結果へと現実化したかを、介在事情の異常性・結果への寄与度等から個別に判断する。被害者が暴行から逃げる過程での転倒死や、先行行為が死因を形成している場合(大阪南港事件)は肯定され、第三者の異常な介入があり死因がいずれの行為によるかも不明な場合(米兵轢き逃げ事件)は否定される。
結論
正しいのは記述1と記述5であり、選択肢4が正解である。記述1は被害者の逃走が暴行に誘発された自然な行動であって因果関係を肯定でき、記述5は大阪南港事件と同様に先行する暴行が死因を形成している以上、後行の第三者の暴行が介在しても因果関係は否定されない。
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出典:法務省「平成29年予備試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
