平成23年 予備試験 短答式 刑法 第5問 解説
問題
業務上の占有者による横領行為に非占有者が加功した場合の罪責について,教授及び学生が次の【会話】のとおり議論している。【会話】中の①から⑤までの( )内に後記アからキまでの【発言】から適切な語句を入れた場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちのどれか。【会 話】教授.保険会社の保険料集金担当従業員である甲が,同社の従業員ではない知人乙と共謀の上,集金した保険料を横領した事例のように,業務上の占有者に非占有者が加功した場合のそれぞれの罪責について,共犯と身分の観点から,どのようなことが問題になりますか。学生.業務上横領罪の成否に関して,同罪は,単純横領罪との関係では(①)であり,他方,非占有者との関係では(②)となりますから,特に乙に対して,何罪が成立するのかが問題になります。教授.判例ではこの事例はどのような結論になりますか。学生.判例は,(③)としています。教授.判例の立場に対しては,どのような批判がなされていますか。学生.非身分者について罪名と科刑の分離を認めるのは妥当でないという批判がなされています。教授.この点を克服するための考え方としては,どのようなものがありますか。学生.刑法第65条第1項は違法身分について規定し,同条第2項は責任身分について規定していると考え,業務上横領罪については,(④)と捉えた上で,この事例では(⑤)とする見解などがあります。【発 言】
ア.占有の受託者という身分があることによって犯罪行為になる構成的身分犯
イ.業務者という身分があることによって刑が加重・減軽される加減的身分犯
ウ.占有の受託者たる身分は責任身分,業務者たる身分は違法身分
エ.占有の受託者たる身分は違法身分,業務者たる身分は責任身分
オ.刑法第65条第1項により甲には業務上横領罪が,同条第2項により乙には単純横領罪がそれぞれ成立し,甲及び乙は単純横領罪の範囲で共犯となる
カ.刑法第65条第1項により甲及び乙は業務上横領罪の共犯となり,同条第2項により乙に対しては単純横領罪の刑を科す
キ.刑法第65条第1項により甲及び乙は単純横領罪の共犯となり,更に同条第2項により甲については業務上横領罪が成立する
- ①①ア ②イ ③カ ④ウ ⑤オ
- ②①ア ②イ ③キ ④ウ ⑤オ
- ③①イ ②ア ③オ ④エ ⑤カ
- ④①イ ②ア ③カ ④エ ⑤キ正解
- ⑤①イ ②ア ③キ ④ウ ⑤カ
解説
要点
業務上横領罪は、占有者という身分については構成的身分、業務者という身分については加減的身分という二重の身分性をもつ。判例はこれを前提に、65条1項により非占有者にも業務上横領罪の共同正犯を認めつつ、65条2項により科刑のみ単純横領罪とする(罪名と科刑の分離)。これに対し、65条1項を違法身分、2項を責任身分の規定と実質的に読み替える見解では、占有の受託者たる身分(違法身分)は連帯的に作用して非占有者にも単純横領罪の共犯が成立し、業務者たる身分(責任身分)は個別的に作用して業務者にのみ業務上横領罪が成立するとして、分離を回避する。
結論
選択肢4(①イ②ア③カ④エ⑤キ)が正しい。業務上横領罪は単純横領罪との関係では加減的身分犯、非占有者との関係では構成的身分犯であり、判例は罪名と科刑を分離する処理(③カ)をとる。これを批判する見解は65条1項を違法身分・2項を責任身分の規定と解し(④エ)、占有者身分は連帯的、業務者身分は個別的に作用するとして乙には単純横領罪、甲には業務上横領罪が成立するとする(⑤キ)。
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出典:法務省「平成23年予備試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
