令和2年 司法試験 短答式 刑法 第1問 解説
問題
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
- ①甲は,Xに対し,暴行や脅迫を用いて,自殺するように執拗に要求し,要求に応じて崖から海に飛び込んで自殺するしかないとの精神状態に陥らせた上で,Xを崖から海に飛び込ませて死亡させた。この場合,甲に,Xに対する殺人罪は成立しない。
- ②甲は,追死する意思がないのにあるように装い,その旨誤信したXに心中を決意させた上で,毒物を渡し,それを飲み込ませて死亡させた。この場合,甲に,Xに対する殺人罪は成立しない。
- ③甲は,財物を奪取するために,当該財物の占有者Xに対し,反抗を抑圧するに足りる程度の暴行や脅迫を用いて,当該財物を差し出すしかないとの精神状態に陥らせた上で,当該財物を差し出させた。この場合,甲に,Xに対する強盗罪は成立せず,窃盗罪の間接正犯が成立する。
- ④甲は,日頃から暴行を加えて自己の意のままに従わせて万引きをさせていた満12歳の実子Xに対し,これまでと同様に万引きを命じて実行させた。この場合,Xが是非善悪の判断能力を有する者であれば,甲に,窃盗罪の間接正犯は成立せず,Xとの間で同罪の共同正犯が成立する。
- ⑤甲は,Xが管理する工事現場に保管されている同人所有の機械を,同人に成り済まして,甲をXであると誤信した中古機械買取業者Yに売却し,同人に同機械を同所から搬出させた。この場合,甲に,Xに対する窃盗罪の間接正犯が成立する。正解
解説
要点
間接正犯の成否は「被利用者の意思決定の自由が実質的に奪われ、道具として利用されたと評価できるか」で判断する。暴行・脅迫で海中転落(自殺)に追い込んだ場合や偽装心中は殺人罪、暴行・脅迫による財物奪取は強盗罪そのもの、意思を抑圧した年少者の利用は是非弁別能力があっても間接正犯(最決昭58.9.21)、他人になりすまして善意の第三者に搬出させた場合は窃盗罪の間接正犯となる。
結論
正解は選択肢5である。他人になりすまして事情を知らない第三者に財物を搬出させた場合、その第三者を窃取の道具として利用したものとして、占有者に対する窃盗罪の間接正犯が成立する。他の選択肢はいずれも判例の結論と整合しない。
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出典:法務省「令和2年司法試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
