令和2年 司法試験 短答式 刑法 第2問 解説
問題
横領の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,誤っているものを2個選びなさい。
1.甲は,乙からの委託に基づき,同人所有の衣類が入った,施錠されていたスーツケース1個を預かり保管していたところ,衣類を古着屋に売却して自己の遊興費を得ようと考え,勝手に開錠し,中から衣類を取り出した。この場合,遅くとも衣類を取り出した時点で不法領得の意思の発現と認められる外部的行為があったといえるから,甲には,横領罪が成立する。
2.甲は,乙と共に一定の目的で積み立てていた現金を1個の金庫の中に入れて共同保管していたところ,乙に無断でその現金全てを抜き取り,自己の遊興費に費消した。この場合,甲には,横領罪が成立する。
3.株式会社の取締役経理部長甲は,同会社の株式の買い占めに対抗するための工作資金として自ら業務上保管していた会社の現金を第三者に交付した。この場合,甲が,会社の不利益を回避する意図を有していたとしても,当該現金の交付が会社にとって重大な経済的負担を伴うもので,甲が自己の弱みを隠す意図をも有していたなど,専ら会社のためにしたとは認められないときは,甲には,業務上横領罪が成立する。
4.甲は,乙から某日までに製茶を買い付けてほしい旨の依頼を受け,その買付資金として現金を預かっていたところ,その現金を確実に補填するあてがなかったにもかかわらず,後日補填するつもりで自己の遊興費に費消した。この場合,甲がたまたま補填することができ,約定どおりに製茶の買い付けを行ったとしても,甲には,横領罪が成立する。
5.甲は,自己が所有し,その旨登記されている土地を乙に売却し,その代金を受領したにもかかわらず,乙への移転登記が完了する前に,同土地に自己を債務者とし丙を抵当権者とする抵当権を設定し,その登記が完了した。この場合,同抵当権が実行されることなく,後日,その登記が抹消されたとしても,甲には,横領罪が成立する。
※ 該当するものを2個選ぶ問題です。2個の組合せを選んでください。
- ①1と2正解
- ②1と3
- ③1と4
- ④1と5
- ⑤2と3
- ⑥2と4
- ⑦2と5
- ⑧3と4
- ⑨3と5
- ⑩4と5
解説
要点
横領罪と窃盗罪の分かれ目は「行為者に当該財物の占有が認められるか」にある。封緘物の中身や、共同占有物を単独占有者が全部持ち去る場合は、委託者・共同占有者の占有がなお及んでいるとされ、横領ではなく窃盗が成立する。
結論
誤っているのは記述1と記述2である。いずれも、行為者に当該財物についての占有(横領罪の主体たる地位)が認められるかという占有の所在の判断を誤り、本来は窃盗罪となるべき事案を横領罪としている点が共通する誤りである。
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出典:法務省「令和2年司法試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
