令和元年 司法試験 短答式 刑法 第13問 解説
問題
学生A,B及びCは,次の【事例】における窃盗罪の実行の着手時期について,後記【会話】のとおり議論している。【会話】中の①から⑥までの( )内から適切なものを選んだ場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。【事 例】甲は,X宅のタンスに宝石が保管されていることを知ったため,その宝石を窃取する目的で,X宅に玄関から侵入し,宝石が保管されているタンスの在りかを探し始めて,それが置かれていた居間に立ち入ろうとしたところ,居間から出てきたXと鉢合わせとなり,取り押さえられた。【会 話】学生A.私は,甲がX宅に侵入した時点で窃盗罪の実行の着手を認めてよいと思います。この時点で,①(a.犯意の飛躍的表動があった・b.法益侵害の危険が飛躍的に高まった)といえるからです。学生B.A君は,犯罪を行為者の危険な性格の発現であると考えているのですね。私は,実行の着手の「実行」とは構成要件該当行為のことで,「着手」とはそれを開始することだと解するので,【事例】では,窃盗罪の実行の着手は,②(c.認められない・d.居間に立ち入ろうとした時点で認められる)と考えます。学生A.B君の見解に対しては,実行の着手時期が③(e.不明確になる・f.遅くなり過ぎる)との批判がありますね。学生C.私は,実行の着手時期とは,未遂犯の成立時期のことであるので,未遂犯の処罰根拠に遡り,実質的に考えることが必要だと思います。そのため,窃盗罪の実行の着手時期は,④(g.占有侵害の現実的危険性が発生した・h.窃取行為と密接に関連する行為を開始した)時点だと解するので,【事例】では,窃盗罪の実行の着手は,⑤(i.認められない・j.X宅内でタンスの在りかを探し始めた時点で認められる)と考えます。この点,B君の見解を修正し,実行の着手時期を⑥(k.占有侵害の現実的危険性が発生した・l.窃取行為と密接に関連する行為を開始した)時点とする見解もありますが,この見解に対しては,形式面を重視すると言いながら,結局,実質的な観点を取り入れているとの批判があります。
- ①①a ⑥k
- ②②c ④h
- ③②d ⑤i
- ④③f ⑥l正解
- ⑤④g ⑤j
解説
要点
実行の着手に関する主観説・形式的客観説・実質的客観説、および形式的客観説を修正した見解(修正された形式的客観説=密接行為説)の各定義と、それぞれが事例にどう当てはまるかを区別できるようにする。特に④(Cの実質的客観説)と⑥(Bの見解を修正した見解)は似て非なる立場であり、混同しないこと。
結論
正解は選択肢4(③f・⑥l)である。学生Aの形式的客観説批判は「着手時期が遅くなり過ぎる」という批判(f)であり、Bの見解を修正した見解は「窃取行為と密接に関連する行為を開始した時点」とする見解(修正された形式的客観説=密接行為説)であるから⑥はlとなる。
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出典:法務省「令和元年司法試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
