令和元年 司法試験 短答式 刑法 第9問 解説
問題
被害者の承諾に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
- ①甲は,乙の承諾を得て,乙から借り受けた乙所有の重機を丙に転貸していたが,同重機の修理のため一時これを丙から預かった際,乙の承諾を得て,丙に無断で,自己の借金の返済として同重機を自己の債権者に譲渡した。この場合,甲には,横領罪が成立する。
- ②甲は,自らが組長を務める暴力団の組員乙から,「暴力団を脱退したい。」との申出を受けたので,「落とし前として,指を詰めろ。」と言い,乙の承諾を得て,乙の右手小指の根元を出刃包丁で切断した。この場合,甲には,傷害罪は成立しない。
- ③甲は,乙との不倫関係を清算しようと考え,真実は,乙と心中するつもりはないにもかかわらず,乙に対し,「あの世で一緒になろう。私も君の後を追って死ぬから。」と言って心中を持ちかけ,その旨誤信してこれを承諾した乙に毒薬を手渡したところ,乙がそれを飲んで死亡した。この場合,甲には,自殺関与罪が成立する。
- ④甲は,知人乙から,「生活が苦しく刑務所に入りたいので,私から脅されたという事実をでっち上げて,私を告訴してほしい。」と依頼され,乙の承諾を得て,乙を脅迫罪で告訴した。この場合,甲には,虚偽告訴罪は成立しない。
- ⑤甲は,自らが刑務官を務める刑務所で受刑中の成人女性乙と恋愛関係になり,乙の承諾を得て,勤務中,同刑務所内において,乙と性交した。この場合,甲には,特別公務員暴行陵虐罪が成立する。正解
解説
要点
被害者の承諾は個人的法益に対する罪では違法性阻却事由となり得るが、国家的法益(司法作用の適正、刑事施設の規律・職務の公正)が関わる場合、社会的相当性を欠く重大な身体侵害、錯誤に基づく無効な承諾の場合には違法性は阻却されない。
結論
選択肢5が正しい。特別公務員暴行陵虐罪(刑法195条2項)は、被拘禁者の身体・人格的利益のみならず拘禁に関する職務の公正・刑事施設の規律をも保護するものであり、受刑者個人の承諾があっても陵虐行為性・違法性は否定されず、刑務官である甲には同罪が成立する。他の選択肢は判例の結論と逆であるか、罪名の選択を誤っている。
この分野を、あなたの弱点に合わせて演習
無料で始める間違えた問題は忘れかけた頃に出し直し。論文の AI 採点も(Pro)。
出典:法務省「令和元年司法試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
